2015年観た映画ランキング

 

 さて、昨年も「1年間で劇場で50本、1週間1本の計算で映画を見よう。」という目標を立て、結果55本の作品を鑑賞しました。自分の記録として、2015年に見た映画のランキングにtwitterなどに上げていた寸評を合わせてまとめてみようと思います。

 

以下注意書き

・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。

・このランキングは「現時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。

寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。

 

 

 

 

 

  ハイカロリーなシーン満載だった前作をさらに飛び越える程の熱量、「どうかしている!」と形容する他無いトンデモカーアクションのつるべ撃ち! ファミリーを大事にする「ロスのマイルドヤンキー」「ワンピース」感はそのままに、快速王に俺はなる!と、テロリスト相手にどこまでも車だけで丁々発止! 全くもってどうかしている! 知ってた? 車って空を飛ぶ乗り物なんよ!

 しかし、最後。子供が出来、引退するというブライアンが砂浜で家族と戯れる様を、もう一つの「家族」達が優しい笑顔で見守る。ドムは語る。「家族が彼の居場所だ。」ああ、ドムが認めてしまった。本当にブライアンは足を洗ってしまうんだ……。
 
 「家族」に黙ってその場を去り、車を走らせるブライアン。ドムは追いかけ、車を横につけます。「さよならも言わずに出て行くのか?」 そう、撮影期間中で交通事故で亡くなってしまったブライアン役のポール・ウォーカー。彼もまた、さよならも告げずに、『ワイルド・スピード』シリーズの作中を超えた「家族」たるキャストやスタッフ、ファンの前から居なくなってしまった。もうスクリーンで彼を観る事はできない……。このラストシーンは、彼に「家族」が捧げる別れの儀式なんですよ。
 
 やがて笑顔で車を走らせる二人。彼らの始まりの車であるスープラとチャージャーが並走していく。どこまでも彼らのドライブを見続けていたいけれど、やがて道は別れ、二台の車がどんどん離れていく。いやだ、行かないでくれ! ブライアン、まだまだお前の走りを観ていたいんだ! ポール、役者として油が乗ってきた今、お前はこれからじゃないか……! そしてカメラはブライアン=ポールの車を追いかけていき、そして彼は朝焼けの光の中に消えていく……。観ていてこんなに涙し、嗚咽したシーンは未だかつてありません。
 
 実にワイルド・スピードシリーズらしい見送り方でした。ありがとう、全ての制作スタッフの皆さん。ありがとう、ポール。
 
 
 
2位:マッドマックス 怒りのデス・ロード
 3作目より27年の時を経て、再び帰ってきた伝説のポスト・アポカリプス映画最新作。その後の数々のエンタメ作品に影響を与えてきた本シリーズですが、それらフォロワーが到達しえなかったマッドな表現の数々に息を飲みました。旧作よりも遥かにパワフル&ノンストップなカーアクション劇は、ジョージ・ミラーよ本当にあなたは御年70歳のジジイなのかというギラギラさに満ち満ちており。マッドマックスを超えるのはマッドマックスしかねぇんだなぁと脱帽いたしました。
 
 CGを殆ど使ってないっての、嘘でしょ?!ってぐらいに、マッド人間が駆るマッドカーによるマッドドンパチでマッド爆発のオンパレード。その狂気の映像世界の中、時々ハッとするような芸術的な絵も見せてくれるのだから堪らない……。
 
 吹替MVPはニュークス役の中村悠一さん(や、僕がファンなのもあるけど)あのノリノリな狂信者ぶりを聴いてると「あれ? なんか割とイモータン・ジョー教楽しそうだなぁ」と思えてくる不思議。あとやっぱこんなイカレた役でもやっぱり声が色っぽいんだよね。素敵。
 
 
 
3位:スター・ウォーズ フォースの覚醒
 これまで描かれてきたスター・ウォーズサーガは継承の物語でした。そしてこの作品は紛れも無くそのサーガに連なる継承物語であり、あらたな始まりでもありました。
 
 またシリーズの正統続編が、11歳の頃に雑誌『スターログ』でスター・ウォーズの記事を読み、雄叫びをあげた少年こと、J.J.エイブラムスの下で作られたというのも素晴らしい継承の物語ですよね。 そりゃこれだけの歴史とファンを持った作品ですもの、何を作っても不満が出てくると思うんですよ。でもこれ、ほぼ最適解じゃないですか? 旧作のヒーロー達も活躍しますし、けれどもこれは、新たなる時代の新たなるキャラクターたちの物語だとも明確に示している。バランス絶妙ですよなぁ。大したもんだよJJ。よぉビビらず形にできたもんじゃ。
 
 上映までに盛り上がっていくボルテージ、皆と味わう祭り感も楽しく、その期待に違わない楽しい作品だったのが良かった。 伝説から神話にならんとする物語の最終章を、リアルタイムで見届けられる幸福! こりゃまだまだ死ねんですよ。
 
 
 

4位:劇場版 PSYCHO-PASS

 僕が日本の映像で見たかったけれど、今まで見れなかったもの、僕がPSYCHO-PASSという物語で見たかったものが全部詰まったハイパー幕の内映画でした。やったね!


 TV版でもえらい凝った近接戦闘シーンがあって、何度も巻き戻して舐めるように見たものですが、本作もアバンから凄かった……。ギノさんの小手返しテイクダウンだけで、もううっとり。銃の描写も凄くてねぇ、こんなにアクション周りが凝ったアニメちょっと無いですよ! 思わず惚れ惚れしちゃう位に見事な、敵の傭兵軍団の殺しの描写や、狡噛とギノさんvs傭兵隊長ルタガンダの変則タッグ戦など、ホントこの作品は「エンタメ映像としての見栄え」と「格闘技術のリアリティ」が共存したアクションの殺陣を組んでくれるんです。鑑賞中何度も絶頂したね俺ぁ。


 TVシリーズで大きく成長した朱も、さらに女傑ぶりを発揮して、強い女好きとしてたまらんかったですわい。「シビュラ否定派だけれど、平和的な社会を成り立たせるのに、現状はこのシステムが有効だというのも理解している。だがその統制を享受し続けてはならない。人間はこれまでもより良い社会を目指し、連綿と歴史を営んできた。遠い未来になるかもしれないが、必ずシビュラを必要としない世界が作られる。私は人間を信じる。」というのが、TV版後編からの常守朱というキャラクターの一貫したスタンスなのですが、クライマックスはその集大成だったという思いです。朱の高潔さと、台詞の俺納得度の高さが極に達して、なんだかおじさんは涙が止まらんくってねぇ。

 

 劇場に6回観に行ったので「あ、ここの演出変だな」とかいらん事も気づいてしまいましたがw、それでも2015年ベストアニメ映画ですわん。

 

 

 

5位:キングスマン
 劇中、悪の天才大富豪・ヴァレンタインと、諜報組織キングスマンのエージェント・ハリーが交わす、「スパイ映画は好きかね?」「昔の007が好きだ。最近のものはシリアスすぎる。」という会話。あれはマシュー・ヴォーン監督の本音でもありましょう。その言葉通り、往年のスパイ映画に存分にオマージュを捧げた作品でした。ジェントルで茶目っ気もある超人的なスパイが、様々なガジェットを駆使し、悪役と戦い世界を救う……。やっぱりこういうスパイ映画も良い!
 
 さりとて単なる古臭い懐古趣味ではなく、青年の成長譚・新たなヒーローの誕生譚でもあり。勿論「今どき」の絵作りになっている…というか、絵も音も相当格好良いぞ!『X-MEN ファースト・ジェネレーション』をアップデートして英国よりにしたというか……。 
 
 これは!というアクションシーンも複数あり、面白ガジェットも盛りだくさん。文句なしに楽しめる快作でありました。ビシッとオーダーメイドのスーツを決めたメガネ英国紳士が延々出てくる作品なので、その手の好事家も必見であります。まさにスーツポルノ。最高の目の保養でしたわ…!
 
 あ、2015年の映画ベスト名台詞章は「マナー、メイクス、マン。」これでしょう。紳士たれ!
 
 

6位:ジュラシック・ワールド
 正直脚本は「???」と首を捻らざるをえない箇所が幾つもあり……。しかし、この映画はこの恐竜たちの暴れっぷりを楽しむ映画でしょう。そう思わざるをえない程に、凄まじいテンションのクライマックスでした。強大なる力で暴虐の限りを尽くす恐竜たちの暴れっぷりはラストバトルでその極を迎え、いよいよこの映画は恐竜映画ではなく、怪獣映画の様相を呈します。「このパークを作ったのは、人間が如何にちっぽけかを思い知らせる為だ。」然り然り! 
 
 恐竜図鑑を一日中、何時間でも眺めていたあの頃の僕にこの映画を見せてあげたいなぁ。ラストカットにそびえ立つティラノサウルスの勇姿に、僕は1作目のアラン・グラント博士の言葉を思い出さずにはいられないのです。「僕が子供の頃から一番好きだった恐竜だ……」と。
 
 
 
7位:フォックスキャッチャー
 人格者の兄、その兄を超えられない弟、母の愛・人の愛に飢えた大金持ちの3人が織りなす実話を基にしたドラマ。不穏と歪みにひたすら覆われた二時間でした。この作品が刺さらない人は幸せですよ、形や大きさは違うものの、自分のコンプレックスをビシバシ刺激して、それを炸裂させてる時の嫌なモヤモヤを思い出させてくれる作品でしたね。

 ジョン・デュポンのやった事は許される事ではありません。が、どう足掻いても埋められない空虚さ、あれに耐え切れる人間まどいないだろうと思うと切なくて切なくて。生まれてこの方、人への交わり方・愛され方・愛し方を知らず、覚える事もできなかった50近い男。しかも矢鱈に凄まじい権力とお金とがあるものだから、皆線を引いて踏み込んでこないんだもん。そりゃどうにもならんよ……。
 
 デュポンを演じるスティーブ・カレルのあの虚ろな表情が印象的でしたね。会話の途中なのに無言で間をたっぷりとって、あの表情。いつ爆発するやも判らない爆弾を目にしているようでおっかなくておっかなくて。マーク・ラファロも好人物なんだけど、微妙に「今もうちょっと空気読んでくれ!」っていうもどかしさを覚える人物を細やかに演じていて、こんなに良い役者だったんだなぁと。チャニング・テイタムも、他人の目を気にした顔にやや前かがみの姿勢が、彼の演じる役らしからぬ「オドオド感」を演出してる。彼のちょっと出た下唇と顎が、作り上げた肉体も相まって哀しきフランケンのようでもあり……。

 余談ですが、今のアニメやドラマのキチガイって判りやすさ重視なのか、甲高い奇声を上げるハイテンションキャラという陳腐な類型に陥りがちですけど、本作のスティーブ・カレルみたいな本当におっかないキチガイも見てみたいなぁ。チャレンジ求む!
 
 

 世界、いやさ宇宙規模にまで話の広がるMCU。フェイズ2の掉尾を飾るのは才はあるものの離婚し、犯罪歴があり、無職。ヒーローとはかけ離れた負け犬でした。
 
 スケールがどんどん大きくなり、シリーズ同士が有機的に絡みあうMCU。傍から見ればマニアックなシリーズと受け止められる事もあるでしょうし、ファンも膨張し続けるその世界に時に戸惑ってしまう。その弊害の緩衝材としての意味も込め、アベンジャーズAOUの前後に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と本作が配置されたのかなと。決して大スケールの話ではありませんが(最終決戦の舞台の小ささよ!)、どん底から這い上がりヒーローとなる男、愛すべき人々、緩急のあるギャグ……。そうそう、こういうのでいいんだよ!
 
 ミクロの世界も楽しい、親子で楽しめる地に足の着いたヒーロー誕生譚でありつつも、しかしやはりこれはMCU。シリーズファンが胸を熱くするようなシーンは満載。エンディングロールの後のお楽しみではフェイズ3にしっかり繋がって…! 長生きしてこのシリーズも見届けよう!
 
 
 
9位:劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- Cadenza
 劇場版第二弾にして完結編。やー、終わった終わった。ファンが見たいものがギッシリ詰まった一本。ザッツ・エンターテイメント! 途中、WW2の潜水艦映画のような潜水艦戦らしいシビアな描写があるかと思えば、SF艦船アニメならではのケレン味たっぷりの絵がガンガン出てくる大艦隊戦もあり。劇場版らしい迫力とリッチさを感じました。
 
 劇中のナチの台詞じゃないけど、「なんて戦い方!」のオンパレード。これは一度は劇場の大画面で観るべきでしょう。コンゴウの登場シーンなんて、もう歌舞伎のように決まってましたね。「コンゴウ屋!」って大向うの声を掛けたくなっちゃうw DCとの対になるように、イオナのピンチを今度はコンゴウが救うってのも粋じゃないですか。コンゴウファン冥利に尽きます。
 
 CGキャラについても、構成の上江洲誠氏が「このクオリティを維持し続けるのは、現状サンジゲンのアルペジオチームにしかできない。しばらくは、タイトルホルダーとして君臨できるのではと自負している」と仰るように、凄まじいクオリティでした。CGキャラにありがちな不気味の谷をほぼクリアしてるんですもの。まだ動きに硬さが残る部分はあるものの、表情豊か。声優陣の熱演が絵に乗っても、それに負けない、受け止められる完成度なんですよね。これだよ!
 
 現状最もセルアニメに近いルックを備えるという難題に挑戦し、応え、日本のCGアニメに未来を示すという偉業を果たしつつ、物語の完結編として、エンタメとしてきっちり成立させてた秀作だと思います。あー、満足満足!
 
 
 
10位:クリード チャンプを継ぐ男
 フォースの覚醒もそうでしたけれど、過去シリーズを大切にして、それでいて過去作オマージュに頼り過ぎない、同窓会だけで終わらない作品に仕上がってますよねぇ。時が経過した重みは、スクリーンの前の僕らだけではない。ロッキーたちも背負っているのだという説得力。
 
 クリード自身もロッキーという偉大なキャラクターの影に隠れるような存在ではなく、ちゃんとキャラ立ちしています。ロッキーの名シーン、街中ダッシュもちゃんとクリード流になってますし、何しろそこで流れるクリードのテーマ(今風の音楽!)もちゃんとアガる音楽なんですよ。音楽といえば過去作を匂わせるものも最低限、かつなればこそ効果的に使われてましたよね。
 
 ボクシングシーンもより本物に寄せて、レベルアップ。何よりクリードのデビュー戦の長回しにはびっくりしました。どうやって撮ったんだろう。バストアップ多めなところになにか秘密があるのかしら…?
 
 
 
11位:シェフ 三ツ星フードトラック始めました
 大切なものを取り戻すという普遍的な王道テーマに、監督ジョン・ファブローが自らのキャリアも重ねつつ、生唾ものの料理とノリノリの音楽でゴキゲンな作品に仕上げてくれました。

 そんな上手い事行くかい!っていっちゃえばそれまでだけれど、テンポの良さと楽しい音楽で盛り上げてくれるんで、気持良くノれてハッピーになれるんですよね。料理人と映像作家、畑は違えどファブローの主張そのものの台詞にもグッと来た。オススメ!
 
 
 
12位:ナイトクローラー
 主人公・ルイスがド底辺裸一貫から成り上がるサクセスストーリー。良く勉強し、根回しし、行動する。いやぁ、彼は最高のビジネスマンですよ! ……ただ彼は、倫理観なんてこれっぽっちも持ちあわせちゃいないんだけれど。
 
 スクープの為なら法も道徳もどこへやら。絵作りの為ならやらせ上等。商売仇どころかパートナーまでもビジネスの種にしてどんどん成り上がっていく、ルイスのサイテー男ぶりは実に胸糞が悪いけれど、「事故・事件専門のパパラッチ」という仕事に関しては、彼は本当に優秀な男なんだよね。冴えなく歯牙もない営業マンの僕は、その働きぶりに痛快さを感じ、憧れすらも感じる。その道の才を持った人間が、天職を見つけた時の眩しすぎる輝き。カメラ写りを良くする為だけに、ルイスが轢死体を勝手に動かすシーンの成功の予感に満ち満ちた美しい劇伴たるや! 道徳的に完全アウトな人間を、こんなに魅力的に、共感すら覚えるように描くなんて……!
 
 このギョロ目のクソ野郎に、僕の心は完全にノックアウトされてしまったんだよなぁ。前述の『シェフ 三ツ星フードトラック始めましたと対になる、2015年・男の仕事映画。ワタミ社長の自伝読むくらいならこの映画を観なさい!
 
 
 
13位:チャッピー
 人を人たらしめん要素、心とは、意識とはという、古典的なSFのテーマに挑戦したとも言えるし、自己形成・子育て物語とも言えるし、ブロムカンプらしい、ヨハネスブルグ地元密着型アクションとも言えるごった煮映画。

 正直「え、これでいいの?!」という粗さ・雑さは多い。けれど、「これ好きだなぁ!」という加点ポイントが上回って、僕は楽しく見れました。その粗が気にならないか否かでだいぶ評価が変わってくるような気がしますね。

 しかしシャールト・コプリーがモーキャプと声を演じるチャッピーは愛おしいなぁ。キレた時のムキーッ!と癇癪起こしてる様・声も好き。過ぎた力を持て余す子供が、何するかわからん感じの不気味さ! あ、耳が感情に合わせてシャコシャコ動くのも犬みたいで可愛いw

 ニンジャ&ヨーランディの、本業の方にしか見えないギャングスタぶりも◎。色んなSF作品のオマージュ、そして自身の作品のセルフオマージュも色々散りばめてあるので、その辺も楽しかったです。


 
14位:ソロモンの偽証 前篇・事件
 映画に「非日常」を求めており、それを余り感じない邦画には食指が動かないクチの僕ですが、本作はまさに日常に起こった「非日常」。後編も見たいと素直に思いました。

 役と年齢の近い無名の役者が中学生を演じているので、役の色がついてない彼らからは他出演作品からのイメージを読み取る事ができません。故にこのキャラはどういう役目なのか、ドラマがどう転がるのかという道筋が読みにくく、スリリングでした。既に名のある眉目秀麗な役者を本作に起用していたとしたら、年齢も相まってこの「中学生っぽさ」は出せず、ファンタジーに見えちゃって興ざめなんだろうなと思います。

 その無名キャスト達が演じる生徒たちは皆、ちゃんと個性的で魅力的に描かれているのだから大したものです。柏木役の望月歩くんの表情は、本当に薄っ気味悪くてねぇ。涼子を糾弾するシーンの台詞は、スクリーンの前の僕らにも投げかけてる台詞でもあるんだろうけど、その表情も相まってドキッとさせられた。
 
 

15位:アメリカン・スナイパー
 流石に流行のFPSゲームを意識したようなカットはなかったけれど、極めて真っ当な現代的戦争映画の映像に仕上がっていて、イーストウッドよ、老いて尚こんなの撮るんだなぁと驚き。発砲音の響きも心地よいですね。

 戦争の英雄として祭り上げられる男も、戦場での現実と家族との間で揺れて……というありがちな描写よりも、たまに主人公のクリスがポロっと無自覚に、観てるこっちが「えっ?」と思っちゃうような、野蛮で過激な発言をしちゃうのね。そっちの方がよっぽど怖くて反戦的な表現だと思った。どっか壊れてまうねんなぁ。
 
 

16位:劇場版 蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ- DC
 TVシリーズの総集編にその後を描いた新作映像を加えた劇場版前篇。総集編の思い切りのいい編集具合は、TVシリーズを一通り観た身にもストレスやテンションダウンを感じなかったですね。一気に駆け抜けてくれて気持ちよかったです。総集編には新規作画部分はなかったけれど、それでも劇場の大画面にも耐えうる絵力・情報量だったと確認できて納得&ビックリ。霧の艦艇らが兵装を起動させるシーンや、超重力砲のエフェクト等々のバトル関係は本当、劇場栄えしますわ。

 セルルックCGによるキャラクターも素晴らしい。ここまで表現できるのかとシビれました。イオナ戦後、膝を抱えて座るコンゴウの脚の曲線の艶かしさと言ったら! CGキャラ独特の違和感を感じさせないというのは現在の技術的には難しい事なのかもしれませんが、鑑賞者にとってはそれが最低限のハードルなんです。それの違和感をクリアして初めて、鑑賞者は物語にのめり込めるし、キャラに思い入れも託せるんです。

 新作シーンについては、ラストに引きで見せてくれた霧の艦隊勢揃いの絵が印象的ですね。これ次で終わるの?! って心配しちゃう位にスケールのデカい絵でした。劇場版はこうでなくっちゃ。
 
 
 
17位:アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン
 スーパーマーベルヒーロー大戦第2弾……なものの、後々に控えるシリーズの大きすぎるブリッジというか。もう少しヒーロー集結のお祭り映画のリッチ感・得した感も欲しかったかしらん。

 とはいえあれだけ登場人物がいるのに、全キャラに見せ場を作り、原作を踏まえた含みを持たせたオリジナルストーリーを構築し、興行的な理屈も折り込み(韓国ロケはMCUが大当たりしてる韓国市場への目配せでしょう)、そして後のシリーズに対しての仕掛けを作る。2時間半でこれだけの事をちゃんと纏めて、しかも見にくくない作りになっているという、ジョス・ウェドンケヴィン・ファイギの手腕たるや。
 
 今後のMCU作品では、あのシビル・ウォーも予定されているとの事ですが、それを見越したであろうキャップとトニーの台詞が切ない。のちのちに、今回のラストの二人の会話にしみじみさせられそうです。あとラストといえばキャップがいよいよ言ってくれましたね! さぁ皆さんご唱和ください、「アベンジャーズ、アッセンブル!!」
 
 
 
18位:百日紅 -Miss HOKUSAI-
 主人公のお栄が書いたエッセイを読むかのように、小さなエピソードの積み重ねの中で淡々と人物や時代を描いていましたね。故に、物語の大きな縦軸がある訳ではなく、山場に欠けるかな、とは思います。とはいえ、この情緒たっぷりの世界に浸れる作風も嫌いではなく……。あの細やかな日常と、非日常である怪異や火事などが継ぎ目なく地続きである世界。たまらない。

 お栄が妹の死を察して家を飛び出し駆けるシーンは、原恵一イズムを感じてニンマリです。藤原啓治さん、矢島晶子さんのご出演もウレシイ。画面の構図・カメラワークも見ごたえありますよ。

 なによりお栄さんが素敵でした。板津匡覧さん(電脳コイル!)による、太眉&下唇をひねたようにやや出すというヒロインらしからぬキャラデザが、お栄の性格を物語ってましたねー。演ずる杏さんの芝居も、アニメ基準だととやや硬さがある気もしましたが、合ってましたね。
 
 
 
19位:ジョン・ウィック
 死んだ妻から送られた犬を殺したロシアンマフィア達皆殺すマンと化したキアヌの銃と拳の殺人活劇。それだけでシナリオはあって無きが如しですw だが、それがいい。只々キアヌが復讐をとげていく様を見守るだけの100分あまり。

 このキアヌのカンフー+銃(ガン)アクションを“ガンフー”などと称しているようですが、特別トンデモな要素もなく。今時のアクションらしい無駄の無いCQB格闘に映画的ケレンという無駄を足したような殺人術でしょうかね。キアヌが斜線を定めるのが異様に早いのが格好良かったですね。インドアのCQBテクニックである、胸の前で腕を畳むハンドガンの構えはあまり画面映えしないかと思いましたが、高速かつ正確に相手を狙い、連続で確殺していく手際の良さも相まって、達人感の表現になってましたね。惚れ惚れします。

 その他、絵的に気が利いている見せ方も多々あり、低予算そうなのに得したもの観た儲けモン感高かったです。ウィレム・デフォーの使い方も◎。終盤の車中からの銃撃には、何もそこまで!とも思いましたが、面白い!

 ただこの映画、徒手空拳のステゴロバトルになるとなんだかかったるいんですよね。もっさりしてるというか。お陰でクライマックスバトルがなんとも盛り下がるという……ラストが割りと好みなので僕は救われましたが、あれはいけませんや。
 
 
 
20位:007 スペクター
 クレイヴ・ボンド“らしからぬ”冒頭からのガンバレル・シークエンスが宣言でしょう。007“らしい”作品。007っぽくないと言われ続けたクレイヴ・ボンドが、スカイフォールまでの成長の物語を経てやっとここに辿り着いたのかな、という感。個人的にクレイヴ・ボンドシリーズは、スカイフォールまでの三部作で完結したと思っているのですが、その「三部作を経て」という意味合いの作品であれば、本作は大いなる後日談なのでありましょう。終わった後の話ゆえのお祭りワッショイノリだったのかもしれませんねw
 
 しかし『キングスマン』で嫌味を言われていた007が、そのアンサーの如く原点回帰したとは言い条、魅力的な悪役が描けていたかというとそれは果たせていなかったかなぁと。大ボスにボンドの兄弟というバックボーンまで仕込んでみたものの、それが仇となって単なる兄弟喧嘩という小さいスケールに話が収まってしまったような。今の時代に、世界を牛耳る悪の組織を、ある程度のリアルティーをもって描こうとしてるのは良かったですけども。
 
 あとダニエル・クレイヴのシリーズ引退発言が物議を醸してたみたいですけど、流石に次の007は役者変えればいいと思います。クレイヴボンドに限っては、スカイフォール以降に何を描こうと後日談ですよ、後日談。
 
 
 
21位:カンフー・ジャングル
 武術の達人達を狙った連続殺人。私闘で殺人を犯してしまい、収監されているハーハウ・モウは捜査への協力と引き換えに仮釈放される。彼はこの連続殺人を止める事が出来るのか……?
 
 犯人は、拳法の基本たる6要素の拳技、脚技、武器術、擒拿術、内功、外功、それぞれの達人をそれぞれの技で殺害していくので、拳風がガラリと違う緊迫した命のやり取りがズラリと描かれます。このこだわりはそれもそのはず、本作は往年の香港カンフー映画に多大なるリスペクトを捧げた作品で、さまざまな作品のオマージュしていたり、関係者がカメオ出演しているなど、香港カンフー映画好きならニヤッとできるシーンが多くあります。
 
 こだわりあるからこそ、拳法の基本要素に則ってアクションが演出され、ハーハウと犯人は、「拳法とは」と問い続けます。その総決算たる入魂のラストバトルにはたまげた。ドニー兄貴、香港カンフー映画関係者の皆さん、ありがとう!
 
 
 
22位:激戦 ハート・オブ・ファイト
 『ロッキー』シリーズのエッセンスを、上手いことMMA総合格闘技)に落としこんだなというか。ダンテ・ラムらしいきっつい運命を背負った人物たちの物語。若干ダレ気味ではあったけれど、母娘とニックのやりとりは「これMMAの話だっけ?」と思うくらい情感深いものでした。娘役のクリスタル・リーちゃん、達者すぎる……! もう1つのドラマ、師匠と弟子のそれも、良い感じにそこにクロスしてくるんじゃよ。それらのドラマが暗くなりすぎなかったのも良し。
 
 MMAの動き、そして練習風景も結構きっちり描いててねぇ。勿論エンタメ的な見栄えを良くするために「盛ってる」描写はあるけれど、リアリティとの バランスやよし。実際のMMAの試合ではあまり見られない、足関節にトライするシーンが多いのは両選手の顔を見せる為でしょうか。
 
 ともかく、格闘ムーブとしても、ドラマとしても膝を打つ点が多かったですね。あ、そうそう、撮影当時50前のニック・チョンの体と動き、すげぇですよ。あれだけで銭が取れそうな。役者根性ここにあり!
 
 
 
23位:ヴィジット
 キチガイジジババクソゲロ映画という嫌~なホラー映画。でもなんだか笑っちゃう。「ヘンな」「嫌~な」シャマラン臭漂う映画だけど、意外に丁寧でオーソドックスな作りで、結構万人が見られる作品になってるんじゃないでしょうか。『エアベンダー』『アフターアース』はなんだったんだ……。 シャマラン、こういうのでいいんだよこういうので。
 
 
 
24位:心が叫びたがってるんだ。
 トラウマにより声が出せなくなった順然り、他の3人しかり、卵(玉子)の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。恐ろしくても苦しくても、人とコミニュケートする為には心と言葉を尽くして踏み出し、想いを伝えなくてはいけないのだ。さぁ少年少女よ、殻を破れ!という、岡田麿里さんの脚本にしては直球勝負の本作。主人公がその事に気づいた瞬間に共感値がグググと上がって得心が行きました。
 
 ミュージカルの曲が、太鼓判の名曲を編してそれに歌詞を載せたものなのは良いですね。オリジナルだとここまで安心して聴けなかったかもしれない。劇伴も素晴らしく美しかった。クラムボンのミトさんと、横山克さんの名前を覚えよう。
 
 「声が出せない呪い」の少女。では歌ならその呪いをクリアできるのでは?という発想は力技ですが、ミュージカルの歌がクライマックスの盛り上げとしても機能しているか。好きだけど作りは歪なのよね、この作品。
 
 「王子」の拓実が「城」に「姫」の順を迎えに行く構図は冒頭を省みると面白いですし、『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』の相似でもあるように思いました。テーマ自体もAURAに通ずる所がありますね。
 
 ただ最後に田崎が順に告白に行くのはあまりに蛇足かと。ファミレスの一件以降意識してた、という事なんだろうけど、もうちょっと伏線でも無いと唐突感、あてがい感は否めない。これからの二人を匂わす程度でも良かったのでは? なんでもかんでも青春に恋愛を絡めさせなくてもいいでしょうに。
 
 
 
25位:コードネームU.N.C.L.E
 “ガラハッド”ハリーも納得?の60年代冷戦時代のスパイ活劇。『アメリカン・ハッスル』もそうでしたが、懐かしきスタイリッシュさが洒落てて楽しいですな。劇伴も宜しい。

 もっとソロとクリヤキンのレベルの高いアクションを個人的には見たかった…とは思うのだけれど、ブロマンス風味はたっぷりで満足できました。悪女役のエリザベス・デビッキたん見目麗しい……『華麗なるギャツビー』リメイク版以来のファンなんですよ。
 
 ところでギャビー役のアリシア・ビカンダーって若い頃の加賀まりこに似てませんか? キュートよね。
 
 
 
26位:イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
 数学者のアラン・チューリングが、ナチスの暗号機・エニグマを解読する話……ではあるのですが、それが主軸のサスペンスものなどではなく。独特の感性を持つが故に世間と乖離してしまうチューリングがいかに生きたか、という伝記ものでした。なんだ、文系オタクの話じゃん……!
 
 対エニグママシン・クリストファーを作り上げていく中で、ぶつかっていたチームメイトと絆を結び、良き友・良きパートナーを得ていくのですが、もう一つの秘密により、やはり世間と、そしてパートナーとも乖離してしまうのはなんとも切ない。色んな意味での「マイノリティー性」を内に秘めている鑑賞者、そう、僕のようなオタクにも喜びと悲しみをもたらす複雑な作品でした。

 主演のカンバーバッチは、同じく変人キャラではシャーロック・ホームズという当たり役がありますが、それとは全く趣きの違う繊細さを感じさせるお芝居でしたね。“オジマンディアス”マシュー・ボーンの伊達男ぶりも相変わらず。
 
 
 
27位:ミッションインポッシブル ローグ・ネイション
 おトムさんの限界超え、過去最高の体当たりアクションと、過去最高のサイモン・ペグとのブロマンス溢れるニヤニヤ作品。このサービス精神と積み重なるサスペンスとレベッカファーガソンのエロ格好良さ。ナイス娯楽スパイアクションでした。
 
 
 
28位:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
 うーん、難しいぞw ある男の再起を描いた物語としてや、ほぼ1カットの様に見える絵作りは面白いけれど、今のブロックバスター映画批判のような主張は納得できぬというか、それをテーマにするのは内輪の話すぎませんかというか(テーマではなくって、単なるドラマ作りの為の舞台装置なのかもしれませんが)

 出てくる人間もロクなのいない(あの最高に最低な批評家精神の婆さんは見てて相当イライラしました)し、嫌いな要素プンプンではあるのですが、それでも掻き立てられるドラムソロのBGMや、ひょいと挟まれる可笑しみ、いちいち主人公を睨むバードマンのポスターなど膝を打つ要素も散見されて、なんだか見ていて愛憎半ばしてしまった作品でした。脚本の言葉選びのセンスもいいし、撮影監督がアルフォンソ・キュアロン作品でお馴染みのエマニュエル・ルベツキなのは、メキシコ同郷組のよしみも感じてニヤニヤもできるのです。

 しかしラストがよく判らない。主人公は弾倉に弾が込められている事を確認してから拳銃を使い、確実に頭を撃ち抜いたように見えた。それが実は鼻を撃った、だって? そんなバカな。その後の投身?についてもどういう意味合いの表現なのか謎。
 
 僕の解釈ですが、ラストの病室でのシーンは、前述の鼻といい、その鼻が案外綺麗だtぅた事といい、批評家が「本物の銃を使った、あれこそ真のリアリズムだ!」と絶賛してたり(そんな訳あるかい。現物を使うなんて虚構を真に見せる芝居の世界から見たら下策でしょう。それを称えるなら何度舞台上で殺人が行われてるんだっつう)、とかく不自然なんですよね。そういえば例の「1カット風撮影」はこのシーンに入る前に「途切れ」ている!
 
 なので、あの病室のシーンは父親を失った娘がまた薬物に手を出して見た幻想かなんか、という説はどうでしょう。うん、成る程よくわからん!w  こういう観客に解釈を委ねるエンディングは苦手だなァ。
 
 
 
29位:カリフォルニア・ダウン
 『ゼロ・グラビティ』で宇宙怖い・地球最高!と確認した映画ファンに、地球にも逃げ場は無いんやでと容赦なく知らしめる本作。カル・エルとゾッド将軍の一個中隊同士が戦ったような大カタストロフ! それに対するは“映画界一シビれる男”ドゥエイン・ジョンソン! 冒頭で「この男ならなんとかするかもしれねぇ…!」と思わせるにたる、無理ゲー必至の超難度レスキューで胆力と判断力を存分に見せつける!
 
 しかし襲い来る、リアリティを保てるギリギリの、誤解を恐れずに言えば「見た目に面白すぎる」大ディザスターにはロック様も我々も口アングリ。死んでも会いたくないような大自然の猛威(と、娘役のアレクサンドラ・ダダリオのナイス乳揺れ)を体験しよう!
 
 
 
30位:テッド2
  僕はテッドとジョンのコンビが好きで好きで、彼らが愉快な事をしてくれてるだけで本当に笑顔になれるの。下ネタもオタクネタも増量でよし!
 
 本っ当くだらない某恐竜映画パロとかハズブロの社長の言い訳とか最高なんだけど、デートムービーで観に来たカップルどもの反応の薄いこと薄いこと。 お前らポップカルチャー知らないんだな?!
 
 
 
31位:ラブライブ! The School Idol Movie
 TVシリーズで活動停止を宣言したμ's。盛り上がっている(いやらしい言い方をするなら、稼げる)コンテンツにしては、今時珍しい潔さに感心したものです。商業主義、コンテンツの継続を否定するつもりはありません。が、例えば「終わらせる予定だったが、この後続いていくようにしたいと総監督・プロデュサーに要請された」と脚本の虚淵氏が語った『まどマギ』新編は、ほむらが悪魔化して以降、僕には蛇足に感じてしまい、「都合」を背負わされる格好のキャラたちに偲びなさも感じてしまったのです。

 ラブライブも勢いのあるコンテンツですし、劇中世界のファンの要請でμ’sを継続させるというストーリーも作れたハズです。けれどきっちりケジメをつけたのは、製作陣の誠実さではなかろうかと(勿論、その後声優グループとしてのμ'sの解散も発表されましたし、良いタイミングではあったのでしょう)。デカいコンテンツでの爽やかな幕引きを久しぶりに観た気がして、なんだか清々しいですね。

 一言言うせてもらうなら、NYに行く事にもっと必然性を持たせて欲しいとは思いました。とはいえTVではできないリッチな絵を、風景を見せるというのも劇場版の役目ですから、それを果たす舞台としては大いに機能したのかな、と。

 あと高山みなみさんが演じる謎の女性について、未来の穂乃果であるという説があります。しかし穂乃果が将来あんな事をやりたいようには僕には感じなかったので、あれは人間誰しもが内に秘めているはずの「可能性という名の内なる神」とでも申しましょうか、そのようなものが穂乃果に見える形で顕現し、背中を押したんだと解釈しました。進まんと奮闘する人には、天地人やご縁などの、不思議な巡りあわせだったりなんやらで、スッと某かの助けが来るもんなんですよ。
 
 
 
32位:劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス
 トーベ・ヤンソンの絵本の世界を切り取ったような絵作りはお見事。質感、色合い、線。スタッフがその世界を再現するのに心を砕いたと言うだけはある、流石の出来でした。
 
 お話はこれも原作通り、ゆる~い感じ。豊かなムーミン谷で奔放に生きるムーミン一家が、ザ・資本主義貨幣経済なリゾート地に行ったらどうなるか…という文化のズレによる可笑しみが描かれてます。ムーミン気分でお気楽にゆるーく観るのが正解な気がします。
 
 最後は警官隊に追われたムーミン一家がリゾート地を脱出するのですが、連中最後っ屁のように、途中で見つけた謎の昆虫の大群をばらまいて、リゾート地を汚染させながらのんきに退散するんですよ。バイオテロだよこれ!w
 
 のんきギャグといえば、フローレンがリゾート地で紐ビキニを購入するのですが、その時に発した一言「これキワどくないかしら…?」には観客みんなが、「お前そもそも全裸やないかい!」と心の中で突っ込んだよねw あとムーミンパパがリゾート地の貴族に武勇伝を語るシーンね。「動物園の檻の中に囚われた事がありましてね。動物学者が我々とカバは違う事を証明してくれて事なきを得ましたよ…。」とドヤ顔。これ絶対、ムーミンパパの鉄板の持ちネタなんだろうなぁw
 
 
 
33位:シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア
 ヴァンパイア達の共同生活に取材班が密着するモキュメンタリー。「えっ、これカメラマンどうなってるの?」というシーンになると、登場人物がすぐツッコミ入れてたのは笑ったw
 
 ヴァンパイアならではの小ネタ&ブラックな笑いが散りばめられていて、ホラー映画・オカルトファンならニヤニヤできる事うけ合い。吸血鬼以外の種族も結構出てきたのには得した感ありました。小粒ながらも良作。
 
 
 
 ヒーローものとしてはごくごくベタな作り。ノリ良く軽口を叩きながらベタな展開やる亀忍者感は、好きずき分かれそうだけど良いと思います。

 そういうタートルズの面々の、ポップであっかるいティーンな空気が魅力なんですよねぇ。見てるだけで各メンバーの個性は伝わって来ますが、それが際立つエピソード(特にレオとラファの)がもう一つあるとメリハリもついて良かったかも。

 しかし終盤のハイスピードアジト脱出からは実に爽快。その終盤の加点もあって、総じて見てみれば楽しい作品でした。が、マーベル映画なんかがヒーロー映画の水準をグググと上げちゃってるので、物足りなさを感じちゃうのも正直な所かなぁ。
 
 
 
35位:エクソダス 神と王
 出エジプト記を描いた映画には『十戒』がありますが、そのリメイクと言っていいのかな。400年もヘブライ人をほっぽってたのに、いざとなるとトンデモない罰で報いる神という描写は、『ノア 約束の舟』みたい。「十の災厄」や、「海渡り」は今風のスペクタクルでビシバシ。エンタメな見せ場は沢山ありました。物語性はやや薄いかな。宗教感はほぼ無い感じでしたね。さらっと時間経過を果たしてる所が数箇所あるので、「えっ、もう?! はえーよ!」と思う所が2、3箇所あったような気もするけれど、これ以上ダラダラ長くなるよりはいいのかな。

 しかし、兄弟のように育てられた果てに、民族を分けて相争う事になったモーゼとラムセスの物語を描いておいて、ラストクレジット前に自殺した弟、トニースコットへの哀悼の意を示したリドリー・スコットの心中とは……と、作品と離れた所で色々考えちゃったよ。

 
 
36位:クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃
 メキシコに自生するサボテンの貴重な実を求めて、転勤する事になったひろし。一家総出でメキシコに引っ越す野原一家……という導入以外、メキシコについてからは完全にモンスターパニック映画だった! モンパニ映画のお約束描写もあり、映画好きなら楽しめるのではと。子供に一番受けてたのはオナラのくだりでしたのよ。
 
 
 
37位:メイズ・ランナー
 名のある俳優は出ていないけど、とにかくハイテンポなスリルが味わえるジェットコースター映画。思い返せば無理やツッコミどころはあるんだけど、観てる間はひたすら濁流に飲まれて流されていくかのように魅せてくれます。ま、勢いだけともいう。
 
 ニュート役、イケメンだけどクセのある顔立ちなトーマス・サングスター、マッチョ気質嫌味野郎・ギャリー役の、顔つきまで憎々しいウィル・ポータースがいい味&存在感出してました。でも自分のスケジュールの都合もあって2は観く熱は湧かなかったなぁ……。
 
 
 
38位:ターミネーター ジェニシス
 リブートではなく「IF」ストーリーというか。『ソー/ダーク・ワールド』のメガホンもとったアラン・テイラー監督は、まるでMCU作品からヒントを得たかのようにT1・T2の要素を物語に絡ませる形で必然として用いてくれたので、嫌味を感じずに「ほう、こう来たか!」と楽しめたような気がします。まぁMCU程上手くないっちゅーか、かなり無理くりですけれども。手放しで褒められる傑作!という訳ではないけれど、シリーズファンなら楽しめる面白さだと思います。や、T2みたいなマスターピースになるような作品を観に行くような気で行かなきゃ全然アリですよ。不満はあるけれど楽しめたのでOKOK。

 僕はT3が正直嫌い。シュワが老いを見せ始めて、それを全然隠しきれてないのに、昔通りの無敵のアンドロイドを演じていて観てて只々辛いんだもん。老わないハズのアンドロイドに老いを感じてどーする。今回のT800はガワの肉体組織が経年と共に老けるという設定なので、今のシュワちゃんが演じるのに都合よし。『ラストスタンド』以降のシュワはその老いを背負い、味方にして役を演じてるから無理がないし、だから観てるこっちも乗れるんだよね。そういえば自分の「老い」への言及、途中で盗むバス、ハイテクぶりを遺憾なく発揮するラスボス・T3000に対して、昔ながらのアナログな戦い方を挑む等々、妙に『ラストスタンド』感あったねw

 あとサラ・コナー役のエミリア・クラーク! 『ゲーム・オブ・スローンズ』で蛮族に嫁入りしてた時は全然そう思わなかったけど、今回の顔つき、やたらに初代サラ・コナーのリンダ・ハミルトンに似てない?! 頬骨の線とか目とか。それを見越してエミリア・クラークをキャスティングしてたんならすげーなーと思う……けれど、戦う日が来る事を知ってたのに、ぷにぷに二の腕なのはちょっと納得いかんぞw そこは2のリンダ・ハミルトンリスペクトで体作って欲しかった…!

 
 
39位:ANNIE/アニー
 舞台ミュージカルが原作という事で、映画もミュージカル仕立 て。「笑えて泣けて楽しい」という、僕がミュージカル映画で見たいものが詰まった作品でした。お話の展開は結構ベタだけれど、このストレートさが良いのでしょう。ライムスター宇多丸さんは酷評してたけど、後半の合唱が丁度僕の今の心情にも合うものでグッサリきてしまった身としては、妙に心に残ってる一本ですね。うんまぁ、確かにダメじゃん!って所もあるんだけどw あとカメオ出演してる有名人が多くて、それを探すのも楽し。 
 
 
 
 007+地獄の黙示録+フランケンシュタイン(もの、和月伸宏エンバーミング』に共通点多し!)+リーグ・オブ・レジェンド、とでも言えば良いのでしょうか。要素ぶっこんだなぁ! この作品の「屍者」は屍と言い条、ゾンビというよりは死体を使ったアンドロイドだよね。あ、所謂「ゾンビパウダー」で操られた労働者の方が近いか。労働力としての屍者に支えられた圧巻のスチームパンク世界を、物語の世界の有名人達が丁々発止。あ、こりゃ面白いですわい。
 
 しかし。僕原作未読なので推測ですが、これ原作を大幅に端折ってるよねぇ? 終盤の説明不足極まる展開たるや。芯となる部分は残してくれたと信じたいし、僕の読解力が無いだけかもだけど、「これ、どういう意味?」と理解に苦しむシーンが多発。キモのMの計画は、人類を抹殺してから遠隔で霊素を送り込んで、生者を全て屍者にするって事だと思ってたんだけど、屍者製造を司る機械が止まって魂?が戻ったら、屍者が生者に戻ったのとかホントによくわかんない(可逆するものなの?!)。魂がちゃんと生者の元に戻る理由も謎。まぁそもそも2時間に収めるのが無理なお話なのでしょうけれど、これは前後編などの長尺で見たかったなぁ。原作既読の方にご解説願いたいわぁ。
 
 
 
41位:ソロモンの偽証 後篇・裁判
  前篇が動なら後篇はひたすらに裁判と回想が続き、静というか。しかし退屈は感じず、「引き込み力」の高さを認めたい。前篇に続いて中学生たちの演技が◎。終わってみれば「サスペンス」というより「青春」映画でした。
 
 しかし死んだ柏木くんの描写がダメすぎる。原作に比べ描写不足なのか、そもそもこういう少年なのか判りませんが、前編であれだけ妖しく魅力的だった彼が、最終的にしょーもない只のこじらせクソ野郎にしか見えなくなってしまったのは大問題。屋上で神原を詰問する彼の台詞は、そのまま彼に返せるんだよ。なに上から目線で責めてるんだよバーカ。
 
 人の心をそもそも理解しようとしていないくせに、人の心を問わんとする柏木くんにこれっぽっちも同情できないので、白けちゃいましたね。他にも描写あって然るべき点が抜けてたり、まぁ、そこは尺の問題なのかもですが。
 
 
 
42位:クーデター
 ベトナムの隣国(カンボジア?)で起こった武力による政権奪取事変に巻き込まれた、海外赴任してきた米国人家族。しかしこのクーデターの原因を作ったのは……。言葉も通じない見知らぬ国で遭いたくない事といえば、そう、クーデター! 容赦なく外国人を殺しに来る現地民の群れ! 『ブラックホーク・ダウン』のそれとは違い、中途半端に組織化されてるのもまたヤ~な感じ。

 ジェットコースターで襲い来るピンチの連続、結構ハラハラはさせてくれるのですが、欲を言えば見せ方にもう一つインパクトが欲しかった。振り切った、語り草になるシーンがあればな、とも思いましたが予算的にもこんなものか。

 とはいえカミさんが夫に「若い頃描いた理想の人生より、母親になるというかけがえのない経験ができた今がずっと良い。そんな人生を与えてくれたあなたに感謝している」と語る家族愛のシーンにグッと来てしまうあたり、僕ももう年やもしれぬ。

 ピアース・ブロスナン(老けたなぁ!)のあっさり気味な活躍には若干膝カックン食らったような肩透かし感あったけれど、良いキャラでした。英国版CIA(MI6の事でしょうなぁ)という設定はボンド俳優についてまわる宿命かw
 
 
 
43位:ミケランジェロ・プロジェクト
 戦争もの、というよりは戦争の中での人間ドラマ。よりドラマチックにも、画面を派手にも出来そうなものですが、抑制された上品な仕上がりになっているのを良しとするか、物足りないとするかで意見が分かれそう。マット・デイモンケイト・ブランシェットのほんのりとしたロマンス、良かった。おっとなー! ビル・マーレーの元気そうな所も見れてよかったですよ。
 
 で、なんで公開延期になってたの?
 
 
 
 『ザ・フライ』+『インターステラー』+『クロニクル』テイストな、超能力ユニットの誕生を描く作品、なのだけれど……FFメンバーがその力を発揮するまでが、長い! 100分しか無いのに、1時間たってもまだ発揮しない! ジョシュ・トランクの青春ものの作風は僕は嫌いじゃないけれど、皆がアメコミ映画に求めるのはきっとこれじゃないよね。異色作か。

 ラストバトルも4人の協力戦法は描かれるものの、なんだかもっさり。MCUのキレキレアクション後の作品でこれは物足りないんじゃない? 超能力バトルの中、リードのゴム殺法の扱いにも苦慮した感が見えるw
 
 とにかく前半がダラダラしすぎ、ラストバトルが半端すぎ。もっと高揚感が欲しい所。作風は嫌いじゃないんだけれど、商業作品としては如何なものかというか。
 
 
 
45位:スペシャルID 特殊身分
 犯罪組織との間に出来た柵と自らの立場で板挟みになるような、もっとシリアスな潜入捜査官ものだと思ってたら、割とコミカル。話自体も大した事なく期待はずれ。
 
 でもMMA要素を存分に盛り込んだ格闘は見応えありました。ドニーがグラウンドでポジション争いをしているなんて、メチャクチャ新鮮な絵じゃないですか! 最初の格闘シーンなんて、ムエタイの使い手相手に猪木・アリポジションで対抗してたもんなw

 ドニーが敵に三角絞め→相手の動きに合わせて腕十字に切り替え→再度三角にトライ→そのまま相手に壁に叩きつけられたので、離れ際に相手の足を取って足関節、なんてムーブを出してくるんだもん。いやぁ、格闘表現のチャレンジは評価したいです。勿論例のドニー百烈拳や飛び回し蹴りもあり。いやぁ、贅沢!
 
 
 
46位:トランスポーター イグニション
 人気シリーズの夢再びと、リブートした本作。つまらなくは無いのですが、やはりシリーズの1発目は主人公をとことん魅力的に描かないといけませんよ。
 
 今回のお話は新味を出したかったのか、ショーン・コネリー風の親父とのバディもの風味になっています。如何せんそれが、キャラクターを魅力的に描くための描写が父と子に二分されてしまい、結果主人公の味が薄まってしまったなと。それは主人公に集中させるべきで、親父は続編に出した方がいいキャラだったような……。
 
 ステイサムのビジュアルに寄せてきた高遠るい顔のエド・スクレインは悪く無かったのですが、冒頭のチンピラ相手のファイト以外はそれなりに苦戦してたりして、ステイサム程の強さの説得力もない。カーチェイスも空港のシーンは面白かったけど……。イグニションしきれずに不完全燃焼でしたねぇ。
 
 
 
47位:ナイトミュージアム エジプト王の秘密
  主演のベン・スティラー繋がり、『LIFE!』のエッセンスも感じる、ナイトミュージアムのシリーズを締めくくる最終作。
 
  「親子の物語」というテーマがあるのに、その描写がちとあっさりめ。もうちょっと深く描いて欲しい気も。活劇とドラマのバランスで悩んだのでしょう、というのも伝わってくるようで。
 
 
 
48位:ピクセル
 負け犬達がただ一つだけ持っている、普段は人には馬鹿にされるような資質を活かして一発かます系映画。今回のお題は80年代レトロアーケードゲームでございますと。僕はこの映画に出てくるようなゲームが、アーケードで一線張ってた時代よりも後にゲーセンデビューしてるのですが、それでも冒頭のゲーセン描写は『シュガー・ラッシュ』同様、「体験無くとも感じる懐かしさ」と、「俺達の世界が取り上げられてる嬉しさ」と「今や衰退してしまったゲーセン文化への悲しみ」が混ぜこぜになって、見てるだけで泣ける。これはもうゲームバカの反射みたいなものなのでどうしようもないのだw
 
 作品自体は単純に笑えるコメディーであります。しかしその「単純に笑える」という所がなぁ。レトロゲームキャラはズラッと出てるし、ジャパニーズレジェンドクリエイターにも触れてくれているのですが、もっと「あの頃」からずっとゲームを背負ってきたファンが共感できる要素を入れたり、あるいは「ゲームとは」と思わず自らを振り返ってしまうようなポイントを入れたりして欲しかった。『シュガー・ラッシュ』の方がその辺上手く処理してたと思います。「レトロゲームを使った宇宙人侵略もの」というアイディアから余り前進していないような気がしたのですよね。気軽に観る映画を目指したと言われてしまえばそれまでですが、もっとゲームバカが「俺達の」と、つい(勝手な)想いを乗せてしまうくらいの描写があれば「皆は知らんが俺はこれ大好きだよ!」と言いたくなる心の一本になったんじゃないかなぁと思いました。
 
 お話のテンポを良くする為にご都合すぎるきらいもあるし、レディ・リサの出てくるゲーム『ドージョークエスト』は架空のゲームだしなぁ。思い入れとか無いよそんなの。あ、でも『シュガー・ラッシュ』でもやらなかった、コンシューマーゲーム界の総番長・マリオをサラッと悪役にしてたのは結構偉業かもしれないw
 
 
 
49位:バケモノの子
 んー……。個人的には今までの細田映画で一番合わなかったです。親と子両方の自己確立の話だと思うのですが、この映画、それ以外に盛り沢山に色んな要素がぶっこまれてて、その割にその要素が上手く絡み切れていないというか、ちぐはぐ というか。言葉で説明しちゃう割に「これ説明足りないんじゃない?」とか「もっと丁寧に伏線張ったり、回収したりしようよ!」と思ってしまう点多数。これね、2クールくらいの尺で丁寧にやってくれたら、もっと重層的な深い話になったんじゃなかろうか、そう思えてなりません。商業的な都合とかそういうのは知らん。

 芸能人声優も、役には合っていたのですが、所々聞き取りにくい所があり、やっぱアニメと実写の声の出し方ってちゃうねんなぁと改めて感じた次第。芸能人でも声優でも、声だけでの表現はもっとアーティキュレーションを確かにして欲しいです。

 いや、賛否別れたおおかみこどもも、なんだかんだで面白かった、全然アリだった僕としては、細田作品にこんなに乗れなかったのがショックなのよ。しかもお話というよりは構成の手際に乗れなかったという点も。チキショー!

 

 

 

50位:セッション
 「次のチャーリー・パーカー(真に才能あるものの意)は挫折しない」 と、殆ど病的ではないかと思えるほどに生徒を追い詰める鬼教師・フレッチャー。 「潰れたならそいつがそこまでのヤツ。」という日本のプロレス道場的ハイパーエリート主義を見るに、フレッチャー、お前今までよく刺されなかったなぁと。 そりゃそれを耐えられる人間は超人だろうけど、それ学校でやる事かね? 私塾でやれ私塾で!という思いに駆られるばかり。いやまぁこれが架空のドラマだって事は判ってるんですけれども! なんというか、理解できない「事もない」部分もあるけれど、こんなの納得できるか! というのが正直な所。
 
  フレッチャーに大舞台で悪辣な騙しうちをしかけられた主人公のアンドリューが、一旦そこから逃げ出すも、されど逆に「仕掛け」るシーン。そこで「それでも俺は修羅の道に行くんだ!」という決意を見せるとか、逆襲に至る心情を描写してくれていればまだ納得できたのに。僕には何故引き返したのか良く判らんかったなぁ。
 
 ラストは仕掛けたアンドリューと仕掛けられたフレッチャーが、演奏という名の戦いの果てにお 互いを認め合った、という事なの? 演奏によってフレッチャーを地獄に叩き落とし、再起不能にする位のものを見せてくれれば「ざまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」ってスカッとしたのになぁ。そしてアンドリューが新たな音楽の悪魔になる……とかさ。
 

 まぁ総じてフレッチャーの糞野郎が不快で嫌い、という感想ですね。凄い映画だとは思いますが、多分二度と見返さないでしょう。ああ、『響け!ユーフォニアム』の滝先生がこんな糞野郎じゃなくてよかった!(ニッコリ)

 

 

 
51位:ハーモニー
 僕はセルルック3Dが基本的に嫌いです。理由は大体これ→(セルルック3Dがいまだ超えられない原理の壁 http://togetter.com/li/605850 ) 平面的に見える画面と硬い表情ゆえ、声優の豊かな芝居がかえって上滑りする辛さ。これがクリアできていないものを大画面で観るのはなんとも苛立たしいものです。この作品はアルペジオのように全てのシーンをCGで描いているのではないですが、2Dと3Dの齟齬を無くすために2D絵を3
Dの絵に寄せたのか、どのシーンでもなんとも扁平に見えます。

 それだけではありません。この作品、2人きりでの会話シーンが何度もあるのですが、そのシーンの見せ方の退屈さと言ったらないですよ! 例えば、アニメ『化物語』シリーズでは、視聴者を飽きさせない為に、あの手この手の手練手管で画面に惹きつけてるじゃないですか(もっとも物語シリーズは、特異な画面作りを持ち味にしてしまっている作品なので、一概には比べられないとも言えますが)。そんな努力がなかなか感じられない。
 
 思い出してくださいよ、あのレストランのシーンや、トァンがインターポールの捜査官と車中にいるシーン。顔のアップ、バストアップ、カメラ引いたロングで俯瞰、2人の周りをカメラグルグル回らせる。そんな少ないカメラワークのパターンだけで持たせようとしてるんですよ。正気か?! ほんとつまんない画面!
 
 同じノイタミナ作品の『PSYCHO-PASS』にも通じるようなディストピアンワールドや百合要素、声優陣の熱演、特にミァハを演じる上田麗奈さんの演技は、何ものにも代えがたい、これぞミァハという憑依っぷりでとても良い。しかし画面にそれを受け止める魅力が無いものだから冷めてきちゃう。冷めてきちゃうと「なんでこいつ薄暗い所でグラサンしてんねん」とか「この床まで透明な素材で出来てる通路、パンツ丸見えやな」とかどーでもいい事ばっかり残酷に見えてきちゃう訳ですよw あ、脳の作りがどうとかリアリティーラインがそこそこ高そうな事言ってるのに、様々な描写でそのラインがあやふやになってるのも気になる。
 
 ま、ともかく画面作りのダメさが面白さをモリモリ削いでる作品だと僕には受け取れました。あとあのラストは原作読んでないとい意味わかんないんでない? EDテーマの美しさが上滑りしてしまった悲しさ。


 
52位:シンデレラ
 荻上チキ氏が「今までのディズニーのお約束をかわした上で提示された、これからの時代の生き方」と評した『アナ雪』。そして『イントゥ・ザ・ウッズ』で古典の解体を行ったディズニー。

 でも本作はごくごく正統派のシンデレラ。特に大きな捻りもなく、「知ってる話じゃん」と正直退屈には感じました。継母役のケイト・ブランシェットヴィランぶりは流石でしたが。真っ赤なルージュで印象的に彩られた唇を、いやらしく歪めてニターリと微笑むあのツラ!

 ただ『アナ雪』日本語版で一躍有名になったフレーズ「ありのまま」が、本作のラスト付近で台詞として、何度か繰り返されるんですよね。『アナ雪』でも『Let it Go』の和訳は、日本向けで随分原語とニュアンスが違うらしいですが、本作の「ありのまま」も『アナ雪』を意識してぶっこまれた訳なんじゃないか? となーんかそういうふうに邪推しちゃって、その辺りでちょっと醒めちゃったんですよね。事実は判んないですけれど。


 
53位:96時間 レクイエム
 アクションが出来ない人をアクションしてるように見せる、例のカット割りが多いチャカチャカした撮り方な上に、アクション自体のボリュームも減ってる感。まぁリーアム・ニーソンもいい歳だしね……。
 
 ニーソンが警察をまく描写は沢山あるので、逃走者が追手を出し抜く描写好きとしてはウキウキできたんだけど、手段に今ひとつ説得力が足りないのでピンとこない。あと刑事役のフォレスト・ウィテカーに「あれ、なんか別の映画でも見たな……。」という既視感をバリバリ覚えるのは僕だけではないでしょうw
 
 
 
54位:イントゥ・ザ・ウッズ
 おとぎ話の登場人物をアッセンブルしては見たものの……。軸をどこに置くかを全く定めておらず、フラフラしたまま終盤になだれ込み、伏線回収も特に成されずそのままEND。なんじゃこりゃ!

 なんでこうも脚本が雑かね! 森が舞台だから絵的にも地味! 後半の特撮オタなら燃える展開もあっさりすぎ! ジョニー・デップの出番なさすぎ!(ギャラの都合?)

 お話の出来はひっどいけれど、役者陣の熱演と歌唱力は流石っすよ。メリル・ストリープには惚れ惚れします。我らがクリス・パインもこんなに歌えるとは思わなかった! あと元々舞台作品な所為か、舞台演劇っぽい画面の使い方は面白かった。
 
 
 
55位:チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密
 残念ながらジョニデ主演作の中では屈指の駄作と言わざるをえません。コメディなのに笑い要素がひたすらお寒い……。いや、役者陣は好演してますが、脚本・演出がダメですね、これ。途中退席しようかと何度も考えました。
 
 笑顔になると美人度三割増し、背中が色っぽいグウィネス・パルトロー(ペッパー・ボッツ!)、久しぶりに顔を見たぞポール・ベタニー(J.A.R.V.I.S!)と、妙にアイアンマン俳優がメインどころに居たという、本編とは関係ない所「しか」楽しめません。今年のワースト!

 
 
 
 
 という訳で、以上が全55作品の順位でした。いやー、なるべく地雷っぽい映画は避けてるつもりなんですがねぇ、後半はクサしまくってしまって申し訳ない。でもそう感じたんだもの。
 今年2016年も、素敵な作品に出会えますように。いやー、映画って、本っ当に、いいものですね!

『PSYCHO-PASS』アクション解説 その2 1期16話 狡噛vsサバット男

 『PSYCHO-PASS』アクション解説、2回目は、TVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、狡噛とサバット男のアクションシーンを解説したいと思います。あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学とお笑いください。
 また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、お教えいただければ幸いです。宜しくお願いします。

 ちなみにこのシーンの敵役を「サバット男」と称しましたが、これは彼が放つ蹴りが、フランス式のキックボクシング・サバットの蹴りに近いものに見えた為、そう呼称しました。後ろ回し蹴りや掛け蹴りが、それらしく見えます。
 サバットは路上での喧嘩を前提にした護身術が発祥なので、靴の硬いつま先や踵を蹴り込むような鋭い蹴りが持ち味の格闘技です。一般的な打撃格闘技で禁止されている関節蹴りが有効なのも大きな特徴です。

www.youtube.com

 まぁこの男がサバットを習得してるなんて設定があるかどうかは、不明ですけれども!(多分無いだろうなぁ)

 

 

 さて、このシーンで行われた殺陣の流れを大まかに示しますと、
①狡噛が階段下より接近、左右のボディ撃ち
サバット男が右回し蹴りで反撃
サバット男が左後ろ回し蹴り
④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き
サバット男の右掛け蹴り
⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ
⑦そのままバックを取ってスープレックス
となります。

 

 

 

 それでは①、狡噛による左右のボディ撃ちシーン。

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  サバット男に向かい、ドミネーターの狙いを付ける狡噛。ヘルメットの機能により、サバット男の正確な犯罪係数を測定できません。

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 役に立たないドミネーターを、咄嗟に投げつける狡噛。それを食らい、ネイルガンを取り落とすサバット男。

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 階段を駆け上がった狡噛が、その勢いのままに左のボディストレートから……

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 右のボディフック! 相手はヘルメットを被っていますので、頭を素手で殴る訳にはいきません。また階段を駆け上がり、自分より高い位置にいる相手を殴りにいく際に、最も攻撃しやすい高さにある腹を殴りに行くのは道理です。初撃を食らいながらも二撃目をブロックしたサバット男もなかなか反応が良い。

 

 

 

サバット男が右回し蹴りで反撃

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 ボディブローをガードしたサバット男は、即座に右回し蹴りを狡噛に叩き込みます。

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 二人の間に、それ程の体格差があるようには見えませんが、体重66kgの狡噛を一気に壁際まで……

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 吹き飛ばす!

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 至近距離で放たれる蹴りは、遠心力を利用し難いので、威力も乗り難いものです。しかし吹き飛ばされた狡噛の驚きの表情を見るに、この蹴りには相当な威力が込められていたのではないでしょうか。サバット男は体重を乗せた、重い蹴りを放つのが上手いですね。

 

 

 

サバット男が左後ろ回し蹴り

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 狡噛を壁際に追い詰めたサバット男。右足を左斜め前に一歩踏み込みます。

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 踏み込んだ右足を軸にして、コンパクトに体を高速回転。その勢いを殺さぬまま、回転力と遠心力を左足に乗せて一気に後ろ回し蹴り!

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 ②でダメージを受けたものの、ここはしっかり相手の蹴りを躱す狡噛。本命の槙島に辿り着くまでに消耗する訳にはいきませんので、相手の蹴りをブロックでするのではなく、躱すという選択を選んだのでしょう。相手の攻撃を捉えている狡噛の目にも注目。

 

 

 

④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き

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 膝を落とし、身をかがめるダッキングで相手の蹴りを回避した狡噛は、その膝を落とす事で出来た「溜め」を用いて……

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 一気に相手まで踏み込み、

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 その勢いのまま、相手のボディめがけ右ストレート。防御の動作を攻撃に繋げた、伸びのある素晴らしい踏み込み突きですが、サバット男にブロックされてしまいした。

 

 

サバット男の右掛け蹴り

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 狡噛は右ストレートに続けて、左でボディーを打ちますがこれも防がれます(絵だと左拳が相手に届いたのかどうか微妙な所なのですが、動きに合わせて殴るSEが付いているので、当たったとします)。と同時に、サバット男が膝を上げたので……

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 反応した狡噛は蹴りを警戒し、追撃せずに防御に回ります。サバット男はそのまま右回し蹴りを出し、その軌道は一旦は狡噛の体の前を通過。蹴りは回避されたように見えますが……

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 一旦は通過した蹴りが狡噛の方に戻り、踵が叩き込まれます。このような蹴りを「掛け蹴り」と言います(※但しそもそもの掛け蹴りは、この場合のように相手の動きに合わせて放たれるものでは無いです。勿論このような事も不可能では無いですが、相手の動きに合わせて蹴りの軌道を変えるのは、素早い反射神経・反応が必要ですし、無理に力が乗るベクトルを変える事になるので蹴りになかなか威力が乗りません。この場合、サバット男がそれらを克服できる腕がある、かなりの強者だと言う事でしょう。)

youtu.be

(1:37辺りより掛け蹴りの解説)

 サバット男が蹴りのインパクトの際に、背中を反らし、重心を落としている事も描かれています。これは背筋の力を使う事で、蹴りに重心を乗せ、攻撃力を高めているのですね。しかし狡噛はこれもきっちりブロック。お互い相手の攻撃が良く見えているのが判ります。

 

 

 

⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ

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(下半身が見えないので推測ですが)⑤ラストの画像のブロック時の態勢(右足が前、左足が後ろのサウスポー構えの状態)から、右足を外に捻りつつ大きく踏み込みはじめます。その右足の踏み込みと同時に自らの態勢を低くし、サバット男の脇を抜けるような勢いで体を前進移動させはじめます(縢も見せたレスリングタックルの動きですね)。

 

 

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  狡噛が態勢を低くしたタックルの動きで回りこんで来たので、ヘルメットを被り視界が狭いサバット男は狡噛を見失います。

 

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 狡噛は右足が着地したら、右足の親指を支点にし、更に外側に捻ります。捻らせると同時に、後ろに残した左足を大きく前に踏み込めば、右足の捻りと回転が聴いて、自然に態勢が反転するので、その勢いのまま相手の後方に左足を着地。これで相手の右サイドを回りこむ形で、相手の背後に移動しました。

 視界の悪い相手が視認しにくい高速でのタックルで近づき、相手の背後につく事で、相手の得意な蹴りを封じました。

 

 

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  相手のバックを取り、体を密着させて両腕をしっかりクラッチ。自分のヘソ辺りに相手を乗っける感じで重心をコントロールしつつ、一気に持ち上げて……

 

 

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 後方に投げきる! 所謂ジャーマン・スープレックの要領ですね。

 

 

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 投げで後頭部を床に叩きつけられたサバット男が失神したように見えます。しかしこれは、彼が硬いヘルメットを被っているが故、頭部は守れたけれども、逆にダメージが首の方に行ってしまい、脊髄を損傷して行動不能になってしまったのではないかと考えます(ヘルメットを装着した、オートバイの交通事故でも同じような負傷をする事があるようです)。

 

 

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 補足すると、狡噛がサバット男を持ち上げた瞬間の上記の絵を見る限りは、このまま体を後方に反らせても余り高い角度をつけて相手を落とす事は出来ないような気もします。絵としては描かれていませんが、投げる勢いがつき始めた辺りで狡噛が手のクラッチを組み直し、より高角度に相手を落とせる投げにしたのかもしれませんね。狡噛はレスリングを修めている設定もありますので、このような投げのテクニックも持っている事でしょう。

 

 

 

 

matsu-009.hatenablog.com

 

『PSYCHO-PASS』アクション解説 その1 1期16話 縢vsネイルガン男

 劇場版の上映も粗方の地方で終了し、ひとまずの区切りがついたアニメ『PSYCHO-PASS』。劇場版では凄まじいまでのアクション描写が大変印象的でしたが、TVシリーズでも凝った殺陣が組まれていました。

 TVアニメのアクションシーンは、「とりあえず殴って・蹴って」に終始するだけになる事が多く、格闘技ファン、アクション映画ファンの目には味気なく映る事もあります。

 しかし、
・制作時間やコストの都合(2人以上の人間を破綻なく絡ませ、動かすのは凄く大変)
・尺の都合
・より描くべきモノ・コトがあり、そちらに注力したい

 

等々の理由もありましょう。なかなかこだわって格闘シーンを作る事も難しいのではないかと思われます。しかし『PSYCHO-PASS』では、アクションシーンの動作それぞれに格闘としての意味を持たせつつ、平行してアクションの格好良さ・面白さも描かれていました。
 
 作品にひとまずの区切りがついた今、改めてその練りこまれたアクションシーンに注目し、それぞれの動作にどういう意味があるのか自分なりの解釈をまとめたいと思い、こうやってブログに書き留めようと思った次第です。

 これから各シーン毎に解説していきたいと思いますが、あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学をお笑いください。
 また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、ご教示いただければ幸いです。宜しくお願いします。

 

 

 

 さて、今回はTVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、縢くんのアクションシーンを解説したいと思います。
 このシーンで行われた、大まかなアクションの流れは、
①下からの突き上げ掌底で敵の手を打ち上げる
②敵に左内回し蹴り
③敵の喉元へ肘を入れる
となります。書き出してみると非常にシンプルですが、この殺陣を読み解いていくと、短いシーンながらも実によく考えられているという事が見えてきます。

 

 

  それでは、上記の①の動きを解説しましょう。

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f:id:matsu_009:20150222212535j:plain  縢の背後から、改造ネイルガン(釘打ち銃)を発射する男。

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 不意打ちを食らった縢は右手に釘を受けるも即座に反応し、間合いを詰めます。狭い通路で隠れる場所も無く、ドミネーターも落としてしまいましたので、相手の懐に飛び込むという縢の判断は正しいと思いますが、瞬時にその判断に従い、動けるというのには彼が潜ってきた修羅場の多さを感じてしまいます。

 

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 間合いを詰める際に態勢を低くし、二発目をかわしつつ接近する縢。

 ネイルガン男にこれがどう映るかというと、
・身長の低い縢が、さらに態勢を低くして一瞬で接近してくる
・自分の手とネイルガンが下方の視認を阻害している
・ヘルメットを被っているのでそもそも視界が狭い

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 以上のような条件が重なって、ネイルガン男の視界からは縢が一瞬消えた事でしょう。

 

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 ネイルガン男の死角に入った縢は、左足の踏み込みから体を跳ね上げ、下から一気に突き上げる掌底を男の手に。これでネイルガンの照準を逸し、尚且つ相手の腹部をがら空きにします。

 

 

 

  続いて②、縢による左内回し蹴り。

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 間合いを詰めた縢は、さらに右足を踏み込ませ、左足を内側に振り上げます。右足を踏み込む事により、次の左足の振り上げに勢いがつける事ができます。振り上げた左足をその勢いのまま回し蹴り込む事により、充分に遠心力と体重の乗った威力のある蹴りが繰り出せる訳です。

 

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 相手のがら空きの腹部をめがけ一気に蹴り込みます。体格の劣る縢は、その差を補う為に威力のある攻撃で短期決戦で勝負を決めたい。故に手技より威力のある足技、その中でも威力のある回し蹴りを使いたい所ですが、狭い通路での戦いなので、外回し蹴りを放つと蹴り足が手すりにぶつかってしまい放てない。よって、コンパクトな軌道で相手を攻撃できる内回し蹴りを放った訳ですね。

 

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ちなみに回し蹴りの内と外の違いは主に上記の通りです。

 

 

 

 最後に③、とどめの喉元への肘打ち。

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 蹴りによって手すりに叩きつけられたネイルガン男が体勢を整える前に、すかさず取り付く縢。男がネイルガンを持つ手を降ろさないように、縢がその手を押さえつけるのですが、その際に相手との間合いを更に詰め、下からガンの持ち手を押し上げる状態になります。これによりネイルガン男の腋が開ききってしまうのですが、この状態になってしまうと、人体の構造上大変力を入れにくくなるので、ネイルガン男は腕を降ろせません。

 

 

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 ネイルガン男の背面には、男の腰の部分の高さに手すりがあります。この状態で縢が男を後ろに押し込むと、手すりの部分が支点になり、男の体が反ります。

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 体が反ると、男の首も後ろに反ってしまいます。ヘルメットで守られていた首ががら空きになったその刹那、肘を下からかち上げるように一撃! 筋肉が薄く、重要な器官が多数ある首は人体の大きな急所ですし、そこに勢いをつけた硬い肘を打つというのは、体の小さい縢でも一撃で相手を無力化させる事ができる危険な攻撃です。急所を容赦なく攻撃し、少ない手数で相手を制するその動きからは、彼の非情さが見て取れます。縢秀星、恐るべし。

 

 

 

 と、まず1シーンのアクションについてまとめてみましたが如何でしょうか? 読み手に判りやすいよう説明の文章を書くって難しいですね……。乱文ご容赦ください。

熱文字第102回 男性声優ドラフト 恋愛シュミレーションゲーム編に勝手に参加してみた件


102 熱量と文字数 【男性声優ドラフト 恋愛シュミレーションゲーム編】: 『熱量と文字数』 オタク芸人 サンキュータツオ Presents

 

 

 ネットラジオ『熱量と文字数』第102回において、恋愛シミュレーションゲーム(乙女ゲー)を作るにおいて、そのゲームのコンセプトに基づいて5人の男性声優を指名し獲得し合うという声優ドラフトの様子が放送されました。

 それに後追いではありますが勝手に参加してみようと思いたち、実際にドラフトしてみた結果をこの場に記しておきます。

 

 

◆レギュレーション

ラジオを聞きながらの参加という後追いなので、

  • できるだけライブに近付けるように、ラジオを聞きながら同時進行で指名する。
  • 出演者と同順位において、指名声優が被った場合、出演者に権利がある(獲得できない)。
  • 後に出演者が指名する声優を、その指名順位より早く指名した場合、こちらに権利がある(獲得できる)。

というレギュレーションでやっております。

 

 

◆各出演者が指名した声優と、制作したい乙女ゲーのコンセプト

※指名順に声優名を並べてあります。出演者含め、敬称略。

タツオ:櫻井孝宏杉田智和宮野真守石田彰石塚運昇

 役満みたいなメンツで贅沢に。研究室、あるいは会社のイメージ。みんな理系であって欲しい。歌は宮野さんに歌ってもらう。なんだったら『銀色のコルダ』みたいな音楽ものでも。

国 井:梶裕貴森川智之福山潤小野大輔平田広明

 ヒロイン含む女の子2人が卒業旅行先の中南米で誘拐され、それをスペシャリストの男性陣が奪還に向かうというシリアスドラマ。イメージキーワード「勘違いするなよ、慣れ合う気はない」。丁寧な物言いの裏に何かある事を匂わせて欲しい。

松 崎:諏訪部順一神谷浩史井上和彦森田成一藤原啓治

 社会人もので全員スーツを着ている。発売記念イベントには声優さんにスーツ着用で出演してもらう。

関 口:中村悠一鳥海浩輔逢坂良太緑川光平川大輔

 ベタな学園物。ヒロインは高校二年。中村さん、鳥海さんが同級生、逢坂さんはバカな後輩。平川さんはヘタレキャラ。制服はブレザー系。

れんげ:下野紘遊佐浩二吉野裕行岸尾だいすけ若本規夫

 自己中B型男子に振り回されたい。演じる声優も全てB型で統一したい。

 

 

◆筆者が制作したいゲームのコンセプト

 王子ゲー。

 ひょんな事から某国の姫として迎えられたヒロインは、色々な国の王子から言い寄られたりして……。という、エロゲーのやりすぎみたいなコンセプトなので、声にどこか高貴な雰囲気は欲しいよね、とかなんとか適当に。

 

 

◆筆者が指名した声優

第一指名:宮野真守

 タツオさんの三位指名とかぶりますが、一位で取らせて頂きました。王子、というと僕はこの方の声を一番に想像するんです。ストレートに格好良い王子も良し、チャラい王子もよし、なんでもお願いできるぞ。

第二指名:三木眞一郎

 低音めの魅力的な声が欲しかったんですよね。剛までいかない硬めのセクシーな声が素敵。

第三指名:平川大輔

 これまた関口さんの五位指名と被り。レゴラスやロキとデカい王子役の実績があるしねw ロキっぽい感じの、ちょいナルシスティックだけどどこかヘタレで抜けてるとかそういう王子の役どころかしら。

第四指名:山口和臣

 梶さんや下野さんを獲得して、マスコット的な可愛らしい王子キャラをやって欲しかったのですが、先に指名されてしまったので彼を指名しました。『げんしけん 二代目』の波戸賢二郎の男の時の声や、2015年1月開始アニメだと『美男高校地球防衛部LOVE!』で、可愛らしい天然キャラの箱根有基を演じられるんですよね。これだ、これだよ!

第五指名:緒方恵美

 男性声優ドラフトっつってんだろ! オチを狙っただろとツッコまれたら否定はできない! だけどちゃうねん、理由があるねん! 王子様と見せかけて実は…という百合エンドが見たいねん! 緒方恵美さんといえば「男八段」の異名を持つ方であるというのも忘れてはならない。他に男も女も演じられる女性声優はあまたいるけれど、段持ちなのはこの方だけですよ! 段持ちじゃぁ男性声優ドラフト参戦も仕方ない(多分)。

 

 

 というような指名結果になりました。中村悠一さんは僕も欲しかったんだけど、』取られてしまった! 中村さんは凛々しエロいんですよ声が。

いかん、自分で選んでてこのゲームやりたくなってきたぞ! この手の企画はちゃんと皆でワイワイ騒いでやってみたいやつですなぁ。

 

 

 

 

かくて結城友奈たちは勇者となった

 『結城友奈は勇者である』、全話観了! 薄々、「こういう事なのかな?」とは思っていましたが、やはり「ウテナもの」でした! 大好き!

 「ウテナもの」とは名作『少女革命ウテナ』に感銘を受けた僕が、勝手にそう呼称している物語の分類の一つです。これから大人の庇護の下から巣立っていかんとする若者に、エールを送る物語。世の中というものはウテナで描かれた近親相姦などのおぞましきものや、ゆゆゆで描かれた抗えぬ理不尽よりも、もっとおぞましく、理不尽で、残酷で……。不景気で明るいニュースが聞こえてこない、先の見えない日本。今やこれが無いと始まらない、もう一つの「世界」、ネットの中にまで悪意は満ち満ちている。 それでも! ……それでも、歩いていこうよ、外に出ようよ。辛い時は友と肩を並べて歩こう。迷わず行けよ行けば判るさ!  

 これです、こういうやつが僕の言う「ウテナもの」です! ラスト手前の学芸会の劇の台詞で、その事が示されておりますね。

 

魔王
「結局、世界は嫌な事だらけだろう!

 つらい事だらけだろう!

 お前も、見て見ぬ振りをして堕落してしまうがいい!

 あがくな! 現実の冷たさに凍えろ!!」

勇者
「そんなの気持ちの持ちようだ!

 大切だと思えば友達になれる!
 互いを思えば、何倍でも強くなれる! 無限に根性が湧いてくる!
 世界には嫌なことも、悲しいことも、

 自分だけではどうにもならないこともたくさんある。
 だけど、大好きな人がいれば、くじけるわけがない。あきらめるわけがない。
 大好きな人がいるのだから、何度でも立ち上がる!
 だから、勇者は絶対、負けないんだ!」

 

 (この台詞は、友奈が目覚める前の東郷さんの朗読とも合わせて噛み締めたいのですが、長くなるので割愛。各自調査!)

 

 これまでの回や最終話のAパートまででも、このメッセージは物語の中で示されてはいますが、この劇のシーンでより明確に、印象的に視聴者に訴えられます。これは製作者たちの願いであり、あるいは信じたい事であり、あるいは実体験であり、そして何より僕ら視聴者へのエールでありましょう。ラストの「明日の勇者へ」という言葉は、モニターの前で見ている僕らへ投げかけられているんだ! 明日のエースはキミだ! 勇者部五つの誓い、もとい五箇条を胸に前へ進め!

 

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  勇者部の皆が、真っ直ぐな好人物だったのが良かった。真っ直ぐな諦め無さに、僕らは好感を持ち、励ましたく、応援したくなり、そのド正面ストレートの訴えを素直に受け止めたくなる。

 その訴えを受け止めた視聴者僕らが、勿論いきなりあんな大事を成し遂げる大勇者になれる訳では無いと思います。でも明日、飛び込みの営業を1件増やせるかもしれない。腕立て伏せを3回増やせるかもしれない。今まで恥ずかしくて出来なかった電車で席を譲る事ができるかもしれない。そんな小さな勇気への後押しになってくれたら……。それは小さいかもしれませんが、なんとも尊い連鎖ではありませんか。

 ある孤独な闇の騎士がこう言いましたよね。「誰でもヒーローになれる。少年の肩にコートをかけるという思いやりを示すことで、世界が終わったわけじゃないと教えてくれた人もまたヒーローだ。」 さぁ、今度は僕達の番だ。勇者は連鎖する! 明日の、勇者へ!

 

2014年見た映画ランキング

 明けてだいぶ経ってしまいましたが……新年あけましておめでとうございます。

 

 さて、昨年は「劇場で50本(1週間に1本の割合)映画を見よう。」と目標を立て、結果60本の作品を鑑賞しました。

 それらについて自分の記録も兼ね、2014年に見た映画のランキングと寸評をつけてみようと思います。

 

以下注意書き

・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。

・このランキングは「大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけているので、いざ作品を見返すと順位が上下したりするやもしれません。その程度の、にわか者がつけた大雑把なランキングであるという事をご承知ください。

・鑑賞した59本の内、『もらとりあむタマ子』『ゼロ・グラビティ』『ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版』の3本は、公開開始日時が昨年より前のものなので、ランキングからは除外しています。

寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。

 

 

 

 


 
1位:ゴジラ
 2014年の1位はこれ! だってゴジラという存在を物理的にあんなにデカく、怖く感じさせてくれたものですもの。所謂5億点!
 巨大な津波を起こし、それに人間を巻き込ませつつ、ハワイに上陸、照明弾に映し出されるゴジラの巨躯! 身長が高すぎて、打ち上げた照明弾の光が届かず顔が見えない! ここはまだ主役の顔は見せないという、なんという「溜め」のシーンか!
 そして遠景にムートーを望みながら、空港ビル近くにインしてくるゴジラの足! デカい、デカすぎる! そしてついにその全貌を表す圧倒的なビジュアルに、僕は文字通り、誇張なくホントに口アングリ。もう笑うしかないな、と劇場で乾いた息笑いを漏らすばかりでした。
 ゴジラが余り活躍しない、とも言われる本作ですが、M気質の僕には良い焦らしプレイでした。そしていざ現れたら今までのゴジラよりもスゴイですもの。こんなの初めてぇ~! イくイくイくイくイく~っ! と、僕の心はギャレゴジ(と書いて女王様と読む)に屈服してしまったのです。最高! パンフレットより、SFイラストイレーターのボブ・エグルトン氏の言葉を引用しましょうか。「『なかなかゴジラが出てこない』と言ってる人はどこを見てたんだ? ヤツは映画全体を支配してたじゃないか。」!
 

2位:LEGOムービー
 レゴファン誰もが夢想したような、登場人物や背景から小道具に至るまで、レゴで全てが表現されている(劇中に出てくるものは全てレゴブロックで再現できる!)という点でもまさに「レゴ」の映画なのですが、入れ子構造で視点を変えて、今まで出てきたレゴたちを組んだ人間達の物語をも描き、最終的にそれをリンクさせているという意味でも「レゴ」の映画という凄まじい作品。よぉ考えつきますわなぁ!
 「レゴの映画だから子供向けなんでしょ?」 ……とんでもない! レゴに、そして所謂「子供のもの」とされるあらゆるモノ・コトにハマり、そして今もハマり続けているオタクなら必見の作品なのでありました。そして本作で語られてる事は、レゴという会社が掲げる理念と完全に通じてるんだよね 。
 どうよこの隙の無さ! 流石フィル・ロード&クリストファー・ミラーだぜ! それ以外でも、レゴブロックとして製品化されてるものが出まくるので、DCヒーローや映画、世界の偉人等々、レゴならではの夢の顔合わせが成されているのも評価したい!
 あと個人的な事になるのだけれど、僕が小学生に上がる前の子供の頃、スペースシャトルの有人飛行が成功して、それでレゴでもスペースシャトルのブロックが出たんだよね。買って貰えなくて、只々おもちゃ屋で眺めるだけの幼き日々だったのだけれど、本作でその製品に付属してた宇宙飛行士の彼と再開した時は、全然泣けるポイントでもないのに、そういう個人的事情でダバァと泣かされてた。こんな経験ができるのもレゴの歴史の賜物ですなぁ。さらに個人的な思いを言うと、吹替だと俺達の沢城みゆきさんの様々な声が堪能できるので、ファンはずーーーっとエレクトしてられますぞ。
 

3位:キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
 現時点でのMCU映画の最高峰だと思います。かつて自由と正義を体現した男が、現代の混沌とした灰色の正義に迫るアクションサスペンス! どこが凄いってもう全部凄いよとしか言いようが無いのですが、そんな目一杯詰め込んだ中でも、単なるアベンジャーズ2までのブリッジに留まらず、ちゃんと一人のヒーローとしての掘り下げを行ってくれたのは、(特にMCUの)キャプテン・アメリカファンとしては嬉しかったですね。キャップを吹き替えで演じる中村悠一さんの誠実な演技もとても素敵です。
 
 良いSFを見た! というのが一番の感想。
 小難しいワードもちょいちょい出てきますが、『ドラえもん』のような仕掛け、『トップをねらえ!』1と2のような「想いは時間を超える」という展開は僕らアニメオタクの文脈でもあります故。
 冒頭から積み上げられた謎やちょっとした台詞や行動からの伏線が、終盤で見事に・美しく収束していく様は見事! 俺も超重力の影響を受けて地球上の時間の流れと違う時間にいたかのような、アッという間の3時間でした! あとやっぱりTARSくんかわゆい。早くリボルテックとかで可変するフィギュアを出し給えよ!
 

5位:イントゥ・ザ・ストーム
 夏映画の思わぬ伏兵でした! 襲い来る竜巻・嵐! 立ち向かう人間の勇気と絆の讃歌!
 関係の上手く行かない親子! YOUTUBEに面白映像をUPして有名になろうとするボンクラ! そしてハイテクの気象観測装置や24台の監視カメラに5トンの重さに耐えるウィンチ、防弾ガラスや鋼の装甲を持ち、4本のアームから杭を打ち込み、風速75mにも耐える秘密兵器「アウトリガー」を備えた究極の対竜巻マシン『タイタス』を狩り、脅威の映像を撮影して一攫千金を狙うストームチェイサー! それぞれが構えたカメラのPOV視点に、客観視点を交えながら大自然の猛威を捉えてくれます。 
 89分という短さの中でも、張られた伏線はきっちり回収、ダレ場もないので、我々観客はどんどん前代未聞の気象パニックの最中に巻き込まれていきます。ディザスター映画のお手本ですヨこれ!
 

6位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
 個性豊かな面々がその個性を存分に活かしたアクションと、漫才みたいな掛け合いをガンガンかましてくれるので、なんとも楽しいです。絶体絶命の時にあんな事するヒーローいるか?!
 笑い、泣き、そして細かくマーベル世界の設定も拾い散々楽しませてくれた後に、最後にこの作品・このキャラならではって形でお話を纏めちゃうだよなぁ。ほんと隙が無い。
 ただ音楽については色んな所で褒められてるけれど、あれらの音楽は僕よりも上の世代の人の音楽なので、ガッツリ乗り切れてるかというとそこまででもないのよね。世代問題なので作品の所為では無いのですが、ちょっと俺さんよ勿体なかったぞと。
 
 はて「マーケット」ではなく「ラブストーリー」とはと、TV版を見ていた人なら誰もが思うであろうタイトルですが、一組の男女が思いを伝え合うというミニマムなドラマ一点に殆どのフォーカスを絞ったラブストーリーとしか言いようのない物語で、終わってみれば成る程これはと。
 『けいおん!』劇場版よりも、より「若者がいよいよ意識する、過ぎ去り流れていく時間」を描いています。TV版の片翼とも言える程の存在であるデラちゃんを、あえて物語から退けたのは正解でしょう。ファンタジーはあの空気の夾雑物になってしまう気がしますね。親子や男女の心の繋がりという、『けいおん!』では描かれなかった事も、TV版よりより深く描かれ、『けいおん!』に囚われず・留まらず、どんどん先に進もう・描こうという、製作陣の気概なんてのも見て取れて嬉しかったです。
 各キャラクターの揺れ動く心情を、時に繊細に、時にダイナミックに、実に丁寧に描いています。まさしく実写の恋愛ドラマのようではあるのですが、各キャラの嫌味無きピュアさ、これは実写だと嘘になってしまうかもしれない。アニメだからこそのキャラ造形かもですね。
 アニメだからこそといえば、告白を受けた後、混乱したままに商店街を走り抜けるたまこに見える世界を、三人称視点で観るシーン。あれは彼女の混乱した心中を、なんとも抽象的に、なんとも美しく描いているだけでなく、なんだかこのように世界が見えてしまう事に共感や納得、既視感さえ覚えさせてしまう、まさにザ・アニメ!な名シーンでしたね。
 伝えたい・伝わらない・答えのこない思いと、そしていよいよ伝わる思いを、バトンと糸電話というアイテムを上手く象徴として機能させて、クライマックスに繋げていくのも上手いなぁと唸るばかり。TV版とは明らかに空気が違いながらも、されど間違いなくファンが納得するお話という、TV版後を描く劇場版の最上級の答えの一つだったと思いました。
 

8位:THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ
 これもTVシリーズのその後を描く劇場版。僕ごときにわかが何をか言わんやですが…… 海の物とも山の物ともつかぬ新機軸のアーケードゲームに、ほぼ無名の役者陣が声を当てて始まったアイマス。人気を得て大きな存在となり、アイマス以外での活動の場も増えていきます。これは本作中の成長した765プロアイドル達の姿にも重なるのですね。これはアイマスへ、そして役者陣への思い入れが深い人にこその映画だなぁと。春香がアリーナの舞台で語るシーンは、そんな歴史の重さを感じてぐっと来ました。メタ的な読み解きもできるアイドル映画ですよ。
 春香が可奈を切らない所に甘さを感じる人はいるのだろうなと思います。ただ伊織が「春香はプロとしては甘い。でもスジは通す。」と語っていたように、やはりその甘さこそが天海春香という人間でありましょうし、甘さ転じて懐の深さを持っているからこそ、キャラクター皆がヒロインたるアイマスの中で、彼女がセンター的役割を担うのだろうし、765プロの皆も、アニメ制作スタッフも、そして僕や全国のプロデューサーも「託せる」のではないのかな、とも思います。理想論かしら……。
 そういう重要な役どころを担った春香役の中村繪里子さんは、ほんと繊細な演技をなさってて、こんなに豊かなお芝居ができる方なんだ! と今更ながら思い知りました。中の人にも「座長」感あった! 美希役の長谷川明子さんも、何考えてるのかわからない猫的な美希の思わせぶりな台詞を、思わせぶりなんだけど、それでもちゃんとその芯の部分のニュアンスがちゃんと読み取れる演技をなさってて(女子トイレでの春香との会話ね、最高!)これまた痺れた!
 クライマックスのライブシーン、のアリーナのCGがショボかったのは残念。BDで修正されたとも聞きましたが、大画面でアレはちょっと厳しかったなぁ。
 
 絵も設定も芝居も隙なし。僕らが見たいものを、僕らが思い描いたハードルを超えて三時間たっぷり見せてくれて大満足。
 過去幾多も語られたドラゴンスレイヤーの英雄譚なんてウソだぁと絶望するくらいに、邪龍スマウグの圧倒的すぎる格を見せつけてくれたのも嬉しい。燃え落ちる故郷のさまを切々と歌うエンディングテーマ『I See Fire』が泣ける泣ける。
 

10位:ホドロフスキーのDUNE
 ホドロフスキーの作品は不勉強ながら1作も観ていないのですが、劇中で流れる数シーンを観るだけでも、異様で異常な個性がギラギラと輝くなんだか妖しげなものなのが判ります。今や80歳を超える監督は、実に活気溢れる語り口で当時を物語ってくれるのですが、山っ気と無邪気さが同居しているような、これもなんとも不思議に魅力的なものなのですね。
 その情熱と人間性が、彼にツキをもたらすのか、人間力として作用されるのか、今や映画やアートの世界で偉人となっている、DUNEの制作当時から才能ある人間(作中では魂の戦士と呼ばれる)たちを次々と口説き落とし、ツモっていく様はなんとも痛快です。しかし同時に「上映時間を90分にしろだなんて、とても切れないよ。12時間は欲しい。いや20時間でも!」と熱っぽく語る彼を観るに、ああ、「傑作を生むには狂気の欠片が必要だ。」という言葉は真実だけれど、その狂気ゆえに、天才たちの才能を信じきれない・ついていけない人たちは多いのだろうし、だからこそこの『DUNE』は完成しなかったのだなぁ、とも思いました。
 情けないごく個人的な話ですが、僕はもう特に夢や野望の無い人間でしてね。淡々と日常を過ごすばかりなのですが、本作を見てそれが凄く悔しくなったのだけは、恥ずかしながら白状しておきます。
 

11位:ベイマックス
 マーベルの『BIG HERO 6』を換骨奪胎した本作。「優しさ」「泣ける」を押し出した日本での宣伝の切り口に疑問を呈する声もありましたが、いざ観てみれば、それも正しい、マーベルスーパーヒーローものとしても正しいという。
 ディズニーやピクサーには、週一で監督たちが集って、各作品の脚本を徹底的に叩いて練るというシステムがあるらしいですが、その成果物の隙の無さ、まとめ力、全方位目配せ力。ここまで組み上げる職人芸恐るべしですよ。
 

12位:思い出のマーニー
 どこかミステリー仕立てで語られる物語は、いよいよ最後に杏奈の苦悩とマーニーの謎に一本の道筋が出来、集束する。あっ、あの台詞や所作に感じたちょっとした違和感はこれか! いやー、お見事! なんて優しく美しいお話! 鈴木敏夫プロデューサーは「少年と少女の話だと宮さんが口出ししてくるから、少女と少女のお話にした。」と嘯いておりましたが、成る程、宮崎・高畑さんの空気と違った世界だよなぁこれ。まんまとやられました!
 
 ヒーローとは、という根源への問いかけがなされ(コミックじゃないんだ、という台詞の重さ!)、やがてヒーローとなる男女のお話。前作のようなライト感も残ってはいるけれど、ダークナイトのようにハードでもあった! ラスト、バイクを駆り走り行くヒットガールの姿はまさにまさに…!
 ただ、お話の構造として、キック・アス編、ヒットガール編、マザーファッカー編と3人それぞれのパートが結末に集束していくような流れなので、散漫だったり、詰め込んでる感があるのは否めない。自分探しが暗くなりすぎず嫌味じゃないのは◎。
 クロエちゃんって猿顔ぎみで、ストレートな美人顔というよりは愛嬌美人顔だと思うんですけれど(写真や作品ごとでその割合が変わりますが……)、それがあのヒットガールという強烈すぎるキャラのいい「抜き」になってると思うんですよね。1でもやってた、あの左口の端をちょっと上げて、はにかむような笑いの愛らしさったら!単なるクール系美少女ではこうはいくまい。
 
 前回以上に、ヒーローに付いて回る「選ばれし者の祝福と呪い」が描かれていて満足です。勿論これは他のアメコミヒーロー映画でも描かれているのですが、大企業の社長でも、神でも、特殊なエージェントでもない、普段は地に足のついた生活を送っている一人の青年、ピーター・パーカーだからこそ、より共感できたり、より感慨深く思えるというか。
 そういう「掘り下げ」のドラマパートが多いので、尺の割にはアクションやや少なめ? この辺は賛否あると思いますが、『アイアンマン3』同様、一人の人間/ヒーローを描く為に必要なものだと思います。どっちも半端になるよりは、この方がいいのではと思いました。
 ハリー役のデイン・デハーンはやっぱり良いっすね! 相変わらず憂いを帯びたり、負の感情に囚われた時の表情が抜群!
 

15位:X-MEN フューチャー&パスト
 今までのシリーズを総括するような作品。余計な説明無しでドンドン進んでくので、ファイナルディシジョンでのあれやこれはさっさと無視されてましたねw 思い返せば、正直もう少し説明あった方が……とか、あれっ?と思う所も無くはないですけれど、ダラダラされるよりは潔くて良いかな。
 過去と未来が交錯して描かれるのですが、ファーストジェネレーション組の描写は濃いし、X-MEN組のその後も確認できる。狂言回し役のウルヴァリンも、全シリーズ皆勤賞ならではの活かされ方。今まで見てきた者にとっては実に感慨深く、嬉しい事ですよ。
 クレジット後のおまけ映像には、古代エジプトで強大な力を放ちピラミッドを組む異能力者と4人の騎士が姿が! アベンジャーズがvsサノスなら、こちらはvsアポカリプスとは、やぁ、夢が広がりすぎる強大な敵だ!
 
 オリジナル版はドギツイ描写も多かったですし、本作監督のジョゼ・パジーリャもハードな作風に定評のある方ですが、今回はレーティングの都合もありましょう、その辺は控えめ、オリジナルよりも人間ドラマ、警察ドラマにより針を振っていました。ですが、それはそれで良い風に転がったというか。
 今回のロボコップは素顔が見えるのが基本で、戦闘時のみバイザーを降ろして戦うのですが、このアイディアが素晴らしい。バイザー有り無しで絵にメリハリが付きますし、何よりロボコップに表情の演技がつけられるので、人間ドラマに深みがでました。
 また今回は右手が生身なのですが、その理由付けが、「銃の最終的な照準微調整は本人が行う為、細かい動きが必要」、「マニピュレーターは感情によって時に精密に動きにくい」など、技術的なアプローチでもって為されています。しかしそれだけではなく、生身と機械のどちらの手を使うか、マーフィーは相手とシチュエーション毎に判断して使い分けてるのですよね。ちゃんとデザインをドラマに絡ませてくる。上手い描写だと思いました。前作のマーフィーが、自分をロボコップと呼ばせるか、マーフィーと呼ばせるか使い分けていたようでもありますし。
 メタルギアソリッド4攻殻機動隊(SAC)っぽい描写がちょいちょいあって、その辺もアニメ&ゲームオタク的に興味深かったっす。
 

17位:ポンペイ
 歴史ラブロマンスであり、剣闘アクションであり、ディザスターでもある幕の内弁当映画。アリーナで行われる剣闘は、『グラディエーター』『スパルタカス』などでもたっぷり描かれましたが、「あっ、まだまだあんなやこんな剣闘の見せ方が出来るんや!」と何度も気づかせてくれるくらい、色んな手練手管を使って楽しませてくれました。
 またそれは、クライマックスの火山の大噴火シーンも同じで、ポンペイの街を過剰なまでにあの手この手で破壊し尽くしてくれるので、当時の人々だけでなく、観てるこっちにも「この世の終わり」をちゃんと感じさせてくれるのがよろしい。それだけでなく、恋人同士が抱き合ったまま炎に飲まれ灰になるという、ポンペイが舞台になった作品ならではの、悠久の時に思いを馳せてしまう〆も気が効いてます(あんな様子で抱き合った親子や男女の灰になった姿が、実際ポンペイでかなり原型をとどめて発掘されてるそうです)。
 主人公・マイロの剣闘アクションですが、二刀流と武器奪取を効果的に用いており、ちゃんと何がしかの刀法を修めている感ビンビンなのですよね。実に様になった格好いいものでした。また騎馬民族最後の末裔という出自が最初から最後までドラマに活かされてるのも心憎いです。“ダメな方のアンダーソン”なんて揶揄される事もあるポール・W・S・アンダーソン監督ですが、どうしてどうして!
 

18位:スノーピアサー
 ディストピアテイストと ハッタリきいた絵面というハリウッド映画で何度も見た光景に、ジメッとしたバイオレンス描写、光と影を効果的に使った絵作り、そして何よりあのパワフルで カオティックな感覚という韓国映画イズムをプラスするという離れ業をポン・ジュノが見せてくれました。
 正直、後半の失速は否めないし、回収してない伏線もあるけれど、褒めたい所がいっぱいあって満足満足。
 

19位:
 元々原作がゲームから着想を得ているというこの作品、世界設定からは『ガンパレードマーチ』を想起しますが、作中でトムが何度も死んでパターンを覚え、攻略法 を図にして検討し、助っ人にも助けられ奮闘する様は、『ゲームセンターCX』の有野課長がアクションゲームに挑む時のようでもあり。挑戦と挫折、そしてそれを超えた所にある達成感という描かれ方はまさにまさに。
 ループものらしく何度も繰り返される描写も小気味よく見せて、ダレずに最後まで駆け抜けてくれますし、中々の秀作ではないでしょうか。期待以上でした!
  ラスボス倒したのになんでトムがループするんだよぉ、という意見を散見しましたが、ループについてはラスボスがする/しないを決めてるのではなくて、あの体液さえあれば勝手にループするんだと。でラスボスとトムが相打ちになったけれど、ラスボスが完全に死ぬ前にループが作動して戻ったと、そういう単純な話として飲み込めばいいんじゃないかなぁと思いました(僕は観ててそういうもんだと読み取ったので、特に疑問には思いませんでした。)
 

20位:ゴーン・ガール
 二転三転するサスペンスについて色んな捉え方する人がいて面白い作品ですよね。僕は「とても滑稽だけれど、笑えないよ!」派ですw デヴィット・フィンチャーは、観客に何がしか刺してくるから恐ろしい。「That's marriage.」はコクの深すぎる名セリフ。僕はまだ独身なのですが、結婚予定のある者、既婚者、あるいは離婚経験者は何を思ったか……。
 フィンチャー作品常連の音楽担当、トレント・レズナーによる、何気ない、されど確実に終始不穏な音楽は、これぞ劇伴といった所でしょうか。
 

21位:テロ,ライブ
 ほぼ全編、ラジオのスタジオブースでお話が展開されるシチュエーションサスペンス。余計な説明も無く、スパッと本筋が開始される気持ち良い潔さ。良い掴み!
  功名心から聴収率(視聴率)を稼ごうとした主人公が、犯人との駆け引きや、より大きな「汚さ」の前にどんどんドツボにハマっていき…というストーリーは、 中だるみも無く、最後まで引っ張ってくれます。やや無理もあるかなとは思いますが、ここまではっちゃけてくれりゃドンマイでしょう。まさかあんな大事になろうとは!
 CGもハリウッド級では無いにせよ、効果的なポイントのみ派手に見せて、かなり頑張ってたと思います。日本と同じアジア圏の作品なので、つい比べてしまうのですが、邦画じゃここまで突っ込んだ表現、そしてこんな大胆な二転三転はできないだろうなぁ……! 面白かった!
 

22位:her/世界でひとつの彼女
 恋愛とは、あるいはそもそも他人と関わるという事、他人と関わりたいという欲求とは。そしてそれらは僕らが生活していく上で切っても切れない、モノ・コトですが、ではさて、生きるとは? 僕ももう三十路も半ばですが、これ位生きてると思い当たる事しきり。痛い!
  真面目な話、アニメキャラに想いを馳せたり、『どこでもいっしょ』『ラブプラス』をプレイしたりするようなオタク、90年代のオタク受難時代に隠れて活動し、「一般人」と関わるのが怖い、「一般人」にコンプレックスを持つようなオタクが観るべき作品だと思います。「えぐる」作品ですが、それでも見終わった 後に、他者と繋がる事とその経験の素晴らしさを再確認しました。癖のある秀作!
 

23位:ホビット 決戦のゆくえ
 元々原作の五軍の戦いもひたすら戦うだけお話なのですが、本作でも延々バトルが続く感じ。バトル自体のクオリティは高いのですが、正直もうちょっとグッとさせる男泣きポイントが欲しかった……。前作で圧倒的な力を見せたスマウグも、あっさり片付いてしまったのも拍子抜け。大胆に脚色して、五軍の戦いに乱入してくるくらい しても良かったか、と無責任な立場では思ったりもする訳ですよ。
 とはいえ、描かれる世界の緻密さ、LOTRへの補完等々、ファンなら見応えがあるシーンも多いし、LOTRの冒頭に繋がるラストを見せられると、今まで見届けてきた歴史物語にピリオドが打たれたという感慨、ようやく物語が繋がった達成感もひとしお。
 アーケン石のその後とか、描かれてしかるべき事がポツポツ抜けてたりするので、エクステンデッド版に期待かなぁ。
 
 
24位:獣電戦隊キョウリュウジャーvs特命戦隊ゴーバスターズ 恐竜大決戦 さらば永遠の友よ
  我らが坂本浩一が、初めて監督するスーパー戦隊映画。足し算で見せていくマシマシ物語に、その上助っ人戦隊や次回作の戦隊の活躍まで盛り込んでも破綻が少ないのは流石。特に次回作戦隊を、おまけ的に物語の最後に登場させたのが上手い。今までの映画ではそれにさしかかると、物語の流れが完全に 止まってしまい、なんなら夾雑物の感すらあったのだけれど、このやり方ならまったく邪魔にならない。
 

25位:イン・ザ・ヒーロー
 東映アクションクラブ出身である唐沢寿明の役者人生のifであり、劇団東京都鈴木区の舞台 『ヒーロー・ア・ゴーゴー』であり、ミッキー・ロークの『レスラー』であり、日本でアクション俳優を志す者の哀歌であり、応援歌であり。首の故障を抱え、アクション俳優業界を取り巻く厳しい現状の中 「オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ!」と気を吐きもがき格闘する様には、唐沢寿明氏が単なる演技を超えた自らの思いを演技に乗せていたのでは、と感じました。それ位、主人公の本城と唐沢氏がかなりイコールに見えます。
 ただし……これを求めるのも難しい事なのだろうな、とは判っていますが、あえて厳しい事を言うと。クライマックスのアクションシーンは、「アメリカ進出を心底望む一ノ瀬リョウがなんとしても掴みたいチャンス」であり、「本城が何目も置く、アクション作品で名を売ってるメジャー監督が撮るハリウッド大作、そのアクションシーン」な訳ですよ。なのに全くそう見えない! セットにせよ、見せ方にせよ、せいぜい『イン・ザ・ヒーロー』程度(あえてこう書く) の邦画のアクションシーンにしか見えない(この手の指摘、この後にランキングさせてる邦画でも何度かしてます。今の日本ではしょうがない事なのでしょうが)。

 また本作の公開と同時期に『るろうに剣心』が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。アクション俳優の話なのに、アクションの見せ場が色んな所に負けちゃってるんです。キャストの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。

 このアクションシーンが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 勿体無いなぁ。

 

26位:RUSH ラッシュ/プライドと友情
 自由奔放・快楽主義者の野生児と、真面目一筋、コンピューター人間という対照的な二人のドラマと奇妙な友情を描いたレース映画。職業ものとしても興味深かったですなぁー。あ、僕は断然リスクを避けるニキ・ラウダ派です。もうおっさんですのでw
 

27位:ローン・サバイバー
 ピーター・バーグ監督が『バトルシップ』の次に作ったとは思えない程に、リアルに寄って描かれた極限の戦闘シーンは驚き。一部では干されたとの噂もある、『バトルシップ』主演のテイラー・キッチュをちゃんと起用してくれるあたり、監督の懐の広さも図れようというものです。
 主人公たちと同様、ひたすらに劣勢の坂を転げ落ちる消耗戦が続く戦闘シーンは喉が乾きます。しんどー! 痛々しい岩場での坂落ち(2回もある!)シーンは階段落ちを超えたね! あの後でもちゃんと動くM4は丈夫な銃だなぁ。
 
 
28位:大脱出
 頭脳派スライと、超人キャラの時には見られない演技をするシュワが見せる、今の時代にアップデートされた「あの頃」アクション。クライマックスでシュワがミニミをぶっ放すシーンの「溜め」なんて、まさにまさに。映画館で拍手しそうになっちゃったよw
 脱獄ものなのでケイパー映画のような「企て」も楽し。アラも結構あるけれど、「あの頃」映画風だなぁと思って観てしまうのでそうそう気にならずだ。
 2 大レジェンドに対する刑務所長役、ジョージ・クルーニークリスチャン・ベールを足したような顔のジェームズ・カヴィーゼルがまた良かった! 設定だけなら陳腐な役とも断じてしまえるキャラを、抑制されたオーバーアクトでもって、クセのあるイヤミで冷酷でシツコイ曲者として、魅力的に演じていて宜しゅうございました。
 

29位:ドラッグ・ウォー 毒戦
 終わり方に好き嫌いあると思いますが、潜入捜査の緊迫感、クライマックスの近距離銃撃戦の迫力(ジャン警部のハコ乗りアタックにはリアルに吹き出しました。格好いい!)、登場人物のキャラ立ち、そしてニヒリズムたっぷりなドライさ。見応えある上質のノワールでした。
 

30位:映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
 小気味いい下品ギャグと動きの面白さ。ストーリー以外の理屈抜きに楽しめる部分も充分素晴らしかったです。特に五木ひろしロボのくだらなさと繰り出される妙なドラッグ感覚溢れる技ね! あ~っクラクラするぅ!
  『オブリビオン』的な面もあり、『アイアンマン』的な面もあり(あっ、そういえばひろしの声の藤原啓治さんはトニー・スターク! 脚本の中島かずきさんは アメコミマニア!)。そうそう、冒頭の完全にインフレしてるカンタムロボの戦闘は、中島かずきさんが脚本を担当した『天元突破グレンラガン』的でもありま した。
 

31位:ファイ 悪魔に育てられた少年
 序盤はちょっと退屈だったけど、ファイが自分に疑問を抱きだしてからは面白さがグッと上がりました。ファイが5人の父に仕込まれた犯罪テクニックを駆使する格闘&カーアクションは見もの。
 ファイの本当の親と、そして育ての親ソクテとの二重の親子の物語を見せる構図なんですが、ソクテの歪んだ愛の壮絶さたるや! キム・ユンソクいい芝居、いい表情してます。
 主演のヨ・ジングも15歳って年齢が信じられないくらいいい表情するんですよなぁ。逸材はいる!
 
 
32位:フューリー
 口の悪い体育会系集団大好き デヴィッド・エアー監督のハードな描写に、戦場の悪徳が+されると、わぁ嫌らしいわぁ。死体をやたらに酷い撮り方するんですよねぇ。「うぉぁ、突っ込むなぁ、すげぇ!」と喝采を送ると同時に「わー現実だったら敵わんなぁ」とアンビバレンツなアガり&引き。前線でない軍営描写も血と腐敗臭が嗅げそうな位。野戦病院で、その辺にテキトーに血を捨ててる様を見た時はそれはそれは渋い顔したよ俺さん。4DXでこの臭い再現したらみんなゲロって退場するぞ! 
  目玉の、実物を稼働させたというタイガー戦車はボスキャラの風格、「よっ虎屋!」って声掛けしたくなるような、じっくり溜めを作っての堂々の登場ぶり。一撃のタイガーvs数&機動性のシャーマンのバトルは見応え充分。曳光弾がやたらに派手に、敵味方色違いで乱れ飛ぶのは、なんだか『スター・ウォーズ』のブラスターの撃ち合いのようにも見えますが、実際あそこまで派手なものなんですか?
 

33位:300 帝国の進撃
 本作のギリシャ兵は、前作で言う「戦士」以外の、農民や詩人や商人たちの寄せ集め軍。皆マッチョで戦闘も充分こなすのですが、戦闘キチガイ突き抜け感は無し。敵も前作の不死の軍団風の被り物をした兵は出てくるものの、アルテミシアの近衛兵以外はそんなに個性的でもなく。敵味方のパンチが弱いかなと。主人公のテミストクレスも戦闘キチガイ寄りではあるのですが、それでも割と正統派の戦士・将軍なので、レオニダスほどトンガってないんですな。そして俺様最高なクセルクセスの出番も少なめとあれば、この作品はやはり、エヴァ・グリーン演じる所のペルシア女裏番長・アルテミシアの無双ぶりを語る他ないでしょう。
 クセルクセスを神に変えた毒婦であり、舞うように二刀を操る戦いの女神であり。この作品で唯一の笑い所と言ってもいいような、テミストクレスとのグラップリングスパーのようなバトルセックスには、普通思いついてもやらないだろ!とバカ負けしましたw アルテミシアが登場するシーンはいちいち強烈で、その場を持って行っちゃうんですよなぁ…… 捕らえた敵の首を容赦なく切り落とし、その生首をむんずと掴んで接吻するシーンは正直勃起モンでしたな。
 

34位:ドラキュラZERO
 串刺し公・ヴラドが如何にして吸血鬼となったか、というドラキュラ秘譚。90分という尺で、大体僕らが期待するもの・見たいもの全部見せてくれる良コスパ映画。闇の力をえたヴラドが、1人で(!)オスマン帝国軍に立ち向かう様は、これ光栄こんなゲーム出すんちゃうかなというような、まさにドラキュラ無双。殴り、斬り、蝙蝠アタックで敵を蹴散らし、ゲージが溜まったら必殺の串刺しムーブだ! 恐怖せよ!
 とはいえ単なる出鱈目アクションでもなく、結構ちゃんと歴史的事実やドラキュラに纏る逸話、他のドラキュラ映画からの引用もあり、ほほうともさせられ。主演のルーク・エヴァンスや敵のドミニク・クーパーも決まってた。二人の甲冑格好いいよねー。
 噂ではユニバーサル映画が、過去のホラー映画の数々を再生させ、最終的に各ダークヒーロー達を一同にアッセンブルさせるプロジェクトがあり、これがその嚆矢とか。わくわくじゃよ!
 
 
35位:フライト・ゲーム
 飛行機内という限られた密室で撮られた本作は低予算の匂いプンプンですが、『ノンストップ』という原題の通り、緊迫感あるサスペンスがどんどん進むので見てて飽きる暇が無いですね。
 真犯人の計画が結構雑なのと、謎が明かされてからの盛り上がりにやや欠けますが、それまでは良く観客を引き込んでくれるので良しとしましょう。元々尺が100分少々な事もあり、コンパクトに纏まっていながらも楽しめます。『96時間』リーアム・ニーソン好きなら見て損無し。
 

36位:猿の惑星:新世紀
 なぜ猿が進化したのか、を描いた前作に比べ、話の展開が読み易すぎるという嫌いはあります。とはいえ、シリーズのキモ「差別する側・される側」についてもきっちり描き、前作よりもより『猿の惑星』感を堪能できます。猿の数も、前作とは比べ物にならない位多数出てきますが、顔にキズをつけたりなどで、主要な猿についてはさり気なく個体の認識を容易にしてる手腕はお見事。
 前作でもシーザーの「目」による表現が巧みでしたが、今回はさらにそのパフォーマンスに向上が見られるというか。猿に表情がつきすぎるとリアリティを失ってしまうので、まさに目は口ほどに物を言う、を地で行くボスになってます。格好いい!
 ただ幾ら人間並、あるいはそれ以上のの知能を猿が持ったとはいえ、いきなりそうそう銃を正確に扱えないだろうとか、弾切れの際、弾倉をどこで手に入れるのかという物理的な面と、機能を知らないからリロードできないだろとは思ったよね……。 あと倉庫から奪った銃にかかったままの安全装置はちゃんと解除できたの?とか、何故かやたらに銃関係の事が気になったとさ。
 

37位:エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
 勿論楽しい作品なのですが、どんどん参加スターが増えていってる上に、今回若手チームまで出てきてるので、各々の見せ場の尺が当然分散、薄まるというプリキュアオールスターズ問題をこの作品でも確認する事になろうとは……。 そのスターたちのギャラが高すぎて集客に気を使ったのか、こっそりレーティングの年齢制限なくなったのでゴア描写なども薄味なのもちと寂しい。
 やっとお鉢が回ってきたバンデラスとスナイプスは儲けものな役柄でしたね。色んな所でゴリ子扱いされてるロンダ・ラウジーの活躍ぶりもファンとしてはヒャッホーものでした。僕もクラブでノされたい!
 

38位:ハリケーンアワー
 画面も全体的に地味で、低予算感丸出し。とはいえそんな中でも、娘の命という「制限時間」を軸に、サスペンスエンターテイメントとして色々やりくりしてて好感が持てました。
 当初は生まれた娘に実感の持てなかった主人公ですが、その小さな命を守り続けていく内にやがて父となるポール・ウォーカーの演技は、ワイルド・スピードシリーズとはまた違う魅力に溢れていました。もっともっとスクリーンで彼を見たかったなぁ……。
 
 
39位:アナと雪の女王
 ゲームのニューハードが出たら火や水の自然物を見よとはよく言ったものですが、冒頭の氷を切り出すシーンの水・氷の映像表現にはいきなり度肝抜かれました。神田沙也加さんが吹き 替えるアナの愛おしさも堪らないです(できうるならば、彼女にはもっとTVアニメの声も当てて欲しい!)。
 有名すぎ る『Let It Go』のくだりは、あらゆる軛からヒロインが開放される、正のベクトルのカタルシスある曲なのに、その実、歌い手のエルサはあらゆるモノに背を向けて全くの孤独を選んでいるという事実に驚きました。曲は最高のクライマックスを迎え、エルサは「私は解き放たれた!」と歌いきる。と、それと同時に自らが築いた氷の城の門を閉ざし、全てを拒み閉じこもる。90年代のオタク冬の時代に青春を送った僕は、思わずシンパシーを感じてしまいゾッとしました。これ子供向けでやっちゃうか!
 ただ、割と中盤以降の話の進め方は雑ですよね。ああっ、そんな簡単に事が収まるとはっ。その辺もうちょっと煮詰めて欲しかったとは正直思いましたね。
 
 予告編ではいかにもなヘラクレスの伝説のシーンを釣瓶撃ちで見せておきながら、本編では「あれは実は…」と伝説の真実、裏側を見せるような不思議な作りになってます。
 ただ僕はその伝説の冒険譚目当てで劇場に足を運んだので、あれっ?と首を捻ったのも事実。終盤まで首を捻り続けましたが、クライマックスでいよいよヘラクレスが覚醒した時には、その溜めが効いていただけに逆にアガりましたね。終盤はホントもう色々ノリノリだな感があってかなり楽しいです。
 結局ヘラクレスはただの人間だったのか!と言う人もいますが、僕はヘラクレスが試練を経て、本来の力が覚醒したのだ、彼はやはり神の子であったのだ、と解釈してます。(ちなみに劇中では明言されず)


41位:劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-
  キャラクターの本質に迫ろうというお話はとても好みだし、盛りあがりどころもしっかり作ってあって楽しめます。だがだからこそ、根性で解決したり、新キャラのライアン扱いが割りと雑なのが気になりました。虎徹とライアンを対比させるような物語にするとかした方が深みがでたかも? あとこれが無いと虎徹がヒーローとして活躍しにくいという事なのでしょうが、彼が扱うワイヤーが、スパイダーマンのウェブ並に万能なのも気になります。安易に虎徹の能力が元に戻ったりしなかったのには好感が持てましたね。
 

42位:るろうに剣心 京都大火編
 流石谷垣さん、今までの剣劇では見られないような、ヘンテコでやんちゃで格好いい殺陣を組んでくれてます。僕は映画に非日常性を求めてしまうので、その視点で見ると大概の邦画は漏れてしまうのですが、これくらいやってくれると、見に来た甲斐もあったなぁと。
 ただ、芝居、脚本、演出など、予算規模とは別の所で“安っぽさ”が見て取れる。この手の「隙」が、非日常感の邪魔しちゃうんですよ。
 

43位:るろうに剣心 伝説の最後編
 アクション はさらに進化。vs宗次郎戦などは惚れ惚れします。しかしやはり例の“安っぽさ”は相変わらず。薫殿の扱いの適当さや、斬首刑寸前の剣心を見ても囲いを蹴 破って猪突しないらしくもない左之助といったようなキャラぶれ、一応の格好をつける為のような、とってつけたラストの敬礼などなどの「粗さ」には、アクションが凄いだけに、もっと頑張ってくれよ! と言いたくなります。
 
 ジョリ姐さん演じる所のマレフィセント、はっきり言って「悪く」ないです。オーロラに呪いをかけるのも「そりゃそうしたくもなるな」と思わせる程にクズい王様…! マレフィセントにいちいち同情・共感してしまう。オチも読めてしまうと思わせておいて、実は…というのにも期待したけれどそれもなく。果たして予想通りに物語は終わります。悉くの描写がどれも浅めなので、こちらに響く前にあれよあれよと終わってしまった印象は否めない。
 とはいえ、マレフィセントが魅力的に撮られているのは確か。ジョリ姐さん好き、強い女好きなら、延々それを見てられるので大層幸せになれます! 素敵! 俺、鉄製品うっちゃってマレフィセントさまのしもべになりに行くんだブヒー!
 百合要素もそこそこにあり(親子愛よりだけど)、その辺が好きな人ならそのポイント突破で楽しめるんじゃないかなーとは思いました。
 

45位:ノア 約束の舟
 方舟伝説において、ノアは善人であるが故に神に選ばれたのだったと思うのですが、本作では単に善人だったからというのではなく、何が何でも神の使命に従う人間絶滅マシーンだったから選ばれたのだ、という展開にはびっくらこきました。最終的には神の「試し」に応えうる人間だったから、というオチではありますが。
 ノア役のラッセル・クロウが戦闘で高い白兵戦能力を遺憾無く発揮しててガッツポーズ。グラディエーターよ再び! あとトバル・カインの国の飢えた民衆の描写が殆どゾンビ(放り投げられた生きた豚に群がり、手で肉を割いて奪い合う!)だったのには心の中で爆笑!
 ただやっぱりキリスト教徒じゃないと判んないというか、深く理解できないんじゃないかな、とも思わされました。こういう映画を観る度に、俺はキリスト教に入信するべきではないのかという不純すぎる思いに囚われます。
 
 ドンパチものかなーと思って見に行きましたが、サスペンスアクションでしたね。DEAの麻薬捜査特殊部隊のシュワちゃんが「それっぽい」動きをしてくれます。大口径のハンドガンではなくグロックを使ってたり、貫通力の高いアサルトライフルなど、室内戦を意識したリアル指向の武器チョイスも良いですね。
 但しサスペンスとしてはとっちらかってるなぁという印象。真犯人の動機が弱い、真犯人が判明した時の「こいつかぁ!」のカタルシスに欠ける、物語にある2つの軸がなかなかクロスしない、クロスしないが故に最後のパートが蛇足にも思える……などなど、問題は結構山積み。また「過去にここでこんな事があった」というフラッシュバックを、明確な場面・画面の転換無しに行うので、観ていてそれが今起こっている事なのか過去の事なのか、もの凄く判り難い。『エンド・オブ・ウォッチ』はあんなにキレキレだったのに、どうしたデヴィッド・エアー
 脚本が今ひとつというのもあるけど、それにしてももっと編集でどうにかなったろうし、むしろその編集で失敗してるシーンが多いという感。とはいえ、今までとちょっと違う役柄のシュワが見られるのと、女刑事、女隊員の演技は良かった。雰囲気は好き。
 

47位:アメリカン・ハッスル
 詐欺師が主役という事で、騙し騙されのスリルを期待したのですが、人間関係のドラマをじっくり楽しむ作品でした。(これは相性問題ですが)字幕版で見たのですが、と会話劇を楽しもうとすると、役者の演技や70年代を再現した魅力的な画面が目に入りにくいのは失敗でした。
 ジェニファー・ローレンスは、作品によっては野暮ったくてあんまり魅力的には見えないのだけれど、今回の髪型とメイクはイケててエロかった。コンパで会うと楽しいけれど、そこからいざ親密になると訳わ からん面倒臭さプンプンで嫌になるような、躁鬱の激しくて浅はかな女という役どころの演技がブッ飛んでたなー。『死ぬのは奴らだ』を髪を振り乱して歌うシーンの妙なカタルシスといったら!
 

48位:荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
 妙に豪華なキャスト陣にこんなクダラナイ事をやらせるセス・マクファーレンの人間力は一体…! ダンスシーンを始めとして、楽しいには楽しいですが、『テッド』よりはギャグが滑り気味でもあったかなぁと。リーアム・ニーソンの美尻に乾杯!
 

49位:サファリ
 危険なサバンナで遭難した旅行者達のサバイバルを描くPOV映画なのですが、予想通りの所で大体予想通りの事が起きるので、安定してそこそこ楽しめるけど大きな驚きはなかったかしら。
 マヤ役のクロエ・カービーのタンクトップ&ホットパンツ姿が妙にエロかったっすね。
 

50位:LIFE!
 40代曲がり角の男のロードムービー。巡っていく世界の映像の美しさは○。ただ映像は美しいのですが、お話としては割と淡々と進んでいくので、もっと捻りや仕掛けが欲しいと感じました(というか予告を観て、主人公のダイナミックな妄想映像がもっとふんだんに挿入されると思っていたんだよう)。
 昨年3月公開の映画なのですが、個人的に昨年後半で仕事について思う所多々あったので、今見返すと順位はもっと上がるかもしんないです。
 

51位:マイティ・ソー ダーク・ワールド
 アスガルドMCUマーベル世界の描写には惹かれるけれど、他のMCU作品と比べると今ふたつ程盛り上がりに欠ける感。ソーとロキの兄弟のイチャイチャは観られるけれど、もっとタッグバトルしようよ……! 割と小ネタギャグをふんだんに挟んできて、それはまぁ楽しいのですけれど、クライマックスでもその調子なので、そこで一旦流れが止まるのが気になりました。
 

52位:エージェント:ライアン
 手堅いというよりは、新しみの無い作りと、かなり綱渡りな作戦に疑問符。知性派としてキャラ立てしてるライアンの「頭の良さ」の表現も今ひとつ。敵の陰謀を割り出すシーンは、視覚的な漠然とした表現に逃げちゃったような気も。「ああ、こいつ頭いい!」ってもっと素直に唸りたかったなぁ。
 巻き込まれ中の怯えた子犬みたいなキョドり感溢れる顔から、徐々にエージェントとして成長した顔を見せる、ライアン役のクリス・パインの演技は良し。
 
 3年ぶりに田舎に帰ったら、「そぉら地元の名物料理だ、たらふくお食べ!」と、今まで以上に歓待されて、もう食べられない、も~う食べられないと胸焼けしつつ飯を食べてるような映画。長い。ひたすらに長い。
 過剰なまでに中国企業に寄り添い、作中で並び立てられるプロダクトプレイスメントについて、ライムスター宇多丸さんが、「これはマイケル・ベイがわざとやってる悪意である。あるいは『あんたらが好きな古き好き映画は滅びていて、俺らが作って今あんたらが見てる映画は別のものなんだよ、残念ながら。』『巨大資本を利用して資金集めをしようと思うとどうなるか。モラル無き利益追求の行き着く果てがこれだよ。』という主張である。」と読み解いていましたが、だとしたらこれはお金を払って「トランスフォーマーの映画」を見に来た観客に対して不誠実な事だなぁと思います。一応は原作もあるような映画でそんな主張はしないで、そういう趣旨の映画を作るなり、別の手段で訴えかけをすればよろしい(勿論この見立てが正しいとは限りませんし、自分の本意ではないようなものをたっぷり作品に盛り込まなければならない製作陣の苦い思いも判るつもりではありますが)。
 
 ルパンのパブリックイメージって、やっぱりアニメ版だと思うんです。それを変えるべき所は変え、残すべき所は残し、どう実写にコンバートするのか。その取捨選択が上手くいった所、そうでない所が混在しているように感じました。
 劇場栄えする奇想天外なストーリーや絵作りなどを追求すると、その「ルパンらしさ」や、アニメやマンガを実写化する際に、原作よりも高められる「作中のリアリティ」と齟齬も出てくると思うんです(というか実際出てる)。それを気にして変にまとめるよりは、型破りに突き進んだ方が良いと思いますし、本作もそのベクトルで作られているとは思うのですが、そこは予算の都合、邦画レベルでは充分頑張った画面なのですが、ハリウッドアクション作品に比べてやっぱり安く見えてしまう。もうこれはどうしようもない事、今の邦画の限界だとは思うのですけれどね。そしてその「予算都合の邦画の限界」とは別に、これもるろ剣と同様やっぱり脚本などの粗が気になってしょうがない。スタッフの力量の限界でしょうか。
 小栗旬さんは良かったですよ。アニメルパンの軽妙さを、あのお調子感から所作まで取り入れて、上手い着地点を見つけたなぁという印象。逆に浅野忠信さんの銭形は、アニメ版を変にカリカチュアライズしたような芝居で、声色も変に納谷悟朗さんを真似たようにガラガラ声を作っているのがダメ。個人的に今までの演技でワースト1です。香港警察署での説明台詞聞き取りにくいよ! あと『アジョシ』最強の敵を演じたタナヨン・ウォンタラクンさんが全く格闘をしないのにはドガッカリ。あれじゃ連れてきた意味無いじゃないですか。
 

55位:ドラゴン・コップス 微笑捜査線
 ジェット・リーが主演みたいな宣伝のされ方ですが、サブキャラです。主人公の刑事のバディですらない。コメディーなのに笑いにはキレが無く古臭い。途中まで張ってた伏線がまるっきり投げっぱなしでジェット・リーもアクションシーン以外はやる気なさげという三重苦。う~ん。
 

56位:平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊
 平成と昭和が対決に至る理由が雑! 相談しようよ! ゲストの戦隊たちの唐突さ! 『ウルトラマンメビウス』の80回のような555後日談は良かったですが……。
 「本来のお客さんの子供達が喜べばいい」『お祭り感』という言葉を何度聴かされればいいのか……。それらはごもっともな言葉ですし、予算や尺の都合があるのは重々承知ですが、今まで何度もライダー集合映画作ったのに、一向に改善が兆しすら見えないのは残念(プリキュアオールスターズは問題も抱えながらも、試行錯誤して改善が見られるのになぁ)。本作を期にライダー映画から足が遠のいています。
 

57位:キカイダー REBOOT
 高橋メアリージュンさんが、たべ・こーじ先生の描かれるギャルみたいでエロかった以外、褒める所が一箇所も無いの……。
 「そんな事あらへんがな!」と言いたくなるシーンばっかりなのには閉口。例えば冒頭のマリのマンションへの襲撃シーンひとつとっても、只のマンションに何故ヘリポートがあるのか、ヘリポートに下に降りる階段や入り口が見受けられないのは何故か、敵の大型メカが登場した際に、特殊部隊はどうやってヘリポートからはけたのか、その後ルポライターの服部はどうやってヘリポートに上がったのか……と、すらすら疑問が出てきます。リアリティラインを旧作よりだいぶ上げてるだけに気になっちゃうんですよね。
 アクションも頑張ってはいますが、これぞというシーンは無し。クライマックスのキカイダーvsハカイダーも、機械のヒーローならではの戦闘描写でもあれば良いのですが、ただただ単調に長々格闘してるだけで正直飽きてしまいます。一番格好いいシーンが、プロフェッサー・ギル役の鶴見辰吾が、ハカイダーに独白しながら影の中狂気の眼差しを浮かばせる所、というのもヒーローものとして問題だと思います。
 
 
 
 
 以上57作品のランキングでした。なんだかんだで面白い作品が多かったなぁ。

イン・ザ・ヒーロー【ネタバレ】感想部分

2014年9/6 twitterの『イン・ザ・ヒーロー』感想の続き、ネタバレに触れる部分

 

 決死のアクションを演じる為に主人公・本城が忍者装束を着こみ、セットに向かうシーン。いやぁ、この唐沢寿明の格好良さたるや! 事ある毎に本城は「武士道」を持ち出しますが、まさに「死ぬことと見つけたり」の佇まい。

 クライマックスのアクションシーンは……今の邦画では、かなりのレベルの殺陣を見せて貰った気がします。50歳の唐沢寿明と72歳の松方弘樹の殺陣がねぇ!格好いい!

 ただし……これを求めるのも難しい事なのだろうな、とは判っていますが、あえて厳しい事を言うと。 劇中でこのアクションシーンは、アメリカ進出を心底望む一ノ瀬リョウがなんとしても掴みたいチャンスであり、本城も「あの!」と何目も置く、アクション作品で名を売ってるメジャー監督が撮るハリウッド大作、そのアクションシーンな訳ですよ。なのに全くそう見えない! セットにせよ、見せ方にせよ、せいぜい『イン・ザ・ヒーロー』程度(あえてこう書く)の邦画のアクションシーンにしか見えない。

 また今同時期に、『るろうに剣心』という、日本アクションエンタメ界の奇才・谷垣健治氏が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。最大の見せ場がもう、色んな所に負けちゃってるんです。前述した唐沢寿明福士蒼汰らの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。ここが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 残念だなぁ。