2018年映画ランキング

 新年あけましておめでとうございます。

 昨年も冴えない感じでしたが、私もいよいよ不惑の歳。なんとかここで何かを変えたいところでございますよ。ともかく、2019年もよろしくお願いいたします。

 

 さて昨年は、1週間に1本ペース、年間50本の映画を観るという目標を立て、結果55本の作品を鑑賞しました。 仕事の繁忙期に気力をごっそり削られると、劇場に向かう気力がなかなか湧かなかったのですが、なんとか目標を果たしました。

 

 では、以下に記録として、自分の2018年の映画ランキングと、作品ごとの寸評をまとめてみようと思います。

 

 

※注意等※

・2018年に自分が劇場で見た全映画のランキングです。

・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。

・このランキングは「書いた時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。

寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。

 

 

 

◆2018年ランキング
1位:ちはやふる −結び–
7位:アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
10位:1987 ある闘いの真実
16位:来る
18位:ペンタゴン・ペーパーズ
20位:アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル
23位:ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル
27位:ミッション:インポッシブル フォールアウト
28位:アリー スター誕生
29位:ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間
32位:シュガーラッシュ:オンライン
33位:ハン・ソロスター・ウォーズストーリーズ
34位:アントマン&ワスプ
35位:パーティーで女の子に話しかけるには
38位:悪女 AKUJO
41位:ヴェノム
44位:仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER
47位:ゴッホ 最後の手紙
50位:GODZILLA 決戦起動増殖都市
53位:キングスマン ゴールデン・サークル
54位:ダークタワー
 
 

 

 

 

 

◆寸評

1位:ちはやふる −結び–
 「もっと、もっと、繋がれ。繋がれ。糸のように。新と、太一と、皆と、繋がれ。うまく言えないけど、私にとってのかるたって、そういうこと。」これは、『ちはやふる 下の句』での千早の台詞ですが、その下の句のテーマ「繋がり」を、本作の中で重ね続けていき、そして最終的に本作のテーマ「未来」に結んでいく。本作の物語の構造そのものが、高校と水沢かるた部を卒業していく劇中の面々への祝福とエールであるし、同様に本作で実写映画『ちはやふる』を卒業していくキャスト陣への祝福でもありましょう、そして勿論、鑑賞している僕たちへの祝福でもあり。
 
 特に「スペックは高いけれど、どうにも報われない男」太一が、三部作の果てに成長。最後には物語を牽引していく存在になり「(太一も、観てるこっちも)報われた」と思えるこの喜び。ことかるたに関しては凡人、何者でもなかった太一が、原田先生と周防名人という二人の師に導かれ、覚醒し、物語の幹になるという展開こそ、無数の何者でもない観客たちにとって、「私の物語」になり得るのではないかなと。
 
 周防名人が劇中、小野小町の歌を指し、「この歌が今に語り継がれているように、人間は瞬間を千年先に残すこともできる。」と説きましたが、まさしく本作は青春映画・スポーツ映画の金字塔として長く長く世に語り継がれる作品になるのではないのでしょうか。こんな大傑作が本邦で生まれた事が、なんとも喜ばしい!
 
 
 高坂希太郎監督の「神は細部に宿る」を地で行く丁寧な仕事のおかげで、可愛らしいあの絵柄 ──ある種のファンタジーとも言える── 登場人物たちに生き生きとした説得力が出てくるんですね。アニメーションの魔術を見た思いです。
 
 この作品、冒頭に「死」にまつわる大きな出来事があって。その件の扱いについてとても気を使っているのが上品だなぁと。直接的な「死」という言葉は1回しか出てこなかったと思います。あの品の良さを保ち続ける絶妙な制球力、素晴らしい!
 
 その、おっこの死にまつわるトラウマを扱ったシーン! 普通のBGMがいつのまにか自然に、不穏なものにスライドしていくあそこ、凄かったねぇ!怖かったねぇ! そしてそこで溜まったストレスを一気に開放する、挿入歌『ジンカンバンジージャンプ!』が流れるドライブ&ショッピングシーンのカタルシスもたまらない(ああっ水領さまっ!)。……あかん、褒めるところばっかりすぎる!

 

 
 凄いぞ、スター・ウォーズのep1から6を2作でやり遂げた。もはやこれは『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』に並ぶインド一大叙事詩である(断言)
 
 ただただひたすらに、アマレンドラとマヘンドラ、2人のバーフバリと荒ぶる神・シヴァを讃える物語。だが力強さを備えた名作とは得てしてシンプルなものである。原哲夫漫画のような「すげぇなこの人は!」の釣瓶打ち! 俺は無能な小物だけれど、あんな偉大な男の下に仕えて、及ばずながら力になりたいと思って涙したよ。弱気を助け、義を重んじ、夢を抱かせてくれる大英雄!
 
 しかしハッタリかましまくりのはっちゃけアクションなのに、ちゃんと継承・王位奪還ものとして芯が通っていて、物語が綺麗に収束していくのは見事だよ。新たなインド神話を作るのだという気概が伝わってきて、嬉しかったなぁ。
 
 
 恋人同士になった女子高生2人が、相手と自分の心に向き合う日常の様を描く小さな恋愛劇。僕は百合系作品だと、登場人物たちのピュアさを観察するようなものが好きなんですよ。男の乱暴な生々しさは嫌というほど知っているので、それが介在しないファンタジーに浸りたいんです。主人公の山田と加瀬さんがとても素直なキャラクターなのもよろしい。日々の喧騒に疲れた人々は、美しい自然に還ったりして心を浄化したりしますが、僕にとっては本作がそういうセラピーになりました。
 
 また加瀬さんがね、格好良くて、可愛らしくて。でも年相応に弱くって、尊敬できて。僕の理想の「王子系女子」を体現してるんですよ。
 誤解を恐れずにキモい事を言えば、僕がこういう「王子系女子」を憧れの眼差しで観ている時は、アラフォーのおっさんではなく、その「王子系女子」と同じくらいの年齢の、しかも女子(この場合は女子高生)の心持ちで彼女を観ているんです。山田よろしく、おじさんを完全に「加瀬夢女子」にさせた時点で勝ちですよこの作品(笑) あーあ、白馬に乗った加瀬さんが、女子高生になった僕を迎えに来てくれないかなぁ……(うっとり)
 
 
 これは森見登美彦が描くSFジュブナイルですよ。しかも今までアニメ化された『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』よりよっぽど正統派エンタメ。ジュブナイルとしてはじまり、『インターステラー』的SFを「すこし・ふしぎ」的SFを織り交ぜ解決し、またジュブナイルに着地していく。いやぁ、夏に見たい傑作がまた1本増えました。
 
 アオヤマ君という、小学4年生にしては「出来た」子供。彼の持っている幼さゆえの万能感の描写が面白いと思いました。アニメでギャグ方向に振らず、真正面からこの万能感を扱ってるのあまりないんじゃないかなぁ。あそこまでではないにせよ、かつて少しくらい聡かった子なら、共感できるんじゃないでしょうか。
 
 そんな聡い子が恐らくは初めて味わう「初恋」、「喪失」、そして大きな「決意」。ラストでは冒頭と対になるようにアオヤマ君のモノローグが流れますが、その重みは全く異なります。あまりにも遠い「世界の果て(a.k.a お姉さん)」への道のり。しかし、彼は決してその道を諦めないでしょう。若者よ、大志を抱いてハイウェイを進め!というエールを送る素敵な作品なのでした。
 
 
 
 どう大人になっていくのか。あるいはある種のモラトリアム的期間(鳥かご)からどう羽ばたいていくのか、という普遍的なテーマ。それを『響け!ユーフォニアム』という人気TVアニメに乗っけて成立させているのに、かつそのTVアニメ版とは全く違う手触りの青春ものとして、よくこうも達者に具現化できるなぁと。セリフだけに頼らず、キャラクターの仕草や間、構図、あるいは背景やガジェットなどの配置等々、描写を丁寧に積み上げて観客をコントロールしていく手腕には舌を巻きました。

 青春という、あのとてもとても短い(でも当人たちはそんな短さをちっとも感じていない)あの輝きと可能性に満ち満ちた時間を生きる若人たちの苦悩すら、アラフォーおじさんには眩しくてしかたなかったです。かつては自分もそんな世界で生きていたはずなのに。
 
 
7位:アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
 2作目では減じてしまった、「あのヒーローとあのヒーローが!」という大集合映画の醍醐味が蘇った感。ガーディアンズら宇宙組が地球組と交わる面白さ! 地球組も魔術師に王様と新キャラ増えたしね。これは本当にワクワクできた!
 
 キャラがどんどん増えるとどうにもモブ気味なキャラが出てきてしまう、なんてのは日本の大集合映画で見てきましたけど、本作は奇跡的に全員に見せ場があり、不足感がないのが凄まじいよね。相変わらずの交通整理力。その分上映時間もえらい長いんだけれど退屈には思えなかったな。場面転調のつなぎ方も何かと気が利いてて気持ちよかった。
 
 ガーディアンズ連中のシーンでは結構笑いを取っていくんだけど、後半はやっぱりハードでシリアス。大胆な話の奔流に押しつぶされそう……。クリス・ヘムズワースが語った「皆がこの長い旅の終わりを感じている」という言葉を噛み締めながら見ておりました。
 
 
 クリーチャーの出て来る物語が、こんなにロマンチックになるものか。人間と物の怪の異類婚姻譚は洋の東西を問わず多くありますが、本作は今のこの時代に寄り添ったデル・トロ印の最新御伽噺なのでありました。
 
 トランプ政権誕生以降、北米では白人対マイノリティという構図が強くなっており、程なくしてそれに異を唱えるメッセージが込められた映画も多く作られるようになりました。政治的メッセージは、場合によっては「臭み」になってしまい鼻につくものですが、本作ではファンタジーに落とし込むことで「臭み」は感じにくく、登場人物には共感しやすくなり、自然に彼らの痛み・苦しみが伝わってくるんですね。
 
 そのファンタジー要素については、デル・トロ監督の趣味性を全開にしちゃってるんですけれど……。とはいえ単なる趣味に留まらず、あのグロテスクさのあるクリーチャーが愛の対象であるからこそ、劇中のイライザのセリフのように、相手の「ありのまま」を受け止めるピュアな恋愛劇によりふさわしいという。なんか製作者と物語のバランス、相性の良さが奇跡的で、デル・トロはこの作品撮る為に世に出たのでは……と思わせるほどに色んなピースががっちりハマってる作品でした。
 
 
 『巨人の星』×『バトルオブ・ザ・セクシーズ』なスポ根レスリング映画。親のエゴに付き合わされ、レスリングエリートとして育った娘が、やがて親に反発し、再び絆を結ぶ。そして子は、果たして本当の「巣立ち」を果たす。親子二代に渡る、真っ直ぐなスポ根ものとして「も」素晴らしいのですが、そこに「インドに根強い男尊女卑に立ち向かう女性の物語」、という要素が加わるんですね。「女だてらにレスリングなんて」「お前は俺に従っていればいい」。マウンドや土俵に女性が上がれない本邦においてもグサッとくる描写が……!
 
 そんな壁を次々と突破した果てに「女を下に見る全ての人間との戦い」に挑む娘の戦う姿にぐいぐいと引き込まれてしまいました。国際大会で相手を投げ飛ばすその姿に、こちらも思わず「ヨイショ!」の声を上げてしまう。それくらい手に汗握りましたね。応援上映したいよこれ!
 
 また登場人物たちのレスリングムーブが、確実に「やってる」動きなんですよね。組技は体捌きと重心のかけ方がキモなんで、体の使い方知らないとあんなにできないですよ。ちゃんと作り込んでくるインドの俳優陣に大拍手。
 
 
10位:1987 ある闘いの真実
 韓国版『ペンタゴン・ペーパーズ』な趣で、軍事政権の統制下、その腐敗を暴かんとするマスコミや心ある人々たち。そしてそれらを潰さんとするのがキム・ユンソク演じるコク深すぎる所長ですよ。
 
 幼い頃、北朝鮮軍に家族を殺された脱北者の彼は、「アカ」狩りに血道を上げる。法律無視の暴力・恫喝は当たり前。組織を守るためなら自分の部下に対しても、家族に対する拷問を示唆して従わせる。この体制側の象徴たる人物が邪悪さを発揮すればするほど、この時代の絶望感と、真実と民主化を求める人達の願いのような思いが際立つんですね。(いい意味でエンタメ感たっぷりな)今年ベスト級の胸糞悪い悪役ですよ。
 
 ラスト手前、韓国キリスト協会の本部で事件の真相が発表されます。本作における白の側に凱歌が揚がり、黒の側の警察側に敗北の鐘が鳴った、潮目が変わる劇的なこのシーン。ここは本作でたびたび出てくるノワール的な演出の極みで、本当に美しく絵になるショットが連続します。必見。
 
 エンディングクレジットで当時の運動の様子を撮影した映像が流れるんですが、劇中より遥かに規模がデカいんですよ。光州事件や本作を越えて、まさしく「民衆が勝ち取った」事実がたった30年前にあるってのは強いよなぁとしみじみ思い知りました
 
 
 主人公のバーナムは実在の人物で、相当な山師のまぁひどい人物なんスよ。作中でもよく考えると「これ……酷くない?」という点がいくつもあるんですけれど、巧みな表現と異様なまでのテンポの良さでカバーされてる。凄い!w
 
 これフリークショーの興行師の話をマイノリティー賛歌、人間讃歌に仕立てあげようってのが、それこそ山っ気たっぷりな企画なんですけれど、それをミュージカルにしたってのがエラいよねェ。くどくど説明しないでテンポよくどんどん話を進め、景気いい音楽と美しい絵を叩きつけられると、「アレっ? これおかしくない?」て思う間も無いから、なんだか感動できちゃうというw なんという力技! ズルいよ! 作品自体が胡散臭いP・T・バーナムみたいだよね(褒めてます)。
 
 
 『ボーダーライン』の脚本を手がけた、テイラー・シェリダンの初監督作品らしい、強烈な個性を持つ土地と、そこに根深く巣食う問題が描かれた作品。舞台となる先住民保留地は、異様に広大で本当になんにもない土地なので、先住民女性が行方不明になっても、その詳細が全くがわからず。はて、これ人為的に不明になっててもわかりようがないよねというおっかない話。しかも行方不明多発というのは実話という、ね(キョーレツ!)

 かように『ボーダーライン』同様、「物凄いものを見せられているけれど大層しんどい」作品なのです。が、クライマックスの泥臭い鉄火場のシーンは見世物としてもめっけもので、社会派ミステリーを見ていたのに思わぬ得をした思い。
 
 「アベンジャー」と化したジェレミ・レナーがクライマックスで果たす、「人を裁く立場ではない自分よりも、この土地によって裁かれるべき」という報復だからこそ、その後の適者生存的な語りもより深みを増すというか。いやぁ、恐ろしい「土地映画」でしたわい。
 
 
 現実対虚構のオタク過剰接待映画。ここにはアレがそこにはソレが、アッ、アッ、アアーッ!と情報の波に飲まれていく快感。その圧倒的な情報量とライド感溢れる撮り方で飽きさせないというか。
 
 「オアシスは一人でプレイするゲームではない。」の言葉のように、ゲームの中で得た人と人の繋がりが、終盤、ゲーム内でスーパーヒーローのアバター大集結を果たす。そしてそれが現実にも波及し、主人公・ウェイドのために人々がかけつける。フィクションは現実に作用し、うねりを巻き起こす。僕らの現実もあの2045年のように諦めが蔓延する世界になりつつあるのかもしれない。けれどフィクションが人々を癒やし、活力を与え、絆をもたらすのだ! という、「フィクションの力舐めんな!」映画だと思うんですよ。フィクション大好きなオタクとしてなんとも力強い福音。でもその虚構に耽溺し続けてはならないとも説いているんですよね。最終的には「自分を守ってきた子供の頃の部屋」から出ていく……。
 
 なんですけれども! どうにも最後が嫌味に見えるよなぁw あの辺にスピルバーグのオタクへの愛の無さを感じる。あと現実でウェイドのために集まった人、何もしなさすぎ問題ね。
 
 
 狂気全開のマッコール先生の熱血授業が更に極まった本作。目をかけた黒人青年を更生させる為、ストリートギャングの巣窟にひょいとかちこみ暴力でもって解放。そして青年に、見てるこっちが「それ完全にトラウマが残るタイプの恫喝ですよね…」とドン引きするような説教。どうかしている!
 
 言ってることは完全に正しいけど、どう考えてもやりすぎですよね!をひたすら繰り返すマッコール。その熱い説教についつい観ている自分も啓発されて、映画が終わる頃にはなんだかいいもん見たな…と思ってしまうようなデンゼル&フークア監督力に満ち溢れた作品でした。
 
 嵐の中、元同僚の殺しのプロを自らのホームタウンに呼び込んで一人ひとり殺していくマッコールの手際の良さは、もはや小気味よくすらあって……。パン屋の小麦粉の袋切り裂いてから、来るぞ来るぞ……と期待させての粉塵爆発なんて、マッコール屋!と屋号を叫びたくなるケレンすらありました。かつての同僚を殺す時の目のアップが、例の虚無目なのも最高です。あれこそマッコール流の大見得よ。
 
 
 クライマックスのライヴエイド当日→ライブ再現のこのドライブ感たるや、タマランかったですね。特にクイーンのファンという訳ではない僕ですら、「この偉大なるバンドを映画の形で、再び世に知らしめん」という、キャストの熱演、スタッフの執念にほだされて感動してしまいました。
 
 そして何より楽曲の力ですよ。本作日本版の予告では「彼らの楽曲を唯一超えるのは、彼(※フレディのことね)の物語」というコピーが使われていましたが、とはいえやっぱり曲の力あってこそ、ファンでない僕にもエモーショナルな感動を呼び起こしてるのだなと思いました。
 
 
16位:来る
 だいぶエンタメよりでねぇ、Jホラー?があんまりピンとこない僕も楽しめました。丁寧に登場人物の胸糞描写を重ねた果ての、後半の全日本スーパー除霊大戦のワクワクぶりったらないですね。『帝都物語』『帝都大戦』の祈祷シーンをさらにオーバーに・ケレンたっぷりにした感じで、霊能力者軍団全員が全員、怪演を見せているという……なんだこれ!
 
 事が全て終わったあとも、ヘンに湿っぽくならずにバッサリ終わるのも好感。僕はこういうの好きだなぁ。
 
 
 SF飛躍部分の説明はまったくされていないし、スペクタクルの果てのカタルシスも無し。細田作品では、ぶっちぎりで「微妙」扱いされるんじゃないかと思う本作なんですが……。僕には当たりでした。俺が普段考えている事、理想とする事、あるいは過去の・今の自分がスクリーンの中に描かれているという所謂「俺の映画」なんですよ……。
 
 まず冒頭からまずいのである。妹という「異物」に両親の愛を全て奪われてしまった(ように思っている)くんちゃんの描写。あれ、俺なんでこんなに心を千々に乱されているの? はい、俺もちょうどくんちゃんと未来ちゃんくらい年齢差のある妹いるわ。これかつての俺だわと、矢庭に30数年前の、明確には思い出せないけれど、確実に覚えたことのある感情を呼び覚まされてしまったんですね。そしたらもう止まりませんよ、くんちゃんの一挙手一投足にいちいち共感ですよ。くんちゃんより35歳も年上のおじさんが!
 
 あとひいじいちゃんのバイクネタもやばい。ひいじいちゃんではないですが、俺もそれこそくんちゃんくらいの自分に、親父のバイクに一緒に乗せられてあんな感じで走ってましたもん。ここ何十年も思い出してなかったのに! 開く開くよ色んな心の棚が!
 
 「今の自分は、無数の偶然と縁のから成り立っている奇跡の産物である」というもうひとつのテーマについても……。僕は様々なご縁で、浅学非才の身には勿体無い友や経験を得ることが多々あり、これからもこういう縁を大事に深めていきたいと思っているんですよ。なんだよ、くんちゃん a.k.a 俺へのエール映画かよ! ありがとう!という思いです。
 
 
18位:ペンタゴン・ペーパーズ
 メリル・ストリープトム・ハンクスとの丁々発止の芝居のやりとりは流石の見応え。
「報道が尽くすべきは統治者ではなく民衆。権力の監視機関であらねばならぬ」というのは、たびたび報道機関に辛辣な攻撃をしているトランプ政権を受けて、というのもあるのでしょう。しかしこの作品、日本でも森友・加計学園問題が騒がれていたタイミングで上映されてるんですよね。神がかったタイミングだ……!
 
 心ある人々が精神的・物理的に様々に繋いでいき、そして報道は民衆に繋がり、世界を変える。「マスゴミ」なんて画一的に叩く御仁もいらっしゃるけれど、僕はまだその力を信じていますよ。
 
 
 実際にあった、テニスの現役女子王者と男子元王者の対決を題材にした本作。タイトル通りの「男女対決!」という単純な話ではなく……。男女の不均衡・差別問題も含めた上で、最終的には「自分らしく自由に生きよ」という、まだまだそれが難しくもある今だからこそ作られた作品だなと思いました。しかしなぁ、劇中女性に課される単なる待遇差だけじゃなくて、「お前ら完璧に舐め腐ってるだろ!」っていう男どものあの鼻持ちならない態度・心持ち、やっぱりイヤですねぇ。
 
 本作、めちゃめちゃ絵が素敵なんですよ。美しくて刺さるカットがバンバン出てくる。試合前、ボビー・リッグスがエスカレーターで息子と分かれるシーン。終わってみればめちゃめちゃ象徴的じゃないですか! おじさんとして泣けたよアレ。
 
 
20位:アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル
スケートしか知らないトーニャは、故にスケート以外の部分から破綻し、やがてスケートにもそれが侵食していく。愚かだけれども哀しいお話だなぁと。
 
 選手生命を絶たれたトーニャは、その知名度を利用して稼ぐほかなく、ボクシングのリングに上がります。壮絶にマットに倒れるトーニャは、ダウンしながらスクリーンの向こうにいる我々に、「これが真実よ」と語ります。その言葉は痛々しく、本作に対する皮肉でもありますが……。けれども彼女はマウスピースを拾い立ち上がり、再び戦い始めるのです。一敗地に塗れた彼女が、「Stand and Fight」と再び戦い始める。全てをかけたものを失ってもなお、それでも生きよう、進まんとする彼女の生き様を思うと落涙してしまいました。
 
 
 1が恋人たちの映画なら、劇中冒頭での宣言通り2はファミリー映画。ウルヴァリン弄り大好きのデップーですが、これ戦いの果て、今際の際にウルヴァリンが「家族の絆」を手に入れた『ローガン』のデップー版ですよ。
 
 前作のヒットを受けて予算大幅増、スペクタクルのスケールも大きく、アクションもより激しく。映画ネタもやたらに頻発(ああ、映画ファンでよかった!)と、全てにおいて正当進化と言った趣。ブットビキャラの映画だけど、そういう作りの丁寧さという下地ありきだと思うんですよな、このシリーズの面白さは。安易に飛び道具「だけ」「ばかり」に走らず、けど観客を満足させる破天荒さは存分にという。不思議ウェルメイドな映画。いい仕事してるわ本当。
 
 
アルツハイマーの元連続殺人鬼 vs 若き現役連続殺人鬼というアイディアだけでもう面白いんですね。主人公のビョンスは発作的に短期記憶が飛んで行くので、それを使ってのサスペンスを生み出す手腕がひじょーに洒脱。娘を狙う若殺人鬼を殺さんと迫るのに、発作がでちゃったらもうスパーンとその事忘れちゃってるんだもの。おまけにアルツハイマーの事を若殺人鬼が知っちゃう!ああ、怖いですね、ハラハラしますね!
 
 ラストも凄いよねぇ。ビョンスの日記は若殺人鬼が改竄してるけれど、その事実を知るものはいない(ビョンスはもう忘れてる)から、ラストに公開された日記の内容も疑わなくてはいけない。若殺人鬼が死んだというのも作品中に示されてるようだけれど、劇中の姉やタクシーのエピソードのように、一見客観的に示されてるシーンも、それが本当に客観的事実かどうか大層怪しいということ。だから若殺人鬼の生死も実はあやふやなのではないか……。ほんと反則気味だけど、連続殺人鬼の落ちた無間地獄として凄まじいオチだ
 
 
23位:ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル
今回はボードゲームからビデオゲームに舞台を移し学生たちの青春もの。ジュマンジらしいハチャメチャ玉手箱感はやや控えめながらも、「少年少女たちが殻を破り、成長し、友情を育む」という青春王道ものになってます。
 
 ジュマンジの案内役・ナイジェルを演じるリス・ダービーも地味にいい仕事をしていて。なぜかというとね、このナイジェル、前作のアラン・パリッシュを演じていた故・ロビン・ウィリアムズを多分に意識した芝居をしていて(表情の作り方なんか本当似てる!)、前作を知る人間としてはグッと来てしまう。しかも日本語吹替を担当するのは、前作のDVDでもBDでも日テレでもテレ朝でもアランの吹替を担当してる江原正士ですよ! 判ってらっしゃる! ありがとう!
 
 
これね、粗はある。ありますよ。でもね、僕には響いてしまった。なぜならこれ、「膝を壊してエースとしての栄光を掴めなかった棚橋弘至とその息子の話」なんですよ。
 
 主人公のプロレスラー・大山を演じる現役プロレスラー・棚橋も、特別に演技が上手い訳じゃない。でもね、彼が沈没しかけた新日本プロレスを立て直し、膝の故障を抱えながらも大エースとして未だに輝かんとし続ける男であることを僕は知っているのです。その彼のif、もしもの話として異様にしっくり来てしまうという事も分かってしまうんです。
 
 劇中のセリフに「プロレスは生き様だ」とありましたが、棚橋の年齢やコンディション、そして歩んできた生き様が、大村孝志という架空のプロレスラーの生き様を表現するのにこれ以上ないと思わせただけで、この映画は成功ですよ。粗はあるが、主役の最輝きが作品を名作たらしめる、という映画(例えば『燃えよドラゴン』もそうでしょう)はあり、本作もまたそんな作品だという事です。棚橋弘至というプロレスラーの生き様に共感や憧れを覚える人間なら、マスト見るべしな作品でした。
 
 
 戦場でイカれちまったならず者戦闘部隊 vs 銀河を駆ける狩猟星人! 景気&テンポ良く人が惨殺されていく様はいっそ小気味がよくて楽しいですね。妙に笑えるシーンも多いし、プレデターに至っては「人を殺して捨て台詞」感まで漂わせており(喋ってないけど)、まぁエンタメに徹してるんですけれど、主要登場人物に対するちょっとした演出が見事でね。「あ、こいつこういうヤツなのね」というのを案外丁寧に重ねていくんですよ。中盤を過ぎる頃にはならず者達ひとりひとりにすっかり愛着が湧いているんですね。
 
 ヘンリー・ジャックマンの音楽がまたいいんだ。メインテーマアレンジ曲は勿論、「ここぞ!」というところで、今あんまりなさ気な勇壮な「決め」の劇伴がかかるんでね、これがまた気持ちいいんですよ。
 
 難をあげると、今まであまり明かされてこなかったプレデターの様々な謎がいくつも設定されてしまったり、プレデターが妙に人間くさかったり、翻訳機を通して語りかけたりしてくるので、プレデターのある種の神秘性が「なぁんだ」と矮小化してしまったところですかねぇ。
 
 
 『オーシャンズ11』のダニーの妹・デビーが、全員女性のスペシャリストを集め、一攫千金の大泥棒仕事に挑むケイパーもの。キャストの豪華さと比例する登場人物の面白さ・魅力で物語をぐいぐい魅せていく感じ。僕の推しメンはリアーナ姐御です。作業着姿の勇ましさとドレス姿のゴージャスさ(タッパあるから映えるんだまた)
 
 元祖『オーシャンズ11』へのオマージュもちらほらあるんですが、『11』ではダニーが妻の心を取り戻すために盗みをするのに対し、『8』の妹・デビーは男に復讐するために盗みをするんですよ。男が尽くコケにされてしまう本作。おお、原始、女性は太陽だった!
 
 
27位:ミッション:インポッシブル フォールアウト
 トム・クルーズが自ら狂ったスーサイドスタントをこなしまくってしまった本作。監督インタビューなどを読むと、「あるアクションを思いつくと、その当日に台本が変わる」などと信じがたい事も語られていて……。
 
 その無茶苦茶ぶり、かつての香港カンフー映画のようでもありますが、それにしたってトム・クルーズは56歳、四捨五入したらもう還暦ゾーン。ジャッキーで言うたら『ベスト・キッド』を撮ってた時期ですよ。無茶具合はジャッキー超えてる……! イーサンの元妻とルーサーの会話で「ねぇ、彼元気?」「昔のまんまだよ。」という件がありましたが、昔のまんまどころかレベルアップしてて怖いぐらいですよ!
 
 当日に台本が変わるという制作のデタラメぶりが脚本に反映されたか、想定よりも現場の状態が悪くなる→とりあえず現場判断でそれに対処、という場当たり的なシーンが連続するのですが(何度おトムさんの「何とかする!」を聞いた事か)、「世界にはIMF(というかイーサン・ハント)が必要である」という総決算的なお話に集約される頃には、「あっなんかええ話やったな」という感じにはさせられてしまうのがズルいと思いました(笑)
 
 
28位:
アリー スター誕生
 レディー・ガガブラッドリー・クーパーの演技力&音楽力で、そのベタな古典的物語を成立させるという、ある種の『ボヘミアン・ラプソディ』ですね。『アメリカン・ホラー・ストーリー』は1stシーズンで視聴やめちゃったんで知らなかったんですけれど、ガガ様めっちゃ芝居できるやん!と(かつて俳優学校に通ってたんでしたっけ?)。ブラッドリー・クーパーとがっぷり四つの堂々の演技。
 
 そのブラッドリー・クーパーも、こつこつ練習してきたギターテクと、マジもんのロッカーのような歌声を華麗に披露。『ボヘミアン・ラプソディ』といい『グレイテスト・ショーマン』といい、(充分な準備期間などがあるとはいえ)芝居以外の要素のレベル高すぎじゃないですか海外の俳優陣は。舌巻きまくり。
 
 
29位:ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間
 スタジオポノック制作のアニメ3作の短編集。
 
 『カニーニカニーノ』 カニを擬人化したようなキャラクターのお話。子の成長と巣立ちを描いてるのは、ジブリからの脱却宣言としての『メアリと魔女の花』延長戦のような気も。背景美術がやばい。川の表現素晴らしい。
 
 『サムライエッグ』 卵アレルギーの少年のお話。本作も作画力が高くって、例えばダンスシーンなどの、躍動する身体を誇張・省略して描く表現が、昨今のCGによりダンスシーンに慣れた目には新鮮で見ていてすっごく気持ちいいんですよね。手描きアニメの醍醐味! まぁ別に作品の芯に関係あるシーンでもないのにそういう面倒臭そうな作画をひょいと差し込んでくるんでビビるんですけどw アイスクリームにまっすぐ刺さったスプーンが、時間の経過とともにじわじわじわじわと傾いていく描写とかもう細かすぎて笑っちゃったw
 
 『透明人間』 これが一番実験的だったなぁ。見た目だけでなく存在も、そして質量もない透明人間。この透明人間という特殊な存在を活かした「動」と「静」の作画に見応えがあって。「動」だとトラックとのチェイスシーン。スクーターに乗った主人公の体が、自身の質量のなさと走るスピードのせいで水平になってしまうんですが、その際カメラが、主人公の主観視点から体の中に引っ込んでいき、首→胴体→足→スクーター後方と、スパーンと抜けていくんですよ。透明人間なのを活かした気持ちのいい、そして見た事のない不思議映像!
 「静」だと、「雨に打たれてるので皮膚上に水滴がついてる。普通の人間だと右から見たら左についた水滴は見えないが、透明人間なので左側の水滴も全部見えている(ってわかりますこれ?)」って描写が凄かったなぁ。3作ともアニメーションの喜びに満ち溢れてました。
 
 
 事前に見聞きした監督の発言で、展開について予想が出来てしまい、サプライズ感を味わえなかったのはちと失敗でした。が、退屈はしませんでしたね。
 
 俺の隣で見てたおっちゃんが、例の組体操シーンで「なるほどねぇ~」と嬉しそうに唸ってたのよね。観客にこんな想いさせたらこりゃもう勝ちですよ。知恵と工夫、そして熱意がぎゅうぎゅうにつまった、二度と使えなさそうな魔法のような作りの作品でした。
 
 
 ノーラン三部作とも、DCEUバットマンとも全く色が違う娯楽作。このバットマン、戦国時代に飛ばされて多少は悩みますが、速攻で「装備やスーツがなくとも俺こそがバットマンなのだ」という『アイアンマン3』っぽいアイデンティティー回復がなされます。
 
 大仰でケレン味たっぷりの映像をただただ楽しめばいいのですけれど、アメコミ弱者の僕でもいろいろ「おっ」とさせられるくらい、結構丁寧に原作から拾ってる要素もあり。「バットマン」という大前提のもとではっちゃけちゃろうという、制作陣の意気込みが伝わってきてよかったです。
 
 高木渉ショーとも言えるくらい、ジョーカー役の高木渉さんパッション溢れる芝居が楽し。キャットウーマン役の加隈亜衣さんエロかったなぁ。ハーレイ役の釘宮理恵さんも脂が乗りまくり。
 
 
32位:シュガーラッシュ:オンライン
 ゲームキャラのアイデンティティーの話だった前作と違い、今回は割と普遍的な、「変わろうとするもの、変わらなくてもいいと思っているもの」の話になっちゃってますね。前作のようにゲームオタクが見て「これは俺の話だ!」と感じる点はあんまり……。
 
 それはそれで悪かないんですけどね。けども、言うなれば「田舎で年も性別も異なる二人が、熱い友情を育んだけれど、若い方は都会の刺激を受けて田舎から出るのを望んでいる。年老いた方は若者に田舎にとどまってほしいけれど、でも友人ならその友の夢を応援するべきじゃないだろうかと苦悩する。」話なんですよ。ラルフにとっては、ある種の『泣いた赤鬼』的展開で、ちょっと辛かったですね。だって僕、年齢的にも年老いた側/ラルフ側だもん。でも、若者の気持ちもわかるんだよな。都会には自分の力をより発揮できる場所があり、自分の力を認めてくれるライバルがいる。そりゃ田舎から出たいよ。俺もこんな田舎出たいもんな。あとはどう食っていくかだ(おっと話がそれた。)
 
 てか、スーパードラテク持ったキップのいいシャンク姉さんがハイパーチューンなカスタムカーで迎えにきて、手前の才能を認めてくれたなら、ヴァネロペならずとも俺もクラッと来ますよ。俺、シャンク夢女児おじさんですよ。白馬の王女様カモン!
 
 
33位:ハン・ソロスター・ウォーズストーリーズ
 ここのところ、毎年SW映画が上映されてるので、贅沢なことにありがたみがないなーなんて思ってたんですが、スピンオフとしては上々の出来なんじゃないでしょうか。若き日のソロとランドが、意外なほど魅力があって(特にランドは秀逸!)、そのお陰で最後まで楽しく見れたと思います。強引な点、これいらんやろな点もありましたが、キャラの魅力で乗り切った感。ウディ・ハレルソンベケットも良かった!
 
 「若き主人公が故郷を巣立ち、師に出会い、英雄としての萌芽を見せる」という点では、本作もep.4も同じなのですが、師は自分が倒し、ヒロインは囚われたままに終わるという、決定的なオチが真逆という作りになっているのが面白い(そうそう、「嫌な予感」「知ってたさ」の使い方も捻りがあって笑ってしまった)。ep.4の特別編以降の改変で不評な、「ソロがのんびり相手の話が終わるまで待つ訳ねーだろ問題」の意趣返しのような、そして甘ちゃんがアウトローになる為のステップのような、ベケットとの決闘シーンも良く出来てるなと。
 
 
34位:アントマン&ワスプ
 見どころたっぷり、楽しい楽しいアントマン映画2。ただ、ヴィラン側の描写が薄く、割りを食ってるように思えました。
 
 ゴーストとビル・フォスター博士は、スコット&キャシー、ハンク・ピム&ホープと対比される、さらにもう一つの父と娘の形なのだろうけれど、今ひとつ描写が薄い。なんならゴースト単体の描写も薄いので脅威も共感もイマイチ。
 
 脇ヴィランのパーチ一派も類型的な役割悪党の域を出ておらず。ちょっとした台詞や仕草で、「怖い」「出来るヤツ」あるいは「成り上がり」「案外抜けてる」等々とより豊かで印象的な人物にできたんじゃないかなぁと思います。面白かっただけに、惜しい点も目立っちゃったかという感じ。
 
 
35位:パーティーで女の子に話しかけるには
 突飛な奇行におよぶがエロカワイイ女子のエル・ファニングが完全に童貞を殺しに来ている。今で言うならあれだよ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のゼロツーに近いよこのエル・ファニング
 
 エンとザンの、実質ベッドシーンなパンクライヴシーンが素晴らしいのだけれど、ザンだけでなく、もっとエンの方のはみ出し物としての根源が吹き出していればよかったなぁという思い。あそこもっとアガる感じで!
 
 
 三大怪獣シカゴ決戦等々、こっちが想像してくれたことは大体やってくれるので満足なんだけれど、こちらの想像を超えたサムシングは果たしてやってこなかったなーという。
 
 あまり遺伝子変化を起こしていないっぽいゴリラは置いておくとしても、形状もだいぶ変わってるオオカミ、ワニ怪獣がその能力を発揮しまくってたとは言い難い。怪獣たちが個性を発揮しきれていないので、怪獣映画なのにその存在感はロック様に負けてるよねというw 逆にロック様はロック様のままなんだけど、珍しく追い込まれてしまうなかなかない絵なんかもみせちゃって。彼を追い込むには大災害や大怪獣クラスじゃないと釣り合わないというのがスゴイw
 
 
 アフリカントラディショナルデザインと最先端科学がごった煮状態のワカンダ描写が新鮮で面白かった。
 
 ラストの国連総会演説、「るつぼ」的に多くの人種の記者が集まる会場での訴えは、今のアメリカを反映したもので、非常に共感はするのですが、ブラパン1作で描くにはもう少し前段が欲しかったかなぁという思いもややあり。キルモンガーにユリシーズ・クロウの2大ヴィランは双方ともに魅力的。死んでしまうのが本当惜しい。
 
 
38位:悪女 AKUJO
 アクションはアイディアたっぷりで「ど、どーやって撮ったの??」と思うくらいにカメラがモリモリ殺陣の間を自由自在にすり抜けていくのが凄まじい。OPの鏡張りの部屋で戦うシーンは、カメラマンを映らないようにするのはどうしたんだろう。単純にCGで消したのかなぁ?
 
 ただ揺れが相当に激しいので、肝心の殺陣が捉えにくいのは確か。だがチョン・ビョンギル監督が前作『殺人の告白』とは違う畑に大胆にチャレンジした、その精神は大いに買いたい。次回作に期待!
 
 
 ジョン・ウー校長が大阪でロケ、福山雅治がメインどころを張るというのが嬉しいじゃないですか。これがまた面白いアクションが連発なんだ。いつものジョン・ウー節は勿論ですが、手錠で繋がれたチャン・ハンユーと福山雅治が二人で一人、文字通り背中を預けあうことで産まれる美しいショットがたくさんあるのは流石でございます。
 
 たーだお話が進むに連れて、お話のリアリティレベルがどんどんライダー映画みたいな方向にスッ飛んでいくので、そこが本作品に珍味感を与えてしまっているというか。
 
 
 音を出したら速攻殺しに来る盲目エイリアン vs そんな世界で生き抜く家族というホラー……なんだけど、モンスターは実はそんなに重要ではなく。家族側のドラマを描く方が主軸なんですな。だから「音を出したら即死」というアイディアは、実は舞台背景や装置でしかないので、設定なんか結構ガバいです(エイリアンの総数がわかりませんが、あんな原始的なやつに世界中の軍隊は潰せないと思う。飛べないし)。だからそこで結構肩透かし食らう人もいるんじゃないかしら?
 
 なぜあの家族は流暢に手話を使えるのかとか、そういう説明は一切ないのよね。下手すりゃあの姉の設定が最後までよくわからん人もいるかも?(とはいえ僕も途中で気づいたんだけど)。ストイックな「語らずの美学」を感じました。でもラストの、エイリアンの弱点分かって、さぁ大反撃だのシーン、完全にノリノリでしたよねw 見せつけるかのように思い切りショットガンガシャッ!って装填するのはもう見栄切りの域w
 
 
41位:ヴェノム
 ヴェノムがエディーに影響されて、ライオットが他のシンビオートを呼び寄せるのを止めようとしたのと同様、エディーもヴェノムに影響されてるのよね。ラストでは馴染みの雑貨屋を強請るゴロツキを躊躇なく食ってる=殺害してる。疑惑の会社の不正を暴こうとし、友人のホームレスには温かいエディーもシンビオートの影響を受け……という事だとは思うんだけど、その辺しっかり描写しないのでちょっとどっちつかずな気もせんでもない。二人が共生する上で結構大事なことなので、続編も見据えてそこもうちょっと掘り下げてもええんでないの、とは思いました。
 
 キーワードっぽい「できないことなんてない」の使われ方もピリッとせず。脚本はどうもっさりしてた印象。楽しいシーンは割とあったのでよし。
 
 
 今までの ──それこそ1stからUCまで── の宇宙世紀ガンダムの貯金を存分に使った「サンプリング」ガンダム作品。「ニュータイプ」という言葉の定義をかなり独自に拡大してるので、ここに乗れる乗れないはあるんじゃないだろうか。 ちなみに僕はあそこまでNTにイタコ的オカルト要素はあんまり持たせてほしくないなーって感じ。なんでもありになってしまうし、今後、とりあえずNTが奇跡を起こせばええのやろ?という話になってしまう危険性があるからね(そして本作もまた、その想定の範囲を出てないものね)UCがきっちり完結した作品だったので、そこから新キャラ出されて話展開されても、というのもある。
 
 とはいえメインキャラ3人の立ち位置は面白かっただけに、もっと思い入れを抱く時間がほしかった。悪くないんだけど、UC並みに尺取ってたっぷり描いて欲しかったってところ。
 
 
43位:ザ・シークレットマン
 まるで『ペンタゴン・ペーパーズ』の続編かのように、「ウォーターゲート事件」を題材にした作品。すっかりアクション俳優じみてしまったリーアム・ニーソンですけれど、彼の重厚な芝居を久しぶりに見ました。光と影の使い方も上手いのでしょう。リーアム・ニーソンの顔の凹凸と鋭い視線を使った、暗闇に浮かぶ表情。悩める副長官の姿を印象的に演出、独立捜査機関たるFBIを妨害する政権に対し、どう戦うのかが淡々と描きます。
 
 淡々と描いているが故にカタルシスに欠けているのですが、「過去」を描くことで「現在」を浮かび上がらせる事には十二分に成功しているので、僕のような日本人にもリアリティーをもって受け止められるのですよね。ニーソン演じるFBI副長官のマーク・フェルトと部下の会話が心に残っています。「大統領がウソを?」「人は皆ウソをつく。」あれあれ、本邦でも似たようなこと、なかったっけ?
 
 
44位:仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER
 「仮面ライダーとは虚構である(でも……)」という掟破りぎみなメタ視点で贈る平成ライダー総まとめ映画。『レディ・プレイヤー1』のような「物語(あるいは架空のもの)の力を信じろ」というテーマを、小さい子が見るライダー映画にぶっこんで来た気概は買いたいが、上手く処理できていたかというと……。「子供向け」を舐めて見るつもりはないけれど、とはいえ「子供向け」作品で、そういう哲学をガッツリ語るのは難しいんだろうな、というある種の限界も感じてしまうのです。
 
 それでも、20作品の歴史は伊達じゃない。次々と平成ライダーたちがスクリーンの中に現れるその時、スクリーンの外の子どもたちが、まるで応援上映会のようにあ「あ、クウガだ!」「ダブル!」「エグゼイドー!」と声を上げる様に、僕たち大きなお友達が、生まれる前に活躍していた昭和ライダー喝采を送ったように、平成ライダーたちも今の子供たちに同じように受け入れられているんだ。彼らのヒーローなんだと思うとなかなかにグッと来るものがありましてねぇ。この作品、やっぱ子供の多い劇場でみなきゃダメですよ。
 
 
45位:MEG ザ・モンスター 
 ステイサム vs 巨大サメ!の看板に期待をするも、ちょーっとお行儀良すぎません?と。『ジョーズ』的なスリルも、怪獣モノのスペクタクルにも欠ける感じ。予算かけてるのに妙に手堅くまとまってやんの。
 
 とはいえクライマックスで、「あれっ今から『ワイルド・スピード』時空のリアリティラインに変わった??」と思わせるような抜群のステイサム働きは見れます。なぜこれをもっと早く……とは思いましたが、そうするとこの作品1時間で終わっちゃうねw
 
 
46位:ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
 前作の珍獣大脱走な面白要素より、キャラクター同士の関係性のドラマに針を降った感じ。僕はハリポタ未見なので、故にわからんところも多々あったんじゃないかなー。まぁこれは観てない僕が悪い。シリーズ履修してから観ましょう。
 
 しかし魔法のムツゴロウさんことニュートが、グリンデンバルドは動物舐めてる言うてたけど、動物群がアレに勝てそうな気もあんまりしないんだけどどうなるんじゃろ。
 
 
47位:ゴッホ 最後の手紙
 本作が変わり種なのは、「ゴッホ画風の動くアニメ」な事。出て来るシーンのあれやそれがみんなゴッホの絵で見た場所。そして人間もちゃんとゴッホタッチ。100名以上の画家を訓練してゴッホの画風を身に着けさせ、そしてそれを動かすために全て油絵で描く(しかも殆どの背景も1コマずつ描いてる)という、ゴッホリスペクトが高じすぎたこの狂気! アホみたいに拘り抜いたアニメ『蟲師』の監督・長濱博史氏すら「狂ってる」って感想を漏らす訳だよ!
 
 
 「図鑑から溢れ出てきたような大量の恐竜とくんずほぐれつ」を期待するとえっれぇ肩透かしを食いますねこれ。
 
 ラストはついに恐竜が世界に解き放たれ、図らずとも人類は恐竜との共存をするハメになる……と、タイトルに冠された「ワールド」の解釈の逆転が起こります。続編もありそうな雰囲気ではありますが、明るく楽しい感じにはどう考えてもならねぇぞという。「今度は戦争だ!」になるしかないよなぁ。
 
 
 ゴジラよりも、櫻井孝宏声のメンヘラ文明破壊星人の方が俄然目立ってるのが、うーむ。ギドラ顕現時のタイムスタンプの歪みによる「俺はもう、死んでいる」表現は面白かったけど、全体的にビジュアルが貧相でもあったかなと。
 
 
50位:GODZILLA 決戦起動増殖都市
 起動増殖都市の発想が弱い。メタルクウラみたいにメカゴジラがトンデモ増殖とかすると思ってたのになぁ、意外にはっちゃけてくんないんだ。これ三部作という事で、「ここでゴジラが滅することはない」のは観客側にもバレてる訳で。
 
 じゃそう思ってる観客をもっと引き込むには、「えっ、この話ここで終わるんじゃね?」くらい、もっと人類サイドがゴジラを圧倒する様を見せても良かったんじゃないかという。まったくの予想の範囲で収まってしまったのが残念。
 
 あとそこそこリアルな人体CGの挙動に、あの影の付け方とか絵柄のリアリティがちぐはぐというか、やっぱり凄い違和感感じます、僕は。
 
 
 前作が「巨大ロボットが出る特撮怪獣映画ハリウッド版」なら、本作は「敵が怪獣の深夜巨大ロボットアニメハリウッド版」な感じ。
 
 物凄くテンポよく進んでいくのだけれど、すると今度はもろもろ描写不足にも思えてしまう。ジェイクの「偉大な英雄の親族を乗り越える」という、『クリード』的なテーマはなんとか描いた感はあるけれど、アマーラの「家族の仇を討つ」という動機は果たしてはいるものの、過程が足りないものだから共感しきれない。ラストバトルの前作にはなかった団体戦、これも新しい絵は描いてるものの、メインどころ以外のパイロットに思い入れがまだできていないから、これもやはり盛り上がりきれない。色々とアイディアは出してるんですけど、とっちらかってるんですな。
 
 あと1について、昼の怪獣バトルがない!って言われてましたけど、単純に昼やりゃいいってもんじゃないなというのも大いに感じました。闇と雨は七難隠しますよ。予算無いなら尚更。
 
 
 良く出来てる。良く出来てる……んだけど、僕とテーマが噛み合わなくって琴線に触れなかったという印象。連綿と続く親子・家族の絆。でもなぁ、俺このままいくと普通に孤独死まっしぐらの人間だしなぁ。死者の国に行ったと思ったら即二度目の死ですよ。
 
 結婚して子供もいる人は、後に続く者を思ってグッとくる話なんだと思う。思うよ。でも僕ぁそんな存在いないもんなー。普段「人は人だしな」と割とドライに思うタイプではあるんですが、とはいえ、疎外感を抱いてしまったのは事実。
 
 
53位:キングスマン ゴールデン・サークル
 魅力的な紳士スパイ達がひみつ道具を使ってのハチャメチャアクション&お下品ネタは変わらずで、楽しい楽しい作品……なのは間違いないのだけれど。どうにもシナリオがよろしくない。
 
 マーリンの退場の仕方のあの雑な理由ね(お前の持ってる金属探知機はなんなんだって話ですよ)! いくらでも他にやり方あるでしょと思うのだけど、どんどんダメな方に話転がしていくんだもの。今まで超人的にハチャメチャやってたのにこんなに雑に・あっけなくそんな事されても乗れない。その後感動的にされても逆に困る。
 
 
54位:ダークタワー
 ガンスリンガーの描写……心で弾を放つサイコガンメソッドや、エクスカリバーを融かして作った二丁銃、ラストのカチコミシーンなどはくすぐられるんだけど……。
 
 お話としてはさしたる盛り上がりどころもないというか、折角の諸々の設定それぞれは良さげなのに活かしきれてないような……。主人公とガンスリンガー、父を失ったもの同士が銃を通して交流するシーンは良かったんだけど、それ以上特に深みがないのももったいない。
 
 マコノヒーの幻術も主人公の母を追い詰めるところとかは面白い撮り方してるのに、ガンスリンガーとの戦いではふつーのサイコキネシスなのも肩透かしなのよね。
 
 
 ミシェル・ロドリゲス姐御がおっぱいとちんちんを晒す体当たり演技で望んだ作品なのに、物語はなんだか妙にどよ~ん&ジメジメしてるの……。

 「えっ、殺し屋のミシェロド(男性体)が復讐に狂う女医 a.k.a シガニー・ウィーバーの手術でミシェロド(女性体)に!?」というプロットで観客が観たいのはそんな作風じゃないと思いますぞ?
 
 
 
 以上、55作品寸評。アニメが大豊作だったなぁ。今年も面白い作品に沢山巡りあいたい。