2019年劇場鑑賞映画ランキング
さて昨年は59本の作品を鑑賞しました。 仕事の繁忙期にやけのやんぱちで観に行った日々が懐かしいなぁ……。
では、以下に記録として、自分の2019年の映画ランキングと、作品ごとの寸評をまとめてみようと思います。
※レギュレーション・注意等※
・2019年に自分が劇場で見た全映画のランキングです(DVD/BDや各種配信サービスでの視聴は含みません)。
・2018年公開の作品でも、2019年に劇場鑑賞したものはランキングに反映させています。
・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。
・このランキングは「書いた時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。
・寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。
1位:アベンジャーズ/エンドゲーム
2位:スパイダーマン:スパイダーバース
3位:ジョーカー
4位:スパイダーマン ファー・フロム・ホーム
5位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
6位:きみと、波にのれたら
7位:ハロウィン
8位:グリーンブック
9位:イップ・マン外伝 マスターZ
10位:イエスタデイ
11位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__
12位:工作 黒金星と呼ばれた男
13位:キャプテン・マーベル
14位:ホテル・ムンバイ
15位:クリード 炎の宿敵
16位:プロメア
17位:メリー・ポピンズ リターンズ
18位:ジョン・ウィック :パラベラム
19位:HIGH & LOW THE WORST
20位:Fate / stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly
21位:シャザム!
22位:劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~
23位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian
24位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰
25位:トイ・ストーリー4
26位:バイス
27位:ブライトバーン
28位:ブラック・クランズマン
29位:この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説
30位:オーヴァーロード
31位:アメリカン・アニマルズ
32位:アクアマン
33位:天気の子
34位:レイドバッカーズ
35位:ジェミニマン
36位:アリータ:バトル・エンジェル
37位:レゴムービー2
38位:ワイルド・スピード スーパーコンボ
39位:真実
40位:IT THE END
41位:ゾンビランド ダブルタップ
42位:主戦場
43位:ハンターキラー 潜航せよ
44位:劇場版 刀剣乱舞
45位:バンブルビー
46位:ファースト・マン
47位:空の青さを知る人よ
48位:ザ・フォーリナー 復讐者
49位:ロケットマン
50位:海獣の子供
51位:劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ
52位:シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション
53位:新聞記者
54位: スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
55位:名探偵ピカチュウ
56位:ターミネーター ニュー・フェイト
57位:ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
58位:マイル22
59位:バースデー・ワンダーランド
2位:スパイダーマン:スパイダーバース
3位:ジョーカー
僕なんかバッチリのロスジェネ世代でさ。「10年後のお前の姿、それがアーサーね」って言われても全く不思議はないんですよ。僕が一番頭に来たのはね、アーサーのダダ滑りライブを切り取って、TVショーの司会者・マレーが笑いものにしてたあそこ! そりゃアーサーにはコメディアンは向いてないですよ。だからってさぁ……なんかもう我が事のようにムカッ腹が立ちましてね!
だからクライマックスで覚醒した「ジョーカー」が、マレー・フランクリンショーに出演するじゃないですか。あそこはもう「あっ、これジョーカーがマレー殺すよね」って判るでしょ? すると殺人のその瞬間に至るまでにどんどん「やれ!そんなクソ野郎殺しちまえ!」という気持ちが高まってくるんですけれど、と同時に、色んなフィクション……それこそ『ダークナイト』で市民が見せた善なる抑制の心を思い出して「いや、ダメだろ!」っていう気持ちも湧き上がってくるんですよ。それがせめぎ合ってせめぎ合って、いよいよジョーカーがマレーを射殺した絶頂のシーンを迎えると、僕はもうね、「復讐してやった!」という歓喜と、同時に抱えた「やってしまった…」という慙愧の念でね、「感情が噴き出すのを堪えているんだけれど、口には笑みが浮かんでしまい、なおかつ落涙する」という、まさに涙&笑顔のピエロペイントなジョーカーみたいになってる自分を発見してね、愕然としましたよ。
僕はね、日々フィクションに癒やされているし、そのフィクションが描くような、人の善なる心を信じたいですよ。と同時に自分の弱さも知っているし、しかも自分ではどうすることもできない「この世の中」はどうも悪くなっていく一方でのように見えるんですよ。状況とタイミングが揃えば、僕だって……と思わさざるをえないような事が、現実では多すぎる訳です。ちょっと踏み外せば、僕だって「無敵の人」だ。
『スパイダーバース』は誰でもスパイダーマンになれると力強く訴え、また過去のバットマン映画では「誰でもヒーローになれる、特別なことをしなくても。 傷ついた少年の肩に上着をかけて、世界の終わりじゃないと励ませばいい。」なんて名台詞がありましたけれど、その鏡像のように「誰でもジョーカーになれる」を思い知らされたんですよ。
数々の識者が指摘するように、これは「ジョーカーが自分の都合のいいように語った嘘の物語」ともとれるという論。なるほど確かにそうでしょう。それを僕よりももっともっとジョーカー側に立ってしまっているけれど、まだ踏み越えていない人に仰ってみればいいと思うんですよネ!
4位:スパイダーマン ファー・フロム・ホーム
5位:ハロウィン
6位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
7位:きみと、波にのれたら
8位:グリーンブック
9位:イップ・マン外伝 マスターZ
10位:イエスタデイ
11位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__
12位:工作 黒金星と呼ばれた男
13位:キャプテン・マーベル
14位:ホテル・ムンバイ
15位:クリード 炎の宿敵
16位:プロメア
17位:メリー・ポピンズ リターンズ
18位:ジョン・ウィック :パラベラム
19位:HIGH & LOW THE WORST
20位:Fate / stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly
21位:シャザム!
22位:劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~
23位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian
24位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰
25位:トイ・ストーリー4
26位:バイス
27位:ブライトバーン
28位:ブラック・クランズマン
29位:この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説
30位:オーヴァーロード
31位:アメリカン・アニマルズ
32位:アクアマン
33位:天気の子
34位:レイドバッカーズ
35位:ジェミニマン
36位:アリータ:バトル・エンジェル
37位:レゴムービー2
38位:ワイルド・スピード スーパーコンボ
39位:真実
40位:IT THE END
41位:ゾンビランド ダブルタップ
42位:主戦場
43位:ハンターキラー 潜航せよ
44位:劇場版 刀剣乱舞
46位:ファースト・マン
47位:空の青さを知る人よ
48位:ザ・フォーリナー 復讐者
49位:ロケットマン
50位:海獣の子供
51位:劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ
52位:シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション
53位:新聞記者
54位:スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
56位:ターミネーター ニュー・フェイト
57位:ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
58位:マイル22
59位:バースデー・ワンダーランド
『アベンジャーズ エンドゲーム』タイムスタンプ
※当然ながらネタバレあります。
※劇場で時計を見ながらチェックしたものなので、実際のスタンプとはズレあると思います。
※ハルクがエンシェント・ワンからストーンもらうシーンチェックし忘れたっぽい……
※てかそもそもタイムスタンプって言葉でいいのか。語彙力ないからわかんないよ。
15分 「サノスの息の根を止めに行こう。」
タイトル出る
23分 サノス処刑→5年後
25分 偶然ネズミが通りかかって、アントマンが5年ぶりに量子空間から帰還
29分 ナターシャ、各地のアベンジャーズとモニター会議。
ローディ「バートンを見つけるのが怖くなる。」
33分 スコット、アベンジャーズ基地に到着。「録画映像か?」
36分 タイムトラベル構想の話を持ちかけにトニー宅へ
40分 「天才が必要だ。」ハルクをスカウトに。
42分 トニー、メビウスの輪理論?を閃いてしまう。「3,000回愛してる。」
46分 タイムトラべルテスト。アントマンスーツの中に漏らす。
48分 トニー登場。キャップと和解、シールドを返す。
52分 「新アスガルドへようこそ」ソー、見事なビールっ腹を披露。
57分 東京でヴィジランテしてた クリントをナターシャが連れ戻す。
60分 テストトラベル。クリント、過去に飛んで家族の存在を確認する。
64分 クリント戻る。タイム泥棒会議。
68分 タイム泥棒軍団、3チームに別れて過去に出発。
70分 2012年、ニューヨーク決戦の地にトニー。キャップ、ハルク、スコット着。
72分 2013年、アスガルドにソー、ロケット着。
75分 2014年、惑星モラグにローディー、ネビュラ、クリント、ナターシャ着
クリント、ナターシャはそのまま惑星ヴォーミアへ。
79分 2014年ニューヨーク。キャップ、『ウインター・ソルジャー』でのエレベーターシーン再現かと思いきや、「ハイル、ヒドラ……」のマジックワードであっさり脱出。
84分 ロキ、どさくさに紛れて四次元キューブを持って逃走。
キャップは過去の自分と闘争。「バッキーは生きている。」
ロキの杖=マインド・ストーン回収。
87分 ハルク、エンシェント・ワンからタイムストーンを奪おうとしてアストラル体にされる
89分 過去ネビュラ、今ネビュラと記憶がリンクする。
91分 2014年アスガルド。ロケット、リアリティ・ストーンを回収。
ソー、母と再開、立ち直る。ムジョルニアを再びその手に。
「まだ捨てたもんじゃない!」
95分 2014年惑星モラグ。スターロード、ノリノリで歌っていたところ、ローディーに殴られ気絶。「こいつアホだな。」パワー・ストーン回収。
98分 ネビュラ、過去ネビュラとリンクし気絶。帰還に失敗。危険をナターシャに伝えようとするもサノスに捕まる。
サノス、未来での自分の運命を知り、ピム粒子をゲット。
100分 トニー&キャップ、スペース・ストーン回収のために更に過去に戻る事を決意。
102分 1970年、ニュージャージー。スタン・リーがご陽気にカメオ出演。
104分 ハワード・スターク、ハワード・"ポッツ”に出会う。
107分 キャップ、ペギーを窓ごしに見つめる。
109分 今ネビュラvs過去ネビュラ
111分 2014年惑星ヴォーミア。ナターシャ死亡。クリント、ソウル・ストーン回収。
118分 タイム泥棒軍団帰還。
121分 アイアンガントレット完成。ハルクがパワーを発動させ、サノスに消された人間たちが戻る。
今ネビュラに化けて帰還した過去ネビュラ、こっそりタイムトラベルマシーンを起動させる。
125分 2014年より来襲したサノス戦艦、アベンジャーズ基地を砲撃。
129分 過去ガモーラ、サノスを止めるために今ネビュラと組む。
130分 トニー、キャップ、ソーがサノスと対峙、戦いが始まる。
135分 クリントからガントレットを奪った過去ネビュラを、今ネビュラが自らの手で殺す。
136分 キャップ、ムジョルニアを手にする。「持てると思った……。」
138分 恐ろしい数のサノス軍、地球に襲来。
それでもキャップ、「まだやれる」と言わんばかりに一人立ち上がる。
139分 「左を見ろ。」
141分 「アベンジャーズ……アッセンブル!」
142分 トニーを見つけたピーター、生存報告。思わずトニー、ハグ。
143分 スターロード、過去ガモーラに股間を蹴られる。2回目のが玉を直撃。
144分 茶色くて汚いバンのクラクション、鳴る。
145分 ガントレットリレー開始。
147分 ワンダのテレキネシスに苦戦のサノス、戦艦に味方もろとも地上を砲撃させ る。
148分 宇宙の彼方よりキャロル・ダンバース颯爽登場、戦艦を轟沈させる。
150分 アマゾネスアベンジャーズがアッセンブルし、ピーター坊やを助ける。
152分 ストレンジ、「これが14,000,605分の1の勝ち筋だ!」とトニーにサインを送 る。
153分 「なら……私がアイアンマンだ。」サノス軍消滅。
156分 トニー・スターク死亡。「ゆっくり眠って……。」
157分 各々が自分の生活に戻っていく。
158分 トニーの葬式。皆でタイムトラベル前にトニーが残したメッセージを見る。
「3,000回愛してる。」「トニー・スタークにも心がある。」
163分 ソー、王位をヴァルキリーに譲る。「アスガーディアンズ」、宇宙へ。
166分 キャップ、ストーンを返しに過去に旅立つ。
168分 キャップ、自分の人生を生きて帰還。
170分 キャップ、サムにシールドを渡す。「君のだ。」
171分 ある一軒家。そこには幸せそうに“ダンス”を踊るスティーブ・ロジャースとペ ギー・カーターの姿が。そして二人は“キス”を……
2018年映画ランキング
新年あけましておめでとうございます。
昨年も冴えない感じでしたが、私もいよいよ不惑の歳。なんとかここで何かを変えたいところでございますよ。ともかく、2019年もよろしくお願いいたします。
さて昨年は、1週間に1本ペース、年間50本の映画を観るという目標を立て、結果55本の作品を鑑賞しました。 仕事の繁忙期に気力をごっそり削られると、劇場に向かう気力がなかなか湧かなかったのですが、なんとか目標を果たしました。
では、以下に記録として、自分の2018年の映画ランキングと、作品ごとの寸評をまとめてみようと思います。
※注意等※
・2018年に自分が劇場で見た全映画のランキングです。
・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。
・このランキングは「書いた時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。
・寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。
◆寸評
青春という、あのとてもとても短い(でも当人たちはそんな短さをちっとも感じていない)あの輝きと可能性に満ち満ちた時間を生きる若人たちの苦悩すら、アラフォーおじさんには眩しくてしかたなかったです。かつては自分もそんな世界で生きていたはずなのに。
「えっ、殺し屋のミシェロド(男性体)が復讐に狂う女医 a.k.a シガニー・ウィーバーの手術でミシェロド(女性体)に!?」というプロットで観客が観たいのはそんな作風じゃないと思いますぞ?
2017年映画ランキング
新年あけましておめでとうございます。僕は相変わらず冴えない感じでやっとりますが、なんとか健康なのが救いでございますな。ともかく、2018年もよろしくお願いいたします(特にリアルでお会いしてる友人の皆々様!)。
さて昨年は、1週間に1本ペース、年間50本の映画を観るという目標を立て、結果47本の作品を鑑賞しました。僅かに目標に届かず! 仕事の繁忙期に観に行く気力が湧かなかったのだよなぁ、勿体なし。
それはさておき、記録として、ここに自分の2017年の映画ランキングと、作品ごとの寸評をまとめてみようと思います。
※注意等※
・2017年に自分が劇場で見た全映画のランキングです。
・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。
・このランキングは「現時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。
・寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。
◆2017年ランキング
2:レゴバットマン ザ・ムービー
5:ラ・ラ・ランド
7:マイティ・ソー:バトルロイヤル
9:ローガン
10:トリプルX 再起動
11:マグニフィセント・セブン
12:HiGH & LOW THE MOVIE 2:END OF SKY
13:スノーデン
14:キングコング 髑髏島の巨神
16:傷物語 Ⅲ 冷血篇
17:猿の惑星 聖戦記
18:ブレードランナー2049
19:Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower
20:ジョン・ウィック チャプター2
22:パトリオット・デイ
23:アトミック・ブロンド
24:バリー・シール アメリカをはめた男
25:ドリーム
26:ザ・コンサルタント
27:ドクター・ストレンジ
28:IT それが見えたら、終わり
29:ハクソー・リッジ
30:KUBO 二本の弦の秘密
31:ジャスティス・リーグ
32:ダンケルク
33:バーニング・オーシャン
34:おじいちゃんはデブゴン
35:オリエント急行殺人事件
36:GODZILLA 怪獣惑星
37:HiGH & LOW THE MOVIE 3:FINAL MISSION
38:ワンダーウーマン
39:パワーレンジャー
40:夜は短し歩けよ乙女
42:ザ・マミー 呪われた砂漠の王女
43:エイリアン・コヴェナント
44:メアリと魔女の花
45:ゴースト・イン・ザ・シェル
46:ひるね姫 知らないワタシの物語
47:虐殺器官
◆寸評
閉鎖空間、乗り物の中を舞台にしたゾンビ映画はちょいちょいあるんですけれど、その中でも本作は舞台となるKTX車両や、ひいては鉄道という「ギミック」の活かし方が上手い。よくもまぁ手を変え品を変え見せ場を作ってくれます。
また登場人物に個性があるんですね。各人のちょっとした時に見せる行動で思い入れが深まる。だからこそスリリングなシーンで手に汗握らざるをえないんですよね。つまり基本が出来てる! 列車 in ゾンビというアイディアだけに留まらず、工夫を重ねた見せ場の数々にWWZのような目で見るゾンビの数の暴力も見れた上で、しっかり人間たちのドラマも描かれており……ゾンビ映画のド傑作だなぁ!
主人公が父親なのも相まって、父とは、親とはという点にスポットを当てたシーンが何箇所もあって、僕も人の親ではないものの、いい歳なんでグッと来ましたね。ソグ、サンファ、ヨングクの三人がトイレで一息つきつつ、男とは、父とはについて語るシーン最高! 僕の両親も、(ゾンビパンデミックではないにせよ)色々な事から僕を守ってくれていたんだろうなぁとしみじみ思ってしまい、見た後に父母にありがとうを言いたくなってしまいました。
吹替で見たんですが、主人公を演じるコン・ユの吹替を担当した中村悠一さんの声は、人が無償の善をなす時の高潔さを具現化したような声なんですな。やがて「父」となり、ひたすらに娘を守る男の役に適役! 流石キャプテン・アメリカ演じてるだけありますよ!
2:レゴバットマン ザ・ムービー
レゴ? 子供向けなの? いやいや、映画になったバットマンを見続けてきた大人たちにこそ見ていただきたい、映画バットマンの大総括にして、アメコミの枠を超えた超クロスオーバー娯楽作品なんですよ。いいバットマンの最終回だった!
特に近年のノーラントリロジー以後のバットマンは、(ノーラン病という言葉で揶揄される程に)苦しみ、悩み、孤独に戦う闇の騎士というイメージがすっかり定着してしまいました。本作のバットマンも、「子供向け」らしからぬ深刻な悩みを持っているのですが……そこは底抜けノー天気感には定評のあるレゴアニメシリーズ。深刻になりすぎてテンションを落としちゃうような事もなく悩みを解消、そして解決に導く手腕は見事の一言。
バットマンとジョーカーの奇妙な、ブロマンスといってもいいような関係性も盛り込み、さらにさらにクライマックスの大カタストロフを実にレゴイズム溢れるやり方(しかもバットマンの孤独な心と他者の心が結ばれるというのをまさに体現する形で)見せ切るのだから、これはもうシャッポ脱ぎました。レゴ映画としてもバットマン映画としても大傑作!
エドガー・ライト監督作品らしい小気味いいカッティングやいつものシチュエーションは健在ながらも、ブラッド&アイスクリーム3部作やスコット・ピルグリムのようなボンクラ感は無く。主人公の聞いた音楽がBGMという変わり種アイディアはこちらの感情を喚起させるだけでなく、脚本としっかり結びついており、主人公ベイビーの感情や人間性表現にも役立っています。僕は洋楽に全く明るくないですが、それでもすっかり、時にはノリノリ、時には悲しく・切なくと、すっかりベイビーというキャラに共感してしまったのでした。あと終盤のバディのセリフでようやっと気づいたけど、これ歌の歌詞もちゃんとその時の状況やら心情を語ってたのね。ミュージカルじゃん! 洋楽、英語判る人羨ましい。
冒頭、ベイビーが強盗仲間を待つ間の音楽にノリノリの様子(あ、ここだけエドガー監督のいつものボンクラ感あるわw)から一転、無数のパトカー相手を手玉に取るカーチェイス。もうここだけでベイビーのこと好きになっちゃうよ。格好いい&気持ちいい。フゥー! それに続いてのOPクレジットのシャレオツな長回しシーン。これは今回のエドガー監督はいつもと違うとビンビン感じさせてくれます。いつも以上に緩急が洒脱でグイグイ引き込まれるんだよなぁ。
そして、ボニー&クライドのような逃避行がああいう形で終わり、その後に繋がっていくというのは、エドガー監督が持つ優しさじゃないでしょうかね。他作品でもそうですが、人間を肯定したいという暖かみが僕は好きなんだなぁ。
クライムアクション、カースタント、若者の成長・恋愛、そして音楽。様々な要素が奇跡的に折り重なった、本当にノリノリで気持ちよく、切なく、暖かく、ゴキゲンな作品でした。ありがとう! ありがとう!!
過去作をたっぷり本歌取りもしながらも、完全に「世代交代」を果たした感がある本作。中盤カイロ・レンが予想外の動きを果たして、いやァ面白くなってきやがったと! 予想としてはせいぜいレンがレイを暗黒面に誘い、ジェダイの後継者がいなくなるところで終わり、Ep.9でなんだかんだで2人がライトサイドに還るねんやろ? とか思ってたのに!
レンは冴えないクソオタクのボンクラ二代目扱いでネタにされるし、俺もそう思うけどさァ……。生まれのお陰もあって力を持ってしまったけれど、器じゃないなんて彼もよく判ってると思うんよ。器なんてこれっぽっちも無く「何者にもなれねぇな」とレースから降りちゃったヘタレな僕は、父を斬り師を斬り、器に全く見合わぬ修羅道を迷いながらひた走る彼に、どこか憧れや応援するような感情を抱いてしまうんだな。アイツは俺ですよ!
そしてアイツは俺、と言えばルーク! Ep.4でタトゥイーンの2つの夕日を眺めるルーク。辺境の田舎とは、勿論そのままの意味でもありますが、ズバリ若者を縛る「枷」の象徴でありましょう。「このまま腐っていくしかないのか」という諦め混じりの苛立ちに、全世界の「枷」に囚われた若者のように、僕は共感を覚えたものです。やがてルークは田舎を飛び出し星々を巡った果てに英雄になったものの、また「枷」に囚われてしまいます。歳経た僕もやはりまた。
しかしルークの精神は「枷」を破り、遥かな空間を飛び越えて、最後に大きな務めを果たしたのです。その彼が最後に見たものは……あの2つの夕日! 人は老いるけれど、それでも……と可能性を示してくれたと信じたいですね。
誰だってフォース使えるんだ問題も賛否ありそうですが、『ウルトラマンティガ』の「人間は皆、自分自身の力で光になれるんだ。レナもなれただろ?」的で僕はアリだと思います。この作品の肯定派というより、大好き派です。
5:ラ・ラ・ランド
画面の色使いも艶やかな序盤は、レトロなミュージカル映画のようでもあり。主人公の二人も、その時代の映画の中のような「夢見がち」にも思える台詞を語ります。しかし話が進むにつれ、画面の色は落ち着き、主人公たちもそれぞれの現実という壁にぶち当たります。「古き良き」ミュージカル映画のようでありながらも、ここで描かれる「愚かな夢追い人」の姿は、この世界中に無数にいる「今」の夢見る若者たちそのものなのでしょう。
ミアがオーディションで歌ったおばさんの逸話の中の言葉、「少しの狂気が新しい夢を見せる」。ミアが踏み出す為に(そしてセブが踏み出すためにも)、2人はあのままではいられなかった。あの別れは必然だった。夢追い人たらん者が諦めてはいけない事、諦めるしか無い事。「冬」でセブが演奏している間のあの泡沫の夢(そう、まさしく夢)の切なさ。しかし2人は互いを認め合えた。セブのあの笑顔と納得に、ただただ涙。
うるさ方が仰るところの、「スパイダーマン映画の問題点」をひょいとクリアしつつ良質の青春映画に仕上げ、スパイダーマンとしては新鮮なルックのシーンを幾つも見せてつつ、なおかつMCUシリーズとしてのブリッジの役目もちゃんと果たしてるという凄まじいバランスで作られてる非の打ち所のない作品。新スパイダーマンを演じるトム・ホランドくんの、応援したくなること必至の驚異的なかわいさ、フレッシュさ。友人ネッドの愛すべきバカオタクぶり。個性豊かなクラスメートたち……。キャラクターの勝利!
敵のヴァルチャーも魅力的なんだなァ。彼の行った事は悪ですが、気持ちは物凄く判るもの。トランプ政権誕生の裏には、ああいう事の積み重ねもあったのでしょう? 情勢もよく取り込んでらっしゃる。
『アベンジャーズ』でのNY決戦は今回明らかに911として描かれてましたよね。明るいベン叔母さんや呑気な先生がふと見せる、NY決戦にまつわる暗い影。ピーターの「克服」シーンもモロですね。あっちの映画は現実に起こった事件のエンタメ昇華が上手いよなぁ。
7:マイティ・ソー:バトルロイヤル
監督が作品作りのコントロールをなかなか取れないという噂のMCU作品ですが……。果たして本作は、全体にコメディタッチが漂う負け犬たちのリベンジ物語という、いかにもタイカ・ワイティティ印の作品に。ソーの快男児ぶりがボルテージMAXで見ていて気持ちいいんですよね。情緒不安定なバナー、成長してないロキも楽し。
終始楽しい楽しい作品で、クリヘム(&吹替担当・三宅健太)の弾けた愉快な芝居が堪能できるのですが、大層シリアスな展開もあり。両氏が芝居で様々な顔を覗かせてくれるので、ファンならどちらも必見(必聴)。ヘラ役のケイト・ブランシェットは洋製曽我町子といえる流石の貫禄(高笑いしてほしかった!)。
……と、メインキャストの描写は大満足なんですが、スカージやウォリアーズ・スリーの扱いの雑さったらないというか…シフはAoSのお陰で助かった? 紛うことなき傑作で、ワイティティ監督には感謝感謝だけれど、ウォリアーズ・スリーのあの扱いに関しては全く納得がいってない。いつか酒場でバッタリお会いしたら二時間説教モードだ。
ワイスピ時空がグルート役のヴィン・ディーゼル経由でMCUと繋がったのかと思うくらいに、「家族」の物語だった……。そしてまんまと泣かされてしまった……。
ラストでかかる作品を象徴するオールディーズナンバー『father and son 』がめちゃグッと来た。
この手の曲に心を動かされる事なんて今までなかったんだけど、それ俺がいい歳こいて、この曲に歌われてるような事に向き合ってこなかったからなんだよな、恥ずかしながら。
スターロードは作品を司る音楽要素の象徴たる、母から受け継いだカセットテープ&ウォークマンを「父」の手によって失ったけれど、「親父」から新たにZuneとして受け継いだんだな。
9:ローガン
「X-MEN」でも「ウルヴァリン」でもなく、まさしく「ローガン」な一作でした。一個人の内面を掘り下げる、『アイアンマン3』的な物語。アダマンチウムの毒により能力を失いかけ、ボロボロのローガン。あの偉丈夫が冒頭からチンピラ相手に苦戦し、手加減をしてる余裕などなくやむなく惨殺するしかないという衝撃。やっとこ住処に戻ればエグゼビアの介護が待っており、何かと同居人のミュータントと言い争うという、まぁー哀しい境遇ですよ。
10:トリプルX 再起動
すげぇ! 上映時間の108分全て、ひたすらにハッタリをかました絵が流れ続けるんだよ! やだ楽しい!ヴィンさま抱いて!
最強の敵に挑むイカれた仲間を紹介するぜ! 百発百中のスナイパービッチ、アデル(アダ名はクリ勃起)! 199のデススタントをこなした不死身のフェイスブックいいねキチガイ、テニソン! 葬式会場もサンバカーニバルに変えるDJ.ニック(一緒にいると楽しい)! かように矢鱈に濃くて変な仲間を引き連れたケレンみたっぷりヴィン・ディーゼルが、ピチピチの53歳ドニー・イェン、 今回悲壮感ゼロで陽気に暴れるトニー・ジャー、UFCミドル級王者マイケル・ビスピンと戦うんですよ。
『ワイルド・スピード ICE BREAK』もそうなんですが、冒頭で主人公の大独壇場のスーパーアクション&男気祭りコーナーがあるので、シリーズ未見の人でも開始10分であのマッチョハゲが好きになってしまうという、最高のヴィン・ディーゼルPVになってるのも上手い。まーただただ楽しい。皆も観ろ!
11:マグニフィセント・セブン
黒人、PTSD患者、山男に東洋人にメキシコ人にインディアン。それに用心棒を雇い主の女性と、PC配慮(?)が幸いして、オリジナルよりメンバーに幅が出ましたね。七人を集めるまでがあっさりしすぎで、各々の動機がイマイチはっきり描かれない(特にインディアンが仲間になるシーンの力技具合といったら!)のは気になりますが、テンポは悪くない。
そういう各々のエピソードをもっと見たい!と思わせるほど、各メンバーは魅力的でした。特にクリス・プラットは儲け役で、僕がイメージしてるクリス・プラット像を一番体現してるんですよね。ジョセフ・ジョースター的「またまたやらせていただきましたァン!」なトリックを使いこなす食えない、しかし愛嬌たっぷりな男!
イーサン・ホークとイ・ビョンホンのいちゃいちゃぶりや、ヴィンセント・ドノフリオのラブリー狂熊ぶりも見逃せない。そんな連中が技・奇策・地元民との連携で見せる激闘・死闘。やぁ、なんと見応えある西部劇のガン・バトルでした。
しかし歪んだ資本主義を体現するような敵役に、寄せ集め多国籍・マイノリティ軍団が挑むってのも、偶然とはいえ、まぁいいタイミングでこんな話が劇場にかかったもんですなぁ。
12:HiGH & LOW THE MOVIE 2:END OF SKY
日本屈指のアクション映画がさらにその凄みを増して帰ってきたのだから堪らない。中盤のバイク&カースタントシーンは日本のアクション映画のレベルを超えてる。素直に手に汗握ってしまった!
終盤のハイロー名物、集団対集団の喧嘩祭りも、個々人・チームの個性を活かした色のあるアクションは益々冴え渡り。登場シーンにチームのテーマ曲が流れるのは演出の常套手段ですが、前述のようにきっちり個性を描いた上だと尚の事効きますね。
ハイローはシリーズ通して脚本が稚拙なところが多々あります。しかし今回、話があるにはあるけれど、それが殆ど前進してないのも良い方に作用してたかもしれません。話ダッセーな……と焦れる事なく最後までアクションを堪能できました。
細かい点は皆さんの感想に譲りますが、日向のどこまでも進化していくエクストリーム腕十字と、村山のかわゆさがたまらんところはやはり言及しておきたいですね。鬼邪高校の永遠の部活感いいなぁー、楽しそうだなぁー。
13:スノーデン
米国が世界の、そして国内の情報を違法に収集していたという事を暴露したスノーデン。その暴露事件そのものを描くというより、関わった彼個人の苦悩と決意を描く事で、よりこの事件の危うさを浮き彫りにする事に成功しているように思えました。
この作品の成否はスノーデン演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットの力量に結構なウェイトが置かれてると思うのですが、果たして彼はおよそ10年間のスノーデンの心情変化を丁寧に表現してくれています。あの光の下へ赴くシーンの、なんとも深く心に響く事よ。
アメリカだけでなく、どんな国でも(日本でも!)個人の自由や権利を制限したり侵害したりするのには「NO」と言いたいものです。しかし体制の力は巨大すぎて、個人がそれを貫き続けるのはとてつもなく難しい。スノーデンが、大きなスクリーンに映し出された上司・コービンと対峙するシーン。悪魔めいた様子でスクリーンに映るコービンは、体制という「大義名分」の下ならすべて許されるいう嫌らしさの象徴ですよ。撮り方の勝利。
14:キングコング 髑髏島の巨神
中々御大が出てこないギャレゴジの焦らしプレイとは対局の、南海の怪獣・巨獣・珍獣の釣瓶撃ち! 人間なんぞ軽はずみに死ぬ! とはいえざっくり大味映画という訳ではなく、かなり誠実で真面目に作られてるなぁと思いました。怪獣プロレス興行の邪魔にならない程度に人間のドラマを絡めて、個人個人をそこまで深掘りはしないけど、「あ、こいつこんな人間なのね」としっかり判る丁寧さ。怪獣もその動きだけで生態がちゃんと判ってまるで怪獣図鑑のような楽しさ。
コングのあの知性溢れる戦術と技も素晴らしい。大木を武器にする際は、クッションになる枝葉をこそげ落としてから使うし、自分を縛った船の鎖&スクリューを流星錘のように巧みに使い、その鎖で相手を捕縛する喧嘩巧者ぶりですよ! それをヒロインをソフトに掴みながらやるってんだからさァ! 『ブレードランナー』で、片手に鳩を優しく包み、もう片方の手でデッカードを持ち上げたレプリカントの超人性を表す描写を思い出してしまった。 これで成長途中ってんだから、ゴジラとの怪獣王争奪戦が楽しみじゃて。
快速王に俺はなる、ファミリー大事なワンピース系やんちゃカーアクションムービーは8作目でついに氷上決戦! ドム、ホブス、デッカードの3人の超人度数もどんどんアガるゾ!
16:傷物語 Ⅲ 冷血篇
登場人物の心象風景や立ち位置が反映された、時に写実的、時に幾何学的、時に超現実的なシリーズ独特の背景美術と、抑制的ながらも美しく乱舞する光と影、赤と黒の色彩が作り上げる美しくも妖しの世界。尾石達也マジックここに極まれり!
クライマックスの不死の吸血鬼同士のタイマンバトルも、ハイパーポップなゴアアクションで楽し。ポップコーンが弾けるように首がポンポン飛ぶよぅ!
しかし『キャット・ピープル』でも思ったけれど、あんなキスショットみたいな魅力的な吸血姫がいたら、バンバン人殺させちゃうよね!(断言)
17:猿の惑星 聖戦記
確か町山さんが、シーザーがモーゼ状態な出エジプト記的な話であるとか仰ってたと思うんだけど、キリスト教に基づいたお話ではあるのかしら? 人を人たらしめる云々を阻害する新たな病はバベルの塔のエピソードよりの拝借と考えると、あれは生物の霊長であると奢った人類に与えられた罰ですよね。そういう発想は非科学的ではありますが、とはいえ「こりゃ人間色んな意味でもうダメだわ」という描写しか繰り返されていないし、「せめてこの人間だけは助かってくれよ」という善なる存在もいないのでまぁ罰当たってもしょうがねーなという心持ちでしか同族・人間を見れなかったのであります(ひでー)。
作中でシーザーについて「目がほとんど人間だ」みたいな台詞があったと思いますが、その目は今まで以上に更にモノを言うというか、僕らが感情移入する大いなる一助になってると思うんですよ。目の芝居表現の大切さ、そして今のCG技術は、僕らを引きつけるそれが充分にできる事を改めて確認できました。
18:ブレードランナー2049
色々SF的な考察もできるんでしょうけれど、ラヴがジョイの命を絶った(あえてこう書く)その時、本作が革新的SF映画の続編だとかそういう事は僕には結構どうでもよくなり、ベタですらある復讐譚に「成り上がった」本作に妙な肩入れをして観てしまったのだ。
Kなんてレプリカントとして、人間からは散々疎まれ疎外されてる訳じゃないですか。オタクという「人種」だってそういう風にされてた時期はあったし、今だって個々人や地域の差などはあれ、それは残ってる。そんなKが「作られた存在」のジョイで心を癒やす様は、様々な創作物で心を癒やすオタクの様に重なる訳ですよ(もっと直接的に言えばあれはまさしく二次オタの姿でもありましょう)。自意識過剰マンなのは承知で物語を横に置いてでも、僕はKに共感してしまったし、だからこそジョイの最後の言葉に心を動かされねばならなかった訳です(実際あのシーンで落涙してしまい、その事実に我ながらびっくりしてしまった)
どれだけこのSF大作を矮小化して観てるんだよって話なんですけれど、恥ずかしながら、いい歳こいてそう受け取ってしまったものはもう仕方がないんですなぁ。本筋と離れてた所で変に心を動かされてしまった。
19:Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower
stay nightはセイバールート、凛ルートと何度も映像化されている訳で、いうなればスパイダーマンのベンおじさん何回死ぬねん問題的な箇所がどうしても発生してしまう訳ですが、今回桜ルートの映像化にあたってそこを大胆に処理してきましたね。想定される客層は、判ってる人々が多数とはいえ、「原作で描かれていた事を映像に落とし込むに当って、どう整理・洗練するか」という、原作ものにつきまとう課題を大変巧みに解決してるなぁと。どのシーンの描写に注力すべきか否かの取捨選択が洒脱なので、ゲーム経験者的には成る程と膝を打つ点が散見されました。
またstay night以降のヒットタイトルであるZeroやFGOも踏まえて作られており、それが作品・表現の豊かさにも繋がり、ファンサービスにも繋がるというあたり、王道を行くものの抜け目のなさを感じました。桜ルートでピックアップされる桜や慎二については好きなキャラではないので、見に行く前は正直あんまり乗り気ではなかったんですが、どうしてどうして。その二人の細やかな描写に新たな発見も見いだせて、収穫でした。や、だからといって好きなキャラになった訳ではないんですがw
20:ジョン・ウィック チャプター2
殺し屋時代に交わした誓いのお陰でNY中の殺し屋に追われるハメになったジョン・ウィックの殺人メソッド大お披露目大会。我々と同じ世界とは思えない、独自ルールに支配された裏の世界描写が楽し。
ジョンの近接戦闘テクニックは組技要素が大幅アップ。オモプラッタ射撃とでも言いましょうか、一人を組技で固めつつ、右手を空けて迫る敵を射殺というテクが面白い。ケレンのあるCQBガンファイトといえば『リベリオン』に端を発する、手で相手の技を捌きながら射撃というスタイルがありますが、本作ではスパイダーガードで相手を捌きつつ射撃やナイフ攻撃という、また1つ踏み込んだ新鮮なケレンファイトが見られてよろしゅうございました。世界観と面白ファイトの愉快さが正統進化していて、よい続編。でもジョンの置かれた状況はシビアすぎる……生きて……!
近接戦闘アクションがよくできておりましてね。近年流行りのリアルよりCQCスタイルにたっぷりのケレンを乗せたもので見応え抜群。クリスvsアリアスの導入はるろ剣リスペクトだ!
こういう実写アクションの延長にあるような見せ方のアクションとCGアニメは相性いいな認識できたのは収穫でした。ただやっぱり実写に寄っている分、背景などの作り込みが薄く見えてしまう点もあり(やりすぎると時間と予算が幾らあっても足りなくなるから仕方ないんだけど)、そういう所はショボく見えてしまったなぁ。
22:パトリオット・デイ
ボストンマラソン爆弾テロ事件をもとにした、ピーター&マークコンビの実録もの第三弾。ウォールバーグが一応の主人公としてメインは張ってるんだけど、本作はこの事件に関わった様々な人々の群像劇になるのかな、脇の人間の描写が良くって! 特にJKシモンズが演じる愛煙家の巡査部長がよかったね。あのシガー捌き! あと台詞なかったと思うけど、「8歳の子供に寄り添う」あの無名の警官。表情と仕草だけで彼の心情が伝わってきてねぇ、グッときましたよ。
また町中の銃撃戦が壮絶でした。ハンドガンだけでなくM4までぶっぱなす戦場のような凄まじさ。そんな中でもちょっとした「緩」の場面をひょいと挿入するのが面白い。
ウォールバーグが語る正義と悪の二元論は、やや乱暴にも思えてしまうのだけれど、それは僕がテロの被害を受けた事がないからというのもあるのでしょう。
23:アトミック・ブロンド
アクションはトレンドの近接戦闘型だけど、お話自体は古式ゆかしい、冷戦時代が舞台のスパイアクション。シャーリーズ・セロンがやってる、というのがポイント高いという向きもいらっしゃるでしょう。
劇中のTV番組が音楽のサンプリングについて取り上げていたけれど、有名スパイ映画の懐かしオマージュっぽいポイントもチラホラある中で、長回し風近接戦闘シーンやかつての流行歌をBGMに使うなどの流行りも取り入れていて、まさしくサンプリングみたいな作りの作品。
もちろんシャリ姐の腕っこきスパイぶりを楽しむというアイドル映画的側面もございましょう。えらいステゴロが強くてどこか冷めてるアイドルだけれどw あ、シャリ姐とマカヴォイがやたらタバコスパスパしてるのもいい。昔を描くならこーでないと。
24:バリー・シール アメリカをはめた男
トムがニヤケ面7割で演じた米史上最大の運び屋、バリー・シールの成り上がり物語。『オール・ニード・イズ・キル』のあいつがあのお調子のまま、賽の目の出が良かったばかりにスルスルとヤバいビジネスに成功してしまった、というようなお話。
ポリシーもイデオロギーもないバリーは、金の為なら武器&麻薬密輸の違法ビジネス道まっしぐらなんですが、それをおトムさんが妙にイキイキ爽やかに演じてるのであんまりヤなヤツに見えないんですよね。むしろ都合が悪くなったらバッサリ彼を切るCIAの方がひっでぇって思えるという。この手の邪道ビジネス成り上がり映画は、やがて破滅を迎えるのが常ですが、彼らは一様に仕事に対してはまっすぐで勤勉で、そしてとっても楽しそうで。どこか憧れてしまうんだよな、そうじゃない立場のおじさんとしては。
25:ドリーム
マーキュリー計画に関わった三人の黒人女性を描いた事実をもとにした物語。多様性を認めないというのは人道的にもダメな事だと思うんですが、単なる道義の問題だけではなく、社会損失にも繋がるのだという主張が、米国の科学の最先端に位置するNASAを舞台にしてる作品らしいというか。しかしその科学の最先端に位置するNASAですら、差別は明確にあり、それを覆したのは彼女たちの不断の努力であったという事実。
彼女たちの努力する姿や、それが結実する様は感動的ですが、とはいえ「NASAに入れるほどの超天才でもこれほどまでに努力を積み上げねばならぬのだ」という(ま、そりゃそうなんだろうけれど)事に、怠け者で凡人の僕は「ううっ、現実って厳しいなぁ!」とも今更ながらに思い知ったり。
あと三人が乗っている車や黒板への板書、NASA敷地内での東奔西走、空を見上げる等のシーンの天丼重ね(って言うのかしら?)が効果的で、各々のシーンの意味、受け手の感情への揺さぶりがより豊かになってたと思います。上手いなぁ。
26:ザ・コンサルタント
絶品の死んだ目を持つ男・ベンアフがその目全開で自閉症の殺人会計士を演じるアクション……と言い条、ベンアフ無双が観られるのは3シーンほど? もっと見たいなぁ!
自閉症の主人公の取る奇異(に僕ら「健常者」には見えてしまう)な行動が「あ、この主人公何考えてるかわかんねぇ……」という「畏怖」に結びつくのだけれど、作中でも言われてるように、それは「健常者」の勝手に過ぎんというか。主人公を類型的な「自閉症故にある能力に秀でた天才」に描くのではなく、マイノリティに寄り添った形で誠実に描いているのはいいですね。税金控除ポイント引き出しまくって食い詰め寸前の農家を救うシーンなんて最高じゃないですか。
ただ、主人公以外の登場人物の、ヒロインたるアナ・ケンドリック、会計士を追う捜査官と上司、ヒロインを消そうとする武装集団のリーダーがいまいち有機的に絡み合わないというか。アナケンは終盤出ないし、捜査官いなくてもいいんじゃないと思うくらい。
武装集団のリーダーも……まぁあんだけ印象的に兄弟の過去を描いてたら、みんな正体判るよね?(全然面影ないなーと思うけれどw)お前ら今までの命をかけたやりとりをあっさり置いておいてまとまっちゃうんかい?!とも思っちゃう。 なーんかミョ~な映画でしたワイ。
27:ドクター・ストレンジ
今までのMCU作品とも繋がってはいますがその描写は薄く、これ単体で充分楽しめます。予告にも観られる高層ビルをぎゅんぎゅん捻じ曲げる幻惑映像や、ストレンジがエンシェント・ワンに見せられるマルチバースの一端は、サイケデリックなビデオドラッグな映像そのもの。
「凝り固まった」ストレンジがやがて「自分の殻を破り」悟って真の魔術師になるという成長譚なのですが、テーマに沿わせて成長してるように見せるにはやや性急、というか描写不足にも感じたかなぁ。でもテンポはいいです。
ラスボスとのタイマンシーンでの、アガモットの目を用いた永遠の延長戦は、ストレンジが背負った地球を護る魔術師としての悲壮な覚悟に感動すべきか、天丼として笑うべきか、若干悩んでしまいましたよw
28:IT それが見えたら、終わり
恥ずかしながら原作も過去の映像作品も通過してないんですが、これ、言ってしまえばオカルト風味スタンド・バイ・ミーなんですね。あぶれもの達が絆を深めていく様子、そしてラストのイニシエーションなんかは印象深いですね。ペニーワイズがみょーに弱かったですけれど。
しかし原作を知らん身なので驚いたのですが……続くんかい!
29:ハクソー・リッジ
銃を持たず、人を殺さずを誓った衛生兵、デズモンド・ドスという実在の人物を主人公にした作品。前半はそんな軍人にあるまじき誓いを立てた男が如何にして前線に行くのかを描き、後半はひたすら泥沼な戦争を見せつける二部構成。前半でしっかりデズモンドの家族や恋人、そして隊の同僚について描いてるから、後半の戦闘シーンでそれが効いてくる。だからこんなに頑なに銃を持たないのか! ああ、あの愛すべきアイツが虫けらのようにやられていく! とついつい引き込まれる。丁寧な仕事だ。
景気よく肉が爆ぜ死が満ちる戦場を観客にさんざん見せつけた後に、使命に目覚めたデズモンドがそこに戻っていくんだもの。いつ日本軍がやってくるかもしれぬ地で、休みなく夜を徹して人命救助を続けるその姿に、人は信仰の力を見出し、英雄と称えるのかもしれないけれど、僕には戦場で銃を持つという“正気”を否定した男の見せた“狂気”にも見えて。この英雄的行為と狂気は裏表ですよ。
ウジが湧きネズミがたかる死体の山に始まって、上半身だけになった死体を盾に前進したり、地虫のように穴から日本兵がわらわら湧いてきたり、ハイローやアベンジャーズ2のように、米兵と日本兵が画面の端と橋から突っ込んで画面中央で激突したりとブルータルな戦争映画スペクタクルに満ち満ちていて、誤解を恐れずに言えば大層楽しいのだけれど、ちょうど観たのが沖縄慰霊の日の翌日な事もあって、日本兵がバタバタ死んでく様を見るのもなんだかフクザツではありました。
30: KUBO 二本の弦の秘密
恥ずかしながらライカのアニメを観るのはこれが初めてなんですが、まぁ凄まじいですな。これ、言わなきゃストップモーションアニメだってわかんないすわ。CGアニメっすわ。丹念に積み重ねられた執念の結晶。そりゃ「瞬きすらしてはならぬ」よなァ。
個人的にはその「言わなきゃストップモーションアニメだってわからない」感じがやや不満で、もうちょっと作り物っぽさと言いましょうか、そういうのを匂わせてもいいんじゃないかなーと思います。僕、ハリーハウゼンの映画なんかの実写の中に違和感を感じるモノがモリモリ動くあの感覚が凄い好きなので……。あるいは人形劇を見る感覚というか……。月光の下でのシーンはやや作り物感が増してた気がするからライティングで見え方変わってくるのかなぁ。や、完全に個人的な趣味の話です!
31:ジャスティス・リーグ
完成までに何度か追撮や編集の手が入ったという本作ですが、そのせいか矢鱈にテンポがよく進んでいくので120分あるのにとても見やすいですね。各キャラが悩みや弱みを抱えていたりするのですが、深刻になりすぎずにスイスイ克服していくぞ。
そのテンポの良さと引き換えなのか、見やすくはありますけれど、コク深さが足りないというか。描写不足に感じる部分も多々あり。各キャラクターが魅力的なだけに勿体無い。ザック版なら……とつい思いを馳せてしまいますが、それはそれで叩かれるんだろうなァw
MoSで地球に降り立ち、BvSで死に、そして本作で復活、家族以外の仲間を得たカル=エル。三作通してみると、これまでのDCEU作品は、彼が名実ともにスーパーマンというシンボリックなヒーローになるまでのお話だったんだなと判り、感慨もひとしお。
32:ダンケルク
戦記物、あるいは戦争に対してのメッセージ映画ではないのでょう、戦場を目撃する体験型映画といった方がいいのかもしれないですね。その割にはサスペンスの為の過剰な仕掛けを避けて作られてるような気がしました(音楽は露骨だったけど)。
エンタメ方向から見れば抑制ぎみの演出という事なのでしょうけれど、それはあえて行っているのでしょうし。ここをどうとるかで評価が変わるのかも。や、充分体験型映画としても優秀だとは思うのですが、僕にはあんまり後に残らない映画に思えました。
とはいえラストのスピットファイアのあのシーン、あそこはやたらに詩的でびっくりしてしまった。あそこだけなんか別格。
33:バーニング・オーシャン
事件が起こるまで大体1時間くらいたっぷり使ってるんだけど、「うわ…これやばい方向に向かってるわ…」という不穏さを徐々に煽っていくスタイルなので退屈はせず。現場主任のジミーが7年連続安全賞だかを受賞して、皆が喜んで祝ってくれてるのを背にし、懸念案件にGOを出す引きのショットのなんて皮肉で意地悪い事か。
後半はスペクタクルここに極まれりというくらいに景気よく泥水噴出と爆発、火炎のオンパレード。凄まじい地獄を作り出しているのだけど、ドラマをそれに合わせて英雄の美談として盛り上げようとか、この原因を作った者を断罪しようとか、そういうんではないんですね。起こった事故に対して、登場人物がプロとして事を解決の為、あるいは生き残る為の行動をただただ描くというか。
34:おじいちゃんはデブゴン
65歳のサモ・ハンが歳相応のおじいちゃんを演じた、『アジョシ』風味の「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした」系ムービー。サモ・ハンももうお歳ですから、アクションシーンはスロー多用、飛んだり跳ねたりも特にしないのですが、ひたすらにハプキドー風CQBで敵の骨をポキンポキンに折りまくる描写は小気味よし。
サモ・ハンが演じるディンは認知症で、常時どうにも呆けた様子なのですが、かつて守れなかった孫を想起させる少女・チュンファの危機を見て、文字通り覚醒した時の目の芝居!「あっ、現役時代のスイッチに繋がっちゃった……ヤバイ……。」という空気を醸し出せるのは流石サモ・ハンですよ。
少女や大家のポクとの交流シーンも僕もそれなりに歳を取ったという事なのでしょう、素朴な描写がなんだかじんわりきてねぇ。緩いっちゃ緩い出来なんだけど、嫌いになれないなぁというか。
35:オリエント急行殺人事件
この有名な作品、大仕掛けを知ってると驚きは無く辛いかな、とも思っていましたが、会話劇の面白さと絵作りで引っ張っていくスタイルで退屈さは感じませんでした。特に列車という舞台を活かした、あ、こういう撮り方、見せ方あるのかという、面白くも品のあるカメラワークと、そしてこれまた列車ものという設定を活かした、美しい風景をロングで見せていくショットがよろしゅう御座いました。
彼方より来たりて、そして去っていく。列車の宿命と物語の結末をリンクさせたような、物悲しくも美しいラストを見て、ああ、一見の価値はあったなぁと。シェイクスピア俳優のケネス・ブラナーらしい?、懐かしさも感じる(でも決して古くは感じない)王道を征く作品。
36:GODZILLA 怪獣惑星
シンゴジラ以上の凶悪怪獣を描いてるのに、今ひとつその強大さが伝わりきらなかったのは、既に文明崩壊した大自然の中でゴジラが暴れてるからじゃないかなーと思いました。怪獣映画の華といえば現実対虚構、怪獣による文明蹂躙ですが、そびえ立つビル群も敵怪獣もおらず、せいぜい戦車程度の大きさの兵器をビームで蹴散らすくらい。かように力の差を示す対象が質・量ともに弱いので、かえってゴジラの強さが伝わりきらないんですね。
とはいえ、アニメならではの絵作り(勢いのある空中戦カメラワークは楽し)は面白く、またこのSF設定が生きるのもアニメだからでしょう。や、海外で唸る程金出して作れりゃ別でしょうけれど、それは土台無理な話ですし。アニメである必然性があるゴジラ映画。
けれど、この「怪獣惑星」は、クライマックスの超巨大ゴジラ登場までの前フリに過ぎぬというか、結局この1作だけでどうこう言えるものではなくなってしまいました。次作、完結?作が楽しみ。
37:HiGH & LOW THE MOVIE 3:FINAL MISSION
アイディアたっぷりのアクション、矢鱈に勢いがある訳の分からないワード(カジノ建設の爆破セレモニーってなんだよ…)、キャラクター達の格好よい見せ場、タイミングドンピシャで気持ちよく流れるテーマ曲は相変わらず。それらが発揮されているシーンはどうにも盛り上がってしまうのだけれど、やはり「お話を収束させる」という至上命題がある以上、そんなシーンのボリュームは減り、物足りなさを感じるのは確か。
そして、これも「相変わらず」だけど、脚本がやっぱり雑。???と頭を傾げざるをえない点が多すぎ、テンションが下がる。そうなるとやっぱりアガる見せ場のボリューム不足がより一層響いてくるんですね。脚本の妙味を味わう作品ではないと承知してはいるけれど、どうにも残念。
カチコミ前のメインキャラ達の独白は、キャラクターを借りた中の人達の独白でもあるのでしょう。そういうのは嫌いじゃないし、不良軍団たちにEXILE軍団を重ねつつ物語を作っていったのだな、「誰よりも高く飛ぶ」などはLDHの決意表明でもあったのだろうな、とも受け取れたので、若者の奮闘ぶりにはおじさんジーンとはきてしまったよ。
38:ワンダーウーマン
面白いには面白いし、ガル・ガドットの華、勢揃いアマゾン女傑軍団の力強い格好良さ、クリス・パインのヒロインぶりとか褒めたい部分はあるけれど……うーん、世界的な評判を受けて期待はしてたのに、それほどでもなかったなぁというか。どこがそんなに凄いのかよくわかんなかったなぁ。
女丈夫が男尊女卑の人間社会に痛烈にカウンターをカマす様を見たかったし、僕がDCEUでいつも感じている、爽快で豪快な映像の格好よさも味わいたかったんだけれども。前者にはそれほど深く踏み込まなかったし、後者についてもラストバトルが一番ビミョーってどうなのさ! なんの新味も感じないし、スピード感もないし……ラスボスもCGで処理するんなら顔はオッサンのままにしなきゃいいのに……。
39:パワーレンジャー
パワレンに選ばれし5人は皆あぶれもの、マイノリティ。彼らが抱える悩みや、それを告白し絆を深めるシーンには自分を重ねてしまい、不覚にも落涙してしまった。問題はそういう悩みなどが、ヒーローになる・なった際に解決に繋がる訳でもなく、何も活かされてないんだなぁ。ブツ切りでカタルシスがない。ジョシュ・トランク版ファンタスティック4を思い出すような展開の遅さの果てにこれでは……。
とはいえ『GO GO Power Rangers』が流れた時はやっぱりイヤッホォーーイ!とアガってしまった。音楽の力は強い&ズルい。あと日本の特撮に比べたら破格ではあるのでしょうが、予算の無さは随所に透けて見えました。
吹替は赤と桃は、悪い意味での「芸能人吹替」だったなぁ。山里亮太は役にあってて良し。青の杉田智和は流石の芸達者ぶり。そして今イキの良いエロ悪女をやらせたら他はないという沢城みゆき大先生の芝居は出色。ありがとう!
40:夜は短し歩けよ乙女
『四畳半神話体系』スタッフらしい作風は面白く、奇妙な絵が連発されてクラクラ。しかしもっと先輩と乙女のやり取りにフォーカスして欲しいとも思った(先輩、意外に影薄い)。凜としながらもちょっとズレてて、それでいてやっぱり可愛らしい乙女には好感触。
乙女のこれまでの積み重ねが実になるクライマックスは感動的だけれど、もっとその積み重ねをじっくり見せる尺があれば、物足りない……という印象。映画よりTVシリーズの方が良かった? あと星野源使ってるなら主題歌も歌って欲しかったなァ。
『時かけ』しかり、『君の名は。』しかり、青春SFものの傑作は、その大仕掛けに一応の納得がいく物語になっていたり、あるいは違和感を感じさせないくらいのエモーショナルな高まりを感じさせる作りだったりするものですが、そのどちらでもなく……。牽引力に欠ける脚本・演出でした。キャラクターに魅力を感じる、あるいは共感を覚える前に、なんだかぼんやりと時は経過しクライマックスに辿り着いてしまう。最終的にはある程度盛り上がりはしたけれど、時すでに遅し。あの欠片が「あり得たかもしれない無限の可能性=未来」の断片を見せるシーンは好きなんだけどなァ。
声優ではない菅田将暉、広瀬すずの両名は、普段はリアリティラインが違う実写で芝居してる人たちなんだから、アニメに合わなくて当然なんですね。でもやっぱり根本の演技力はしっかりしてるんだなぁと関心させられるポイントが何度も。ちゃんと腕のある方々なのだと実感できました。そして脇でその二人を支える宮野真守の名バイプレイヤーっぷりに、俺ァ感動しましたよ。惚れる!
褒めたい部分は細部に幾つもあるのだけれど、幹の部分がしっかりしてない歪な印象の作品でした。もったいないよ。
42:ザ・マミー 呪われた砂漠の王女
ハムナプトラ+スペースバンパイア+クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイアといった感。ダーク・ユニバースという新たな世界の始まりにしては新味に欠ける。事件が起こるのは大体トムのせい、因果応報なのは判るけど、あの盗賊オチはもうちょっとそれまでに伏線張っておいてほしいなぁ。トムをキートン先生ばりに手癖悪いヤツにしておくとか。
ヘンリー博士の部屋のプロップはちょっとワクワクしたけれど、次のダーク・ユニバースに繋がりそうな予告的なものは特になし。まぁどうもユニバース計画自体凍結っぽいけれど。
43:エイリアン・コヴェナント
正直リドリーが描きたい事がよくわからず。キリスト教をモチーフにしてる……のかなぁ?というシーンも(僕がキリスト教詳しくないのでテキトーですが)あり、それを踏まえた上でリドリーが自分なりに神話(例の俺ユニバースのヤツ)でも作るとかいう事なのかなー。でもそれって、『エイリアン』を観に来た観客は肩透かしを食らうよね。俺ユニバースの構築でハッスルしたいんなら、エイリアンの看板外して他所でやった方がいいんじゃないの?
しかしエンジニア星人の扱い雑すぎだったなー。エンジニア星がエイリアンの巣になったんなら、『エイリアン3』のボツネタの、地平線の向こうから雲霞の如くゼノモーフが押し寄せてくるヤツ来るか?!と期待したんだけど、そんな事はなかったぜ!
44:メアリと魔女の花
スタジオポノックという制作会社の第一作目。「スタジオジブリ」の名前がどうしてもチラついてしまうのが人情というものですが、そのジブリからの脱却宣言かのような作品でした。作中ではジブリ作品のオマージュのような描写が散見されます。空飛ぶ魔女に黒猫といえば魔女宅。巨神兵めいたモンスター、ラピュタ、龍の巣、バルスetc……でも観た人なら判りますよね、オマージュされているそれらは最後に全て……。エンディングでメアリが描いた絵は、新たなメンバー(スタジオ)での旅立ちも示しているのではないのかな、と思います。もうあの制作会社の名前という「魔法」に拘る必要はないでしょう(ご商売上、プロデュース側的にはそうもいかんでしょうが……)
しかしお話的にはもう1つパンチに欠けてしまったかなという感じです。ここぞという盛り上がりがなく、名シーン足りうる場面もなし……。全体的にのっぺりしてますよね。冒頭でメアリの長所と短所を見せ、「こいつおっちょこちょいだけど悪いヤツじゃないな、好感が持てるな」と思わせる手腕は良いんですが、欠点がその後の物語に絡んでこないのも勿体ないなーと。克服によるカタルシスでもあればいいのに……。
EDクレジットの終わり際、高畑勲、宮崎駿、鈴木敏夫の三人の名前が。その括りが「感謝」なのには笑ってしまった。まぁ「スペシャルサンクス」とか表記したら怒られそうだもんなぁw
45:ゴースト・イン・ザ・シェル
攻殻実写版。原作風味もあり、押井版風味もあり(ちなみに神山風味なし)。とはいえ、それらの「ややこしい部分」を削って、なんとかいちSF作品として「成立させた」感。ただその「ややこしい部分」ってのは「魅力」でもある訳で。扱いが難しいのは分かるけど換骨奪胎したら骨がどっか行っちまったんですな。
この監督、攻殻好きなんだよねきっと。その気概は伝わってくるんだけど、成立させる為に色々オミットした結果、どうにも中途半端に。
あと、これはもう時代的にしょうがないんだけど、今攻殻みたいな世界を実写で描いても、全然目新しく見えないんですよね、残念ながら。
46:ひるね姫 知らないワタシの物語
夢と現実、魔法とテクノロジーがクロスし、親子三代を結びつける物語……にしたかったんだろうけれど、どうもそれぞれが今ひとつ噛み合わずちぐはぐだった印象。最後まで熱が伝わってこなかった。
『時かけ』『君の名は。』にもあるような、作品を象徴するギミックが本作にもあり、それが「眠り」なのですが、それにより夢と現が曖昧になるはずが、果たしてそれを活かした面白さ、不思議さを出せていたかというと……(あれよく考えたらこのギミック、昼寝に限らないじゃないか。タイトル……?)。
夢と現実の境が悪夢的に解けていくシーンには、今敏監督の『パプリカ』のような凄みを期待したのに、残念。パシリムもどきシーンもセンスが合いませんでした。絵の動く快感というアニメ的な面白さはそこかしこにあったのは◯。
47:虐殺器官
映画を見る限りでは、ジョン・ポール邸でのクラヴィスとジョン、クラヴィスとアレックスの会話がこの作品のキモだとは思うのだけれど、僕がアホな所為もあって、理屈を理解するのであっぷあっぷになっちゃう。この作品、文章でじっくり噛みしめるのが一番なんじゃないの、というのが第一の感想。クラヴィス&ジョン&ルツィアの会話シーンは見せ方も退屈だよね(『ハーモニー』の悪夢再び!)。
そもそも僕は語られたあのテーマについて、20世紀以降、物理的にもネットワーク上でもあまりに高速に世界とリンクできてしまうようになったが故に生まれてしまった、人間の解決できるレベルをひょいと飛び越えたどうにもできない問題だと思い、諦め、思考停止してしまっているので、早口で理屈を唱えられても乗り切れなかった、というのもあります。文章なら自分の考えなどを省みつつ咀嚼できたかもしれない。この映像表現でどれだけの人間に伝わるのだろうー!(僕の読解力が低いという可能性も勿論ある)
あと細部の表現にも疑問符つく点多いなぁと。序盤、アレックスが将軍を射殺するシーンは、どう観ても味方のクラヴィス諸共撃ち殺そうとしてるとしか思えない。クラヴィスの潜入シーンも、折角光学迷彩めいた装備をしてるのに、動く度に無造作に音立てまくってて、迷彩の意味がない間抜けに見えてしまう……。面白いミリタリーギミックが多いのは良いんだけど、痛覚遮断した兵士同士の戦いも、そうじゃない兵士のものよりよっぽど泥沼の地獄を演出できそうなものなのに妙にあっさりしてるのよね……。
クラヴィスがルツィアになぜあそこまで惹かれてしまったのかもよくわかんなかったなぁ。時間の都合でだいぶあっさりさせたんでしょうか。美術は好きだけどそれだけでは保たぬ。『屍者の帝国』『ハーモニー』よりは良かったけど、終わってからやっぱり狐につままれたような気分になりましたとさ。
以上、47作品。どうも親子ものに弱かった1年だったように思えますね。
2018年も良い映画に出会えますよう。
2016年映画ランキング
新年あけましておめでとうございます……なんて書き出しで書いていたのに、ああでもないこうでもないとダラダラしてたらもう2月。ああ! ……ともかく、2017年もよろしくお願いいたします。
※注意※
・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。
・このランキングは「現時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。
・寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。
◆2016年ランキング
1:オデッセイ
2:ちはやふる 上の句
3:この世界の片隅に
4:君の名は。
5:シン・ゴジラ
6:バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生
7:同級生
8:ローグ・ワン スター・ウォーズストーリー
9:レヴェナント 蘇りし者
10:クリムゾン・ピーク
11:ブリッジ・オブ・スパイ
12:ちはやふる 下の句
13:ドント・ブリーズ
14:アイアムアヒーロー
15:帰ってきたヒトラー
16:デッドプール
17:ロスト・バケーション
18:傷物語 Ⅱ 熱血篇
19:ザ・ウォーク
20:ボーダーライン
21:シビル・ウォー キャプテン・アメリカ
22:スター・トレック BEYOND
23:X-MEN アポカリプス
24:ズートピア
25:HiGH & LOW THE MOVIE
26:聲の形
27:傷物語 Ⅰ 鉄血篇
28:エンド・オブ・キングダム
29:ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影(シャドウズ)
30:マダム・フローレンス! 夢見るふたり
31:HiGH & LOW THE RED RAIN
32:SHERLOCK 忌まわしき花嫁
33:ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
34:ルーム
35:スーサイド・スクワッド
36:ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
37:ゴーストバスターズ
38:殿、利息でござる!
39:ザ・ブリザード
40:劇場版 ガールズ&パンツァー
41:バイオハザード ザ・ファイナル
42:グランド・イリュージョン 見破られたトリック
43:ドラゴン・ブレイド
44:ジェイソン・ボーン
45:貞子vs伽倻子
46:Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
47:インフェルノ
48:超高速!参勤交代リターンズ
49:アウトバーン
50:KING OF PRISM by PrettyRhythm
51:ポッピンQ
52:白鯨との戦い
53:インデペンデンス・デイ リサージェンス
◆寸評
1位:オデッセイ
面白かった! リドリー・スコット作品で一番好きかも。
深刻な状況にたっぷりハラハラさせられるんだけれど、冗談を忘れぬ不屈の男、主人公のマーク・ワトニーとノリのイイ70’sソング、そして他の宇宙パニックものの漆黒の闇とは違う、火星の赤々とした景色が物語を陰鬱しすぎないのも良し。
火星に取り残されるという絶望的状況を、知恵と工夫のDIY精神で乗り切る主人公。トライ&エラー&ネバーギブアップ&トライ、みたいな。生き延びるために学び、挑み、戦え! さすれば道は開かれん。見せてやるぜ、人のみが持つ無限の可能性を!
これはリドリー・スコット監督の人生訓作品だ、と考えるのは安易かしら。でも、熱い心意気を受け取った気がするんですよね。なんだよリドリー、今までの作品観てたら、アンタは人間の事嫌いなんだと思ってたけど、こんな素敵な人間賛歌を作り出すなんて! 疲れた大人も子供もこれを見な! 俺たちはこれからも学び、挑んでいくんだぜ! EDのグロリア・ゲイナーの『I Will Survive』に涙、涙。
♪I'll stay alive.(私は生き続ける)
♪I've got all my life to live.(生きるための人生があり)
♪I've got all my love to give.(誰かに捧げる愛があるのよ)
2位:ちはやふる 上の句
2時間という限られた時間なので、オミットされている点は多々あるけれど、一つの映画作品としては全く問題なし。むしろ原作漫画、あるいはアニメを超えてさえいるのが、キモのかるたシーン。
読まれる上の句……一体下の句は何だ? ……張り詰めた緊張が空間に凝縮され、それが極に達した時、決まり字が読まれる……刹那、交差する視線と視線、手と手、響く快音! 取られた札が勢い良く舞い散る! 競技? いやいやこのエクストリームかるたは戦いだよ! 剣豪同士の決闘だ! 冒頭からかように、競技かるたの醍醐味を堂々真正面から観客にカマしてくれるので、一気に引き込まれます。緊張と開放の使い方が凄く上手。原作でもアニメでも、言うちゃ悪いけどこんなにかるたシーンに説得力はなかった。リアルな肉体の力強い躍動と演出が創りだす妙!
キャラクターをみんな魅力的に描いてくれてるんですよね。特に太一の葛藤を丁寧に描き、クライマックスの試合でそれを解消し、理由ありきの勝利にしてくれるので、カタルシスが爆発するんですよね。原作に無い、太一の「運の無さ」の理由描写の洒脱さ。ぺらぺら喋らせてお涙頂戴にしないのも良い。机くんの「必要とされた事なんてなかった」のくだりも泣けるなぁ。
青春映画、そして漫画実写化映画の傑作だと思います。漫画やアニメで実写化して、良かった作品なんてない? じゃこれ観よう!
3位:この世界の片隅に
昭和初期の広島。戦時中と言い条、人は毎日ご飯を食べ、働き、笑い……主人公・すずの愛すべきパーソナリティーも相まって、描かれる日常の細やかなおかしみや喜びにぐいぐい引き込まれる。
しかしのんびりふんわりと生きてきた彼女も戦火をこうむり、大きな喪失を味わう。すると彼女は今まで殆ど見せなかった感情を見せ始めるようになる。この世界は残酷だ。少女はいつまでも少女でいられない。訪れる大きなカタストロフに、大きな世界の転換。しかしそれでも日常は続く。喜怒哀楽を受け入れ、“居場所”で生きていく。その生きていくという事の肯定と輝きに満ちたエンディング(原作補完までしてくれた!)、素晴らしかったです。
よく「泣ける!」と評される本作ですが、僕は物語の中で起こっている事については泣けなかったんですよ。でも終盤、スクリーンの中で生きている・生きていくすず達を観ていて、「ああそうだよな、こうした人達が営みを繰り返して、昔から今に繋いできたんだな」とふと急に実感として思えてしまい、そうしたらなんだか涙が湧き出してきてねぇ。僕はこの歳でまだ何も受け継がせてない・残してない人間なので(それは人それぞれで、恥とか義務を果たしてないとかそういう事でもないとも思うけれど)、そういう事を果たしている人への尊敬と感謝を、若い頃よりも感じるようになった今の自分にはね、なんだか響いたんですよ。
すずさんを演じるのは、能年玲奈こと、のんさん。冒頭にある、すずさんのモノローグ「よく周りにボーッとしてると言われる」の一言の鈍くさそうな感じといったら! 描かれる細やかな感情の機微をきっちり表現できるのですもの、女優ですわ! 色々ご事情あるようですが、今後のご活躍を願うばかり。
暖かで愛らしい絵に、のんさんの確かな演技がのったすずさん。ぶっちゃけね、萌えます。これはかわいい! 僕結婚願望あんまり無いんだけど、すずさんはいいなーと、こう…ね! そしたら片淵監督が「配偶者がほしくなる映画」を目指しました。とつぶやかれるのだものw まんまとのせられましたわー(笑) 本当すずさん、守ってあげたいし、終盤の成長した姿も素敵。もっと萌え視点でも語られるべきですよこの作品!
4位:君の名は。
SFを下地に、時間や空間、さまざまな距離のもとに思いが交錯する男女の物語、というのが新海誠監督作品の持ち味。ビターな結末が多いというのも、その一つですね。
新海誠作品はその持ち味に惹かれた熱心なファンを獲得していますが、どこかマイナーだったように思われます。所謂メジャーなエンタメとは言い難いものだったというか。しかしこの『君の名は。』は、新海監督の持ち味を存分に発揮させた集大成とも言える作品ながらも、メジャーエンタメ作品として通用する普遍性・大衆性を持ちあわせているというのは、今更僕が言うまでもないでしょう。
入れ替わりものとしての物語が続く中盤までは、物語としてそこまで新海色は出ていおらず、肩透かしをくらったよう思えますが……。瀧と三葉の入れ替わりに三年のタイムラグがあり、彗星の落下で既に三葉は死んでいた、という急展開。一気に物語の景色が変わるサプライズから新海マジックが爆発! 宮水神社のご神体のある山頂で、誰そ彼の光の中、時間と空間を越え、思いが繋がる!
……の後も話は続くんだよ今回は! てっきりここで思いは繋がるもやはり二人は元に戻り、結局糸守町の住人は全滅だと思ったもの。そこからちゃんと物語を続け、三葉の奮闘、二人の分かたれた切ない思いをさんざん見せつけ、「どーなるどーなる?」と僕らを散々悶々とさせながら溜めを作った上で、さらに歩道橋の上で一回すれ違わせておいてかーらーのー、因縁の電車でのすれ違いによる再開だもの! こーれはキモチイイよフゥーゥ! で、タイトルに繋がる二人のあの台詞だもの。カタルシス爆発!
これ!この皆をちゃんと楽しませるサービス業としてのエンタメですよ。しかも前述の通り、誰が観ても新海誠作品だわ!って納得させた上でですよ! 新海さんの作品は好きですが、明確なハッピーエンドの作品も見たいと熱望してた僕には嬉しい限り。
「君もいつかちゃんと、幸せになりなさい。」という奥寺先輩の台詞がありましたが、それはお話の帰結としてだけでなく、この作品自体もお客さんに愛される幸せな作品になったんじゃないでしょうか(奥手な人ばかりの田舎の劇場で、まさかの拍手が起きた!)。この言葉は監督から観客へのメッセージであり、願いでもあるのでしょう。
5位:シン・ゴジラ
今までのシリーズより、リアリティーの度合いをグッと上げて、ゴジラ日本上陸という大事件を対処したり、翻弄されたりする人間の様を描いた作品。『突入せよ!あさま山荘事件』と『プロジェクトX』を足したようなというか。テンポがよく、そこかしこにおかしさすらある会議シーンは楽し。巨大怪獣もし上陸したならば、というシミュレーションを入念に追求してやってくれるものだから、(東日本大震災というモチーフがあるとはいえ)あっ、そうか実際はこうなるよなぁ、この絵は怪獣映画で観たことないなぁという新鮮なショットが散見されたのが嬉しいですね。
シリーズ中最凶最悪だと感じさせてくれる暴君・ゴジラが、東京を蹂躙し、破壊し尽くす様には絶望させられましたし、「でも、やるんだよ!前に進む他ないんだよ!」と、その絶望に対抗する日本人の奮闘には、グッと来ましたね。
いわゆる一般的な「怪獣映画」のイメージとは違う変化球だとは思うのですが、しかしゴジラは作品全体を支配し続けており。やはりこれ立派な怪獣映画でしょう。面白かった! この手はこの作品でしか使えない、次同じ事はちょっとやれない一度きりの魔法のような作品だと思いました。
やっぱり僕はザックが作る画面が好きだよー! アメコミが動いたらこうなるんだろうな、と膝を打つシーン多数。劇場のスクリーン映えしていて、これぞ映画館で映画を観る醍醐味だなァ。この映画、粗はいっぱいあるのは承知なんだけど、痺れる絵面がズバスバ出て来るので好きなんですよ。「ああ、あのシーン格好良かったなぁ、あのシチュエーション良かったなぁ。」とずーっと反芻していられる、そんな映画。僕にとっては、さらにデカいバジェットで作った『HiGH & LOW』というか。たびたび言及される、レックス・ルーサの屋敷の厨房横にサーバールームがあるのヘンだよ問題も、あのルーサーがそんな真っ当な屋敷を作る訳ないだろ、で論破できるんですよ!(暴論)
闘いの果てに、物語は光の超人の死という結末を迎えます。しかし20年戦い続け絶望した「闇の騎士」に、その「光」が希望を与えたのには震えました。「光」を失い、今が一番暗い時かもしれません。が、我々は確かに「正義の夜明け」を目撃したのです! 集え、正義よ!
7位:同級生
中村明日美子の同名漫画のアニメ化。総作画監督があの林明美さんだけあって、あの明日美子先生の繊細なタッチが文字通りそのまま動いてる! 前述のBvS評ではないですが、そうだよ、漫画は動かないけど、動いたらきっとこんな動きだし、コマとコマの行間はきっとこんな絵だよー! 説得力高い! 勿論キャラ作画だけでなく、背景やガジェット、演出も含め、全力で明日美子ワールドを作り上げるぞ、という熱が画面の隅々から伝わってきます。始めて本作を読んだ時に感じたあの空気をまた味あわせてくれるほどに……。単純にアニメ作品としてもレベル高いので、男性アニメファンにも見て欲しいなぁ!
実力あるスタッフが世界の構築に力を尽くし、最高の画面が出来上がり…そしてそこに芝居がのっかる。や、正直原作読んでる時は、草壁=神谷さん、佐条=野島(健)さんとは全然違う声を想定してたんだけど…やぁこれは草壁に佐条ですわ。
神谷さんはしゃべり倒す役を色々演じてこられてますから、台詞表現の組み立てが達者で豊か。こういうの、生きのいい芝居とでもいうのでしょうか。野島さんは役の立場上、抑制的な芝居が主ですが、きっちりポイントを抑えて情感を出してらっしゃる。素晴らしい……。
ボンクラ腐目線で言うなら、守護霊視点で「がんばれ!」「カワイイなぁ」と素直にいい匂いしそうな男子高校生2人を見守れる至福。もう本当、ニヤニヤドキドキしっぱなしでした。劇中三回程ある、キスのあとの見つめ合い、良かったねw ときめくー!
8位:ローグ・ワン スター・ウォーズストーリー
正直中盤までは若干ダルくもあるのですが……クライマックスの設計図奪還ミッションからは燃える燃える! SWは父(の立場の人)と子の継承の物語で、本作もそうではあるのですが、もう一つ、別の継承の物語があるのです。ローグ・ワンのメンバーが、針の穴を通すようにインポッシブルなミッションを攻略し、それは同盟軍兵士に繋がり、そして……。ああ、これはこういう意味だったのか! ファンなら膝を打つこと間違い無しのこの展開! ありがとう、ありがとうギャレス・エドワーズ!
シリーズに無かった新鮮なルックの格好いい絵面が、戦闘シーンで沢山見受けられたのは良かった。SWゲームのバトルフロントの影響もあるかもね。
9位:レヴェナント 蘇りし者
息子を殺したトム“鬼畜”ハーディーを絶対殺すマンと化したレオ様の鬼気迫る熱演で、ラストまでぐいぐい引っ張る復讐譚。凄まじかった……。
『北斗の拳』の「執念が俺を変えた!」という名台詞の如く、息子を殺されたレオ様が尋常ではない執念を背負い、体当たりの肉体表現でそれをひたすら体現しまくってます(台詞らしい台詞は中盤ほとんどないもんね!)。これでオスカー取れないなら永遠に取れないと思わせる程。
その尋常ではない執念に立て続けに襲い来る困難困難、また困難を、これも尋常ではないカメラワーク(相変わらずのどうやって撮ってんだコレ、のエマニュエル・ルベツキ!)で追いかけ続ける。レオ様演じるグラスが 「1度死んだ身だからもう死は怖くない」みたいな事を仰るけれど、あんた10回は死んでたよ! そんな死のジェットコースターの合間合間に、ハッとする程に自然の美しい風景を捉えてたりするんだから如才ないすなぁ。
あとvs熊シーンね! こんなに熊が人間を襲う様を丁寧に・執拗に描いた映画はちょっと無いんじゃないかなぁ。熊に襲われて生き延びた人の「熊に背を向けて亀の状態になったからなんとか助かった。仰向けだったら腹割かれて死んでた。」という生々しい証言を思い出したよ……。
10位:クリムゾン・ピーク
いやー凄まじい美術・造形物。妖しの魅力をはらんだシャープ家の屋敷を現出させただけでも拍手。この館とクリムゾン・ピークという土地にすっかり魅せられてしまいました。作りこみが狂気の沙汰レベルですよ!
メインの役者陣も秀逸ですよね。ソバージュヘアの間より見える、眉間にシワを寄せた苦悩の表情がハマっていたミア・ワシコウスカに対するは、トム・ヒドルストンの麗しの異相。そしてジェシカ・チャスティンは珍しい?怪奇派を演じていましたが、どうしてどうして。黒衣から見える白い肌、真っ赤で大きな口がインパクト大です。皆ルックス完璧!
この作品は雰囲気に、世界にただただ酔う為の映画でしょう。悪い意味ではなく、素晴らしい「雰囲気映画」でした。
11位:ブリッジ・オブ・スパイ
原爆の機密情報をソ連に漏らしたスパイを弁護する事となった、一人の弁護士に纏わる史劇・政治劇。自国に原爆の危険をもたらした男を弁護するという行為は正義か否か。
守られるべき倫理よりも感情の爆発が目立つ事を、僕たちはネット上でいやという程経験していますが、そういう時代にこの「不屈の男」の物語の心強さ。我々は彼ほど決然と信義を守れるのか。スパイとタイトルにありますが、派手なシーンは特にあませんし、画面は終始地味です。しかし、こんな時代にはしみじみ味わい深い話でした。良い役者の演技と印象深き台詞の数々。いやぁ、静かに熱いぞ。
12位:ちはやふる 下の句
作品単体で見るとパワーは上の句の方がありますが、纏めあげるバランスの良さは流石、上を受ける「下の句」。瑞沢高校かるた部が本当のチームになり、新が再生する物語は見応えありました。
愛すべきかるた部の面々の素晴らしさは上の句と同じく。そしていよいよ登場したクイーン若宮詩暢は彼らに負けず、いやさ勝るくらい良い! 画面にいるだけで空気が変わる存在感。松岡茉優さん素敵だ…! 見下され京都弁で罵倒されつつ素足で蹴られたい……! 若宮クイーンが近江神宮で「神様の通り道」をスッと登っていくシーン。無言でただ歩むだけのシーンなのに、彼女がどんな存在なのか雄弁に画面が語っている! 独特の札の取り方も同じく! かぁぁっこいいい! 美しいいいい!
またカルタシーンは上の句と同じくまさしく「闘い」なのだけれど、千早と若宮クイーンの試合はカンフーバトルシーンのよう(あの囲い手の変化!)。素晴らしいスポーツ青春映画でした。
13位:ドント・ブリーズ
舐めてた相手が聴覚の優れた暗黒座頭市だった映画。深夜2時、灯りが落ちた闇の中。ドアや窓が完全に塞がれた勝手の利かぬ他人の一軒家では、視覚健常者など狩られる側に過ぎないのだ!
最低の家族環境から妹を助けるためとはいえ、金を盗む事に固執したばっかりに追い詰められていく主人公のロッキー。キチ○イ(になってしまった!)爺さんとペットの猛犬は容赦なくこっちを殺しに来るもんだから堪らない。最初から最後まで全く気が抜けない!
異常に耳の良い盲目爺さんは、少しの音も聞き逃さず執拗に攻撃をしてくる。とはいえ音を立てなければ……あッ爺さん、光を奪いに来やがった! 闇にじわりと消え、どこから襲い来るのか判らない、拳銃持ったタンクトップマッチョのキチ○イデアデビル爺! 悪夢か!
巧みな演出で緊張を強いてくる上に、中盤でドン引く展開も待ち受けているので、90分も無い短い映画なのに「早く終わってくれ!」と祈りながら観ていました。つまらないんじゃないんだよ、面白いんだ! でも怖いんだ! 鑑賞前に必ずトイレに行っておこう。漏らすぞ!
14位:アイアムアヒーロー
日本が舞台なのに、真っ当にゾンビものやってるって嬉しいじゃないですか。予算と規模は勿論違うけど、『ワールド・ウォー・Z』の冒頭風、街中で感染が拡散していくパニック描写! あれが日本で!
ま、その大拡散シーンの後、画面に出てくる人数はガックリ減るんですけれどw、逃げずにゴア描写をガンガンやってたのは大いに評価すべきでしょう。また、単なるジャンル映画の面白さの枠に留まらず、ダメ人間が立ち上がるという覚醒映画としても成り立ってますよね。劇中にも「海外なら銃でZQN倒すんのラクなのに」みたいな台詞がありますが、ゾンビものにつきものの銃が、規制のある日本ではなかなか出てこず、故にここぞの必殺技、男が覚醒した証のカタルシスを呼ぶ機能を果たしてるのも面白いですね。
ラストの大射殺祭りは邦画ではちょっと無い位に屍山血河を築く凄まじいものですが、ショットガン攻撃の見せ方に幅が無く、やや間延びしたようにも感じます。けれど消耗戦を強いられる登場人物の精神状態と、それを見守る自分の焦燥感が同期してるようにも受け取れたので、初見ではアリな気もしました。
15位:帰ってきたヒトラー
1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが2011年のベル リンに蘇ったら……というコメディーの皮を被った問題提起。映画という「虚構作品のストーリー」の流れとして、そのカリスマ性と話術でドイツ人を虜にして いくヒトラーなのですが、彼が街の市民にインタビューするシーンは、「現実の」街の素人さんを相手に「ガチで」ゲリラインタビューをしているというのだからなんとも挑戦的というか実験的というか。で、その結果、まんまと素人さんから国家主義・民族主義 を肯定するような発言を引き出してしまったという……。この作品は物語という仮説に過ぎなかったのに、その実完全に当たっていたという皮肉(勿論、今ヒト ラーを担ぎ出す不謹慎さに怒る人もいたけど)。笑えるけれどなんとも怖い、日本の対岸の出来事ではないと感じた作品でした。
16位:デッドプール
デップーといえばアッパー系クレイジーなそのノリがあまりにも有名ですが……その実、本作はごく真っ当な復讐劇でした。デップーがゲスト出演したアニメなどでは、彼には「賑やかし」の役を与えられる事が殆どですがそんな「飛び道具」だけでは単品作品では持たないでしょう。いや、むしろ単品作品だからこそ、デップーが背負う影にもちゃんとフォーカスできたともいえます。ごくシンプルな愛と復讐の物語というお話の幹がちゃんとあるからこそ、ハチャメチャやっても、(一見さんですら)ちゃんと楽しめる作品になってるのだと思います。低予算ですがよく出来てる!
吹き替え版もハマってました。こりゃ喋り倒しになった加瀬康之さん大変だw
17位:ロスト・バケーション
『フライト・ゲーム』『ラン・オールナイト』のジャウム・コレット=セラ監督の作品は、低予算でコンパクト、若干の粗もありながらも、総じて上手くまとめて見せてくれる……といった印象。今回もまさにまさに。ほぼほぼ一つの浜辺周辺で話が進み、最小の登場人物で見せちゃうこの小粒感。でも主人公にちゃんと動機を背負わせ、それを物語に組み込んで客に共感させ、きっちりハラハラドキドキで86分引っ張るんだから大したものです。
主演のブレイク・ライブリー(ライアン・レイノルズのカミさん!)、いい芝居してましたね&尻! 最後にはサラ・コナーばりのど根性!
メキシコの美しい海が息を飲むくらいに美しいし(それを使ったEDクレジット映像も秀逸)、スマホ表現もちょっとしたアイディア。あるアイテムの意外な医療サバイバル活用や、今っぽいデジタルガジェットも海に持ち込まれると新鮮。
めちゃめちゃ大傑作!という訳ではないけれど、おっ、気が効いてる!って要素が散見された上に面白いという。意外なめっけもん観たなぁ、得したなぁという思いです。おすすめ。
18位:傷物語 Ⅱ 熱血篇
冒頭で神谷浩史 vs 江原正士、入野自由、大塚芳忠とクレジットされますが、主人公の阿良々木くんを演じる神谷さんはひたすら喋り倒し叫びまくる。まさに声で、芝居で三人と戦ったと言えましょう。激闘! 熱戦! そしてもう一つの戦い(?)、羽川翼役、堀江由衣さんとのときめき丁々発止の掛け合いも良し。会話劇アニメの真骨頂を観た思いです。
その会話劇を彩る、尾石マジック益々高みへ至りと言わざるをえない画面作り。シャフト作品というと、テンポのよいテクニカルな動の視覚的演出が取り沙汰される事が多い印象がありますが、静かで繊細な心理描写を支えるある種地味な演出もまた素晴らしく。羽川パート最高! ああ、羽川さんのあの手に引っかかって身を持ち崩してぇ!
19位:ザ・ウォーク
人間の力強さを讃えた実在の綱渡り大道芸人の自伝的作品。と同時に、ニューヨーク最大の商業センターだったワールド・トレードセンターへの愛、そして直接描かれた訳ではありませんが、かつてあったあの悲劇への哀悼の意を、アメリカ人ならずとも感じさせられる作品でもありました。
綱渡りまでの過程がケイパーもの風に描かれていて面白いですね。主人公は傲慢さも持ち合わせているのですが、冒頭からの軽妙語りと、演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットの愛嬌であまり嫌味さを感じさせません。
綱渡りシーン。WTCの壁面模様と、ツインタワーに張り巡らせたロープ、そして主人公が持つバランス棒、そして背景にNYの街並みが重なった時、幾何学的な美しい画面が幻出して、思わず息を飲みました。こんな絵は想像できなかったなぁ。秀逸!
20位:ボーダーライン
やぁ、酷い(モノを見せられてしまった!)映画! 色んなパーツは『ゼロ・ダーク・サーティ』に似てるんだけど、関わろうとしても全く歯が立たず、徹頭徹尾状況の渦に流されてしまう女主人公はじめ、結局は全然違う作品でしたね。戦争にすらある「掟」なんて糞食らえ。ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリンのあの2人の人非人っぷりよ。
麻薬組織のアジトにカチコむ真際、夕刻のメキシコの大地に日が落ちていく。暗視スコープを装備し歩いて行く兵士たちは闇に沈んでいく……。 この夕刻のシーン、全くもって美しい(光と影のコントラストはまるで市川崑作品のよう)ですが、この「地平線を挟んで闇に没する」絵は、まさしくボーダーライン、何かの境界線を示したものではなかったか。この後の作戦の顛末、そしてさらにその後に女主人公に起こった事の酷さ、エグさ。うーん、僕、日本に産まれて良かったわぁ、とてもあんなの耐えられないわぁとゾッとしたものです。小市民の僕は、せめて出来る範囲で正しさを守って生きていきたいと思っているのですが、まぁ甘っちょろい甘っちょろい。
頭からお尻まで、何もできないままの翻弄されるエミリー・ブラント、うさんくささ爆発のジョシュ・ブローリン、そして凄まじい存在感を誇るベニチオ・デル・トロ。この三人は本当よかったですね。面白いけれどしんどい作品でした。
21位:シビル・ウォー キャプテン・アメリカ
物語は結構穴があるような気がしますが、観たい絵がバーン! 空前のアクションがドーン! で最高に楽しかったのも事実。うーん、なかなか困った映画だw
例えばスパイダーマンなんて、ソニーとのしがらみがクリアになったから急遽ブッこまれたんじゃないかって思う程(別に彼いなくても成り立つよねこの話)。だけどこのスパイダーマンがまた可愛くって魅力的なんだw 彼のの能力がもっとお話の必然性 に結びついてくれたら……。
また敵の魅力には欠けるよね。「超人達の活躍の裏で被害を受けた一般人の逆襲」なのは判るけど、地味! 掘り下げもないから思い入れも湧かない! 今回はアベンジャーズが2つに分かれて戦うお話なので、注力しないのは判るんだけど。
でも前述のアクションは凄まじいし、メインキャラの掘り下げは、そのキャラのファンなればこそグッと来るくらいに描かれてるんですよね。キャップvsアイ アンマンのドロドロの殴り合いを見てたら泣けて泣けて。床に置かれた傷ついたキャップのシールド。印象的なあのカットに、キャップの心中や偶像としての キャプテン・アメリカの終焉など色んな事を想起させられました。
22位:スター・トレック BEYOND
ワイスピシリーズで名を上げたジャスティンらしい、アクションの見所が多い作品。派手な見せ場で賑やかな画面づくりをさせつつ、果てには「なぜ、終わりなき宇宙を駆け、星々を探索(スター・トレック)するのか」という原点に立ちかえるお話でした。TVシリーズおよびその派生映画シリーズとのスタンスの差異が取りざたされる
本シリーズですが、ここで振り返りをしてくれたのは良かったなぁと。
あと、本シリーズだけでなく、初代から続くスタトレシリーズ全体に関わる大きな存在・スポック a.k.a レナード・ニモイとその消失に、作品内で触れてくれた事は嬉しかったですね。(勿論もう一人、この三作で脇を固めてくれたアントン・イェルチンにも。)
23位:X-MEN アポカリプス
新三部作の掉尾を飾る作品……ながらも、前作との整合性がややズレてる気が……。マグニートー関連の家族がらみの導入は不要にも思える。終盤の「一人じゃない」と絡めるならば、もっとチャールズやレイヴンとの絆、クイックシルバーとの関係性も強調すべきではなかったか。ちぐはぐな印象は否めない。
ただ、新三部作だけでなく、『三作目が最低というのは全員一致』の旧三部作をもなんとか救おうという気概が見て取れたような気がして。結果、歪な作品ではあったのですが、旧三部作から見ていた身、第一次X-MEN直撃世代としては、スコットとジーンの姿に熱くなってしまったのですよ。スタッフのシリーズ愛を感じたのは嬉しく、好ましく思いました。
24位:ズートピア
教科書に載せたいような相変わらずの優等生映画。その丁寧な組み立てや万人に通じんが為の目配せが鼻につくんだけど、まぁ大したもんです。最大公約数を得んがため「薄く」なってはいないものね。普遍的なテーマを陳腐に取られないような手際が見事って事なんでしょう。懐かしいバディポリス風味なのもおじさんには嬉しい。
あとまぁほんのちょっぴり、ジュディとニックの仲を勘ぐらせるような台詞ありましたけど、あの世界では異種族カップルは成立するんだろうか。作中ではその手の事が全く描かれてなかったと思うけれど。
25位:HiGH & LOW THE MOVIE
アクションシーンが凄まじかった、ヤンキーバトルものTVシリーズの映画版。いやぁ、大人数が入り乱れての乱戦バトルがどうかしていた! あれだけの規模の「喧嘩」をあのクオリティーで見せてるのは邦画史上初?(他にそんなものやろうって作品が無かっただけかもだけどw)もう少しカメラワークにキレが欲しかったけど、乱戦の中の長回しには興奮しましたなぁ。階段落ちしながら腕ひしぎ十字固め極めるなんてシーン、生まれて初めて観てその発想の斬新さにバカ負けして変な笑いが漏れました。
勿論予算はかかっているのでしょうが、それより何より、アクションワーク、見せ方が意欲的なんですよね。ただ予算がれば良いアクションが出来るかというとそういうもんでもないでしょう。頭捻って体動かしてっていう地道な努力の結果かと思うと嬉しい。『ルパン三世』『るろうに剣心』や本作などがヒットして、アクションは売れる!アクションに憧れる!っていう風潮起きてくれ!と祈るばかりですよ。
ただまぁ、仲間愛・地元愛に溢れたヤンキー思想の脚本は正直稚拙でライダー映画レベル。自分たちが見たい形でストレートに感動したいという、本作品が対象としたい視聴者層には合ってると思われるので否定はしませんけれど、タルいシーンも正直多々あり。今のライダー映画のシナリオが子供だまし程度なのは仕方ないのかもしれませんが、一般向けの作品ならもっと上のレベルのものが見たいなぁ、とも。
26位:聲の形
漫画の評判は聞こえていたのですが未読。ヒロインがろうあ者という事で、障害が主軸のお話かと思ってたんですが、コレ違いますね。徹底してコミュニケーションの話だ。
僕も恥ずかしながら、主人公の将也みたいな高校生活だったんですよ。自分には関係ないのだと、他人を諦観とともに断じた人間って、他人を一個の人間として認識しなくなるんですよ。本作では他人の顔にバッテンマークをつけて、将也がそれを個として認識していない事を表現していました。アニメ『乱歩奇譚』でも類似の表現がありましたが、あれはコミュニケーションの取れない人間の心象を実に的確に映像化したと言えます。他人と繋がりを持つのって、しんどいしめんどいし怖いんですよ。それでも人って、どうしても他人を求めちゃうものじゃないですか。そこで相手を一個の人間として受け止めて、相手に心を寄り添わせようとするか。その心持ちで顔のバッテンは着いたり取れたりすると思うんですよ。クライマックスで将也が観た、世界が広がっていくような風景は、まさしく閉じこもってきた殻から飛び出したという証左でしょう。
で、なんで将也のことばっか書いてるかというと、他のキャラにあまり共感できなかったからなんですよね。これは尺の都合だと思うのですが、キャラの信条の移り変わりが一見して読みにくく思えます(僕の読解力不足かもですが……)。特に真柴は将也と友達になりたい理由も判らない。彼はそれ以外も殆どのシーンの行動が唐突に見えてしまう程に心が読めなかったですねぇ。顔つきだけは思わせぶりだったので、後で裏切るのかと思っちゃったよw
とかく将也視点では大いに共感できましたし、故にラストも大いにカタルシスを感じ、得心が行くもので良かったのですが、周りの描写に不満があるという感じです。
あとブヒ部的な話をすると、長身スレンダーな佐原さんが超タイプです。付き合ってください。結弦は悠木碧さんの演技も相まって超かわいいです。付き合ってください。植野さんは腹立ちますけれど、超エロいです。いやらしい事させてください。
27位:傷物語 Ⅰ 鉄血篇
今までの物語シリーズの前日譚。阿良々木暦が如何にして吸血鬼になったかを描くお話。なぜ今このタイミング?と思っていたものの、直前にTV放映された『終物語』の死屍累生死郎編を経た後だと飲み込みやすい話でもあるのか、と合点がいく。しかし映画だから予算が増え?ると、尾石演出がますますゴージャスに出来るもんだなぁと。スクリーン映えする絵を作れる監督さんですよ。
28位:エンド・オブ・キングダム
ホワイトハウスの次は英国だと、ロンドンで同時多発テロに見舞われる大統領とその警護官。前作に続いて、立て続けに各国首脳が殺害され、英国が制圧されていくさまは見応えあり。日本の首相も巻き込まれてるのには笑ったw
「ダイ・ハードもの」なので面白くない訳はないのだけれど、続編らしく(?)主人公の言動が前作より雑になってるのは気になったかな。一応、欧米諸国の若者が他国のテロ組織に入り、祖国に仇をなす、という問題も取り入れている……のだけれど、主人公の雑な言動も相まって、「リアリティーの補強として取り上げはしたもののホントはそこに興味ないんです」感がありありと見えるというか。現実の問題を掘り下げても、この作品の面白さと咬み合わないのはわかるけど、もうちょっとやりようないかしらとは思った。や、面白いんだけれど、どこかデリカシーに欠け気味というかw
29位:ミュータント・ニンジャ・タートルズ 影(シャドウズ)
亀忍者達の愉快な掛け合いを楽しみながらテンポよく見られる佳作だと思います。
終盤のアベンジャーズのNY決戦ぽい流れからのイケイケドンドン感→エンドクレジットのあのテーマ。雑な点もありますが、ハッピーにノリで駆け抜けるのがこの亀忍者シリーズの真骨頂でしょう。新キャラのケイシーがいまひとつパッとしないのはやや残念。
相変わらず亀4人の吹き替えがハマってて、特に畠中祐さんは他の出演作より自由に遊べる役柄なので、いつもより幅の広さ、おかしみを感じてたまらんかったですね。
30位:マダム・フローレンス! 夢見るふたり
歳をとってもお花畑なお嬢様(というだけではなく、実は……)という老婦人を演じるメリル・ストリープ、魅せてくれます。音痴の自覚の無い「困った」彼女を、「愛すべき」人間としても観客に受け取らせる細やかなニュアンスを含んだ芝居は流石!
フローレンスと複雑な関係にある、ヒュー・グラントが演じる夫。彼が金のために彼女と結婚したか否か、どう取るかで彼と作品の評価が変わると思うのですが、やはり彼はちゃんと彼女を愛していたと思うのですよ。己は夢を果たせなかった。妻も過去、夢を果たせなかった。「おそらくは最後の夢」を叶えさせ、その夢を保つために東奔西走する、金目当てを遥かに越えた献身的な様! 嘘を積み重ねた上での「夢」でしたが、その真摯な愛が本当だったからこそ、あの最後のフローレンスの表情でしょう。
彼女を「裸の王様」「芸術への冒涜者」と見る事も出来るのですし、それも事実ですが、「非難されても、カーネギーで歌った事実は消せない」と彼女が言うとおり、(信頼できるパートナーたちの支援も相まって)「やってみた」からこそ、夢を叶え、会場の客から万雷の拍手を浴びたのですよね。自分の情熱に正直に進む事を肯定してくれる一本でした。ともかく役者陣の熱演が素晴らしかった!
31位:HiGH & LOW THE RED RAIN
雨宮兄弟をフォーカスしたスピンオフ的作品。今まで殆ど描写がなかった兄弟について掘り下げてくれたのは○(ED後のアイスのやりとりのカワユさよ)。相変わらず(主に泣かせの)描写がダラダラしてるのは×。もっとテンポよく!
ラストの雅貴と広斗、そして二人の心の中の尊龍のバイク並走シーンは『ワイルド・スピード SKY MISSION』の『See You Again』の流れる別れのシーンのオマージュだよね。でも劇中、尊龍のバイクに自転車で並走する雅貴・広斗の、幼き無邪気なあの頃の描写を入れてるから、変な唐突感や嫌味はなく。あれは上手い消化・昇華だと思いましたよ。
32位:SHERLOCK 忌まわしき花嫁
舞台を現代から19世紀、コナン・ドイルが生きていた時代に移し替えた本作。しかし感性は現代のままに、ドラマ『SHERLOCK』の本質は変わらず。元々英国本国では、TVスペシャルの作品だったらしいですね、これ。本編前後にメイキング的な映像もあり、今までのシリーズを楽しんできた人の為の作品でしょう。これだ、この大いなる着地を待ってたんだ!
薬物中毒というホームズの設定を巧みに使った絶妙なるご都合主義。さぁ、ゲームの開始だぞ諸君! シーズン4が楽しみ!
33位:ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
ハリポタは1作目の冒頭を観ただけなんですが、楽しめました。でもそこかしこにファンじゃないと判らないネタが仕込まれてた感じ。急に出てきたグリンデルバルドなんて正にそうでしょ?
逃げた魔法生物をニュートがポケモンマスターよろしく捕まえる話と、魔法の根絶を目指す結社の思惑という2つの話が軸になり、収束していくお話なのですが、この2つがもっと有機的に関わってたらなぁというのは、最近の緻密で唸らされる映画を観すぎてる故の贅沢な注文でしょうか。とはいえ、魔法生物や魔法バトルの派手な絵は、見応えあり。
「整ってはいるんだろうけどどこか異相」系役者のエディ・レッドメインは、ギーク系男子のニュートを魅力的に演じています。コミュ力が無い訳じゃないんだけど、相手の目を見て話さない、あの人付き合いが得意じゃない感! コリン・ファレルもいい味出してたんだけど、話の流れ的に損こいてるよなー。勿体無い。もっと掘り下げがあったら、名ヴィランキャラとして君臨しそうなのに。あれはグリンデルバルドが最初から化けてた」って事でいいの? シリーズファンじゃないからよくわかんないけど。
吹替版で観たんですが、ニュート役の宮野真守さん、細かなニュアンスもしっかり表現なすってて、あ、やっぱりこの方信頼置けるわと。そうそう、妹クイニー役の遠藤綾さんも素敵だったなー! アリソン・スドルのアクトとばっちり合ってて、ジェイコブじゃないけど、ひと目(ひと耳?)惚れしてしまったw 続編(あるんでしょう?!)でジェイコブともども活躍してほしい!
34位:ルーム
誘拐犯に閉じ込められた女と、その中で産まれ、外を知らない少年の密室からの脱出劇……のように予告を見ると思えるのだけれど、実は脱出後のドラマの方にこそ重きが置かれてたという。
少年が初めて外に出た時に、世界を認識できない描写がしばし続きますが、自分が上京した時をふと思い出してしまった。あの寄る辺の無さよ! 本作は母と息子の物語でありますし、ベタですが閉じ込められていた納屋=母の胎内という事でもあるんでしょう。
人間はいざ希望を持って産まれてみても、なんかんだ世界の洗礼を受けて大変な目にあうもんなんですよ。でも本作のラストシーンのように「決別」をして歩き出していかなければいけない。「子供の目」の視点だけれど、大人の僕も改めてそれを受け止めなおしましたとさ。
35位:スーサイド・スクワッド
『ジャスティス・リーグ』前にちゃっかりチームものですよ。とりあえず 集められたバラバラの悪党たちがいよいよ一つになり、男気見せてチームとして動くのは燃えるのですが……そのチームとして結束するまでが描写不足に感じま す。キャラクター個々人は魅力的な連中揃いなので、ちゃんと丁寧に段階踏んで結束してくれたら絶対アガるのに! でもそんな描写に割ける尺はない……。
これさ、2時間の映画じゃなくって、ドラマシリーズでみたいよね。各個人の魅力や関係性をもっと掘り下げてさ。キャラクターに魅力があるだけに、いろいろ 端折られてる部分が勿体無く感じてしまった。ジョーカーの出番も増やしてさ。見たいでしょ? ハーレイは当然かわいいのだけれど、人外萌としてはエン チャントレスちゃんも好きなんですよ。故に、繰り返しますが人外萌えとしては、汚い方wのエンチャントレスちゃんの方が好きなんですよ(わかるっしょ?) 声も沢城みゆき先生だしな!
36位:ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
前作と違い、、今作は女性少佐と少女を加え た三人でのチームものみたいになってる。リーチャーもならず者の顔をやや潜め、むしろトムが過去に演じたスペシャリストの側面が強いか。マンネリ化を嫌ったのか、その前作と違わさんが為に、ジャック・リーチャーという強烈なキャラクターの個性が薄まってしまっているのは勿体無い。前作の魅力は、まさにその薄まった部分なのですよ。
その点はなんとも惜しいけれど、アクションとしてはそこそこ面白いし、おトムさんも体張ってる(また全力疾走何度もしてる!)し、女性少佐役のコビー・スマルダーズはマリア・ヒルを演じてる時よりもりもりアクションしてて良かったっすよ。
37位:ゴーストバスターズ
お話は落第点。盛り上げられそうな所はハズすしタルいシーンもチラホラ。ゴーストもバリエーション少なめで寂しく、メリハリなくなんとなく流れでファイナルバトルに入るものだから、カタルシスがじぇんじぇん無い……。
ただ、キャラクターは100点! エリンの妙なだらしなさ、アビーのキュートさ、パティの強いおばちゃんぶり、ケヴィンのバカかわゆさ、そしてそしてホルトマンのキチガイセクシー……(ホルトマンは5億点!)。
38位:殿、利息でござる!
「今の日本に足りないもの」を提示する寓話。悪い作品ではないのですが……常々「時代劇の良い話」を観る度に抱く「こじんまり感」「どこかで見た感」をやっぱり覚えてしまった。「日本の道徳に寄り添う寓話」を二時間程度の尺でまとめると、こんな感じにまとまっちゃうものなのかもしれない。語彙力がないのでこの気持をなんとも表現できないのですが…。引っかかるなぁ。
悪役・松田龍平の作りこみと、守銭奴・山崎努は流石。今わの際を演じる山崎努の瞳の中の光! あの撮り方良かったねぇ。
39位:ザ・ブリザード
大型タンカーを真っ二つに裂く史上最大級のブリザードに、クリス・パインが小型救助艇で立ち向かう樣は見応えバッチリ(ああ、海にももう行きたくない!)。ただ没するまいとあの手この手で生き残りにかける、大型タンカーに残された男たちの奮闘ぶりも意外に楽しめます。
ただ、クリス・パインがなぜそこまで救出に拘るのかという理由がちょっとサラっと描かれすぎ。動機づけの部分はもっとしっかり描いて欲しかったです。冒頭30分くらいは結構タルい感じもしますし、そこでもっと動機部分の根回しを、ね。
40位:劇場版 ガールズ&パンツァー
あれだけの大人数のキャラにまんべんなく見せ場を作り、活躍させている交通整理力は大したもんだなぁと。決戦の地に、今までのライバル校が味方として、テーマ曲を背負いながら集うシーンは燃えるし、ギミックだらけの遊園地決戦もアニメならではと言える絵。
ただ、愛里寿の参戦に至る動機づけが弱い・雑というか。ボコミュージアムの唐突さ。みほ達が訪れるシーンも同じくで、あそこはタルく感じた。熱烈なファンはキャラ描写でニンマリできそうだな、とは思うけれど、申し訳ないけれど僕はそこまでこのアニメのファンではないので……。ファンムービーとしては素晴らしい出来なのだと思いますが、僕の思い入れの無さでこの位置。
41位:バイオハザード ザ・ファイナル
今までのシリーズ作品以上でも以下でもない(裏を返せば安定した?)面白さ。予告にあったゾンビ大焼却シーンより見栄えのする絵がないのは残念。ロボコップ&ガンカタ展開は笑ったw
レッド・クイーン役にジョボ姐の愛娘を起用したのは案外縁故採用でもないのには関心(いや、でもある意味親子関係を作品に利用した究極の縁故採用か)
42位:グランド・イリュージョン 見破られたトリック
完全に1作目観てる人向けの続編映画。マジックもますます奇想天外感を増し……。まぁ、ファンタジーですよねw そう割りきって見ると、あの中盤のトランプ受け渡し芸はコントすれすれで笑えます。
ラストマジックの見栄の切り具合は様になってて格好良いけれど、あのオチに落とすには展開がやや雑に思えたのと、ダニエル・ラドクリフの見せ場は登場シーンが頂点だったのは残念。
43位:ドラゴン・ブレイド
『ロード・オブ・ザ・リング』、『300』、『グラディエーター』をつまみ食いしたようなシーンが散見されましたね。団結・集結シーンは燃えますが、話はまぁ、良くも悪くも荒く、今ひとつ食い足りない印象。主人公の価値感が矢鱈に現代よりですが、まぁそこは目くじら立てても仕方ないでしょう。
44位:ジェイソン・ボーン
一度終わったシリーズが再び……というシリーズ再起動もの。しかしシリーズを牽引してきた魅力の悉くが、今までの三作より矮小化されてしまっていたように思えます。 アクション映画の近接格闘のリアリティーを底上げしたCQCの見応えは薄く。今までの三作よりさらにカメラは近いし動くし、何とも見難い。ボーンの強さを支える頭脳戦での機転も今ひとつで、「この手があったか!」「頭いい!」という驚きに欠く……。
ボーンが工作員になるきっかけが明かされるというストーリーも、ボーン本人には大事かもしれないけれど、観てるこっちには大した話には思えなくって……。蛇足を見る虚しさに苛まれてしまったのでした。再起動というより墓暴きに終わってしまったなぁという印象(そうそう、EDのテーマの『Extreme Ways』に入るシーン、タイミングも今までで一番ダサい)。作中で「このまま消える」とか、「これからは若い世代の時代」みたいな台詞がありましたけど、これってこのシリーズ自体の事を隠喩してるんじゃないかしらん。
しかしベガスのストリップを大胆に使った、SWAT装甲車vsダッジ・チャージャーのカーチェイスは素晴らしい! アガる! えっ、こんなに頑丈なものなの?!と吃驚のタフネス&パワーを誇る装甲車が一般車両を面白いように蹴散らす! 追うダッジ・チャージャー(但しAT)! ベガスのビカビカテラテラのネオンをバックに、ボーンシリーズらしからぬヤンチャ暴走を繰り広げる装甲車に向かって、これまた破天荒アタックをしかけるボーン! おお、ボーンシリーズのリアリティーを越え、まるでワイルドスピード時空に飛び込んだかのよう……楽しかった!
あと人物を映す際に光と影で内面を表す演出は良かったです。クドくならぬないようにさり気なく挿入されてるのが、自然に情感を溢れさせてくれるんだ。
45位:貞子vs伽倻子
テンポよく話が進んでいくのはいいのですが、ねっとりじんわりしたいやらしい怖さは無く、ホラー感はあまり無かったです。あくまで「対決」に焦点を絞った作品ゆえかと思いますが、ホラーを期待して観に行ったので、ちょっと物足りなくも思えました(とはいえ、多くの人が見られる娯楽映画に仕上がっているのは商売としても正解だとは思います)。
2つの呪いの対決も、まぁ「どちらかを負けさせる訳にはいかない宿命を背負った対決もの」だからね、仕方ないね、なあっさり醤油味。あの2つの呪いが合体するというラストも想像できちゃったので、うーん。呪い同士が立ち会うまでの盛り上げはかなりワクワクしたのですが。もっとこっちが口アングリ、バカ負けしちゃうようなラストが欲しかったなぁ。
あとあの自分勝手な酷い呪い拡散のくだり、要る?w 特に解決せずに終わったし、あるかもしれない続編に向けて取り敢えず入れときました、かしらん?
46位:Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
タイトルに反して(?)これは万人にやってくる「老い」と、それをどう受け入れるかという作品でしょう。老い。得たもの、得ていたものを失い、孤独になる。我々が存分に知る、あの天才的頭脳を誇ったホームズですら、多くのものを失ってしまうという事に、我々は愕然とする。しかし老いなお、彼が理性的に真実を追求せんとする姿勢に勇気づけられるし老いてから新たに得るかけがえのないものだってある。しみじみと響く作品。
ただ、ホームズが30年前に残した謎を、新たな相棒を得て解く推理劇……なんてものを期待していたので、拍子抜けしたのも事実。思てたんと違う案件。
47位:インフェルノ
シリーズ未見。MMR風の物語を想像しましたが、金田一シリーズ要素もあったような。ミステリーものの割には、犯人やそのタネなどはあっさり明かされるし、のちのちょっとしたどんでん返しも後付けの強引感がなぁ。今ひとつ。
ウイルスを封じるケースの封印が、ちゃんと効いてる/効いてないの描写がやや判りにくいのも勿体無い。あそこはっきりさせるだけでもっとハラハラさせられるのに。イタリアの歴史建造物を美しく描いてるのは良し。そういう絵のリッチさはある。
48位:超高速!参勤交代リターンズ
ファンタジー時代劇人情コメディーでご都合主義が多すぎます。が、劇場内は結構笑いが起きていたし、ライトに楽しむものでしょう。そこに野暮は申しますまい。
ただ、前作で「参勤交代という制度に振り回される人たちの話」は既に終わってるんですよね。中盤以降は「参勤交代」は何処へやら、前作からの因縁に決着をつけるだけに終始。軸となる面白い仕掛けがなくなってしまった分、「普通の人情時代劇」になってしまった所は否めない。続編の辛い所だと思います。
あとちょいちょい無駄に見えるシーンが挿入されるのも疑問。(弓の名人・吉之丞の脈絡なく出てくるあの特殊矢、要る?)古田新太の大岡忠相は良かったっすね。この人時代劇合うなぁ。
49位:アウトバーン
アウトバーンという邦題と予告映像から壮大なカーチェイスを期待したのですが、それは然程大きなウェイトを占めている訳ではなく。ニコラス・ホルトが機転で切り抜けていく逃亡劇。
『ビトレイヤー』の監督作品なので期待していたのですが、話の作りは荒し。監督らしい色気のあるよい絵は散見されるのだけれども、ね。脚本がもうちょっとしっかりしていれば……。ニコラス・ホルトのアップの表情は沢山楽しめるので、ファンなら(ファミ通クロスレビュー風〆)
『アイアンマン3』のマンダリンをより胡乱にしたようなベン・キングズレーと、センスのいいスーツ着た、ハンニバルっぽい知性を感じさせるアンソニー・ホプキンス。この二大悪党は流石の存在感。良かったですが……何で出演したんだろう!?w
50位:KING OF PRISM by PrettyRhythm
TVアニメのプリリズのシリーズは未見。尺が58分と短い所為か、とにかくテンポが早い……。ここ間が欲しいな、って所も関係なくどんどん話が進ます。尺の短さを逆手に取ってとにかく畳み掛けるスタイル。この駆け抜けるドライブ感が、ファンには快感なのでしょう。個人的にはじっくりドラマが見たいと思うのですが……。
話題のレインボーライブはじめ、過剰な演出も、個人的にはあまりノレず。僕にそれらは、必然としての演出ではなく、過剰なものを見せんが為の演出に見えてしまうんです。既視感を覚えるなぁと記憶を探ったら、ゲームのスパロボシリーズのオリジナルキャラの戦闘ムービーに同じノレなさを感じている事を思い出しました。長台詞&シリーズごとにインフレしていく派手な演出を思い入れの全く無い人物にやられても……。勿論キンプリもスパロボも、それが好きな人は勿論多いでしょうし、これは好みの問題でしょうかね。僕はやっぱり理屈じゃないものは、丁寧に助走して盛り上げてくれないとノリにくいんだなぁ。そしてこの尺では、ドライブ感を売りにしている(であろう)キンプリではそれは難しいのだろうなぁ。
シンボルたるコウジが去り、沈みゆくライブ会場を新人のシンが盛り上げ、新たなる希望となるという継承の物語は好み。シンが「これからもプリズムショーを応援して下さい!」と観客に語りかけるシーン。これはプリティーリズムを作ってきたスタッフ達からの、スクリーンの向こう側にいる僕達鑑賞者へのメッセージでもありましょう(シンの語りに、キンプリ本編と関係ない、今までのプリティーリズムシリーズのライブ映像を重ねて見せているのがその証左ですね)。そういう作り手の思いにはグッとさせられます。
僕には良し悪しある映画で、残念ながら悪しの方が多く感じた作品でした。皆さんが熱狂的になる理由も、理屈ではですがなんとなく判りますし、否定するつもりも全くないです。
51位:ポッピンQ
『ちゃお』にコミカライズ作品が連載されているようだが、一番の対象は小中学生女子だろうか。大人の階段を最初に踏み出す「中学卒業」を控えた5人の少女の物語。その少女達を通し、現実の同じような境遇の少女達にメッセージとエールを贈るという心意気は良い。けれども正直、構成や脚本は首を傾げざるをえないレベルだった。ご都合でルール設定がどんどん出てくる割に、それに必然性は無い(ように僕は思えたし、あるなら理由をもっと強く打ち出すべき)のだ。
プリキュアシリーズで練り上げられたCGダンスは流石の出来だが、なぜその異世界でダンスを踊る必要があるのかもまるで描写が無い。5人の少女達でメインに描写されている、伊純とさき、彼女たちが抱えた問題を乗り越えるのはまぁ理解できるが(それでも根拠不足だとは思う)、他の3人の少女は物語が解決したから、結構なんとなく成長したていで問題を乗り越えてしまう。
かように一事が万事、描写不足ゆえに説得力に欠けるのだ。少女達にメッセージとエールを贈るという心意気は良い、と前述したが、この説得力の無さで果たして受け手の少女たちの心を掴む事はできるのか疑問である。もっと対象年齢が低ければ、こんなにざっくりしたお話でもいいのかもしれないが、それにしても子供だましもいいところ、なのである。
あとEDクレジット後の続編の予告。本編だけではレノの存在の意味が判らなかったが、これを見れば一応の合点はいく。しかしそんな続編の予告サプライズを作ってるくらいなら、まず本作を一つの作品として地に足をつけてまとめ上げて欲しかった。ダンスシーンの地味ながらも凝ったカメラの使い方、キャラクターデザイン、演者の熱演等、褒めたい所も多くあるのだが、話の作りという幹の部分があまりに宜しくなく、最後まで乗り切れなかった。これが東映アニメーション60周年記念作品で本当にいいのだろうか。今のところ続編を観に劇場まで足を伸ばす気にはなれない。
52位:白鯨との戦い
原作未読。白鯨モンハンものでも、クリヘムとベンジャミン・ウォーカーの男同士の対決でもなく。すいません、僕の読解力では何をやりたいのかよくわかりませんでした。捕鯨反対を叫んでるアメリカでも、昔は鯨狩り尽くしてたという歴史を掘り下げる訳でもなし……。キリスト教徒ならもっとグッとくるんでしょうか?
53位:インデペンデンス・デイ リサージェンス
予告で観れた大カタストロフシーンは少なく、折角出てきた新キャラも、別にいなくてもいいんじゃなかったのか感あるヤツもチラホラ。前作で言う大統領の演説のような高揚シーンはあそこまでアガらず、テーマの一つ?の親子愛もなんだかボンヤリとしていて。
怪獣としかいいようがないラスボスの正体は良く言えばバカっぽくて面白いですが、存在が面白いだけで見せ方・展開は序盤のエイリアンの攻撃に比べて尻すぼみだよねアレ。それなりに豪快な絵は観られるけれどどこかのっぺりとした、メリハリなく最後まで走ってしまったような作品でした。ラストはノー天気だなーと笑うべきか、正気を疑うべきか。
以上、53作品。2017年も良い映画に出会えますよう。
『君の名は。』の感想など。
『君の名は。』の感想です。ネタバレ有り。
拙文ですがお付き合いいただければ幸いです
『君の名は。』観ました!
SFを下地に、時間や空間、さまざまな距離のもとに思いが交錯する男女の物語、というのが新海誠監督作品の持ち味。ビターな要素が多いというのも、その一つですね。
新海誠作品はその持ち味に惹かれた熱心なファンを獲得していますが、その持ち味アニメファン向けだったりややマニアックだったり、どこかマイナーだったように思われます。所謂メジャーなエンタメとはやや言い難いものだったというか。しかしこの『君の名は。』は、新海監督の持ち味を存分に発揮させた集大成とも言える作品ながらも、メジャーエンタメ作品として通用する普遍性・大衆性を持ちあわせているのではないでしょうか。まさしく傑作!
入れ替わりものとしての物語が続く中盤までは、物語としてそこまで新海色は出ていないように思われ、肩透かしをくらったよう思えますが…… 瀧と三葉の入れ替わりに三年のタイムラグがあり、彗星の落下で既に三葉は死んでいた……という急展開、一気に物語の景色が変わるサプライズからは新海マジックが爆発! 宮水神社のご神体のある山頂で、誰そ彼の光の中、時間と空間を越え、思いが繋がる!
……の後も話は続くんだよ今回は! てっきりここで思いは繋がるもやはり二人は元に戻り、結局糸守町の住人は全滅だと思ったもの。そこからちゃんと物語を続け、三葉の奮闘、二人の分かたれた切ない思いをさんざん見せつけ、「どーなるどーなる?」と僕らを散々悶々とさせながら溜めを作った上でさらに歩道橋の上で一回すれ違わせておいての電車すれ違いによる再開だもの! こーれはキモチイイよフゥーゥ! で、タイトルに繋がる二人のあの台詞だもの。カタルシス爆発!
これ!この皆をちゃんと楽しませるサービス業としてのエンタメですよ。しかも前述の通り、誰が観ても新海誠作品だわ!って納得させた上でですよ! やー、自分の趣味に走ったサンプリング芸のカルト的作家だったタランティーノが、その趣味を出しつつ、近年どんどんメジャー感のある映画を作っていったのと同じですよね(あ、これ最近『シン・ゴジラ』でも思ったかもしれない。)
「君もいつかちゃんと、幸せになりなさい。」という奥寺先輩の台詞がありましたが、それはお話の帰結としてだけでなく、作品としてもお客さんに愛される幸せな作品になったんじゃないでしょうか(奥手な人ばかりの田舎の劇場で、まさかの拍手が起きた!)。この言葉は監督から観客へのメッセージであり、願いでもあるのでしょう。
以下、思った事を箇条書きで。
・マイナーからメジャーへというのは、田中将賀さんがデザインしたキャラクターについてもそうで、田中将賀キャラと聞いて僕らが思い浮かべるイメージとはちょっと違うデザインですよね。田中氏の作品中で比較的メジャーよりな作品といえる『心が叫びたがってるんだ』と比べても、目の描き方や髪型のシルエットなどがシンプルで、今の深夜アニメのラインからはちょっと外れているように感じます。でもパーツや肉体のラインが確かに田中氏のそれだって判るのだよなぁ。面白い。
・この作品、「2人が体をとりかえて日常生活を送る中で、三年のタイムラグに何故気づかない?」という、お話の大前提をひっくり返す不自然な点があるっちゃあるのよねw まぁ思わず身を乗り出しちゃう位に惹きつけてくれるので、観てる間はそこまで気にはならないのだけれど。
・「もうあたし、この町いややー。狭すぎるし濃すぎるし、さっさと卒業して、早く東京行きたいわー。」という三葉の台詞。癒着を思わせる町長と土建屋。「また町長は再選やろ」という変わらないという諦めと、本当にクソ田舎な町でしかない糸守。新海さんもかつては田舎で鬱屈していたのかな、と思わせる描写ですが、そうだとしたら、糸守を嘆く三葉をたしなめながらも、このままこの街に留まるならば将来どうするのかと問われると、どうも言葉を濁らせてしまうテッシーというのうは、東京に出る前の新海さんご自身が投影されたキャラクターなのかも知れませんね。僕もド田舎に住んでるんで、あの辺の思い、よく判ります。
・主演の神木隆之介さんは、声質も芝居も役にピッタリでしたね。声の演技のテクニックも『サマーウォーズ』の頃より上がったなぁと感じました。入れ替わりの女の子演技、可愛いw 上白石萌音さんもこれまた役にピッタリ。『ちはやふる』でも役をちゃんと把握してらして、細やかな所作にまで役柄を反映させてらしたのに感激したのですが、その細やかさは本作でも発揮されてました。
・主人公が思い切り走る作品は名作、の法則にこれまた当てはまる作品ですね。熱走!
・彗星の落下という大災害について、ここ数十年の震災被害や広島・長崎の原爆被害を織り込みながらも、説教臭くなく・変な配慮を感じさせずエンタメに落としこんでいたのには関心しました。東日本大震災が起こった当時は津波の映像表現などが自粛されたものですが、こんな作品もいよいよ出てきたのですね。瀧くんの「東京だって、いつ消えてしまうかわからないと思うんです。」という台詞もサラッと流しちゃったし。
彗星が破滅を呼ぶ存在だと判った後でも、「──それは、まるで夢の景色のように、ただひたすらに、美しい眺めだった。」だものなぁ。
・やたらに扉が開いたり閉じたりする描写がありましたが、その扉を乗り越えて、行動するか否か、という物語でもあったような気がします(再見した時にどんなポイントで扉の表現が出てきたのか確認したい所。)前述の「君もいつかちゃんと、幸せになりなさい。」という台詞。幸せってのはやっぱり行動、アクションを起こさないと掴めないものなんじゃないかなと。……なんか、当たり前の事なのかもしれないですけれど。何か決断する時に勇気を借りる作品になりそうです。
シン・ゴジラの感想など
『シン・ゴジラ』の感想です。ネタバレ有り。
拙文ですがお付き合いいただければ幸いです。
観ました『シン・ゴジラ』! 今までのシリーズよりリアリティーの度合いをグッと上げて、ゴジラ日本上陸という大事件に翻弄されながら立ち向かう人間の様を描いた作品。『突入せよ!あさま山荘事件』と『プロジェクトX』を足したようなというか。
巨大怪獣がもし上陸したならば、というシミュレーションを高いリアリティーでやってくれるものだから、(東日本大震災というモチーフがあるとはいえ)「そうか、怪獣が上陸したらそりゃそうなるよなぁ!」「あっ、この絵は怪獣映画で観たことない!」と感心しちゃうような新鮮なショットが散見されたのが嬉しいですね。
新鮮といえばゴジラの熱線放射も、今までに無い見せ方でしたね。足下に爆風をぶち撒けてからの巨大熱線……いや光線! あっという間に灰燼と化す都心! 燃え盛る街に佇む荒ぶるゴジラを見た時、特撮大好きな皆さんは思ったんじゃないでしょうか。これ、『巨神兵東京に現る』じゃん!(そういえばゴジラの進化予想として、羽根が生えて大陸を超える可能性も、って言ってた!)
『巨神兵東京に現る』は、昔ながらの特撮技術で新たに巨神兵を描くという作品のコンセプト上、成る程褒め言葉として作り物感が溢れたとフィルムでしたので「おっこの破壊は面白い!」と呑気に興奮できたものですが……リアリティーを高めまくった本作で、圧倒的な都市の大破壊を見せられると、「お、俺たちの街を蹂躙しやがって……!」と悔しさと絶望感で胸が詰まりました。おのれゴジラめっ!
相手は通常兵器が通じない究極生物。首脳陣の多数が死亡。米国による核攻撃までの時間はない……。それでも! 生きている人間は善処しなくてはいけない。前に進まなくてはいけない。「でも、やるんだよ!」と抗う人々の姿は『プロジェクトX』的で燃える展開です。ここまで絶望的なシチュエーションではないにせよ、こういうの、大人なら仕事なりで経験、ありますよね? 共感や憧れを覚えます。もちろん、庵野総監督や樋口監督も現場で大変な状況を経験なさっていますでしょう。「仕事ですから!」なんてのも自らへの鼓舞でもあるんでしょうね。
また、ヤシオリ作戦前の矢口の演説や、赤坂の「この国には若くて有能な人材がいる」的な台詞は、彼らが新たな次代のクリエイターへのメッセージでもありましょうね。
対抗しうる怪獣も超兵器もないこの作品世界で、どうゴジラに挑むか。なんと、今までのシリーズでもゴジラに蹂躙され続けてきた都市ビルと電車を利用してゴジラの動きを止めるってんだから。そして対策班と日本各地の製造工場が作り上げた血液凝固剤を決死の特車隊が直接ゴジラの口に注ぎ込む!(ヤシオリ作戦とはよく言ったもの!) まさに人間の知恵と勇気! その手があったか!& その手しか無いよな! という二重の思いで感心。
本作の続編を作ろうと思えば作れるように終わっているとは思うのですが、ここまでのテンションを保ちながら、トンデモ要素を排してゴジラに対抗しうる現実的な手段を考えるのは骨でしょうねぇ。や、もうこのゴジラはこの作品で完結すればいいと思うし、庵野&樋口コンビがゴジラを撮らなくてもいいでしょう。「終」だ「終」!
粗がないといえば嘘ですが、とにかく面白かった! こんなゴジラがあったらと、色んな人が本作と同様のアイディアを夢想した事と思いますが、ここまで徹底して作るのは中々できないんじゃないかなぁ。 ……世界よ、これが「日本の」怪獣映画だ!
以下、思った事を箇条書きで。
・(流石にもう「ゴジラは着ぐるみじゃないと認めん!」なんて人は殆どいないと思いますが)今回のシンゴジはCGで作って大正解ですよね。あの究極生物に、何か僕達との共通項であったり、コミュニケーションが取れそうだったりという余地を見出させてはいけませんよ。CGでそういう余地を完全に消したモンスターを作り上げたというのは、今回のゴジラの特性にぴったり合ってます。
・プレジャーボートから消えた牧教授は、ゴジラに向かって身投げしたのか、あるいは某かの方法でゴジラに取り込まれたのか。会議シーンが劇場版パトレイバー2に似ているという意見を目にしましたが、僕はこの、いわゆる物語の発端を担った男が既に死んでいる点や、前述の「結局は知恵と勇気」が、劇パト1っぽいなーと思って観ていました。
・ゴジラ初上陸時の第二形態。あれよくリークで事前バレしませんでしたよね。てっきり第三形態の形で上陸するもんだと思ってたので、あれには本当びっくりしました。ファニーフェイスで不気味に地を這う姿がまた気持ち悪い。
・会議シーンが矢鱈に早口な本作ですが、あれ早口にしないと観ててタルくなるから敢えてあの速度で喋らせて、テンポよく進めてるんじゃないかなーと。会議シーン以外はそんなに早口じゃないですし、意図的ですよね。聞き取れなくても大意は掴めるようにもなってますし。
確かどこかのインタビューで、「撮影前の事前準備をしっかりやった。声優に台詞を色んな速度で喋らせてシミュレーションしてた」的な話を読んだ気がするのですが……。
・今回は自衛隊の攻撃が百発百中でゴジラに命中してるのがいいですよね。過去作品では特撮技術上の仕方ないのでしょうが、この距離で外すんかい!ってなくらい結構攻撃を外しててちょっと格好悪いんですよね。またあれだけ的確な集中砲火を受けてもビクともしないという、ゴジラの強さの証明にも一役買ってますし。
・東京に核攻撃がなされる事に対して、「アメリカはニューヨークでも同じことをすると言っている。」という台詞がありましたね。これ、84ゴジラの有名な台詞、「あなた方の国アメリカやソ連にゴジラが現れたら、首都ワシントンやモスクワで、ためらわずに核兵器を使える勇気がありますか?」へのアンサーでもあるのかな、と。