2014年見た映画ランキング

 明けてだいぶ経ってしまいましたが……新年あけましておめでとうございます。

 

 さて、昨年は「劇場で50本(1週間に1本の割合)映画を見よう。」と目標を立て、結果60本の作品を鑑賞しました。

 それらについて自分の記録も兼ね、2014年に見た映画のランキングと寸評をつけてみようと思います。

 

以下注意書き

・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。

・このランキングは「大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけているので、いざ作品を見返すと順位が上下したりするやもしれません。その程度の、にわか者がつけた大雑把なランキングであるという事をご承知ください。

・鑑賞した59本の内、『もらとりあむタマ子』『ゼロ・グラビティ』『ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版』の3本は、公開開始日時が昨年より前のものなので、ランキングからは除外しています。

寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。

 

 

 

 


 
1位:ゴジラ
 2014年の1位はこれ! だってゴジラという存在を物理的にあんなにデカく、怖く感じさせてくれたものですもの。所謂5億点!
 巨大な津波を起こし、それに人間を巻き込ませつつ、ハワイに上陸、照明弾に映し出されるゴジラの巨躯! 身長が高すぎて、打ち上げた照明弾の光が届かず顔が見えない! ここはまだ主役の顔は見せないという、なんという「溜め」のシーンか!
 そして遠景にムートーを望みながら、空港ビル近くにインしてくるゴジラの足! デカい、デカすぎる! そしてついにその全貌を表す圧倒的なビジュアルに、僕は文字通り、誇張なくホントに口アングリ。もう笑うしかないな、と劇場で乾いた息笑いを漏らすばかりでした。
 ゴジラが余り活躍しない、とも言われる本作ですが、M気質の僕には良い焦らしプレイでした。そしていざ現れたら今までのゴジラよりもスゴイですもの。こんなの初めてぇ~! イくイくイくイくイく~っ! と、僕の心はギャレゴジ(と書いて女王様と読む)に屈服してしまったのです。最高! パンフレットより、SFイラストイレーターのボブ・エグルトン氏の言葉を引用しましょうか。「『なかなかゴジラが出てこない』と言ってる人はどこを見てたんだ? ヤツは映画全体を支配してたじゃないか。」!
 

2位:LEGOムービー
 レゴファン誰もが夢想したような、登場人物や背景から小道具に至るまで、レゴで全てが表現されている(劇中に出てくるものは全てレゴブロックで再現できる!)という点でもまさに「レゴ」の映画なのですが、入れ子構造で視点を変えて、今まで出てきたレゴたちを組んだ人間達の物語をも描き、最終的にそれをリンクさせているという意味でも「レゴ」の映画という凄まじい作品。よぉ考えつきますわなぁ!
 「レゴの映画だから子供向けなんでしょ?」 ……とんでもない! レゴに、そして所謂「子供のもの」とされるあらゆるモノ・コトにハマり、そして今もハマり続けているオタクなら必見の作品なのでありました。そして本作で語られてる事は、レゴという会社が掲げる理念と完全に通じてるんだよね 。
 どうよこの隙の無さ! 流石フィル・ロード&クリストファー・ミラーだぜ! それ以外でも、レゴブロックとして製品化されてるものが出まくるので、DCヒーローや映画、世界の偉人等々、レゴならではの夢の顔合わせが成されているのも評価したい!
 あと個人的な事になるのだけれど、僕が小学生に上がる前の子供の頃、スペースシャトルの有人飛行が成功して、それでレゴでもスペースシャトルのブロックが出たんだよね。買って貰えなくて、只々おもちゃ屋で眺めるだけの幼き日々だったのだけれど、本作でその製品に付属してた宇宙飛行士の彼と再開した時は、全然泣けるポイントでもないのに、そういう個人的事情でダバァと泣かされてた。こんな経験ができるのもレゴの歴史の賜物ですなぁ。さらに個人的な思いを言うと、吹替だと俺達の沢城みゆきさんの様々な声が堪能できるので、ファンはずーーーっとエレクトしてられますぞ。
 

3位:キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
 現時点でのMCU映画の最高峰だと思います。かつて自由と正義を体現した男が、現代の混沌とした灰色の正義に迫るアクションサスペンス! どこが凄いってもう全部凄いよとしか言いようが無いのですが、そんな目一杯詰め込んだ中でも、単なるアベンジャーズ2までのブリッジに留まらず、ちゃんと一人のヒーローとしての掘り下げを行ってくれたのは、(特にMCUの)キャプテン・アメリカファンとしては嬉しかったですね。キャップを吹き替えで演じる中村悠一さんの誠実な演技もとても素敵です。
 
 良いSFを見た! というのが一番の感想。
 小難しいワードもちょいちょい出てきますが、『ドラえもん』のような仕掛け、『トップをねらえ!』1と2のような「想いは時間を超える」という展開は僕らアニメオタクの文脈でもあります故。
 冒頭から積み上げられた謎やちょっとした台詞や行動からの伏線が、終盤で見事に・美しく収束していく様は見事! 俺も超重力の影響を受けて地球上の時間の流れと違う時間にいたかのような、アッという間の3時間でした! あとやっぱりTARSくんかわゆい。早くリボルテックとかで可変するフィギュアを出し給えよ!
 

5位:イントゥ・ザ・ストーム
 夏映画の思わぬ伏兵でした! 襲い来る竜巻・嵐! 立ち向かう人間の勇気と絆の讃歌!
 関係の上手く行かない親子! YOUTUBEに面白映像をUPして有名になろうとするボンクラ! そしてハイテクの気象観測装置や24台の監視カメラに5トンの重さに耐えるウィンチ、防弾ガラスや鋼の装甲を持ち、4本のアームから杭を打ち込み、風速75mにも耐える秘密兵器「アウトリガー」を備えた究極の対竜巻マシン『タイタス』を狩り、脅威の映像を撮影して一攫千金を狙うストームチェイサー! それぞれが構えたカメラのPOV視点に、客観視点を交えながら大自然の猛威を捉えてくれます。 
 89分という短さの中でも、張られた伏線はきっちり回収、ダレ場もないので、我々観客はどんどん前代未聞の気象パニックの最中に巻き込まれていきます。ディザスター映画のお手本ですヨこれ!
 

6位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
 個性豊かな面々がその個性を存分に活かしたアクションと、漫才みたいな掛け合いをガンガンかましてくれるので、なんとも楽しいです。絶体絶命の時にあんな事するヒーローいるか?!
 笑い、泣き、そして細かくマーベル世界の設定も拾い散々楽しませてくれた後に、最後にこの作品・このキャラならではって形でお話を纏めちゃうだよなぁ。ほんと隙が無い。
 ただ音楽については色んな所で褒められてるけれど、あれらの音楽は僕よりも上の世代の人の音楽なので、ガッツリ乗り切れてるかというとそこまででもないのよね。世代問題なので作品の所為では無いのですが、ちょっと俺さんよ勿体なかったぞと。
 
 はて「マーケット」ではなく「ラブストーリー」とはと、TV版を見ていた人なら誰もが思うであろうタイトルですが、一組の男女が思いを伝え合うというミニマムなドラマ一点に殆どのフォーカスを絞ったラブストーリーとしか言いようのない物語で、終わってみれば成る程これはと。
 『けいおん!』劇場版よりも、より「若者がいよいよ意識する、過ぎ去り流れていく時間」を描いています。TV版の片翼とも言える程の存在であるデラちゃんを、あえて物語から退けたのは正解でしょう。ファンタジーはあの空気の夾雑物になってしまう気がしますね。親子や男女の心の繋がりという、『けいおん!』では描かれなかった事も、TV版よりより深く描かれ、『けいおん!』に囚われず・留まらず、どんどん先に進もう・描こうという、製作陣の気概なんてのも見て取れて嬉しかったです。
 各キャラクターの揺れ動く心情を、時に繊細に、時にダイナミックに、実に丁寧に描いています。まさしく実写の恋愛ドラマのようではあるのですが、各キャラの嫌味無きピュアさ、これは実写だと嘘になってしまうかもしれない。アニメだからこそのキャラ造形かもですね。
 アニメだからこそといえば、告白を受けた後、混乱したままに商店街を走り抜けるたまこに見える世界を、三人称視点で観るシーン。あれは彼女の混乱した心中を、なんとも抽象的に、なんとも美しく描いているだけでなく、なんだかこのように世界が見えてしまう事に共感や納得、既視感さえ覚えさせてしまう、まさにザ・アニメ!な名シーンでしたね。
 伝えたい・伝わらない・答えのこない思いと、そしていよいよ伝わる思いを、バトンと糸電話というアイテムを上手く象徴として機能させて、クライマックスに繋げていくのも上手いなぁと唸るばかり。TV版とは明らかに空気が違いながらも、されど間違いなくファンが納得するお話という、TV版後を描く劇場版の最上級の答えの一つだったと思いました。
 

8位:THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ
 これもTVシリーズのその後を描く劇場版。僕ごときにわかが何をか言わんやですが…… 海の物とも山の物ともつかぬ新機軸のアーケードゲームに、ほぼ無名の役者陣が声を当てて始まったアイマス。人気を得て大きな存在となり、アイマス以外での活動の場も増えていきます。これは本作中の成長した765プロアイドル達の姿にも重なるのですね。これはアイマスへ、そして役者陣への思い入れが深い人にこその映画だなぁと。春香がアリーナの舞台で語るシーンは、そんな歴史の重さを感じてぐっと来ました。メタ的な読み解きもできるアイドル映画ですよ。
 春香が可奈を切らない所に甘さを感じる人はいるのだろうなと思います。ただ伊織が「春香はプロとしては甘い。でもスジは通す。」と語っていたように、やはりその甘さこそが天海春香という人間でありましょうし、甘さ転じて懐の深さを持っているからこそ、キャラクター皆がヒロインたるアイマスの中で、彼女がセンター的役割を担うのだろうし、765プロの皆も、アニメ制作スタッフも、そして僕や全国のプロデューサーも「託せる」のではないのかな、とも思います。理想論かしら……。
 そういう重要な役どころを担った春香役の中村繪里子さんは、ほんと繊細な演技をなさってて、こんなに豊かなお芝居ができる方なんだ! と今更ながら思い知りました。中の人にも「座長」感あった! 美希役の長谷川明子さんも、何考えてるのかわからない猫的な美希の思わせぶりな台詞を、思わせぶりなんだけど、それでもちゃんとその芯の部分のニュアンスがちゃんと読み取れる演技をなさってて(女子トイレでの春香との会話ね、最高!)これまた痺れた!
 クライマックスのライブシーン、のアリーナのCGがショボかったのは残念。BDで修正されたとも聞きましたが、大画面でアレはちょっと厳しかったなぁ。
 
 絵も設定も芝居も隙なし。僕らが見たいものを、僕らが思い描いたハードルを超えて三時間たっぷり見せてくれて大満足。
 過去幾多も語られたドラゴンスレイヤーの英雄譚なんてウソだぁと絶望するくらいに、邪龍スマウグの圧倒的すぎる格を見せつけてくれたのも嬉しい。燃え落ちる故郷のさまを切々と歌うエンディングテーマ『I See Fire』が泣ける泣ける。
 

10位:ホドロフスキーのDUNE
 ホドロフスキーの作品は不勉強ながら1作も観ていないのですが、劇中で流れる数シーンを観るだけでも、異様で異常な個性がギラギラと輝くなんだか妖しげなものなのが判ります。今や80歳を超える監督は、実に活気溢れる語り口で当時を物語ってくれるのですが、山っ気と無邪気さが同居しているような、これもなんとも不思議に魅力的なものなのですね。
 その情熱と人間性が、彼にツキをもたらすのか、人間力として作用されるのか、今や映画やアートの世界で偉人となっている、DUNEの制作当時から才能ある人間(作中では魂の戦士と呼ばれる)たちを次々と口説き落とし、ツモっていく様はなんとも痛快です。しかし同時に「上映時間を90分にしろだなんて、とても切れないよ。12時間は欲しい。いや20時間でも!」と熱っぽく語る彼を観るに、ああ、「傑作を生むには狂気の欠片が必要だ。」という言葉は真実だけれど、その狂気ゆえに、天才たちの才能を信じきれない・ついていけない人たちは多いのだろうし、だからこそこの『DUNE』は完成しなかったのだなぁ、とも思いました。
 情けないごく個人的な話ですが、僕はもう特に夢や野望の無い人間でしてね。淡々と日常を過ごすばかりなのですが、本作を見てそれが凄く悔しくなったのだけは、恥ずかしながら白状しておきます。
 

11位:ベイマックス
 マーベルの『BIG HERO 6』を換骨奪胎した本作。「優しさ」「泣ける」を押し出した日本での宣伝の切り口に疑問を呈する声もありましたが、いざ観てみれば、それも正しい、マーベルスーパーヒーローものとしても正しいという。
 ディズニーやピクサーには、週一で監督たちが集って、各作品の脚本を徹底的に叩いて練るというシステムがあるらしいですが、その成果物の隙の無さ、まとめ力、全方位目配せ力。ここまで組み上げる職人芸恐るべしですよ。
 

12位:思い出のマーニー
 どこかミステリー仕立てで語られる物語は、いよいよ最後に杏奈の苦悩とマーニーの謎に一本の道筋が出来、集束する。あっ、あの台詞や所作に感じたちょっとした違和感はこれか! いやー、お見事! なんて優しく美しいお話! 鈴木敏夫プロデューサーは「少年と少女の話だと宮さんが口出ししてくるから、少女と少女のお話にした。」と嘯いておりましたが、成る程、宮崎・高畑さんの空気と違った世界だよなぁこれ。まんまとやられました!
 
 ヒーローとは、という根源への問いかけがなされ(コミックじゃないんだ、という台詞の重さ!)、やがてヒーローとなる男女のお話。前作のようなライト感も残ってはいるけれど、ダークナイトのようにハードでもあった! ラスト、バイクを駆り走り行くヒットガールの姿はまさにまさに…!
 ただ、お話の構造として、キック・アス編、ヒットガール編、マザーファッカー編と3人それぞれのパートが結末に集束していくような流れなので、散漫だったり、詰め込んでる感があるのは否めない。自分探しが暗くなりすぎず嫌味じゃないのは◎。
 クロエちゃんって猿顔ぎみで、ストレートな美人顔というよりは愛嬌美人顔だと思うんですけれど(写真や作品ごとでその割合が変わりますが……)、それがあのヒットガールという強烈すぎるキャラのいい「抜き」になってると思うんですよね。1でもやってた、あの左口の端をちょっと上げて、はにかむような笑いの愛らしさったら!単なるクール系美少女ではこうはいくまい。
 
 前回以上に、ヒーローに付いて回る「選ばれし者の祝福と呪い」が描かれていて満足です。勿論これは他のアメコミヒーロー映画でも描かれているのですが、大企業の社長でも、神でも、特殊なエージェントでもない、普段は地に足のついた生活を送っている一人の青年、ピーター・パーカーだからこそ、より共感できたり、より感慨深く思えるというか。
 そういう「掘り下げ」のドラマパートが多いので、尺の割にはアクションやや少なめ? この辺は賛否あると思いますが、『アイアンマン3』同様、一人の人間/ヒーローを描く為に必要なものだと思います。どっちも半端になるよりは、この方がいいのではと思いました。
 ハリー役のデイン・デハーンはやっぱり良いっすね! 相変わらず憂いを帯びたり、負の感情に囚われた時の表情が抜群!
 

15位:X-MEN フューチャー&パスト
 今までのシリーズを総括するような作品。余計な説明無しでドンドン進んでくので、ファイナルディシジョンでのあれやこれはさっさと無視されてましたねw 思い返せば、正直もう少し説明あった方が……とか、あれっ?と思う所も無くはないですけれど、ダラダラされるよりは潔くて良いかな。
 過去と未来が交錯して描かれるのですが、ファーストジェネレーション組の描写は濃いし、X-MEN組のその後も確認できる。狂言回し役のウルヴァリンも、全シリーズ皆勤賞ならではの活かされ方。今まで見てきた者にとっては実に感慨深く、嬉しい事ですよ。
 クレジット後のおまけ映像には、古代エジプトで強大な力を放ちピラミッドを組む異能力者と4人の騎士が姿が! アベンジャーズがvsサノスなら、こちらはvsアポカリプスとは、やぁ、夢が広がりすぎる強大な敵だ!
 
 オリジナル版はドギツイ描写も多かったですし、本作監督のジョゼ・パジーリャもハードな作風に定評のある方ですが、今回はレーティングの都合もありましょう、その辺は控えめ、オリジナルよりも人間ドラマ、警察ドラマにより針を振っていました。ですが、それはそれで良い風に転がったというか。
 今回のロボコップは素顔が見えるのが基本で、戦闘時のみバイザーを降ろして戦うのですが、このアイディアが素晴らしい。バイザー有り無しで絵にメリハリが付きますし、何よりロボコップに表情の演技がつけられるので、人間ドラマに深みがでました。
 また今回は右手が生身なのですが、その理由付けが、「銃の最終的な照準微調整は本人が行う為、細かい動きが必要」、「マニピュレーターは感情によって時に精密に動きにくい」など、技術的なアプローチでもって為されています。しかしそれだけではなく、生身と機械のどちらの手を使うか、マーフィーは相手とシチュエーション毎に判断して使い分けてるのですよね。ちゃんとデザインをドラマに絡ませてくる。上手い描写だと思いました。前作のマーフィーが、自分をロボコップと呼ばせるか、マーフィーと呼ばせるか使い分けていたようでもありますし。
 メタルギアソリッド4攻殻機動隊(SAC)っぽい描写がちょいちょいあって、その辺もアニメ&ゲームオタク的に興味深かったっす。
 

17位:ポンペイ
 歴史ラブロマンスであり、剣闘アクションであり、ディザスターでもある幕の内弁当映画。アリーナで行われる剣闘は、『グラディエーター』『スパルタカス』などでもたっぷり描かれましたが、「あっ、まだまだあんなやこんな剣闘の見せ方が出来るんや!」と何度も気づかせてくれるくらい、色んな手練手管を使って楽しませてくれました。
 またそれは、クライマックスの火山の大噴火シーンも同じで、ポンペイの街を過剰なまでにあの手この手で破壊し尽くしてくれるので、当時の人々だけでなく、観てるこっちにも「この世の終わり」をちゃんと感じさせてくれるのがよろしい。それだけでなく、恋人同士が抱き合ったまま炎に飲まれ灰になるという、ポンペイが舞台になった作品ならではの、悠久の時に思いを馳せてしまう〆も気が効いてます(あんな様子で抱き合った親子や男女の灰になった姿が、実際ポンペイでかなり原型をとどめて発掘されてるそうです)。
 主人公・マイロの剣闘アクションですが、二刀流と武器奪取を効果的に用いており、ちゃんと何がしかの刀法を修めている感ビンビンなのですよね。実に様になった格好いいものでした。また騎馬民族最後の末裔という出自が最初から最後までドラマに活かされてるのも心憎いです。“ダメな方のアンダーソン”なんて揶揄される事もあるポール・W・S・アンダーソン監督ですが、どうしてどうして!
 

18位:スノーピアサー
 ディストピアテイストと ハッタリきいた絵面というハリウッド映画で何度も見た光景に、ジメッとしたバイオレンス描写、光と影を効果的に使った絵作り、そして何よりあのパワフルで カオティックな感覚という韓国映画イズムをプラスするという離れ業をポン・ジュノが見せてくれました。
 正直、後半の失速は否めないし、回収してない伏線もあるけれど、褒めたい所がいっぱいあって満足満足。
 

19位:
 元々原作がゲームから着想を得ているというこの作品、世界設定からは『ガンパレードマーチ』を想起しますが、作中でトムが何度も死んでパターンを覚え、攻略法 を図にして検討し、助っ人にも助けられ奮闘する様は、『ゲームセンターCX』の有野課長がアクションゲームに挑む時のようでもあり。挑戦と挫折、そしてそれを超えた所にある達成感という描かれ方はまさにまさに。
 ループものらしく何度も繰り返される描写も小気味よく見せて、ダレずに最後まで駆け抜けてくれますし、中々の秀作ではないでしょうか。期待以上でした!
  ラスボス倒したのになんでトムがループするんだよぉ、という意見を散見しましたが、ループについてはラスボスがする/しないを決めてるのではなくて、あの体液さえあれば勝手にループするんだと。でラスボスとトムが相打ちになったけれど、ラスボスが完全に死ぬ前にループが作動して戻ったと、そういう単純な話として飲み込めばいいんじゃないかなぁと思いました(僕は観ててそういうもんだと読み取ったので、特に疑問には思いませんでした。)
 

20位:ゴーン・ガール
 二転三転するサスペンスについて色んな捉え方する人がいて面白い作品ですよね。僕は「とても滑稽だけれど、笑えないよ!」派ですw デヴィット・フィンチャーは、観客に何がしか刺してくるから恐ろしい。「That's marriage.」はコクの深すぎる名セリフ。僕はまだ独身なのですが、結婚予定のある者、既婚者、あるいは離婚経験者は何を思ったか……。
 フィンチャー作品常連の音楽担当、トレント・レズナーによる、何気ない、されど確実に終始不穏な音楽は、これぞ劇伴といった所でしょうか。
 

21位:テロ,ライブ
 ほぼ全編、ラジオのスタジオブースでお話が展開されるシチュエーションサスペンス。余計な説明も無く、スパッと本筋が開始される気持ち良い潔さ。良い掴み!
  功名心から聴収率(視聴率)を稼ごうとした主人公が、犯人との駆け引きや、より大きな「汚さ」の前にどんどんドツボにハマっていき…というストーリーは、 中だるみも無く、最後まで引っ張ってくれます。やや無理もあるかなとは思いますが、ここまではっちゃけてくれりゃドンマイでしょう。まさかあんな大事になろうとは!
 CGもハリウッド級では無いにせよ、効果的なポイントのみ派手に見せて、かなり頑張ってたと思います。日本と同じアジア圏の作品なので、つい比べてしまうのですが、邦画じゃここまで突っ込んだ表現、そしてこんな大胆な二転三転はできないだろうなぁ……! 面白かった!
 

22位:her/世界でひとつの彼女
 恋愛とは、あるいはそもそも他人と関わるという事、他人と関わりたいという欲求とは。そしてそれらは僕らが生活していく上で切っても切れない、モノ・コトですが、ではさて、生きるとは? 僕ももう三十路も半ばですが、これ位生きてると思い当たる事しきり。痛い!
  真面目な話、アニメキャラに想いを馳せたり、『どこでもいっしょ』『ラブプラス』をプレイしたりするようなオタク、90年代のオタク受難時代に隠れて活動し、「一般人」と関わるのが怖い、「一般人」にコンプレックスを持つようなオタクが観るべき作品だと思います。「えぐる」作品ですが、それでも見終わった 後に、他者と繋がる事とその経験の素晴らしさを再確認しました。癖のある秀作!
 

23位:ホビット 決戦のゆくえ
 元々原作の五軍の戦いもひたすら戦うだけお話なのですが、本作でも延々バトルが続く感じ。バトル自体のクオリティは高いのですが、正直もうちょっとグッとさせる男泣きポイントが欲しかった……。前作で圧倒的な力を見せたスマウグも、あっさり片付いてしまったのも拍子抜け。大胆に脚色して、五軍の戦いに乱入してくるくらい しても良かったか、と無責任な立場では思ったりもする訳ですよ。
 とはいえ、描かれる世界の緻密さ、LOTRへの補完等々、ファンなら見応えがあるシーンも多いし、LOTRの冒頭に繋がるラストを見せられると、今まで見届けてきた歴史物語にピリオドが打たれたという感慨、ようやく物語が繋がった達成感もひとしお。
 アーケン石のその後とか、描かれてしかるべき事がポツポツ抜けてたりするので、エクステンデッド版に期待かなぁ。
 
 
24位:獣電戦隊キョウリュウジャーvs特命戦隊ゴーバスターズ 恐竜大決戦 さらば永遠の友よ
  我らが坂本浩一が、初めて監督するスーパー戦隊映画。足し算で見せていくマシマシ物語に、その上助っ人戦隊や次回作の戦隊の活躍まで盛り込んでも破綻が少ないのは流石。特に次回作戦隊を、おまけ的に物語の最後に登場させたのが上手い。今までの映画ではそれにさしかかると、物語の流れが完全に 止まってしまい、なんなら夾雑物の感すらあったのだけれど、このやり方ならまったく邪魔にならない。
 

25位:イン・ザ・ヒーロー
 東映アクションクラブ出身である唐沢寿明の役者人生のifであり、劇団東京都鈴木区の舞台 『ヒーロー・ア・ゴーゴー』であり、ミッキー・ロークの『レスラー』であり、日本でアクション俳優を志す者の哀歌であり、応援歌であり。首の故障を抱え、アクション俳優業界を取り巻く厳しい現状の中 「オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ!」と気を吐きもがき格闘する様には、唐沢寿明氏が単なる演技を超えた自らの思いを演技に乗せていたのでは、と感じました。それ位、主人公の本城と唐沢氏がかなりイコールに見えます。
 ただし……これを求めるのも難しい事なのだろうな、とは判っていますが、あえて厳しい事を言うと。クライマックスのアクションシーンは、「アメリカ進出を心底望む一ノ瀬リョウがなんとしても掴みたいチャンス」であり、「本城が何目も置く、アクション作品で名を売ってるメジャー監督が撮るハリウッド大作、そのアクションシーン」な訳ですよ。なのに全くそう見えない! セットにせよ、見せ方にせよ、せいぜい『イン・ザ・ヒーロー』程度(あえてこう書く) の邦画のアクションシーンにしか見えない(この手の指摘、この後にランキングさせてる邦画でも何度かしてます。今の日本ではしょうがない事なのでしょうが)。

 また本作の公開と同時期に『るろうに剣心』が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。アクション俳優の話なのに、アクションの見せ場が色んな所に負けちゃってるんです。キャストの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。

 このアクションシーンが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 勿体無いなぁ。

 

26位:RUSH ラッシュ/プライドと友情
 自由奔放・快楽主義者の野生児と、真面目一筋、コンピューター人間という対照的な二人のドラマと奇妙な友情を描いたレース映画。職業ものとしても興味深かったですなぁー。あ、僕は断然リスクを避けるニキ・ラウダ派です。もうおっさんですのでw
 

27位:ローン・サバイバー
 ピーター・バーグ監督が『バトルシップ』の次に作ったとは思えない程に、リアルに寄って描かれた極限の戦闘シーンは驚き。一部では干されたとの噂もある、『バトルシップ』主演のテイラー・キッチュをちゃんと起用してくれるあたり、監督の懐の広さも図れようというものです。
 主人公たちと同様、ひたすらに劣勢の坂を転げ落ちる消耗戦が続く戦闘シーンは喉が乾きます。しんどー! 痛々しい岩場での坂落ち(2回もある!)シーンは階段落ちを超えたね! あの後でもちゃんと動くM4は丈夫な銃だなぁ。
 
 
28位:大脱出
 頭脳派スライと、超人キャラの時には見られない演技をするシュワが見せる、今の時代にアップデートされた「あの頃」アクション。クライマックスでシュワがミニミをぶっ放すシーンの「溜め」なんて、まさにまさに。映画館で拍手しそうになっちゃったよw
 脱獄ものなのでケイパー映画のような「企て」も楽し。アラも結構あるけれど、「あの頃」映画風だなぁと思って観てしまうのでそうそう気にならずだ。
 2 大レジェンドに対する刑務所長役、ジョージ・クルーニークリスチャン・ベールを足したような顔のジェームズ・カヴィーゼルがまた良かった! 設定だけなら陳腐な役とも断じてしまえるキャラを、抑制されたオーバーアクトでもって、クセのあるイヤミで冷酷でシツコイ曲者として、魅力的に演じていて宜しゅうございました。
 

29位:ドラッグ・ウォー 毒戦
 終わり方に好き嫌いあると思いますが、潜入捜査の緊迫感、クライマックスの近距離銃撃戦の迫力(ジャン警部のハコ乗りアタックにはリアルに吹き出しました。格好いい!)、登場人物のキャラ立ち、そしてニヒリズムたっぷりなドライさ。見応えある上質のノワールでした。
 

30位:映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
 小気味いい下品ギャグと動きの面白さ。ストーリー以外の理屈抜きに楽しめる部分も充分素晴らしかったです。特に五木ひろしロボのくだらなさと繰り出される妙なドラッグ感覚溢れる技ね! あ~っクラクラするぅ!
  『オブリビオン』的な面もあり、『アイアンマン』的な面もあり(あっ、そういえばひろしの声の藤原啓治さんはトニー・スターク! 脚本の中島かずきさんは アメコミマニア!)。そうそう、冒頭の完全にインフレしてるカンタムロボの戦闘は、中島かずきさんが脚本を担当した『天元突破グレンラガン』的でもありま した。
 

31位:ファイ 悪魔に育てられた少年
 序盤はちょっと退屈だったけど、ファイが自分に疑問を抱きだしてからは面白さがグッと上がりました。ファイが5人の父に仕込まれた犯罪テクニックを駆使する格闘&カーアクションは見もの。
 ファイの本当の親と、そして育ての親ソクテとの二重の親子の物語を見せる構図なんですが、ソクテの歪んだ愛の壮絶さたるや! キム・ユンソクいい芝居、いい表情してます。
 主演のヨ・ジングも15歳って年齢が信じられないくらいいい表情するんですよなぁ。逸材はいる!
 
 
32位:フューリー
 口の悪い体育会系集団大好き デヴィッド・エアー監督のハードな描写に、戦場の悪徳が+されると、わぁ嫌らしいわぁ。死体をやたらに酷い撮り方するんですよねぇ。「うぉぁ、突っ込むなぁ、すげぇ!」と喝采を送ると同時に「わー現実だったら敵わんなぁ」とアンビバレンツなアガり&引き。前線でない軍営描写も血と腐敗臭が嗅げそうな位。野戦病院で、その辺にテキトーに血を捨ててる様を見た時はそれはそれは渋い顔したよ俺さん。4DXでこの臭い再現したらみんなゲロって退場するぞ! 
  目玉の、実物を稼働させたというタイガー戦車はボスキャラの風格、「よっ虎屋!」って声掛けしたくなるような、じっくり溜めを作っての堂々の登場ぶり。一撃のタイガーvs数&機動性のシャーマンのバトルは見応え充分。曳光弾がやたらに派手に、敵味方色違いで乱れ飛ぶのは、なんだか『スター・ウォーズ』のブラスターの撃ち合いのようにも見えますが、実際あそこまで派手なものなんですか?
 

33位:300 帝国の進撃
 本作のギリシャ兵は、前作で言う「戦士」以外の、農民や詩人や商人たちの寄せ集め軍。皆マッチョで戦闘も充分こなすのですが、戦闘キチガイ突き抜け感は無し。敵も前作の不死の軍団風の被り物をした兵は出てくるものの、アルテミシアの近衛兵以外はそんなに個性的でもなく。敵味方のパンチが弱いかなと。主人公のテミストクレスも戦闘キチガイ寄りではあるのですが、それでも割と正統派の戦士・将軍なので、レオニダスほどトンガってないんですな。そして俺様最高なクセルクセスの出番も少なめとあれば、この作品はやはり、エヴァ・グリーン演じる所のペルシア女裏番長・アルテミシアの無双ぶりを語る他ないでしょう。
 クセルクセスを神に変えた毒婦であり、舞うように二刀を操る戦いの女神であり。この作品で唯一の笑い所と言ってもいいような、テミストクレスとのグラップリングスパーのようなバトルセックスには、普通思いついてもやらないだろ!とバカ負けしましたw アルテミシアが登場するシーンはいちいち強烈で、その場を持って行っちゃうんですよなぁ…… 捕らえた敵の首を容赦なく切り落とし、その生首をむんずと掴んで接吻するシーンは正直勃起モンでしたな。
 

34位:ドラキュラZERO
 串刺し公・ヴラドが如何にして吸血鬼となったか、というドラキュラ秘譚。90分という尺で、大体僕らが期待するもの・見たいもの全部見せてくれる良コスパ映画。闇の力をえたヴラドが、1人で(!)オスマン帝国軍に立ち向かう様は、これ光栄こんなゲーム出すんちゃうかなというような、まさにドラキュラ無双。殴り、斬り、蝙蝠アタックで敵を蹴散らし、ゲージが溜まったら必殺の串刺しムーブだ! 恐怖せよ!
 とはいえ単なる出鱈目アクションでもなく、結構ちゃんと歴史的事実やドラキュラに纏る逸話、他のドラキュラ映画からの引用もあり、ほほうともさせられ。主演のルーク・エヴァンスや敵のドミニク・クーパーも決まってた。二人の甲冑格好いいよねー。
 噂ではユニバーサル映画が、過去のホラー映画の数々を再生させ、最終的に各ダークヒーロー達を一同にアッセンブルさせるプロジェクトがあり、これがその嚆矢とか。わくわくじゃよ!
 
 
35位:フライト・ゲーム
 飛行機内という限られた密室で撮られた本作は低予算の匂いプンプンですが、『ノンストップ』という原題の通り、緊迫感あるサスペンスがどんどん進むので見てて飽きる暇が無いですね。
 真犯人の計画が結構雑なのと、謎が明かされてからの盛り上がりにやや欠けますが、それまでは良く観客を引き込んでくれるので良しとしましょう。元々尺が100分少々な事もあり、コンパクトに纏まっていながらも楽しめます。『96時間』リーアム・ニーソン好きなら見て損無し。
 

36位:猿の惑星:新世紀
 なぜ猿が進化したのか、を描いた前作に比べ、話の展開が読み易すぎるという嫌いはあります。とはいえ、シリーズのキモ「差別する側・される側」についてもきっちり描き、前作よりもより『猿の惑星』感を堪能できます。猿の数も、前作とは比べ物にならない位多数出てきますが、顔にキズをつけたりなどで、主要な猿についてはさり気なく個体の認識を容易にしてる手腕はお見事。
 前作でもシーザーの「目」による表現が巧みでしたが、今回はさらにそのパフォーマンスに向上が見られるというか。猿に表情がつきすぎるとリアリティを失ってしまうので、まさに目は口ほどに物を言う、を地で行くボスになってます。格好いい!
 ただ幾ら人間並、あるいはそれ以上のの知能を猿が持ったとはいえ、いきなりそうそう銃を正確に扱えないだろうとか、弾切れの際、弾倉をどこで手に入れるのかという物理的な面と、機能を知らないからリロードできないだろとは思ったよね……。 あと倉庫から奪った銃にかかったままの安全装置はちゃんと解除できたの?とか、何故かやたらに銃関係の事が気になったとさ。
 

37位:エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
 勿論楽しい作品なのですが、どんどん参加スターが増えていってる上に、今回若手チームまで出てきてるので、各々の見せ場の尺が当然分散、薄まるというプリキュアオールスターズ問題をこの作品でも確認する事になろうとは……。 そのスターたちのギャラが高すぎて集客に気を使ったのか、こっそりレーティングの年齢制限なくなったのでゴア描写なども薄味なのもちと寂しい。
 やっとお鉢が回ってきたバンデラスとスナイプスは儲けものな役柄でしたね。色んな所でゴリ子扱いされてるロンダ・ラウジーの活躍ぶりもファンとしてはヒャッホーものでした。僕もクラブでノされたい!
 

38位:ハリケーンアワー
 画面も全体的に地味で、低予算感丸出し。とはいえそんな中でも、娘の命という「制限時間」を軸に、サスペンスエンターテイメントとして色々やりくりしてて好感が持てました。
 当初は生まれた娘に実感の持てなかった主人公ですが、その小さな命を守り続けていく内にやがて父となるポール・ウォーカーの演技は、ワイルド・スピードシリーズとはまた違う魅力に溢れていました。もっともっとスクリーンで彼を見たかったなぁ……。
 
 
39位:アナと雪の女王
 ゲームのニューハードが出たら火や水の自然物を見よとはよく言ったものですが、冒頭の氷を切り出すシーンの水・氷の映像表現にはいきなり度肝抜かれました。神田沙也加さんが吹き 替えるアナの愛おしさも堪らないです(できうるならば、彼女にはもっとTVアニメの声も当てて欲しい!)。
 有名すぎ る『Let It Go』のくだりは、あらゆる軛からヒロインが開放される、正のベクトルのカタルシスある曲なのに、その実、歌い手のエルサはあらゆるモノに背を向けて全くの孤独を選んでいるという事実に驚きました。曲は最高のクライマックスを迎え、エルサは「私は解き放たれた!」と歌いきる。と、それと同時に自らが築いた氷の城の門を閉ざし、全てを拒み閉じこもる。90年代のオタク冬の時代に青春を送った僕は、思わずシンパシーを感じてしまいゾッとしました。これ子供向けでやっちゃうか!
 ただ、割と中盤以降の話の進め方は雑ですよね。ああっ、そんな簡単に事が収まるとはっ。その辺もうちょっと煮詰めて欲しかったとは正直思いましたね。
 
 予告編ではいかにもなヘラクレスの伝説のシーンを釣瓶撃ちで見せておきながら、本編では「あれは実は…」と伝説の真実、裏側を見せるような不思議な作りになってます。
 ただ僕はその伝説の冒険譚目当てで劇場に足を運んだので、あれっ?と首を捻ったのも事実。終盤まで首を捻り続けましたが、クライマックスでいよいよヘラクレスが覚醒した時には、その溜めが効いていただけに逆にアガりましたね。終盤はホントもう色々ノリノリだな感があってかなり楽しいです。
 結局ヘラクレスはただの人間だったのか!と言う人もいますが、僕はヘラクレスが試練を経て、本来の力が覚醒したのだ、彼はやはり神の子であったのだ、と解釈してます。(ちなみに劇中では明言されず)


41位:劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-
  キャラクターの本質に迫ろうというお話はとても好みだし、盛りあがりどころもしっかり作ってあって楽しめます。だがだからこそ、根性で解決したり、新キャラのライアン扱いが割りと雑なのが気になりました。虎徹とライアンを対比させるような物語にするとかした方が深みがでたかも? あとこれが無いと虎徹がヒーローとして活躍しにくいという事なのでしょうが、彼が扱うワイヤーが、スパイダーマンのウェブ並に万能なのも気になります。安易に虎徹の能力が元に戻ったりしなかったのには好感が持てましたね。
 

42位:るろうに剣心 京都大火編
 流石谷垣さん、今までの剣劇では見られないような、ヘンテコでやんちゃで格好いい殺陣を組んでくれてます。僕は映画に非日常性を求めてしまうので、その視点で見ると大概の邦画は漏れてしまうのですが、これくらいやってくれると、見に来た甲斐もあったなぁと。
 ただ、芝居、脚本、演出など、予算規模とは別の所で“安っぽさ”が見て取れる。この手の「隙」が、非日常感の邪魔しちゃうんですよ。
 

43位:るろうに剣心 伝説の最後編
 アクション はさらに進化。vs宗次郎戦などは惚れ惚れします。しかしやはり例の“安っぽさ”は相変わらず。薫殿の扱いの適当さや、斬首刑寸前の剣心を見ても囲いを蹴 破って猪突しないらしくもない左之助といったようなキャラぶれ、一応の格好をつける為のような、とってつけたラストの敬礼などなどの「粗さ」には、アクションが凄いだけに、もっと頑張ってくれよ! と言いたくなります。
 
 ジョリ姐さん演じる所のマレフィセント、はっきり言って「悪く」ないです。オーロラに呪いをかけるのも「そりゃそうしたくもなるな」と思わせる程にクズい王様…! マレフィセントにいちいち同情・共感してしまう。オチも読めてしまうと思わせておいて、実は…というのにも期待したけれどそれもなく。果たして予想通りに物語は終わります。悉くの描写がどれも浅めなので、こちらに響く前にあれよあれよと終わってしまった印象は否めない。
 とはいえ、マレフィセントが魅力的に撮られているのは確か。ジョリ姐さん好き、強い女好きなら、延々それを見てられるので大層幸せになれます! 素敵! 俺、鉄製品うっちゃってマレフィセントさまのしもべになりに行くんだブヒー!
 百合要素もそこそこにあり(親子愛よりだけど)、その辺が好きな人ならそのポイント突破で楽しめるんじゃないかなーとは思いました。
 

45位:ノア 約束の舟
 方舟伝説において、ノアは善人であるが故に神に選ばれたのだったと思うのですが、本作では単に善人だったからというのではなく、何が何でも神の使命に従う人間絶滅マシーンだったから選ばれたのだ、という展開にはびっくらこきました。最終的には神の「試し」に応えうる人間だったから、というオチではありますが。
 ノア役のラッセル・クロウが戦闘で高い白兵戦能力を遺憾無く発揮しててガッツポーズ。グラディエーターよ再び! あとトバル・カインの国の飢えた民衆の描写が殆どゾンビ(放り投げられた生きた豚に群がり、手で肉を割いて奪い合う!)だったのには心の中で爆笑!
 ただやっぱりキリスト教徒じゃないと判んないというか、深く理解できないんじゃないかな、とも思わされました。こういう映画を観る度に、俺はキリスト教に入信するべきではないのかという不純すぎる思いに囚われます。
 
 ドンパチものかなーと思って見に行きましたが、サスペンスアクションでしたね。DEAの麻薬捜査特殊部隊のシュワちゃんが「それっぽい」動きをしてくれます。大口径のハンドガンではなくグロックを使ってたり、貫通力の高いアサルトライフルなど、室内戦を意識したリアル指向の武器チョイスも良いですね。
 但しサスペンスとしてはとっちらかってるなぁという印象。真犯人の動機が弱い、真犯人が判明した時の「こいつかぁ!」のカタルシスに欠ける、物語にある2つの軸がなかなかクロスしない、クロスしないが故に最後のパートが蛇足にも思える……などなど、問題は結構山積み。また「過去にここでこんな事があった」というフラッシュバックを、明確な場面・画面の転換無しに行うので、観ていてそれが今起こっている事なのか過去の事なのか、もの凄く判り難い。『エンド・オブ・ウォッチ』はあんなにキレキレだったのに、どうしたデヴィッド・エアー
 脚本が今ひとつというのもあるけど、それにしてももっと編集でどうにかなったろうし、むしろその編集で失敗してるシーンが多いという感。とはいえ、今までとちょっと違う役柄のシュワが見られるのと、女刑事、女隊員の演技は良かった。雰囲気は好き。
 

47位:アメリカン・ハッスル
 詐欺師が主役という事で、騙し騙されのスリルを期待したのですが、人間関係のドラマをじっくり楽しむ作品でした。(これは相性問題ですが)字幕版で見たのですが、と会話劇を楽しもうとすると、役者の演技や70年代を再現した魅力的な画面が目に入りにくいのは失敗でした。
 ジェニファー・ローレンスは、作品によっては野暮ったくてあんまり魅力的には見えないのだけれど、今回の髪型とメイクはイケててエロかった。コンパで会うと楽しいけれど、そこからいざ親密になると訳わ からん面倒臭さプンプンで嫌になるような、躁鬱の激しくて浅はかな女という役どころの演技がブッ飛んでたなー。『死ぬのは奴らだ』を髪を振り乱して歌うシーンの妙なカタルシスといったら!
 

48位:荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
 妙に豪華なキャスト陣にこんなクダラナイ事をやらせるセス・マクファーレンの人間力は一体…! ダンスシーンを始めとして、楽しいには楽しいですが、『テッド』よりはギャグが滑り気味でもあったかなぁと。リーアム・ニーソンの美尻に乾杯!
 

49位:サファリ
 危険なサバンナで遭難した旅行者達のサバイバルを描くPOV映画なのですが、予想通りの所で大体予想通りの事が起きるので、安定してそこそこ楽しめるけど大きな驚きはなかったかしら。
 マヤ役のクロエ・カービーのタンクトップ&ホットパンツ姿が妙にエロかったっすね。
 

50位:LIFE!
 40代曲がり角の男のロードムービー。巡っていく世界の映像の美しさは○。ただ映像は美しいのですが、お話としては割と淡々と進んでいくので、もっと捻りや仕掛けが欲しいと感じました(というか予告を観て、主人公のダイナミックな妄想映像がもっとふんだんに挿入されると思っていたんだよう)。
 昨年3月公開の映画なのですが、個人的に昨年後半で仕事について思う所多々あったので、今見返すと順位はもっと上がるかもしんないです。
 

51位:マイティ・ソー ダーク・ワールド
 アスガルドMCUマーベル世界の描写には惹かれるけれど、他のMCU作品と比べると今ふたつ程盛り上がりに欠ける感。ソーとロキの兄弟のイチャイチャは観られるけれど、もっとタッグバトルしようよ……! 割と小ネタギャグをふんだんに挟んできて、それはまぁ楽しいのですけれど、クライマックスでもその調子なので、そこで一旦流れが止まるのが気になりました。
 

52位:エージェント:ライアン
 手堅いというよりは、新しみの無い作りと、かなり綱渡りな作戦に疑問符。知性派としてキャラ立てしてるライアンの「頭の良さ」の表現も今ひとつ。敵の陰謀を割り出すシーンは、視覚的な漠然とした表現に逃げちゃったような気も。「ああ、こいつ頭いい!」ってもっと素直に唸りたかったなぁ。
 巻き込まれ中の怯えた子犬みたいなキョドり感溢れる顔から、徐々にエージェントとして成長した顔を見せる、ライアン役のクリス・パインの演技は良し。
 
 3年ぶりに田舎に帰ったら、「そぉら地元の名物料理だ、たらふくお食べ!」と、今まで以上に歓待されて、もう食べられない、も~う食べられないと胸焼けしつつ飯を食べてるような映画。長い。ひたすらに長い。
 過剰なまでに中国企業に寄り添い、作中で並び立てられるプロダクトプレイスメントについて、ライムスター宇多丸さんが、「これはマイケル・ベイがわざとやってる悪意である。あるいは『あんたらが好きな古き好き映画は滅びていて、俺らが作って今あんたらが見てる映画は別のものなんだよ、残念ながら。』『巨大資本を利用して資金集めをしようと思うとどうなるか。モラル無き利益追求の行き着く果てがこれだよ。』という主張である。」と読み解いていましたが、だとしたらこれはお金を払って「トランスフォーマーの映画」を見に来た観客に対して不誠実な事だなぁと思います。一応は原作もあるような映画でそんな主張はしないで、そういう趣旨の映画を作るなり、別の手段で訴えかけをすればよろしい(勿論この見立てが正しいとは限りませんし、自分の本意ではないようなものをたっぷり作品に盛り込まなければならない製作陣の苦い思いも判るつもりではありますが)。
 
 ルパンのパブリックイメージって、やっぱりアニメ版だと思うんです。それを変えるべき所は変え、残すべき所は残し、どう実写にコンバートするのか。その取捨選択が上手くいった所、そうでない所が混在しているように感じました。
 劇場栄えする奇想天外なストーリーや絵作りなどを追求すると、その「ルパンらしさ」や、アニメやマンガを実写化する際に、原作よりも高められる「作中のリアリティ」と齟齬も出てくると思うんです(というか実際出てる)。それを気にして変にまとめるよりは、型破りに突き進んだ方が良いと思いますし、本作もそのベクトルで作られているとは思うのですが、そこは予算の都合、邦画レベルでは充分頑張った画面なのですが、ハリウッドアクション作品に比べてやっぱり安く見えてしまう。もうこれはどうしようもない事、今の邦画の限界だとは思うのですけれどね。そしてその「予算都合の邦画の限界」とは別に、これもるろ剣と同様やっぱり脚本などの粗が気になってしょうがない。スタッフの力量の限界でしょうか。
 小栗旬さんは良かったですよ。アニメルパンの軽妙さを、あのお調子感から所作まで取り入れて、上手い着地点を見つけたなぁという印象。逆に浅野忠信さんの銭形は、アニメ版を変にカリカチュアライズしたような芝居で、声色も変に納谷悟朗さんを真似たようにガラガラ声を作っているのがダメ。個人的に今までの演技でワースト1です。香港警察署での説明台詞聞き取りにくいよ! あと『アジョシ』最強の敵を演じたタナヨン・ウォンタラクンさんが全く格闘をしないのにはドガッカリ。あれじゃ連れてきた意味無いじゃないですか。
 

55位:ドラゴン・コップス 微笑捜査線
 ジェット・リーが主演みたいな宣伝のされ方ですが、サブキャラです。主人公の刑事のバディですらない。コメディーなのに笑いにはキレが無く古臭い。途中まで張ってた伏線がまるっきり投げっぱなしでジェット・リーもアクションシーン以外はやる気なさげという三重苦。う~ん。
 

56位:平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊
 平成と昭和が対決に至る理由が雑! 相談しようよ! ゲストの戦隊たちの唐突さ! 『ウルトラマンメビウス』の80回のような555後日談は良かったですが……。
 「本来のお客さんの子供達が喜べばいい」『お祭り感』という言葉を何度聴かされればいいのか……。それらはごもっともな言葉ですし、予算や尺の都合があるのは重々承知ですが、今まで何度もライダー集合映画作ったのに、一向に改善が兆しすら見えないのは残念(プリキュアオールスターズは問題も抱えながらも、試行錯誤して改善が見られるのになぁ)。本作を期にライダー映画から足が遠のいています。
 

57位:キカイダー REBOOT
 高橋メアリージュンさんが、たべ・こーじ先生の描かれるギャルみたいでエロかった以外、褒める所が一箇所も無いの……。
 「そんな事あらへんがな!」と言いたくなるシーンばっかりなのには閉口。例えば冒頭のマリのマンションへの襲撃シーンひとつとっても、只のマンションに何故ヘリポートがあるのか、ヘリポートに下に降りる階段や入り口が見受けられないのは何故か、敵の大型メカが登場した際に、特殊部隊はどうやってヘリポートからはけたのか、その後ルポライターの服部はどうやってヘリポートに上がったのか……と、すらすら疑問が出てきます。リアリティラインを旧作よりだいぶ上げてるだけに気になっちゃうんですよね。
 アクションも頑張ってはいますが、これぞというシーンは無し。クライマックスのキカイダーvsハカイダーも、機械のヒーローならではの戦闘描写でもあれば良いのですが、ただただ単調に長々格闘してるだけで正直飽きてしまいます。一番格好いいシーンが、プロフェッサー・ギル役の鶴見辰吾が、ハカイダーに独白しながら影の中狂気の眼差しを浮かばせる所、というのもヒーローものとして問題だと思います。
 
 
 
 
 以上57作品のランキングでした。なんだかんだで面白い作品が多かったなぁ。