『PSYCHO-PASS』アクション解説 その1 1期16話 縢vsネイルガン男

 劇場版の上映も粗方の地方で終了し、ひとまずの区切りがついたアニメ『PSYCHO-PASS』。劇場版では凄まじいまでのアクション描写が大変印象的でしたが、TVシリーズでも凝った殺陣が組まれていました。

 TVアニメのアクションシーンは、「とりあえず殴って・蹴って」に終始するだけになる事が多く、格闘技ファン、アクション映画ファンの目には味気なく映る事もあります。

 しかし、
・制作時間やコストの都合(2人以上の人間を破綻なく絡ませ、動かすのは凄く大変)
・尺の都合
・より描くべきモノ・コトがあり、そちらに注力したい

 

等々の理由もありましょう。なかなかこだわって格闘シーンを作る事も難しいのではないかと思われます。しかし『PSYCHO-PASS』では、アクションシーンの動作それぞれに格闘としての意味を持たせつつ、平行してアクションの格好良さ・面白さも描かれていました。
 
 作品にひとまずの区切りがついた今、改めてその練りこまれたアクションシーンに注目し、それぞれの動作にどういう意味があるのか自分なりの解釈をまとめたいと思い、こうやってブログに書き留めようと思った次第です。

 これから各シーン毎に解説していきたいと思いますが、あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学をお笑いください。
 また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、ご教示いただければ幸いです。宜しくお願いします。

 

 

 

 さて、今回はTVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、縢くんのアクションシーンを解説したいと思います。
 このシーンで行われた、大まかなアクションの流れは、
①下からの突き上げ掌底で敵の手を打ち上げる
②敵に左内回し蹴り
③敵の喉元へ肘を入れる
となります。書き出してみると非常にシンプルですが、この殺陣を読み解いていくと、短いシーンながらも実によく考えられているという事が見えてきます。

 

 

  それでは、上記の①の動きを解説しましょう。

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f:id:matsu_009:20150222212535j:plain  縢の背後から、改造ネイルガン(釘打ち銃)を発射する男。

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 不意打ちを食らった縢は右手に釘を受けるも即座に反応し、間合いを詰めます。狭い通路で隠れる場所も無く、ドミネーターも落としてしまいましたので、相手の懐に飛び込むという縢の判断は正しいと思いますが、瞬時にその判断に従い、動けるというのには彼が潜ってきた修羅場の多さを感じてしまいます。

 

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 間合いを詰める際に態勢を低くし、二発目をかわしつつ接近する縢。

 ネイルガン男にこれがどう映るかというと、
・身長の低い縢が、さらに態勢を低くして一瞬で接近してくる
・自分の手とネイルガンが下方の視認を阻害している
・ヘルメットを被っているのでそもそも視界が狭い

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 以上のような条件が重なって、ネイルガン男の視界からは縢が一瞬消えた事でしょう。

 

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 ネイルガン男の死角に入った縢は、左足の踏み込みから体を跳ね上げ、下から一気に突き上げる掌底を男の手に。これでネイルガンの照準を逸し、尚且つ相手の腹部をがら空きにします。

 

 

 

  続いて②、縢による左内回し蹴り。

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 間合いを詰めた縢は、さらに右足を踏み込ませ、左足を内側に振り上げます。右足を踏み込む事により、次の左足の振り上げに勢いがつける事ができます。振り上げた左足をその勢いのまま回し蹴り込む事により、充分に遠心力と体重の乗った威力のある蹴りが繰り出せる訳です。

 

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 相手のがら空きの腹部をめがけ一気に蹴り込みます。体格の劣る縢は、その差を補う為に威力のある攻撃で短期決戦で勝負を決めたい。故に手技より威力のある足技、その中でも威力のある回し蹴りを使いたい所ですが、狭い通路での戦いなので、外回し蹴りを放つと蹴り足が手すりにぶつかってしまい放てない。よって、コンパクトな軌道で相手を攻撃できる内回し蹴りを放った訳ですね。

 

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ちなみに回し蹴りの内と外の違いは主に上記の通りです。

 

 

 

 最後に③、とどめの喉元への肘打ち。

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 蹴りによって手すりに叩きつけられたネイルガン男が体勢を整える前に、すかさず取り付く縢。男がネイルガンを持つ手を降ろさないように、縢がその手を押さえつけるのですが、その際に相手との間合いを更に詰め、下からガンの持ち手を押し上げる状態になります。これによりネイルガン男の腋が開ききってしまうのですが、この状態になってしまうと、人体の構造上大変力を入れにくくなるので、ネイルガン男は腕を降ろせません。

 

 

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 ネイルガン男の背面には、男の腰の部分の高さに手すりがあります。この状態で縢が男を後ろに押し込むと、手すりの部分が支点になり、男の体が反ります。

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 体が反ると、男の首も後ろに反ってしまいます。ヘルメットで守られていた首ががら空きになったその刹那、肘を下からかち上げるように一撃! 筋肉が薄く、重要な器官が多数ある首は人体の大きな急所ですし、そこに勢いをつけた硬い肘を打つというのは、体の小さい縢でも一撃で相手を無力化させる事ができる危険な攻撃です。急所を容赦なく攻撃し、少ない手数で相手を制するその動きからは、彼の非情さが見て取れます。縢秀星、恐るべし。

 

 

 

 と、まず1シーンのアクションについてまとめてみましたが如何でしょうか? 読み手に判りやすいよう説明の文章を書くって難しいですね……。乱文ご容赦ください。