さて昨年は59本の作品を鑑賞しました。 仕事の繁忙期にやけのやんぱちで観に行った日々が懐かしいなぁ……。
では、以下に記録として、自分の2019年の映画ランキングと、作品ごとの寸評をまとめてみようと思います。
※レギュレーション・注意等※
・2019年に自分が劇場で見た全映画のランキングです(DVD/BDや各種配信サービスでの視聴は含みません)。
・2018年公開の作品でも、2019年に劇場鑑賞したものはランキングに反映させています。
・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。
・このランキングは「書いた時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。
・寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。
◆寸評
皆ご承知の通り、トニー役のロバート・ダウニー Jr.も、キャップ役の
クリス・エヴァンスも、契約の都合でもう
MCUには出ない訳じゃないですか。じゃどういう幕引きにするのっつう。……果たして最高 of 最高、アイアンマンの、
キャプテン・アメリカの、そしてこれまでの11年間の最終回でしたね。こっちがやって欲しいことをやってくれて、それが予想を全部上回る絵で、セリフで、芝居で、シナリオで見せてくれたという。作中の様々なシーンが、11年間のシリーズのあれやこれやを思い出させていくうちに、それが我々がリアルに生きてきたこの11年間とリンクして、「あれを観た時は自分はこう思った」「ああだったこうだった」と今まで付き合ってきた思い出が自然に湧き出すんですよ。これが11年間の重み。こんなのできるの
MCUしかねぇっすよ。ズルい。
181分。観る前は長すぎるだろうと思っていました。でも、作中で様々なイベントが起こる度に「終わるな…まだ終わらないでくれ…」と願い、ラストでは「終わった…もう
MCU完結でいいわ…」いう風に自分の心理が移り変わっていったのも面白かったなぁ。
田舎もんのワタシは、公開日当日に上京して、初めて新宿
東宝劇場に趣き、最前列で鑑賞したんですよ(最前列シート、リクライニングついてて意外な程に見やすい)。クライマックスで襲われた多幸感と興奮といったら。皆がポータルから続々出てくる→「……アッセンブル」は大拍手した上に、「HOOO~!」と
歓喜の声を挙げてしまったんだよね、滂沱の涙を流しながら。死ぬならあんな感じで、映画観ながら絶頂しつつポックリ逝きたいなと今でも思ってる。その後の夜を徹しての友人たちとの
感想戦含め、思い出深く忘れられない、僕の人生で最も素晴らしい「映画体験」だったなぁ。断言できる。
今まで数多描かれた『
スパイダーマン』の様々なエッセンスをかき集めた、マイルス・モラレスという新たなる
スパイダーマンの誕生と、ピーター・B・パーカーという別次元の
スパイダーマンの再生の物語。アメコミが原作ということを最大限に活かした絵作りは、観客にビジュアルショックを与えるのみならず、物語の面白さにまで食い込んでいるのだからたまらない。アニメーションという、「絵をどう動かすかという技法」と、「絵をなぜこう動かすのかという哲学」の両方について、門外漢の素人ながらも、思いを馳せてしまいましたなぁ。
マイルズというダメ少年が、ヒーローに目覚める。でも、それは特別なことではない。私達は変われるのです。俺達は
スパイダーマンだ! 力強いエールをいただきました。ありがとう!!
3位:ジョーカー
や、これはズルいですよ。
ホアキン・フェニックス演じるアーサーには、
パンドラの箱でも開けたかのごとく、もう不幸という不幸が襲いかかりまくるんですね。 貧困。
精神疾患。仕事が上手く行かない。夢と己の資質の乖離。シングルマザー家庭。親の介護問題。
毒親問題 etc……。現在にも通じる様々な不幸がアーサーに降りかかるんだもん。そりゃどっかに共感しちゃうよ。レンジが広い!
僕なんかバッチリのロスジェネ世代でさ。「10年後のお前の姿、それがアーサーね」って言われても全く不思議はないんですよ。僕が一番頭に来たのはね、アーサーのダダ滑りライブを切り取って、TVショーの司会者・マレーが笑いものにしてたあそこ! そりゃアーサーにはコメディアンは向いてないですよ。だからってさぁ……なんかもう我が事のようにムカッ腹が立ちましてね!
だからクライマックスで覚醒した「ジョーカー」が、マレー・フランクリンショーに出演するじゃないですか。あそこはもう「あっ、これジョーカーがマレー殺すよね」って判るでしょ? すると殺人のその瞬間に至るまでにどんどん「やれ!そんなクソ野郎殺しちまえ!」という気持ちが高まってくるんですけれど、と同時に、色んなフィクション……それこそ『ダークナイト』で市民が見せた善なる抑制の心を思い出して「いや、ダメだろ!」っていう気持ちも湧き上がってくるんですよ。それがせめぎ合ってせめぎ合って、いよいよジョーカーがマレーを射殺した絶頂のシーンを迎えると、僕はもうね、「復讐してやった!」という歓喜と、同時に抱えた「やってしまった…」という慙愧の念でね、「感情が噴き出すのを堪えているんだけれど、口には笑みが浮かんでしまい、なおかつ落涙する」という、まさに涙&笑顔のピエロペイントなジョーカーみたいになってる自分を発見してね、愕然としましたよ。
僕はね、日々フィクションに癒やされているし、そのフィクションが描くような、人の善なる心を信じたいですよ。と同時に自分の弱さも知っているし、しかも自分ではどうすることもできない「この世の中」はどうも悪くなっていく一方でのように見えるんですよ。状況とタイミングが揃えば、僕だって……と思わさざるをえないような事が、現実では多すぎる訳です。ちょっと踏み外せば、僕だって「無敵の人」だ。
『スパイダーバース』は誰でもスパイダーマンになれると力強く訴え、また過去のバットマン映画では「誰でもヒーローになれる、特別なことをしなくても。 傷ついた少年の肩に上着をかけて、世界の終わりじゃないと励ませばいい。」なんて名台詞がありましたけれど、その鏡像のように「誰でもジョーカーになれる」を思い知らされたんですよ。
数々の識者が指摘するように、これは「ジョーカーが自分の都合のいいように語った嘘の物語」ともとれるという論。なるほど確かにそうでしょう。それを僕よりももっともっとジョーカー側に立ってしまっているけれど、まだ踏み越えていない人に仰ってみればいいと思うんですよネ!
エンドゲームで燃え尽きたファンこそ、本作を観なければならない。そして前に進まなくてはならない! いよいよヒーロー不在となった地球、偉大な先達の後を継ぐのはお前だと担がれたはいいものの、何の覚悟もできていない。そんな少年がついに本当のヒーローとして覚醒するお話。
トム・ホランドを見ていると「あっこの新しい『神輿』を担ぎたい! 男にしてやりたい!」という謎の保護欲に駆られるぞ!
ヴィランも上手いよね。前作では
911後の哀しき
ブルーカラーが敵だったけれど、今回は巨大企業からあぶれて落ちたホワイトカラーが敵。その敵が大きな大きな騙し(フェイク)でもって、世の中を混乱させていく。そして最後には特大の
フェイクニュースを投下! ああっ、ピーターがトニーの後を継いだからって、こんな形で「私がアイアンマンだ」を継ぐことになろうとは!
5位:ハロウィン
40年ぶりに復活した伝説の豪腕
サイコキラー・
ブギーマン vs 40年前のトラウマが作り出した絶対
ブギーマン殺すウーマン&要塞民家! 対決もの要素を含んだスラッシャーエンターテイメントとして結実した本作。この手があったかと膝を打ちました。こりゃ楽しいぞ!
「血が出るなら殺せる!」を地で行くような、ローリーの執念の復讐鬼ぶりがたまらんですよ。殺人鬼映画にありがちな「やっと殺人鬼を倒した」→「ヤツの死体を確認しにいこう」→「アッ、やつの死体がない!?」のワープ殺法を殺人鬼の大御所・
ブギーマンにやり返すのだからたまりません!
6位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
すっかり落ち目のかつてのスター・リックと、そのスター付きの専任スタントマン・クリフが主人公。アレなんすよ、散りばめられた年代物の映画ネタが判るような中年に刺さる連中なんすよ。リックが、現場でミスッた後に楽屋のトレーラーの中で自己嫌悪に陥るシーンや、落日を迎えつつある人間が主人公の小説の内容を子供に説明し、自らを重ねて思わず落涙してしまうシーンなんて、そらおじさんも泣いてしまうがな!「15年後、君にも判る」じゃないよ! 今もう身に沁みてるよ! 相方クリフの、リックを尊敬しつつも、不安定な彼に寄り添う女房ぶりも泣けるじゃないですか。そんな愛すべき二人と、“
シャロン・テート”の運命が交錯し、怒涛のクライマックスになだれ込んだら、そこからはもう監督のタラちゃんやりたい放題です! ウワーッサイコー!
スターだろうがいつまでも栄光の日々は続かない。それでもえっちらおっちらやってると悲喜こもごも色々味わう事になる。ちゃんとそういうのを大事にして生きていこうねという気になる、極めて真っ当な娯楽です。僕も貴重品は捨てずに大事に倉庫にしまおう。
7位:きみと、波にのれたら
湯浅政明監督らしからぬ?今回の物語はストレートなラブストーリーなんですよ。ただ、男女の恋愛の機微を描くという事のみならず。ヒーロー映画全盛のこの時代ですが、じゃあ超常の力を持ち得ぬ僕らは無力なんだろうか。無意味なんだろうか。そんな虚しさに対するアンサーをこの作品でいただいたと思います。や、人生捨てたもんじゃないかもしれんね!
湯浅監督作品らしいダイナミックなアニメーションも見どころ。序盤の「花火の下でのボーイミーツガール」。火事の原因であるはずの花火が、恋の始まり、二人への祝福の花火に転じる辺りの洒脱さなんてたまらんよ。2人のダンスシーンも最高だったなぁ。動きのダイナミズムが、2人の高揚する心と重なって、見てるこっちまでドキドキさせられる。あー、これですよこれ、アニメーションの快楽! クライマックスの波乗り大スペクタクルは言わずもがな!
8位:グリーンブック
人種差別を描いたバリバリの社会派ドラマ、というだけでなく。コメディ的な笑いも多々あって、観ているとどんどんこの2人が好きになっていくんですよね。好きになって感情移入していくが故に、自然と「この『差別』なるものとはなんなのだろう」と思いを巡らせてしまう。相手も「自分と同じ人間」なんですよ。
自己抑制の強いドクが唯一感情を爆発させ「自分ははぐれ黒人だ!」と慟哭するシーン。車のライトが照らすその表情は今まで見せたことがない程に大きく歪み、降りつける雨は彼の涙そのもの。そら
マハーシャラ・アリ、オスカー取るわい!と思わせるに充分、引き込まれる良い表情なんすよ……。これをきっかけに、「俺たちは同じなんだ」と本当にわかり会える二人になっていくのが堪らない。クリスマスを家族と祝うトニーの元にドクがやってくるラストシーンでの語らい、しみじみいいんだよなぁ。
9位:イップ・マン外伝 マスターZ
クライマックスで封印していた
詠春拳を全開にし、武
道家の、父の、男の再生物語として一気に爆発、張天志いよいよ覚醒のこの
カタルシスといったら! そして流れるあのBGM! ヤッター! 感動、君も泣け! マックス・チャンが
武侠スターとして完全開花した一本を劇場で確認できる幸せ!
今回のタイソン枠、
バティスタも良かったですね。タイソンが元ボクサーの肩書を活かした殺陣を演じたように、
バティスタもプロレスラー幻想をパンパンに膨らませたような殺陣で、慈善家という役を反転させたように野獣性を見せつける。あの分厚い胸板には打撃が通じない! 掴まれたら軽々と投げられる! そしてそして
ミシェル・ヨーの姉御ですよ。マフィアの女ボスを威厳たっぷりに演じるあの姿たるや! アクションの腕も錆びついておらず(56歳だぜ?!)マックス・チャンと堂々渡り合って見得切りまくるんだから堪らない。必見!
10位:イエスタデイ
かわぐちかいじの『僕は
ビートルズ』と本作との類似性を指摘する声もあるけれど、本作は「幸せの本質ってなに?」という問いへの回答へ着地するんですよ。描きたい事は結構違うように思います。で、その着地をさせるきっかけ、これが上手い!
なるほど、「
ビートルズの存在が消えてしまった」ifの世界だからこその、ifではない世界の存在の主人公(と鑑賞者の我々)に向けてのサプライズ、「ダコタハウスで死ななかった、何者でもない音楽好きの漁師として静かに暮す
ジョン・レノン」! この手があったか~! サービスが主題と絡み合ってのテーマへの着地。おお、
ダニー・ボイル流石やのう!
ビートルズ知識うっすい僕も思わず落涙!
11位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__
最初の劇場版では「じゃ、狡噛これからどーすんのよ?」と思わされるばかりで。案の定あの男、そのままアジア各地を転戦という、刹那的な生き方してるんすよ。そんな狡噛は
チベットで一人の少女と出会うんですね。その少女にまつわる因縁に付き合ううちに、己が未だに囚われ続けている因縁と向き合うことになっていく。これは狡噛の傭兵物語のただの一片ではなく、過去に囚われ、囚われ続けて前に進めなくなってしまった男が、ついに歩み出す物語だったんですよ(おお、最高に僕好みだ!)
TVシリーズ1期のあと、狡噛の復帰に劇場版、そしてSS Case.3とたっぷりと時間をかけるこの手の込みよう! まぁこのくらい尺使ってしっかり描かないと説得力ないよねってことでもあるんだけれど、それが許される環境があった本作の人気と、幸運と、スタッフの力に乾杯。
12位:工作 黒金星と呼ばれた男
2つの国が関わるポリティカルスパイサスペンス、ではあるのだけれど。主人公の「黒金星」ことパクと、
北朝鮮の高官・リ所長。駆け引きをし合う間柄ながらも、パクの正体が明かされてもなお、彼らの間に宿った奇妙な絆は絶たれない。立場は違えど分断された民族同胞を思う気持ちは同じだから……と、スパイサスペンスは、いつしか男同士の熱い友情物語の様相を呈していくんですよ。
5年後の再開で、男と男、友と友が交わす目線。『
ラ・ラ・ランド』のラスト級の目線交差をいただいた時には思わず落涙してしまいました。
クリーとスクラル、敵と味方の転換が起こる逆転は、物語の構造としても勿論面白いのだけれど、いわゆる映画の持つ「時代を・現実を映す鏡」機能が発露してもいるのだなと。つまり、一つの主義主張に凝り固まってると、それ以外の主義主張を見誤ってしまう。また、別の主義主張に向き合った時に、今まで見ていたものが違って見える。「分断」の時代、世界中で(勿論本邦でも)起こりうる事ですよ。これに気づいた時には、してやられたと思いましたねェ。
昨今の女性(というか、何かに「縛られ」ている人々)へのエールでもあるのはご覧の通り。ラスト、あれだけコテンパンの癖に「そんな力に頼らずに俺を
素手で倒してみろ!」とかぬかしてマウント取ろうとするヨン・ロッグのザマと、それへのキャロルの痛烈な返事よ! やんややんや! 何度でも「立ち上がる」キャロルの姿が象徴的。
14位:ホテル・ムンバイ
実際にあったテロ襲撃事件を元にしたパニックスリラー映画。ハラハラドキドキのエンタメと、襲われた側・襲う側のドラマのバランスが絶妙ですね。インドのホ
テルマンが「お客様は神様」と何度か口にしていた(本当にGod言うてた)けれど、ゲストを守るために文字通り必死の努力を繰り広げる様と、裏側に貧しさがあるが故に「駒」として使われてしまっている
イスラム系テロリストの少年たちの姿が胸に響きましたね。
まぁなんというか、
Twitterでも色んな対立が散見されるじゃないですか。許容し難い意見でもさ、相手を罵ったり嘲笑したりするのは違うんじゃないかなと思うんですよ。だってそんな事したら歩みよりが起きないじゃないですか。対話ができない。相手が「神様」なお客様でも、唯々諾々と従うでも、断固拒否でもなく、「対話」をしようとした主人公アルジュンの真摯な姿勢に僕は心打たれたんですよね。かくありたい。
登場人物の紡いできた歴史という縦軸、現在という横軸がクロスして、それぞれの人生を描く、
クリード2であり、ドラゴ1であり、ロッキー8。いやーっ、ロッキーシリーズってしみじみ人生映画ですよ。作品が数を重ね、こちらが歳を経るごとにコク深くなっていくね。
最後にドラゴ父がタオル投げたのも良かった。ドラゴ親子を復讐鬼で終わらせないよう、「過去を受け入れる」に着地させてくれた優しさ。結果はでなかったけれど、あそこでタオルを投げたからこそドラゴ親子は救われたのかなぁと。冒頭、ドラゴ親子が
フィラデルフィア博物館前(聖地!)より街を眺めるシーンは『
クリード』ラストシーンの意趣返し的な不吉な意味合いがあったけれど、最後の最後でドラゴ親子は、あの時のドニーとロッキーのような関係として向かい合えたのかと思うとね。親子鷹ランニングシーンね、グッときますよ!
16位:プロメア
作中の「炎」は、ある時は製作者側の「俺たちはおんもしれぇアニメ作りたいんだぜっ!」という精神の正の象徴として。またある時は、辛く苦しい現実によって産まれる恨みつらみのような感情の負の象徴として例えられているようにも見えるのですよ。 そんな「負の炎」に対抗するガロの真っ直ぐな「火消し魂」は、アニメ含むエンタメフィクションの作り手の精神の象徴にも思えて。
クライマックスはあれ、心の浄化を表してるとも取れるわけですよ。あれってまさにオタクの僕が、現実で摩耗して心が疲弊してボロボロな時様々なエンタメを見ることで活力をいただいて、明日また生きられる訳ですよ。それと一緒じゃんって。もー、またTRIGGERのこの手法にやられた!大好き!
17位:メリー・ポピンズ リターンズ
前作の子供、マイケルとジェーンと、マイケルの3人の子供たちが主人公。子供の頃のあのしなやかな感性を失ってしまった大人が心の自由を手にする話。やっぱ日々の辛い暮らしに疲れ切った大人の再生話は、そりゃあ同じようなおじさんの僕には響きますよ。こりゃずるい。
現実を生きる大人としてめちゃめちゃグサっと来たシーンがあって。公園に集まった大人たちが風船を手に取り、次々と自由に空を飛んでいく多幸感溢れるシーンあったでしょ? あのあと
メリー・ポピンズがエレンとの会話で、その大人たちの楽しげな様子を、遠くから見ながら「大人たちは明日になればみんな忘れてるわ。」って言うのよ! これきっついよね! 「そこの大人のあなた。この作品で感動したかもしれないけれど、あなたは明日、それを現実に持って帰れるの?」って言われてる訳ですよこれ!
18位:ジョン・ウィック :パラベラム
3作目ともなると敵の強さや装備がインフレを起こし、さしもの
ジョン・ウィックも苦戦。お陰でキアヌが身体を張る張る! 殺る時もやられる時も「あ痛てて、こりゃいけねぇや!」感をビンビン感じさせてくれて、アクションマゾ的には嬉しい一品でしたね。
にんじゃりばんばんマーク・ダカスコスとの決戦(あっ、
クライング・フリーマンvsバーバ・ヤガ、伝説の殺し屋や対決だッ!)では、ダカスコスの忍者ワープ殺法に対抗し、キアヌまでバーバ・ヤガワープを見せていたのには笑ってしまった(今までそんなの使ってなかったジャン!)。
ただ、もはやアクションを見せるだけのアクション・ポルノと化していて。まぁジャンル映画はそういうものなのでいいんですけれど、物語が全く前進しないままに「次回へ続く」みたいな終わり方だったのにはちょっと眉をひそめた。「売れるから」で続編が作り続けられる結果、登場人物が無限地獄を味わうの、辛い。
19位:HIGH & LOW THE WORST
メインシリーズからの登板キャラは鬼邪高校関係者のみですけれど、そこはそれニュージェネレーション感溢れるフレッシュさが逆によかったですね。タイマンバトルも大乱闘戦もアイディア満載でねぇ(攻城戦好きとしては、そのノリのあるクライマックスバトルのポイント高し)。ドローン撮影もさらに手が込んでいて。いや、これ世界にも類を見ない進化を果たしてませんか? これだよクールジャパンは!
僕の推し、村山ちゃんの村山言語は更に研ぎ澄まされるし、映画で割食ってた轟も今回は活躍するし(vs凰仙学園での飛び蹴りでは本当に息を飲んじゃった……これがオタク女子の言う「無理…!」ってやつか!)ニヤニヤが止まりません。
20位:Fate / stay night [Heaven's Feel] II.lost butterfly
「聖杯を巡る英雄たちの戦い」という、
Fate的な物語ではないんですよな、HF。徹底的に桜と、桜の正義の味方足らんとする士郎の話。極論を言えばサーヴァントなんて脇役ですよ脇役。なのでこの2章で、桜と士郎に徹底的にフォーカスし、観客に2人に思い入れを抱かせた上でクライマックスで崖に突き落とすというこのフリーフォールな芸風……うん、HFとして実に正しいw
戦闘シーンは少なめな分、
バーサーカーvsセイバーオルタの作画の質は出色の出来。魔力無限供給による毎ターン
エクスカリバーの対城宝具ぶりは、60人失踪事件よりこっちの方が騒がれるのでは……という凄まじさ。
バーサーカーも十二の試練で連続再生しつつ、颶風のごとき縦横無尽の暴れぶり。いや、これはちょっと一回では堪能しきれませんワイ。アーチャーvs真アサシンも小粒ながら芸細戦闘がたまらない(弓兵のあの足癖の悪さよ!)
21位:シャザム!
公開前に「ヒーロー映画暗いの暗くないの」なんて論争もありましたけれど、シリアスさが同居しているものの、やはり本作は楽しい楽しいコメディーでしたね。
「見た目はオトナ、中身はコドモ」という『
名探偵コナン』のような惹句がつけられてましたけれど、洒落ではなく。スーパーパワーをガキんちょらしくアホな形で無駄遣いしまくるシャザムが、やがて新しきヒーローに目覚める誕生譚。いやぁ、EDだけじゃなく彼が他のDCヒーローと絡む様を見たい、見たいよ!
22位:劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~
部活モノの物語という縦軸と、学校・部活内でどう己の居場所を見つけるのかという横軸で構成されたお話。TV版もそうだったけれど、若いうちからまぁ「政治」していて。そういうものが嫌で逃げ続け、図書室や階段の踊り場に居場所を見出してたおじさんとしては、かつて自分が味わわなかった青春の眩しさに惹かれるような、その眩しさが辛いような……とかく「輝き」に満ちた作品でした。皆成長したなぁ。
「フィナーレ」とは銘打ったものの……ですよね。──そして、次の曲が始まることを……期待してます!
23位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian
須郷と征陸という2人の男を介し、現在から過去へと複数の角度からドラマを描いていく。僕たちが今まで見てきた
PSYCHO-PASSワールドの物語・設定を巧みに取り入れつつも、「ああ、ここからCase.3につながっていくのだな」という予感も感じさせて……いやはや、濃厚な男のドラマをたっぷり見せた上での贅沢な「ブリッジ」ぶり、ファンにはご褒美でございました。
今どきのアニメってさ、なかなか征陸のような年配の男性キャラを掘り下げることってまず無いじゃないですか。それがたっぷりなされたのがよかった。僕は征陸よりは若く、
宜野座よりは年経た、彼らの中間の存在なんです。どちらにも己を重ねてしまい、またその後の二人を知ってしまっている受け手としては、万感の思いに囚われる訳ですよ。
さらに言うなら、征陸を演じる
有本欽隆さんは、本作が遺作なんですね。己の「終わり」が近いことを語るシーンの征陸に、病に侵されながらも征陸を演じきった有本さんは何を思ったのか……そんなことが頭をよぎってダメでしたね……。本当に心に刺さる名場面でした。
24位:PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰
宜野座と霜月コンビのバディもの。時にはメンター、時には補佐として振る舞うギノ、危なっかしくも微笑ましい霜月、両人の成長が愛おしい。
今回の一応の下手人が破滅するきっかけがちょっと間抜けすぎる嫌いはあるけれど、まぁ霜月のキャ
ラクターに引っ張れた話とすると、あれくらいが丁度いいのかもしれませぬ。アクションもケレンが強かったよね。あとムチムチおデブレズというパワーのある絵が凄かった。
シリーズのファンからは批判あるだろうなと思わされる、今までのシリーズの潮流から外れる着地。でも、「役割を終えたおもちゃ=ウッディの物語」」の結末としてはある種理想的な着地とも言えまいか。
保安官バッチまで剥がされてスタメン落ちしたウッディは、もうボニーにとって「必要ない」んだよ。あの世界のおもちゃに意思のある事を知っている僕たちには、残酷に見える。けれどね。出会ったあの日キラッキラに輝いて見えたおもちゃにも、いずれ飽きるんだよ。理由もなく。そういうものだ。僕だってそうだった。その「必要のなくなった」おもちゃが自ら選んで獲得した、誰のものでもない迷子の状態。僕は、おもちゃ達自身にとっても、そして「かつて理由もなく或るおもちゃを必要としなくなった僕たち」にとってもある種の救いに思えて……。
1~3と続いた、「
行きて帰りし物語」は「旅立ちの物語」へ。ボニーの車を見送るウッディというラストシーンのBGMに西部劇のエンディングみたいな節があったのも、西部劇の旅立ちENDっぽくて象徴的だなと思いました。
26位:バイス
ディック・チェイニー元
アメリカ副大統領の、ブラックでシニカルな伝奇ですね。法律の穴を逆手に取って、アホの子二代目大統領の裏で自らの権力を拡大させていく……のですが、コメディの手法をとってるんですよこれ。鑑賞後、一緒にエレベーターに乗り合わせた女性二人組が、「これ面白かったけど、面白いっていいのかどうかわからないね」と会話してたのが印象的。
そう、本作はコメディなんですけれど、起こったことはかつて
アメリカで実際に起ったこと、なんですよねぇ。そして、残念ながら本邦にも通ずるところがあるのがなんともはや。
27位:ブライトバーン
怖がらせの見せ方は古典的ですらあるホラーのそれですし、物語も「悪魔の子もの」なんだけれど、「もしも、ちょっとアレな嗜好を内包しつつ育ったスー
パーマンが反抗期になったら……」という一捻りを加えたおかげでなんだかフレッシュに感じられるのはアイディアだと思いましたね。
スーパーヒーローものにつきものの「親と子」のあり方を残酷に着地させ(劇中の立場の逆転の見せ方、面白かったネ!)「大いなる力に伴う責任とか知るか!俺が強者だ!」と無法を尽くす主人公ですが、彼が物語の果てにブライトバーン地方名物
UMAになった……まではともかくその次! 彼以外にも警告される謎の半魚人に首吊り魔女の存在…! おおい、これブライトバーン・シネマティック・ユニバースだったのかよ! 続きがみたいぞこのアンチ
ジャスティスリーグ!
28位:ブラック・クランズマン
まず、ハラハラドキドキの「潜入捜査サスペンス」エンタメとしてよく出来てる。プラス、(主に黒人)人種差別問題に対しての主張が当然ガッツリなされている作品で。
北米だと『グリーンブック』と比較されることがあったようですが、かたや「理想」を語った作品なら、こなた「現実」を突きつける作品だったというか。ラストで
KKK幹部相手に、一応のスカッと&ザマミロ展開がある訳ですが、その後窓から見える光景はそれに冷水をブッかけるようでもあり、そしてそれは今現在にも連綿と続いている……。ラストに本当に起こった事件の映像が挿入されることに賛否あったようですが、僕はアリだと思います。より主張が明確になったように感じました。
人気ギャグファンタ
ジーアニメの劇場版。
TVシリーズで紡いできた数々の冒険が、劇場版で鮮やかに、そしてしょーもなく(褒め言葉)結実するので良いですよ。基本的には「いつもの」テイストなのですが、そこは劇場版。カズマのダメ人間ぶりはますます増し、アクアの煽り&泣き芸は極まり、
めぐみんの爆裂魔法はよりダイナミックに、
ダクネスのドMぶりはより過激に……まぁパワーアップしとる訳ですよ。そして勿論クライマックスでは劇場の大スクリーンに映えるスペクタクルも炸裂。やぁ、シリーズ決定版、かつファンへの正しいご褒美的な作品になっております。このすば好きなら是非映画館で!
あと、長身・人外・褐色で渡辺あけのんボイスと、今回の敵・シルビアさんは僕のどストライクです。下半身のことは僕は別に気にしないのでどんどん当てにきてください。サイコーに俺向けのご褒美です。
30位:オーヴァーロード
ナチスゾンビもの、というとありがち感はあるのだけれど、これ面白い描写が結構あって。特に
空挺部隊の乗る飛行機が対空火器に迎撃され、やむなく主人公のボイスが落下していく描写。混乱の中、空に投げ出された新兵が、グルングルン空中で回転しながら必死こいてパラシュートを開こうとしてる様子を、カメラがボイスに対面するような形で押さえてるんだけど、そのグルングルン回転してるボイスの脇で描写される空中の地獄絵図よ! とても味わいたくなくて刺激的な絵!
ホラー展開が始まるのがちょっと遅いですが、それでもミリタリードラマの熱さ・虚しさとホラーのハラハラが妙にバランスよく混じり合った、「出来の良いB級」してて宜しいですよ。低予算をカバーする絵作りも大変よろしいナイスエンタメ!
31位:アメリカン・アニマルズ
冴えない大学生が12億円の価値がある希少本を強奪したという実話を映画化した作品。ケイパーものっぽい雰囲気もあるのだけれど、計画がまぁズサン! アドリブ利かす能力も覚悟もないからまぁ現場で破綻しまくり。アホで大雑把な人間は犯罪やっちゃいけません。
でも、見通しの甘さと根拠無き万能感を持つ「どこにでもいる」若人が(本当は余りにもおそまつな)一攫千金の計画を思いついてしまった。傍から見たら全くの愚か者だけれど……どうしようもない閉塞感をここで打ち破って一発逆転しないと、オレは一生負け組なんじゃないか。「向こう側」にはいけないんじゃないか。その気持ちだけはとても共感できて、が故に少々ゾッとしてしまいました。
32位:アクアマン
DC映画らしからぬ(って言い方も何ですすが)、変なダレ場もなく、テンポよく話が進む進む。相当シェイプアップしたんじゃないすかね。娯楽じゃな~と膝を打ちました。アクアマン、蛮族な見た目に反して意外に愛嬌・茶目っ気があって魅力的なんですよね。まさに快
男児! マーベルの快
男児で設定も似たソーと酒を酌み交わしてほしい!
半魚人軍団襲来のシーン。完全に演出がホラー映画のそれにあってて笑ってしまった。
ジェームズ・ワン印だ!
33位:天気の子
ちょっと今回、収束にいたるまでの積み重ねが上手くないっスよ。帆高と陽菜が「運命の人」同士になるお膳立てはされているんだけれど、2人の感情がそこまで深堀りされてないのでお膳立てされたところで、受け手の感情が揺り動かされない。ここがクリアされてたらクライマックスに乗れたんだろうなぁ。いや、嫌いな話ではないんですけれど。
背景美術はさらに進化していて、キャラ全部消して背景だけ眺めてても全然場持ちするんじゃないかと思わせる完成度ですね。あと最高にかわいいイケメンモテショタの凪パイセン最高。もうおじさん辛抱たまらん!
34位:レイドバッカーズ
『
パシフィック・リム』は、「何話もあるロボットものの最終話だけ見せたような映画」なんて評される事がありますが……本作は何話もあるアニメの序盤が終わり、話がすでに転がってるところから物語が始まるんですよ。
単体の、しかもオリジナルアニメなら「この世界はどうで、キャラはこうで……」という説明が必要だと思うんですけれど、それは最小限に留めていて。「もう君らいちいちベンおじさん殺さんでもええやろ? 大体わかるお客さんばっかやと思うからもう行くで!」とこれ見に来るお客さんを信頼してるというか、お前らオリジナル作品やからって好き勝手やりおるなというか! でもそのお蔭で果たして、キャラや世界の魅力を見せ切る事に成功したんじゃないでしょうか。余白がいっぱいあるから、この続きが見てみたいなァ!
ウィル・スミスvsウィル・スミスなSFアクション映画。アクションの大きな見せ場も序盤とクライマックスの2箇所しかなく、CGクオリティもやや低め、脚本にも予算の都合具合がにじみ出ている……ものの、褒めたくなるような描写が散見されて、これは思わぬ拾い物かな、とも。序盤のファーストWスミスファイトでは、
アサルトライフルのドットサイトとスコープの使い分けなんかの渋い描写や、バイク
チェイス長回しの中の、新鮮味のある相手の妨害方法など、面白いアイディア多し。クライマックスは序盤と変わって、どこか懐かしい80年代アクションのようなんですけれど、『
るろうに剣心』的な超人的なハイスピード立ち回りの返歌のようなアクションや、防弾スーツを身に着けた男の打撃vsハン
ドガンの射撃の接近戦なども楽しい。
シニ
アスミスのバディとなる、女性DIA局員・ダニーもよくってねぇ。男性相手に
柔術殺法でマウントを取り銃のグリップで鉄槌パウンド
かましたり、負傷しシニ
アスミスに引きずられながらも、
ライフル射撃でスミスのカバーしてたり……。柔らかな魅力としなやかな強さが同居したヒロインで眼福でございました。
36位:アリータ:バトル・エンジェル
SFコミック『
銃夢』をハリウッドで実写化。思った以上に『
銃夢』していて驚いた。「2時間尺の一個の作品」としての質を保つためにコミックにはない要素も入ってくるのだけれど……。とはいえ最終的にはコミックのストーリーラインという軸に戻ってくるし、軸から離れた位置にいても、そこでいちいち「原作を元にした、エッセンスのある描写」がふんだんに盛り込まれていて……。
ロバート・ロドリゲス、オタクやのぅ! と唸ってしまった。ぶっ殺死指数高めのサイボーグアクションも○。
37位:レゴムービー2
前作のように「おもちゃの世界」ではない「我々の世界」を描くパートもあり。「我々の世界」のある兄妹の対立が、やがておもちゃ世界の大カタストロフに繋がりてんやわんや……と我々を楽しませてくれるのですが、兄と妹の遊び方の違いによる対立→大喧嘩→和解を通して、嫌味や説教臭くなく、「違う考えも認める」、今どきの「多様性」につながるお話に仕立ててるのも流石というか。エンディングクレジットまで思いきり遊んでて、一流のエンタメ屋精神に感服しました。ただ1作目ほどの
カタルシスは無いか。
38位:ワイルド・スピード スーパーコンボ
「車を題材にした犯罪潜入もの」から「車を題材にしたインフレアクション」に進化(進化?)していったワイスピシリーズ。外伝のこれ、またリアリティラインがおかしな事になっていて……。
敵は闇の傭兵軍団を操り世界制覇を企む(と作中で本当に明言されてる)悪の組織・エティオンと、その組織によって造られた改造人間。迎え討つは、シリーズ中でも肉体的な強さのインフレが半端ないホブスとショウの、
ふたりはプリキュア Muscle Heartコンビ。そう、これはまさしく、一流のハリウッド俳優が演じる桁違いの銭を投入したニチア
サライダー映画! 脚本のザル具合も大体一緒! 鑑賞済の方から事前に聞いていた「予告で全部出てる」「野郎同士の筋肉ギャグとイチャコラしかない」「136分間とりあえず楽しいが、終わったら何も残らない」は全て真実だった……。
39位:真実
是枝監督らしい家族もの、『歩いても歩いても』仏版のような趣き。と同時に、主演の
カトリーヌ・ドヌーヴの魅力満載。ある種のアイドル映画でもありますね。
カトリーヌ・ドヌーヴの人柄についてはどんな方なのかを知らないので、彼女は演じているのか、あるいは彼女その人ままであの調子なのか虚実の境が曖昧になってク
ラクラしました(や、もちろん演じてるんでしょうけれど、それくらい雰囲気あったちゅうことです)。
40位:IT THE END
僕、ITには生まれてこの方まるで触れてこなかったんですけれど、このおっさんになってから出会ってのはよかったのかも。いつかの遠き日・少年時代と、今この日・現代の2つの時代を股にかけた青春ホラーは、しみったれたおっさんだからこそ(特に後編は)響いてくるところもあり。やはり1同様、「愛おしい」描写満載の作品でした。満載といえばペニーワイズ一座のびっくり箱恐怖興行も、後半はもう畳み掛けるように惜しげもなく怪物たちが投入されて楽しかったですねぇ。
そういえばヘンリーが出てくるパートまるまるいらんくない? 原作だとまた扱い違うんかのう……
今回はコロンバスと
タラハシーの相似になる存在の登場や、
タラハシーと
リトルロックの擬似父娘の関係、コロンバスとウィチタの間に入ってくるニューヒロイン・マディソンがいるのだけれど、それぞれの関係性を活かしてドラマを深める事はしないのよね
。もっと掘り下げて、『
ショーン・オブ・ザ・デッド』みたいに「楽しく、そしてやがて感動、でもバカバカしい」も出来たんじゃないかなぁと思うと勿体ない気がする。
新キャラのマディソン演じるゾーイ・ドゥイッチは良かった。アーパーギャルキャラなんだけれど、こんなに嫌味なく知性を感じさせない芝居もなかなかないなぁという。吹替担当はなんと
安達祐実! これが「芸能人吹替」の枠に収まらない、
安達祐実イメージに全くない軽~い芝居でねぇ。流石の芸達者ぶり。
42位:主戦場
従軍慰安婦はあった/なかった、両陣営の
有識者の論をつぶさに検証していくとい本作。なかった派陣営が自信満々で張る論の「脇の甘さ」「杜撰さ」が露呈していく。
その稚拙な論には、仲間内はともかく(第3国を含む)国際社会で通じるの? という疑問が湧いてしまうし、苦笑してしまうけれど、これが現在の日本でそれなりに、そして現政権でパワーを持つ人々に支持されてるってのは……とやがて薄ら寒くなるドキュメンタリーでした。
43位:ハンターキラー 潜航せよ
潜水艦もの、なのだけれど、同時に地上を征く特殊部隊の話も描く変化球。味方(に回る者)は好漢揃い、敵側は卑劣な悪党と、ポリティカルアクション風なのにえれぇ勧善懲悪ものっぽく。
物事もロジカルに解決されるというよりは「男たちの正義」「信念」みたいなぼんやりしたもので解決されるので、ルックは今どきミリタリーでも妙に懐かしい手触り。「こういうのでいいんだこういうので」系娯楽作として手堅い一本なんじゃないでしょうか。
44位:劇場版 刀剣乱舞
刀剣男士って、古来より伝わる名刀たちを、「擬人化」した存在、つまり、それぞれの刀の由来・歴史がバックボーンになっている「歴史偉人もの」の変形でもある訳です。キャ
ラクターが背負った歴史の事実を物語に織り込んだ上で歴史のifを修正しようと介入していく。そりゃもうエモいに違いないよね!
キーキャ
ラクターの
三日月宗近が、仲間に(そして観客に)「説明しない」ことをドラマの推進力にしてるのは、近年のライダー映画みたいで若干ザワザワしたものですが、一応今回は「設定に寄り添った上での理由」があるんですね。これをちゃんと提示してくれたのもよかった。
あと原作ゲームではプレイヤーに当たる「
審神者」の設定もこれまた良く出来てる! 最初の
審神者はおじいちゃんなんだよね。実際に
刀剣乱舞をプレイしている男性への目配せにもなるし、これだと女性ファンの「何あいつ!」っていう敵(言ってしまえば恋敵)になりにくい。次代の
審神者が幼女というのも上手い。これも幼すぎて女性ファンの敵にはなりにくい。のみならず……
刀剣乱舞あるいは刀剣男士に触れている女性の方々はどんな年齢の方でも、触れているその瞬間瞬間は、ある種ピュアな「少女」に戻っているんですよね、きっと。その象徴でもあるのかと思うと、この
審神者の設定はちょっとした発明ですよ。
45位:バンブルビー
今までの
マイケル・ベイが監督したシリーズ作品とはだいぶ趣が変わってます。劇中の超ロボット生命体たちもオリジナルに近いルックなのが嬉しい。
父親を失った少女が、母・弟、そして母親の新しい恋人との人間関係に悩む思春期成長物語に、
オートボットと
ディセプティコンの戦いを絡めたという不思議な味わいの
トランスフォーマー作品になっているのですが……話がまとまっててとても見やすい(ベイ……)ですね。
悠木碧さんが演じるシャッターの悪の女幹部感もたまりません。皆吹替版を観よう。
46位:ファースト・マン
「人類初の月着陸ミッション」を描こうと思ったら幾らでも盛り上がるドラマが作れそうなものだけれど、これめちゃめちゃ抑制が効いてて、盛り上げのBGMすら殆どなく、淡々と月着陸まで物語が進んでいくんですよ。
ライアン・ゴズリング演じる
ニール・アームストロングも、本心を分かりやすく吐露してくんないので、描かれる映像から心情を推し量っていく
ストロングスタイル。
宇宙に出てからの描写もまた
ストロングスタイルでねぇ。宇宙船内は暗くて見にくい、窓も小さいし、いちいち凍って見にくいと「お前らこんなんでどうして月に行こうとしたの?!」と戦慄せずにはいられない。閉塞感で見てて疲れる疲れる。さながら宇宙版の『
ダンケルク』ですよ。
しかしそれらや数々のトラブル、犠牲を越えて、ついに月に降り立った時の感動よ。「人類にとっては大きな一歩だ。」の意味を、改めて2019年に、劇中の当時の人のように感じることができたような気がします。
47位:空の青さを知る人よ
冒頭でベースギターが奏でて以降、何度も作中に登場する
ゴダイゴの『
ガンダーラ』。これ持ってきたのが偉いよなァ(歌詞を調べてみよう!)。俺も田舎育ちだからさ、あおいの「ここを出なきゃどーにもなんねぇ」っていう焦燥感もわかるしさ、慎之介たち年長組の夢を諦めきれなかったり、後悔だったりをぷすぷすと燻ぶらせてる感じも判るんすよね。
「空の青さ」と「己の青さ」をかけてこちらをゆさぶり、クライマックスでこれまで溜めていたものを開放するかのようにその「青さ」を視覚的快感として見せつける辺り、上手いなぁよく出来てると膝を打ちました。ただあおいがしんのに惹かれていく描写が少なく、そこの部分はいまいちピンとこなかったかな。
48位:ザ・フォーリナー 復讐者
舐めてたジャッキーが殺人マシーンでした映画、であることは間違いないんだけれど……
ピアース・ブロスナン演じる副首相側で描かれる、政治テロものとしての色合いも相当強くって。話をもう少し整理するとジャッキー無しでも成り立つのではないか。つまり娘の敵討ち話と政治テロ話の噛みあわせがあんまり宜しくないんですよね。
それでもジャッキーが徹頭徹尾シリアスな役柄を演じながらも……現地小道具を巧みに利用したり、上へ下への立体的な殺陣が見られたりと、“おなじみ”のアクションシーンが散りばめられていて、そこはやっぱり嬉しいジャン、という(日本公開版はアクション多め!やったね!)。
49位:ロケットマン
おおまかなプロットだけ見ると「どこかで見たような」スターの誕生と転落、そして再生の物語、なのだけれど、ミュージカルなのがミソですねこれ。エルトンを演じる
タロン・エガートンが、エルトンの曲を情熱的に歌い上げることでその時々の心情をよりエモーショナルに映し出すことに成功していたと思います(タロンくんの歌唱力あっての事でもありますね。べらぼうに上手いんだから。)
これ、
エルトン・ジョン知識皆無なまま観に行ったんですよ私。 エルトンファンはより響いたんだろーなと思うと、だいぶ損してるような気がします。
50位:海獣の子供
画作りの凄まじさよ。僕は原作未読ですが、こりゃおそらく原作を再現するには、凡百の画作りではこの物語を支えられないんだと思うんですよね。
予告だと海洋ファンタ
ジーっぽく、それを期待して観に行ったら『
2001年宇宙の旅』だったというか。哲学的な話を2時間にギュウギュウに収めてるんだけど(なので、まぁこれだいぶ端折ったな、と思われる節はある。)、それをこの幻想的な絵が下支えしてくれてるお蔭で、クライマックスでは、たったひと夏の物語が『
天元突破グレンラガン』レベルのスケールにダイナミックに飛躍します。こんな無茶ようやるなー! お陰で正直よく判らんではあるのですが、とてつもないものを観た気にさせられます。
久石譲の音楽も良し。
51位:劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ
2019年現在を舞台に、でも遼や香は「あの頃」のまま。話運び(雑さ含め)やリアリティラインまでそのまんま。オリジナルまんまの座組で、そしてこれだけの規模でアニメ『
シティハンター』が世に出るのって、おそらくこれが最後じゃないですか。主題歌も劇中で総ざらいして、いわば総決算ですよ。特別な事はあえてやらない。劇中の香のセリフのように「変わらない」姿を、「あの頃」を知ってる、長らく作品を愛してくれたファンに向けて作られた作品じゃないかしら。いわば最後の大同窓会ですね。
52位:シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション
本作宣伝ポスターの惹句に、原作の
北条司先生による「この手があったか!」というコメントが採用されてましたが、原作およびアニメにある、「くだらない」下ネタギャグ部分に相当フォーカスして作られたような作品。まぁ言うたら予算規模的に、前述のアニメ劇場版みたいに都市部でドンパチなんてできん訳ですよ。ではどうするかの引き算からのこの作り、なのかなと。
53位:新聞記者
ハリウッドや韓国の社会派ドラマには及ばないけれど、まず一歩としては評価したい。本邦で現実におこった事をモチーフに、作中でも類似の事柄が発生します。それに対する劇中の権力側の対応の卑劣さたるや。常に巨大な力・権力は監視しなければならない──という事を訴えたいのは判る。本当に大事な事だよそれは。
ただ、その訴えたいテーマの高潔さとは裏腹に、シナリオや演出が稚拙に感じてしまって……現実にとっても近いフィクション、ニアイコールなリアルを描く時の難しさ、なのかなぁ。
松坂桃李の
ジョーダン・ピール作品のような顔面演技は秀逸。
思い出した。テレビ局が本作の番宣に
松坂桃李の出演を拒否したらしいですね。うーん(遠い目)。
54位:スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
まぁよくまとめましたよね。それは認めます。ただep.8で僕がイイと思った点が全部
ちゃぶ台返しされちゃって、それはないだろうと。
ep.8でクローズアップされたのは、英雄たちの次代に生きる、まだ何者でもないものたちの苦悩。ep.9では彼/彼女らがその英雄たちの記憶を振り切って、新たに己を確立する、って話だと思ってたんですよ。そのためのep.8での、「なんでもない市井市民の子孫」レイの覚醒であり、「英雄二世、なれどボンクラ」レンが起こした、身に余る反乱劇なんですよ。そして勿論、ホウキの少年に象徴される「誰でも英雄になれる」論ね。これこそ「偉大なる時代」の次に生きる、「まだ始まってもいない次代の我々」の物語であり、「偉大なるシリーズ」への挑戦だと思えて……。だからep.8が好きなんですよ、僕ぁ。それがep.9では結局血統の話/スカイウォーカー関係の血族の話、になっちゃったもんね。
終盤のエンドゲーム的民船大集合が「誰でも英雄になれる」なのだと言えなくもないけれど……あまりに薄いというか、もっとお前エモーショナルな高まりを生み出す努力をしろというか。まぁ、杜撰。正直『
スター・ウォーズ』の魔法が解けたような思いではあります。ep.10以降もあるらしいですが、もういい加減スカイウォーカー家の話はやめてくれよ、と念を押したいですね。
55位:名探偵ピカチュウ
これアニメ
ポケモンの劇場版でやってそうなレベルのお話なんですよ。と書くとアニメ
ポケモン劇場版が悪いって言ってるみたいですがそうじゃなくって、折角のこの
ポケモン史上に無い絵が作れたのに、既作と似たようなフィールドに留まってしまっているぞ……と期待はずれ感がどんどん大きくなってしまったのも事実。ビジュアル以外はあんまり評価しません。
56位:ターミネーター ニュー・フェイト
『
ターミネーター2』の正統続編、などと謳われた本作。なんとか当世風の新しい空気を取り込んでるのはわかる。わかるけれど……もろもろ、やってる事は結局昔と一緒、なのだ。勿論それが「『
ターミネーター』という文脈」とも言えるだろうけれど、そこに熱はあるのかい? という。
つまりは、この文脈で作るシリーズとしての命脈はもう尽きてるんですよ。未来から来た殺人マシーンの物語が、過去に囚われて賞味期限が切れてしまったというのはなんとも皮肉。
57位:ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
怪獣愛が過ぎる監督が、怪獣の魅力を全力で引き出すこと「だけ」に注力した、怪獣アイドル映画としては120点。ただしその点以外は……あまりに隙がありすぎる。
この映画の登場人物は、そのとっぴな言動等から「狂人」などと評されてもいるけれど……。僕はこの全然共感できない人達は、狂人だから言動がおかしいのか、それとも作品としてガバガバに隙がある結果そうなのかよくわからなかったな。多分両方なのだろうけれど、後者の印象が邪魔をして乗り切れなかった、というのは事実。僕が観たかったのは「ギャレゴジ」のリアリティを保ったままの『
怪獣総進撃』であり『
GODZILLA 怪獣黙示録』なんですよ。
あ、そうそうこの監督、怪獣愛がある云々言われてますけれど、オキシジェン・デストロイヤーをあんなに粗雑に扱うところを目の当たりさせられると「こいつ怪獣の取っ組み合いにしか興味ないのでは……?」という気にはなるよな!
ただ、着ぐるみ・操演ではないからこその怪獣表現が沢山でてきたのは楽しかった。
ラドンが空中スピンで航空機を叩き落とすシーンは白眉と言っていいでしょう。
単なるアクションではなく、スパイミステリー的な要素も含まれていて、オチがどんでん返し系。けれども、「序盤から描かれてるロシア勢力がお話とに妙な絡み方してる」「終盤から急に、劇中を回想する未来のウォールバーグのシーンが挿入される」などの「匂わせ」が割と露骨で、「あーこれ一筋縄でいかないやつね」ってわかっちゃうのは残念よね。捻りオチにするなら徹底しないと。
出演してるイコ・ウワイスの振り付けによるアクションシーンもそこそこあるんだけど、特段撮り方が上手くない……というか、
ピーター・バーグはアクションを面白く撮ることにあまり興味ないんじゃないかなーとか。勿体ないなぁ。
59位:バースデー・ワンダーランド
原恵一監督どうしたの? と思わざるを得ない凡作。終始盛り上がりにかけたままクライマックスに突入。物語は一応の決着を迎えるも、
異世界の「問題点」は解決していない……。主人公のアカネが冒頭に抱えた友人関係の問題も、
異世界の冒険の中で消化されるような事もなく。「冒険中の成長によって」なんとはなしに解決されたように見えてしまったなぁ。うーん。
「ワンダーランド」と銘打つなら、もっとク
ラクラする不思議感覚を味わいたかった。凡庸だからこそ、「劇中の、物語としてはあまり意味のない冒険部分」がよりつまらなく思えてしまう。ワクワクさせてよ!
以上、59本。2020年も面白かっこいい映画に沢山会えますように。