2017年映画ランキング

 新年あけましておめでとうございます。僕は相変わらず冴えない感じでやっとりますが、なんとか健康なのが救いでございますな。ともかく、2018年もよろしくお願いいたします(特にリアルでお会いしてる友人の皆々様!)。

 

 さて昨年は、1週間に1本ペース、年間50本の映画を観るという目標を立て、結果47本の作品を鑑賞しました。僅かに目標に届かず! 仕事の繁忙期に観に行く気力が湧かなかったのだよなぁ、勿体なし。
 それはさておき、記録として、ここに自分の2017年の映画ランキングと、作品ごとの寸評をまとめてみようと思います。

 

 

※注意等※

・2017年に自分が劇場で見た全映画のランキングです。

・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。

・このランキングは「現時点で振り返ってみると大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけています。今後順位が上下する事は大いに有り得る、大雑把なランキングであるという事をご承知ください。

寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。

 

 

 

◆2017年ランキング

1:新感染 ファイナル・エクスプレス

2:レゴバットマン ザ・ムービー

3:ベイビー・ドライバー

4:スター・ウォーズ 最後のジェダイ

5:ラ・ラ・ランド

6:スパイダーマン:ホームカミング

7:マイティ・ソー:バトルロイヤル

8:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーミックス

9:ローガン

10:トリプルX 再起動

11:マグニフィセント・セブン

12:HiGH & LOW THE MOVIE 2:END OF SKY

13:スノーデン

14:キングコング 髑髏島の巨神

15:ワイルド・スピード ICE BREAK

16:傷物語 Ⅲ 冷血篇

17:猿の惑星 聖戦記

18:ブレードランナー2049

19:Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower

20:ジョン・ウィック チャプター2

21:バイオハザード ヴェンデッタ

22:パトリオット・デイ

23:アトミック・ブロンド

24:バリー・シール アメリカをはめた男

25:ドリーム

26:ザ・コンサルタント

27:ドクター・ストレンジ

28:IT それが見えたら、終わり

29:ハクソー・リッジ

30:KUBO 二本の弦の秘密

31:ジャスティス・リーグ

32:ダンケルク

33:バーニング・オーシャン

34:おじいちゃんはデブゴン

35:オリエント急行殺人事件

36:GODZILLA 怪獣惑星

37:HiGH & LOW THE MOVIE 3:FINAL MISSION

38:ワンダーウーマン

39:パワーレンジャー

40:夜は短し歩けよ乙女

41:打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

42:ザ・マミー 呪われた砂漠の王女

43:エイリアン・コヴェナント

44:メアリと魔女の花

45:ゴースト・イン・ザ・シェル

46:ひるね姫 知らないワタシの物語

47:虐殺器官

 

 

 

 

 

 

◆寸評

1:新感染 ファイナル・エクスプレス

  閉鎖空間、乗り物の中を舞台にしたゾンビ映画はちょいちょいあるんですけれど、その中でも本作は舞台となるKTX車両や、ひいては鉄道という「ギミック」の活かし方が上手い。よくもまぁ手を変え品を変え見せ場を作ってくれます。

 また登場人物に個性があるんですね。各人のちょっとした時に見せる行動で思い入れが深まる。だからこそスリリングなシーンで手に汗握らざるをえないんですよね。つまり基本が出来てる! 列車 in ゾンビというアイディアだけに留まらず、工夫を重ねた見せ場の数々にWWZのような目で見るゾンビの数の暴力も見れた上で、しっかり人間たちのドラマも描かれており……ゾンビ映画のド傑作だなぁ!

 主人公が父親なのも相まって、父とは、親とはという点にスポットを当てたシーンが何箇所もあって、僕も人の親ではないものの、いい歳なんでグッと来ましたね。ソグ、サンファ、ヨングクの三人がトイレで一息つきつつ、男とは、父とはについて語るシーン最高! 僕の両親も、(ゾンビパンデミックではないにせよ)色々な事から僕を守ってくれていたんだろうなぁとしみじみ思ってしまい、見た後に父母にありがとうを言いたくなってしまいました。

 吹替で見たんですが、主人公を演じるコン・ユの吹替を担当した中村悠一さんの声は、人が無償の善をなす時の高潔さを具現化したような声なんですな。やがて「父」となり、ひたすらに娘を守る男の役に適役! 流石キャプテン・アメリカ演じてるだけありますよ!

 

 

 

2:レゴバットマン ザ・ムービー

 レゴ? 子供向けなの? いやいや、映画になったバットマンを見続けてきた大人たちにこそ見ていただきたい、映画バットマンの大総括にして、アメコミの枠を超えた超クロスオーバー娯楽作品なんですよ。いいバットマンの最終回だった!

 特に近年のノーラントリロジー以後のバットマンは、(ノーラン病という言葉で揶揄される程に)苦しみ、悩み、孤独に戦う闇の騎士というイメージがすっかり定着してしまいました。本作のバットマンも、「子供向け」らしからぬ深刻な悩みを持っているのですが……そこは底抜けノー天気感には定評のあるレゴアニメシリーズ。深刻になりすぎてテンションを落としちゃうような事もなく悩みを解消、そして解決に導く手腕は見事の一言。

 バットマンジョーカーの奇妙な、ブロマンスといってもいいような関係性も盛り込み、さらにさらにクライマックスの大カタストロフを実にレゴイズム溢れるやり方(しかもバットマンの孤独な心と他者の心が結ばれるというのをまさに体現する形で)見せ切るのだから、これはもうシャッポ脱ぎました。レゴ映画としてもバットマン映画としても大傑作!

 

 

 

3:ベイビー・ドライバー

 エドガー・ライト監督作品らしい小気味いいカッティングやいつものシチュエーションは健在ながらも、ブラッド&アイスクリーム3部作やスコット・ピルグリムのようなボンクラ感は無く。主人公の聞いた音楽がBGMという変わり種アイディアはこちらの感情を喚起させるだけでなく、脚本としっかり結びついており、主人公ベイビーの感情や人間性表現にも役立っています。僕は洋楽に全く明るくないですが、それでもすっかり、時にはノリノリ、時には悲しく・切なくと、すっかりベイビーというキャラに共感してしまったのでした。あと終盤のバディのセリフでようやっと気づいたけど、これ歌の歌詞もちゃんとその時の状況やら心情を語ってたのね。ミュージカルじゃん! 洋楽、英語判る人羨ましい。

 冒頭、ベイビーが強盗仲間を待つ間の音楽にノリノリの様子(あ、ここだけエドガー監督のいつものボンクラ感あるわw)から一転、無数のパトカー相手を手玉に取るカーチェイス。もうここだけでベイビーのこと好きになっちゃうよ。格好いい&気持ちいい。フゥー! それに続いてのOPクレジットのシャレオツな長回しシーン。これは今回のエドガー監督はいつもと違うとビンビン感じさせてくれます。いつも以上に緩急が洒脱でグイグイ引き込まれるんだよなぁ。

 そして、ボニー&クライドのような逃避行がああいう形で終わり、その後に繋がっていくというのは、エドガー監督が持つ優しさじゃないでしょうかね。他作品でもそうですが、人間を肯定したいという暖かみが僕は好きなんだなぁ。

 クライムアクション、カースタント、若者の成長・恋愛、そして音楽。様々な要素が奇跡的に折り重なった、本当にノリノリで気持ちよく、切なく、暖かく、ゴキゲンな作品でした。ありがとう! ありがとう!!

 

 

 

4:スター・ウォーズ 最後のジェダイ

 過去作をたっぷり本歌取りもしながらも、完全に「世代交代」を果たした感がある本作。中盤カイロ・レンが予想外の動きを果たして、いやァ面白くなってきやがったと! 予想としてはせいぜいレンがレイを暗黒面に誘い、ジェダイの後継者がいなくなるところで終わり、Ep.9でなんだかんだで2人がライトサイドに還るねんやろ? とか思ってたのに! 

 レンは冴えないクソオタクのボンクラ二代目扱いでネタにされるし、俺もそう思うけどさァ……。生まれのお陰もあって力を持ってしまったけれど、器じゃないなんて彼もよく判ってると思うんよ。器なんてこれっぽっちも無く「何者にもなれねぇな」とレースから降りちゃったヘタレな僕は、父を斬り師を斬り、器に全く見合わぬ修羅道を迷いながらひた走る彼に、どこか憧れや応援するような感情を抱いてしまうんだな。アイツは俺ですよ!

 そしてアイツは俺、と言えばルーク! Ep.4でタトゥイーンの2つの夕日を眺めるルーク。辺境の田舎とは、勿論そのままの意味でもありますが、ズバリ若者を縛る「枷」の象徴でありましょう。「このまま腐っていくしかないのか」という諦め混じりの苛立ちに、全世界の「枷」に囚われた若者のように、僕は共感を覚えたものです。やがてルークは田舎を飛び出し星々を巡った果てに英雄になったものの、また「枷」に囚われてしまいます。歳経た僕もやはりまた。

 しかしルークの精神は「枷」を破り、遥かな空間を飛び越えて、最後に大きな務めを果たしたのです。その彼が最後に見たものは……あの2つの夕日! 人は老いるけれど、それでも……と可能性を示してくれたと信じたいですね。

 誰だってフォース使えるんだ問題も賛否ありそうですが、『ウルトラマンティガ』の「人間は皆、自分自身の力で光になれるんだ。レナもなれただろ?」的で僕はアリだと思います。この作品の肯定派というより、大好き派です。

 

 

 

5:ラ・ラ・ランド

 画面の色使いも艶やかな序盤は、レトロなミュージカル映画のようでもあり。主人公の二人も、その時代の映画の中のような「夢見がち」にも思える台詞を語ります。しかし話が進むにつれ、画面の色は落ち着き、主人公たちもそれぞれの現実という壁にぶち当たります。「古き良き」ミュージカル映画のようでありながらも、ここで描かれる「愚かな夢追い人」の姿は、この世界中に無数にいる「今」の夢見る若者たちそのものなのでしょう。

 ミアがオーディションで歌ったおばさんの逸話の中の言葉、「少しの狂気が新しい夢を見せる」。ミアが踏み出す為に(そしてセブが踏み出すためにも)、2人はあのままではいられなかった。あの別れは必然だった。夢追い人たらん者が諦めてはいけない事、諦めるしか無い事。「冬」でセブが演奏している間のあの泡沫の夢(そう、まさしく夢)の切なさ。しかし2人は互いを認め合えた。セブのあの笑顔と納得に、ただただ涙。

 

 

 

6:スパイダーマン:ホームカミング

 うるさ方が仰るところの、「スパイダーマン映画の問題点」をひょいとクリアしつつ良質の青春映画に仕上げ、スパイダーマンとしては新鮮なルックのシーンを幾つも見せてつつ、なおかつMCUシリーズとしてのブリッジの役目もちゃんと果たしてるという凄まじいバランスで作られてる非の打ち所のない作品。新スパイダーマンを演じるトム・ホランドくんの、応援したくなること必至の驚異的なかわいさ、フレッシュさ。友人ネッドの愛すべきバカオタクぶり。個性豊かなクラスメートたち……。キャラクターの勝利!

 敵のヴァルチャーも魅力的なんだなァ。彼の行った事は悪ですが、気持ちは物凄く判るもの。トランプ政権誕生の裏には、ああいう事の積み重ねもあったのでしょう? 情勢もよく取り込んでらっしゃる。

 『アベンジャーズ』でのNY決戦は今回明らかに911として描かれてましたよね。明るいベン叔母さんや呑気な先生がふと見せる、NY決戦にまつわる暗い影。ピーターの「克服」シーンもモロですね。あっちの映画は現実に起こった事件のエンタメ昇華が上手いよなぁ。

 

 

 

7:マイティ・ソー:バトルロイヤル

 監督が作品作りのコントロールをなかなか取れないという噂のMCU作品ですが……。果たして本作は、全体にコメディタッチが漂う負け犬たちのリベンジ物語という、いかにもタイカ・ワイティティ印の作品に。ソーの快男児ぶりがボルテージMAXで見ていて気持ちいいんですよね。情緒不安定なバナー、成長してないロキも楽し。

 終始楽しい楽しい作品で、クリヘム(&吹替担当・三宅健太)の弾けた愉快な芝居が堪能できるのですが、大層シリアスな展開もあり。両氏が芝居で様々な顔を覗かせてくれるので、ファンならどちらも必見(必聴)。ヘラ役のケイト・ブランシェットは洋製曽我町子といえる流石の貫禄(高笑いしてほしかった!)。

 ……と、メインキャストの描写は大満足なんですが、スカージやウォリアーズ・スリーの扱いの雑さったらないというか…シフはAoSのお陰で助かった? 紛うことなき傑作で、ワイティティ監督には感謝感謝だけれど、ウォリアーズ・スリーのあの扱いに関しては全く納得がいってない。いつか酒場でバッタリお会いしたら二時間説教モードだ。

 

 

 

8:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーミックス

 ワイスピ時空がグルート役のヴィン・ディーゼル経由でMCUと繋がったのかと思うくらいに、「家族」の物語だった……。そしてまんまと泣かされてしまった……。

 ラストでかかる作品を象徴するオールディーズナンバー『father and son 』がめちゃグッと来た。

www.tapthepop.net

 この手の曲に心を動かされる事なんて今までなかったんだけど、それ俺がいい歳こいて、この曲に歌われてるような事に向き合ってこなかったからなんだよな、恥ずかしながら。

 スターロードは作品を司る音楽要素の象徴たる、母から受け継いだカセットテープ&ウォークマンを「父」の手によって失ったけれど、「親父」から新たにZuneとして受け継いだんだな。

 

 

 

9:ローガン

 「X-MEN」でも「ウルヴァリン」でもなく、まさしく「ローガン」な一作でした。一個人の内面を掘り下げる、『アイアンマン3』的な物語。アダマンチウムの毒により能力を失いかけ、ボロボロのローガン。あの偉丈夫が冒頭からチンピラ相手に苦戦し、手加減をしてる余裕などなくやむなく惨殺するしかないという衝撃。やっとこ住処に戻ればエグゼビアの介護が待っており、何かと同居人のミュータントと言い争うという、まぁー哀しい境遇ですよ。

 「自分の愛したものはみな酷い目にあう」、とローガンが言うように、幾つもの物語を重ねて、結びつきの殆どを失ってしまった彼が、自分の遺伝子から産まれた娘・ローラと出会う。やがてエグゼビアも失い孤独を選ぼうとしたはずのローガンは、しかし最後にローラを助けに走る、走る!(薬物によって往年のバーサーカーレイジを取り戻すさまがまた切ない)
 凶暴性を植え付けられ、兵器として産まれたウルヴァリン・クローンの強敵・X-24という「己との戦い」の果て、今際の際にやっと、今まで持てなかった「家族(としての絆)」をローガンが得たのは、救いがあったとも言えるけれどやっぱり哀しいなぁ……。
 ラスト、ローガンを埋葬したローラが、墓標として作った木の十字を斜めに倒すんですね。まさしくそれは「X」の文字。最後の「X-MEN」メンバーへの弔いであり、一作目から今まで続いてきた映画のX-MENシリーズの終わりを示してもいて……。なんともしみじみ泣ける終わり方でした。
 

 

 

10:トリプルX 再起動

 すげぇ! 上映時間の108分全て、ひたすらにハッタリをかました絵が流れ続けるんだよ! やだ楽しい!ヴィンさま抱いて!

 最強の敵に挑むイカれた仲間を紹介するぜ! 百発百中のスナイパービッチ、アデル(アダ名はクリ勃起)! 199のデススタントをこなした不死身のフェイスブックいいねキチガイ、テニソン! 葬式会場もサンバカーニバルに変えるDJ.ニック(一緒にいると楽しい)! かように矢鱈に濃くて変な仲間を引き連れたケレンみたっぷりヴィン・ディーゼルが、ピチピチの53歳ドニー・イェン、 今回悲壮感ゼロで陽気に暴れるトニー・ジャーUFCミドル級王者マイケル・ビスピンと戦うんですよ。

 『ワイルド・スピード ICE BREAK』もそうなんですが、冒頭で主人公の大独壇場のスーパーアクション&男気祭りコーナーがあるので、シリーズ未見の人でも開始10分であのマッチョハゲが好きになってしまうという、最高のヴィン・ディーゼルPVになってるのも上手い。まーただただ楽しい。皆も観ろ!

 

 

 

11:マグニフィセント・セブン

 黒人、PTSD患者、山男に東洋人にメキシコ人にインディアン。それに用心棒を雇い主の女性と、PC配慮(?)が幸いして、オリジナルよりメンバーに幅が出ましたね。七人を集めるまでがあっさりしすぎで、各々の動機がイマイチはっきり描かれない(特にインディアンが仲間になるシーンの力技具合といったら!)のは気になりますが、テンポは悪くない。

 そういう各々のエピソードをもっと見たい!と思わせるほど、各メンバーは魅力的でした。特にクリス・プラットは儲け役で、僕がイメージしてるクリス・プラット像を一番体現してるんですよね。ジョセフ・ジョースター的「またまたやらせていただきましたァン!」なトリックを使いこなす食えない、しかし愛嬌たっぷりな男!

 イーサン・ホークイ・ビョンホンのいちゃいちゃぶりや、ヴィンセント・ドノフリオのラブリー狂熊ぶりも見逃せない。そんな連中が技・奇策・地元民との連携で見せる激闘・死闘。やぁ、なんと見応えある西部劇のガン・バトルでした。

 しかし歪んだ資本主義を体現するような敵役に、寄せ集め多国籍・マイノリティ軍団が挑むってのも、偶然とはいえ、まぁいいタイミングでこんな話が劇場にかかったもんですなぁ。

 

 

 

12:HiGH & LOW THE MOVIE 2:END OF SKY

  日本屈指のアクション映画がさらにその凄みを増して帰ってきたのだから堪らない。中盤のバイク&カースタントシーンは日本のアクション映画のレベルを超えてる。素直に手に汗握ってしまった!

 終盤のハイロー名物、集団対集団の喧嘩祭りも、個々人・チームの個性を活かした色のあるアクションは益々冴え渡り。登場シーンにチームのテーマ曲が流れるのは演出の常套手段ですが、前述のようにきっちり個性を描いた上だと尚の事効きますね。

 ハイローはシリーズ通して脚本が稚拙なところが多々あります。しかし今回、話があるにはあるけれど、それが殆ど前進してないのも良い方に作用してたかもしれません。話ダッセーな……と焦れる事なく最後までアクションを堪能できました。

 細かい点は皆さんの感想に譲りますが、日向のどこまでも進化していくエクストリーム腕十字と、村山のかわゆさがたまらんところはやはり言及しておきたいですね。鬼邪高校の永遠の部活感いいなぁー、楽しそうだなぁー。

 

 

 

13:スノーデン

 米国が世界の、そして国内の情報を違法に収集していたという事を暴露したスノーデン。その暴露事件そのものを描くというより、関わった彼個人の苦悩と決意を描く事で、よりこの事件の危うさを浮き彫りにする事に成功しているように思えました。

 この作品の成否はスノーデン演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットの力量に結構なウェイトが置かれてると思うのですが、果たして彼はおよそ10年間のスノーデンの心情変化を丁寧に表現してくれています。あの光の下へ赴くシーンの、なんとも深く心に響く事よ。

 アメリカだけでなく、どんな国でも(日本でも!)個人の自由や権利を制限したり侵害したりするのには「NO」と言いたいものです。しかし体制の力は巨大すぎて、個人がそれを貫き続けるのはとてつもなく難しい。スノーデンが、大きなスクリーンに映し出された上司・コービンと対峙するシーン。悪魔めいた様子でスクリーンに映るコービンは、体制という「大義名分」の下ならすべて許されるいう嫌らしさの象徴ですよ。撮り方の勝利。

 

 

 

14:キングコング 髑髏島の巨神

 中々御大が出てこないギャレゴジの焦らしプレイとは対局の、南海の怪獣・巨獣・珍獣の釣瓶撃ち! 人間なんぞ軽はずみに死ぬ! とはいえざっくり大味映画という訳ではなく、かなり誠実で真面目に作られてるなぁと思いました。怪獣プロレス興行の邪魔にならない程度に人間のドラマを絡めて、個人個人をそこまで深掘りはしないけど、「あ、こいつこんな人間なのね」としっかり判る丁寧さ。怪獣もその動きだけで生態がちゃんと判ってまるで怪獣図鑑のような楽しさ。

 コングのあの知性溢れる戦術と技も素晴らしい。大木を武器にする際は、クッションになる枝葉をこそげ落としてから使うし、自分を縛った船の鎖&スクリューを流星錘のように巧みに使い、その鎖で相手を捕縛する喧嘩巧者ぶりですよ! それをヒロインをソフトに掴みながらやるってんだからさァ! 『ブレードランナー』で、片手に鳩を優しく包み、もう片方の手でデッカードを持ち上げたレプリカントの超人性を表す描写を思い出してしまった。 これで成長途中ってんだから、ゴジラとの怪獣王争奪戦が楽しみじゃて。

 

 

 

15:ワイルド・スピード ICE BREAK

 快速王に俺はなる、ファミリー大事なワンピース系やんちゃカーアクションムービーは8作目でついに氷上決戦! ドム、ホブス、デッカードの3人の超人度数もどんどんアガるゾ!

 この作品、ど派手トンデモアクションがメインですけれど、構造的にも上手くできていて。敵も味方も徹頭徹尾「ファミリー」の絆にこだわりぬいてるんですね。一貫性があるので見ていて納得がいくという。無茶苦茶な話なのだけれど、トンデモアクションつるべ打ちだけに逃げないこういう姿勢はちゃんと評価したいなぁ。

 

 

 

16:傷物語 Ⅲ 冷血篇

 登場人物の心象風景や立ち位置が反映された、時に写実的、時に幾何学的、時に超現実的なシリーズ独特の背景美術と、抑制的ながらも美しく乱舞する光と影、赤と黒の色彩が作り上げる美しくも妖しの世界。尾石達也マジックここに極まれり!

 クライマックスの不死の吸血鬼同士のタイマンバトルも、ハイパーポップなゴアアクションで楽し。ポップコーンが弾けるように首がポンポン飛ぶよぅ!

 しかし『キャット・ピープル』でも思ったけれど、あんなキスショットみたいな魅力的な吸血姫がいたら、バンバン人殺させちゃうよね!(断言)

 

 

 

17:猿の惑星 聖戦記

 確か町山さんが、シーザーがモーゼ状態な出エジプト記的な話であるとか仰ってたと思うんだけど、キリスト教に基づいたお話ではあるのかしら? 人を人たらしめる云々を阻害する新たな病はバベルの塔のエピソードよりの拝借と考えると、あれは生物の霊長であると奢った人類に与えられた罰ですよね。そういう発想は非科学的ではありますが、とはいえ「こりゃ人間色んな意味でもうダメだわ」という描写しか繰り返されていないし、「せめてこの人間だけは助かってくれよ」という善なる存在もいないのでまぁ罰当たってもしょうがねーなという心持ちでしか同族・人間を見れなかったのであります(ひでー)。

 作中でシーザーについて「目がほとんど人間だ」みたいな台詞があったと思いますが、その目は今まで以上に更にモノを言うというか、僕らが感情移入する大いなる一助になってると思うんですよ。目の芝居表現の大切さ、そして今のCG技術は、僕らを引きつけるそれが充分にできる事を改めて確認できました。

 

 

 

18:ブレードランナー2049

 色々SF的な考察もできるんでしょうけれど、ラヴがジョイの命を絶った(あえてこう書く)その時、本作が革新的SF映画の続編だとかそういう事は僕には結構どうでもよくなり、ベタですらある復讐譚に「成り上がった」本作に妙な肩入れをして観てしまったのだ。

 Kなんてレプリカントとして、人間からは散々疎まれ疎外されてる訳じゃないですか。オタクという「人種」だってそういう風にされてた時期はあったし、今だって個々人や地域の差などはあれ、それは残ってる。そんなKが「作られた存在」のジョイで心を癒やす様は、様々な創作物で心を癒やすオタクの様に重なる訳ですよ(もっと直接的に言えばあれはまさしく二次オタの姿でもありましょう)。自意識過剰マンなのは承知で物語を横に置いてでも、僕はKに共感してしまったし、だからこそジョイの最後の言葉に心を動かされねばならなかった訳です(実際あのシーンで落涙してしまい、その事実に我ながらびっくりしてしまった)

 どれだけこのSF大作を矮小化して観てるんだよって話なんですけれど、恥ずかしながら、いい歳こいてそう受け取ってしまったものはもう仕方がないんですなぁ。本筋と離れてた所で変に心を動かされてしまった。

 

 

 

19:Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower

 stay nightはセイバールート、凛ルートと何度も映像化されている訳で、いうなればスパイダーマンのベンおじさん何回死ぬねん問題的な箇所がどうしても発生してしまう訳ですが、今回桜ルートの映像化にあたってそこを大胆に処理してきましたね。想定される客層は、判ってる人々が多数とはいえ、「原作で描かれていた事を映像に落とし込むに当って、どう整理・洗練するか」という、原作ものにつきまとう課題を大変巧みに解決してるなぁと。どのシーンの描写に注力すべきか否かの取捨選択が洒脱なので、ゲーム経験者的には成る程と膝を打つ点が散見されました。

 またstay night以降のヒットタイトルであるZeroやFGOも踏まえて作られており、それが作品・表現の豊かさにも繋がり、ファンサービスにも繋がるというあたり、王道を行くものの抜け目のなさを感じました。桜ルートでピックアップされる桜や慎二については好きなキャラではないので、見に行く前は正直あんまり乗り気ではなかったんですが、どうしてどうして。その二人の細やかな描写に新たな発見も見いだせて、収穫でした。や、だからといって好きなキャラになった訳ではないんですがw

 

 

 

20:ジョン・ウィック チャプター2

 殺し屋時代に交わした誓いのお陰でNY中の殺し屋に追われるハメになったジョン・ウィックの殺人メソッド大お披露目大会。我々と同じ世界とは思えない、独自ルールに支配された裏の世界描写が楽し。

 ジョンの近接戦闘テクニックは組技要素が大幅アップ。オモプラッタ射撃とでも言いましょうか、一人を組技で固めつつ、右手を空けて迫る敵を射殺というテクが面白い。ケレンのあるCQBガンファイトといえば『リベリオン』に端を発する、手で相手の技を捌きながら射撃というスタイルがありますが、本作ではスパイダーガードで相手を捌きつつ射撃やナイフ攻撃という、また1つ踏み込んだ新鮮なケレンファイトが見られてよろしゅうございました。世界観と面白ファイトの愉快さが正統進化していて、よい続編。でもジョンの置かれた状況はシビアすぎる……生きて……!

 

 

 

21:バイオハザード ヴェンデッタ

 近接戦闘アクションがよくできておりましてね。近年流行りのリアルよりCQCスタイルにたっぷりのケレンを乗せたもので見応え抜群。クリスvsアリアスの導入はるろ剣リスペクトだ!

 こういう実写アクションの延長にあるような見せ方のアクションとCGアニメは相性いいな認識できたのは収穫でした。ただやっぱり実写に寄っている分、背景などの作り込みが薄く見えてしまう点もあり(やりすぎると時間と予算が幾らあっても足りなくなるから仕方ないんだけど)、そういう所はショボく見えてしまったなぁ。

 

 

 

22:パトリオット・デイ

 ボストンマラソン爆弾テロ事件をもとにした、ピーター&マークコンビの実録もの第三弾。ウォールバーグが一応の主人公としてメインは張ってるんだけど、本作はこの事件に関わった様々な人々の群像劇になるのかな、脇の人間の描写が良くって! 特にJKシモンズが演じる愛煙家の巡査部長がよかったね。あのシガー捌き! あと台詞なかったと思うけど、「8歳の子供に寄り添う」あの無名の警官。表情と仕草だけで彼の心情が伝わってきてねぇ、グッときましたよ。

 また町中の銃撃戦が壮絶でした。ハンドガンだけでなくM4までぶっぱなす戦場のような凄まじさ。そんな中でもちょっとした「緩」の場面をひょいと挿入するのが面白い。

 ウォールバーグが語る正義と悪の二元論は、やや乱暴にも思えてしまうのだけれど、それは僕がテロの被害を受けた事がないからというのもあるのでしょう。

 

 

 

23:アトミック・ブロンド

 アクションはトレンドの近接戦闘型だけど、お話自体は古式ゆかしい、冷戦時代が舞台のスパイアクション。シャーリーズ・セロンがやってる、というのがポイント高いという向きもいらっしゃるでしょう。

 劇中のTV番組が音楽のサンプリングについて取り上げていたけれど、有名スパイ映画の懐かしオマージュっぽいポイントもチラホラある中で、長回し風近接戦闘シーンやかつての流行歌をBGMに使うなどの流行りも取り入れていて、まさしくサンプリングみたいな作りの作品。

 もちろんシャリ姐の腕っこきスパイぶりを楽しむというアイドル映画的側面もございましょう。えらいステゴロが強くてどこか冷めてるアイドルだけれどw あ、シャリ姐とマカヴォイがやたらタバコスパスパしてるのもいい。昔を描くならこーでないと。

 

 

 

24:バリー・シール アメリカをはめた男

 トムがニヤケ面7割で演じた米史上最大の運び屋、バリー・シールの成り上がり物語。『オール・ニード・イズ・キル』のあいつがあのお調子のまま、賽の目の出が良かったばかりにスルスルとヤバいビジネスに成功してしまった、というようなお話。

 ポリシーもイデオロギーもないバリーは、金の為なら武器&麻薬密輸の違法ビジネス道まっしぐらなんですが、それをおトムさんが妙にイキイキ爽やかに演じてるのであんまりヤなヤツに見えないんですよね。むしろ都合が悪くなったらバッサリ彼を切るCIAの方がひっでぇって思えるという。この手の邪道ビジネス成り上がり映画は、やがて破滅を迎えるのが常ですが、彼らは一様に仕事に対してはまっすぐで勤勉で、そしてとっても楽しそうで。どこか憧れてしまうんだよな、そうじゃない立場のおじさんとしては。

 

 

 

25:ドリーム

 マーキュリー計画に関わった三人の黒人女性を描いた事実をもとにした物語。多様性を認めないというのは人道的にもダメな事だと思うんですが、単なる道義の問題だけではなく、社会損失にも繋がるのだという主張が、米国の科学の最先端に位置するNASAを舞台にしてる作品らしいというか。しかしその科学の最先端に位置するNASAですら、差別は明確にあり、それを覆したのは彼女たちの不断の努力であったという事実。

 彼女たちの努力する姿や、それが結実する様は感動的ですが、とはいえ「NASAに入れるほどの超天才でもこれほどまでに努力を積み上げねばならぬのだ」という(ま、そりゃそうなんだろうけれど)事に、怠け者で凡人の僕は「ううっ、現実って厳しいなぁ!」とも今更ながらに思い知ったり。

 あと三人が乗っている車や黒板への板書、NASA敷地内での東奔西走、空を見上げる等のシーンの天丼重ね(って言うのかしら?)が効果的で、各々のシーンの意味、受け手の感情への揺さぶりがより豊かになってたと思います。上手いなぁ。

 

 

 

26:ザ・コンサルタント

 絶品の死んだ目を持つ男・ベンアフがその目全開で自閉症の殺人会計士を演じるアクション……と言い条、ベンアフ無双が観られるのは3シーンほど? もっと見たいなぁ!

 自閉症の主人公の取る奇異(に僕ら「健常者」には見えてしまう)な行動が「あ、この主人公何考えてるかわかんねぇ……」という「畏怖」に結びつくのだけれど、作中でも言われてるように、それは「健常者」の勝手に過ぎんというか。主人公を類型的な「自閉症故にある能力に秀でた天才」に描くのではなく、マイノリティに寄り添った形で誠実に描いているのはいいですね。税金控除ポイント引き出しまくって食い詰め寸前の農家を救うシーンなんて最高じゃないですか。

 ただ、主人公以外の登場人物の、ヒロインたるアナ・ケンドリック、会計士を追う捜査官と上司、ヒロインを消そうとする武装集団のリーダーがいまいち有機的に絡み合わないというか。アナケンは終盤出ないし、捜査官いなくてもいいんじゃないと思うくらい。

 武装集団のリーダーも……まぁあんだけ印象的に兄弟の過去を描いてたら、みんな正体判るよね?(全然面影ないなーと思うけれどw)お前ら今までの命をかけたやりとりをあっさり置いておいてまとまっちゃうんかい?!とも思っちゃう。 なーんかミョ~な映画でしたワイ。

 

 

 

27:ドクター・ストレンジ

 今までのMCU作品とも繋がってはいますがその描写は薄く、これ単体で充分楽しめます。予告にも観られる高層ビルをぎゅんぎゅん捻じ曲げる幻惑映像や、ストレンジがエンシェント・ワンに見せられるマルチバースの一端は、サイケデリックなビデオドラッグな映像そのもの。

 「凝り固まった」ストレンジがやがて「自分の殻を破り」悟って真の魔術師になるという成長譚なのですが、テーマに沿わせて成長してるように見せるにはやや性急、というか描写不足にも感じたかなぁ。でもテンポはいいです。

 ラスボスとのタイマンシーンでの、アガモットの目を用いた永遠の延長戦は、ストレンジが背負った地球を護る魔術師としての悲壮な覚悟に感動すべきか、天丼として笑うべきか、若干悩んでしまいましたよw

 

 

 

28:IT それが見えたら、終わり

 恥ずかしながら原作も過去の映像作品も通過してないんですが、これ、言ってしまえばオカルト風味スタンド・バイ・ミーなんですね。あぶれもの達が絆を深めていく様子、そしてラストのイニシエーションなんかは印象深いですね。ペニーワイズがみょーに弱かったですけれど。

 しかし原作を知らん身なので驚いたのですが……続くんかい!

 

 

 

29:ハクソー・リッジ

 銃を持たず、人を殺さずを誓った衛生兵、デズモンド・ドスという実在の人物を主人公にした作品。前半はそんな軍人にあるまじき誓いを立てた男が如何にして前線に行くのかを描き、後半はひたすら泥沼な戦争を見せつける二部構成。前半でしっかりデズモンドの家族や恋人、そして隊の同僚について描いてるから、後半の戦闘シーンでそれが効いてくる。だからこんなに頑なに銃を持たないのか! ああ、あの愛すべきアイツが虫けらのようにやられていく! とついつい引き込まれる。丁寧な仕事だ。

 景気よく肉が爆ぜ死が満ちる戦場を観客にさんざん見せつけた後に、使命に目覚めたデズモンドがそこに戻っていくんだもの。いつ日本軍がやってくるかもしれぬ地で、休みなく夜を徹して人命救助を続けるその姿に、人は信仰の力を見出し、英雄と称えるのかもしれないけれど、僕には戦場で銃を持つという“正気”を否定した男の見せた“狂気”にも見えて。この英雄的行為と狂気は裏表ですよ。

 ウジが湧きネズミがたかる死体の山に始まって、上半身だけになった死体を盾に前進したり、地虫のように穴から日本兵がわらわら湧いてきたり、ハイローやアベンジャーズ2のように、米兵と日本兵が画面の端と橋から突っ込んで画面中央で激突したりとブルータルな戦争映画スペクタクルに満ち満ちていて、誤解を恐れずに言えば大層楽しいのだけれど、ちょうど観たのが沖縄慰霊の日の翌日な事もあって、日本兵がバタバタ死んでく様を見るのもなんだかフクザツではありました。

 

 

 

30: KUBO 二本の弦の秘密

 恥ずかしながらライカのアニメを観るのはこれが初めてなんですが、まぁ凄まじいですな。これ、言わなきゃストップモーションアニメだってわかんないすわ。CGアニメっすわ。丹念に積み重ねられた執念の結晶。そりゃ「瞬きすらしてはならぬ」よなァ。

 個人的にはその「言わなきゃストップモーションアニメだってわからない」感じがやや不満で、もうちょっと作り物っぽさと言いましょうか、そういうのを匂わせてもいいんじゃないかなーと思います。僕、ハリーハウゼンの映画なんかの実写の中に違和感を感じるモノがモリモリ動くあの感覚が凄い好きなので……。あるいは人形劇を見る感覚というか……。月光の下でのシーンはやや作り物感が増してた気がするからライティングで見え方変わってくるのかなぁ。や、完全に個人的な趣味の話です!

 

 

 

31:ジャスティス・リーグ

 完成までに何度か追撮や編集の手が入ったという本作ですが、そのせいか矢鱈にテンポがよく進んでいくので120分あるのにとても見やすいですね。各キャラが悩みや弱みを抱えていたりするのですが、深刻になりすぎずにスイスイ克服していくぞ。

 そのテンポの良さと引き換えなのか、見やすくはありますけれど、コク深さが足りないというか。描写不足に感じる部分も多々あり。各キャラクターが魅力的なだけに勿体無い。ザック版なら……とつい思いを馳せてしまいますが、それはそれで叩かれるんだろうなァw

 MoSで地球に降り立ち、BvSで死に、そして本作で復活、家族以外の仲間を得たカル=エル。三作通してみると、これまでのDCEU作品は、彼が名実ともにスーパーマンというシンボリックなヒーローになるまでのお話だったんだなと判り、感慨もひとしお。

 

 

 

32:ダンケルク

 戦記物、あるいは戦争に対してのメッセージ映画ではないのでょう、戦場を目撃する体験型映画といった方がいいのかもしれないですね。その割にはサスペンスの為の過剰な仕掛けを避けて作られてるような気がしました(音楽は露骨だったけど)。

 エンタメ方向から見れば抑制ぎみの演出という事なのでしょうけれど、それはあえて行っているのでしょうし。ここをどうとるかで評価が変わるのかも。や、充分体験型映画としても優秀だとは思うのですが、僕にはあんまり後に残らない映画に思えました。

 とはいえラストのスピットファイアのあのシーン、あそこはやたらに詩的でびっくりしてしまった。あそこだけなんか別格。

 

 

33:バーニング・オーシャン

 事件が起こるまで大体1時間くらいたっぷり使ってるんだけど、「うわ…これやばい方向に向かってるわ…」という不穏さを徐々に煽っていくスタイルなので退屈はせず。現場主任のジミーが7年連続安全賞だかを受賞して、皆が喜んで祝ってくれてるのを背にし、懸念案件にGOを出す引きのショットのなんて皮肉で意地悪い事か。

 後半はスペクタクルここに極まれりというくらいに景気よく泥水噴出と爆発、火炎のオンパレード。凄まじい地獄を作り出しているのだけど、ドラマをそれに合わせて英雄の美談として盛り上げようとか、この原因を作った者を断罪しようとか、そういうんではないんですね。起こった事故に対して、登場人物がプロとして事を解決の為、あるいは生き残る為の行動をただただ描くというか。

 

 

 

34:おじいちゃんはデブゴン

 65歳のサモ・ハンが歳相応のおじいちゃんを演じた、『アジョシ』風味の「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした」系ムービー。サモ・ハンももうお歳ですから、アクションシーンはスロー多用、飛んだり跳ねたりも特にしないのですが、ひたすらにハプキドー風CQBで敵の骨をポキンポキンに折りまくる描写は小気味よし。

 サモ・ハンが演じるディンは認知症で、常時どうにも呆けた様子なのですが、かつて守れなかった孫を想起させる少女・チュンファの危機を見て、文字通り覚醒した時の目の芝居!「あっ、現役時代のスイッチに繋がっちゃった……ヤバイ……。」という空気を醸し出せるのは流石サモ・ハンですよ。

 少女や大家のポクとの交流シーンも僕もそれなりに歳を取ったという事なのでしょう、素朴な描写がなんだかじんわりきてねぇ。緩いっちゃ緩い出来なんだけど、嫌いになれないなぁというか。

 

 

 

35:オリエント急行殺人事件

 この有名な作品、大仕掛けを知ってると驚きは無く辛いかな、とも思っていましたが、会話劇の面白さと絵作りで引っ張っていくスタイルで退屈さは感じませんでした。特に列車という舞台を活かした、あ、こういう撮り方、見せ方あるのかという、面白くも品のあるカメラワークと、そしてこれまた列車ものという設定を活かした、美しい風景をロングで見せていくショットがよろしゅう御座いました。

 彼方より来たりて、そして去っていく。列車の宿命と物語の結末をリンクさせたような、物悲しくも美しいラストを見て、ああ、一見の価値はあったなぁと。シェイクスピア俳優のケネス・ブラナーらしい?、懐かしさも感じる(でも決して古くは感じない)王道を征く作品。

 

 

 

36:GODZILLA 怪獣惑星

 シンゴジラ以上の凶悪怪獣を描いてるのに、今ひとつその強大さが伝わりきらなかったのは、既に文明崩壊した大自然の中でゴジラが暴れてるからじゃないかなーと思いました。怪獣映画の華といえば現実対虚構、怪獣による文明蹂躙ですが、そびえ立つビル群も敵怪獣もおらず、せいぜい戦車程度の大きさの兵器をビームで蹴散らすくらい。かように力の差を示す対象が質・量ともに弱いので、かえってゴジラの強さが伝わりきらないんですね。

 とはいえ、アニメならではの絵作り(勢いのある空中戦カメラワークは楽し)は面白く、またこのSF設定が生きるのもアニメだからでしょう。や、海外で唸る程金出して作れりゃ別でしょうけれど、それは土台無理な話ですし。アニメである必然性があるゴジラ映画。

 けれど、この「怪獣惑星」は、クライマックスの超巨大ゴジラ登場までの前フリに過ぎぬというか、結局この1作だけでどうこう言えるものではなくなってしまいました。次作、完結?作が楽しみ。

 

 

 

37:HiGH & LOW THE MOVIE 3:FINAL MISSION

 アイディアたっぷりのアクション、矢鱈に勢いがある訳の分からないワード(カジノ建設の爆破セレモニーってなんだよ…)、キャラクター達の格好よい見せ場、タイミングドンピシャで気持ちよく流れるテーマ曲は相変わらず。それらが発揮されているシーンはどうにも盛り上がってしまうのだけれど、やはり「お話を収束させる」という至上命題がある以上、そんなシーンのボリュームは減り、物足りなさを感じるのは確か。

 そして、これも「相変わらず」だけど、脚本がやっぱり雑。???と頭を傾げざるをえない点が多すぎ、テンションが下がる。そうなるとやっぱりアガる見せ場のボリューム不足がより一層響いてくるんですね。脚本の妙味を味わう作品ではないと承知してはいるけれど、どうにも残念。

 カチコミ前のメインキャラ達の独白は、キャラクターを借りた中の人達の独白でもあるのでしょう。そういうのは嫌いじゃないし、不良軍団たちにEXILE軍団を重ねつつ物語を作っていったのだな、「誰よりも高く飛ぶ」などはLDHの決意表明でもあったのだろうな、とも受け取れたので、若者の奮闘ぶりにはおじさんジーンとはきてしまったよ。

 

 

 

38:ワンダーウーマン

 面白いには面白いし、ガル・ガドットの華、勢揃いアマゾン女傑軍団の力強い格好良さ、クリス・パインのヒロインぶりとか褒めたい部分はあるけれど……うーん、世界的な評判を受けて期待はしてたのに、それほどでもなかったなぁというか。どこがそんなに凄いのかよくわかんなかったなぁ。

 女丈夫が男尊女卑の人間社会に痛烈にカウンターをカマす様を見たかったし、僕がDCEUでいつも感じている、爽快で豪快な映像の格好よさも味わいたかったんだけれども。前者にはそれほど深く踏み込まなかったし、後者についてもラストバトルが一番ビミョーってどうなのさ! なんの新味も感じないし、スピード感もないし……ラスボスもCGで処理するんなら顔はオッサンのままにしなきゃいいのに……。

 

 

 

39:パワーレンジャー

 パワレンに選ばれし5人は皆あぶれもの、マイノリティ。彼らが抱える悩みや、それを告白し絆を深めるシーンには自分を重ねてしまい、不覚にも落涙してしまった。問題はそういう悩みなどが、ヒーローになる・なった際に解決に繋がる訳でもなく、何も活かされてないんだなぁ。ブツ切りでカタルシスがない。ジョシュ・トランク版ファンタスティック4を思い出すような展開の遅さの果てにこれでは……。

 とはいえ『GO GO Power Rangersが流れた時はやっぱりイヤッホォーーイ!とアガってしまった。音楽の力は強い&ズルい。あと日本の特撮に比べたら破格ではあるのでしょうが、予算の無さは随所に透けて見えました。

 吹替は赤と桃は、悪い意味での「芸能人吹替」だったなぁ。山里亮太は役にあってて良し。青の杉田智和は流石の芸達者ぶり。そして今イキの良いエロ悪女をやらせたら他はないという沢城みゆき大先生の芝居は出色。ありがとう!

 

 

 

40:夜は短し歩けよ乙女

 『四畳半神話体系』スタッフらしい作風は面白く、奇妙な絵が連発されてクラクラ。しかしもっと先輩と乙女のやり取りにフォーカスして欲しいとも思った(先輩、意外に影薄い)。凜としながらもちょっとズレてて、それでいてやっぱり可愛らしい乙女には好感触。

 乙女のこれまでの積み重ねが実になるクライマックスは感動的だけれど、もっとその積み重ねをじっくり見せる尺があれば、物足りない……という印象。映画よりTVシリーズの方が良かった? あと星野源使ってるなら主題歌も歌って欲しかったなァ。

 

 

 

41:打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

 『時かけ』しかり、『君の名は。』しかり、青春SFものの傑作は、その大仕掛けに一応の納得がいく物語になっていたり、あるいは違和感を感じさせないくらいのエモーショナルな高まりを感じさせる作りだったりするものですが、そのどちらでもなく……。牽引力に欠ける脚本・演出でした。キャラクターに魅力を感じる、あるいは共感を覚える前に、なんだかぼんやりと時は経過しクライマックスに辿り着いてしまう。最終的にはある程度盛り上がりはしたけれど、時すでに遅し。あの欠片が「あり得たかもしれない無限の可能性=未来」の断片を見せるシーンは好きなんだけどなァ。

 声優ではない菅田将暉広瀬すずの両名は、普段はリアリティラインが違う実写で芝居してる人たちなんだから、アニメに合わなくて当然なんですね。でもやっぱり根本の演技力はしっかりしてるんだなぁと関心させられるポイントが何度も。ちゃんと腕のある方々なのだと実感できました。そして脇でその二人を支える宮野真守の名バイプレイヤーっぷりに、俺ァ感動しましたよ。惚れる!

 褒めたい部分は細部に幾つもあるのだけれど、幹の部分がしっかりしてない歪な印象の作品でした。もったいないよ。

 

 

 

42:ザ・マミー 呪われた砂漠の王女

 ハムナプトラ+スペースバンパイアクイーン・オブ・ザ・ヴァンパイアといった感。ダーク・ユニバースという新たな世界の始まりにしては新味に欠ける。事件が起こるのは大体トムのせい、因果応報なのは判るけど、あの盗賊オチはもうちょっとそれまでに伏線張っておいてほしいなぁ。トムをキートン先生ばりに手癖悪いヤツにしておくとか。

 ヘンリー博士の部屋のプロップはちょっとワクワクしたけれど、次のダーク・ユニバースに繋がりそうな予告的なものは特になし。まぁどうもユニバース計画自体凍結っぽいけれど。

 

 

 

43:エイリアン・コヴェナント

 正直リドリーが描きたい事がよくわからず。キリスト教をモチーフにしてる……のかなぁ?というシーンも(僕がキリスト教詳しくないのでテキトーですが)あり、それを踏まえた上でリドリーが自分なりに神話(例の俺ユニバースのヤツ)でも作るとかいう事なのかなー。でもそれって、『エイリアン』を観に来た観客は肩透かしを食らうよね。俺ユニバースの構築でハッスルしたいんなら、エイリアンの看板外して他所でやった方がいいんじゃないの?

 しかしエンジニア星人の扱い雑すぎだったなー。エンジニア星がエイリアンの巣になったんなら、『エイリアン3』のボツネタの、地平線の向こうから雲霞の如くゼノモーフが押し寄せてくるヤツ来るか?!と期待したんだけど、そんな事はなかったぜ!

 

 

 

44:メアリと魔女の花

  スタジオポノックという制作会社の第一作目。「スタジオジブリ」の名前がどうしてもチラついてしまうのが人情というものですが、そのジブリからの脱却宣言かのような作品でした。作中ではジブリ作品のオマージュのような描写が散見されます。空飛ぶ魔女に黒猫といえば魔女宅。巨神兵めいたモンスター、ラピュタ、龍の巣、バルスetc……でも観た人なら判りますよね、オマージュされているそれらは最後に全て……。エンディングでメアリが描いた絵は、新たなメンバー(スタジオ)での旅立ちも示しているのではないのかな、と思います。もうあの制作会社の名前という「魔法」に拘る必要はないでしょう(ご商売上、プロデュース側的にはそうもいかんでしょうが……)

 しかしお話的にはもう1つパンチに欠けてしまったかなという感じです。ここぞという盛り上がりがなく、名シーン足りうる場面もなし……。全体的にのっぺりしてますよね。冒頭でメアリの長所と短所を見せ、「こいつおっちょこちょいだけど悪いヤツじゃないな、好感が持てるな」と思わせる手腕は良いんですが、欠点がその後の物語に絡んでこないのも勿体ないなーと。克服によるカタルシスでもあればいいのに……。

 EDクレジットの終わり際、高畑勲宮崎駿鈴木敏夫の三人の名前が。その括りが「感謝」なのには笑ってしまった。まぁ「スペシャルサンクス」とか表記したら怒られそうだもんなぁw

 

 

 

45:ゴースト・イン・ザ・シェル

 攻殻実写版。原作風味もあり、押井版風味もあり(ちなみに神山風味なし)。とはいえ、それらの「ややこしい部分」を削って、なんとかいちSF作品として「成立させた」感。ただその「ややこしい部分」ってのは「魅力」でもある訳で。扱いが難しいのは分かるけど換骨奪胎したら骨がどっか行っちまったんですな。

 この監督、攻殻好きなんだよねきっと。その気概は伝わってくるんだけど、成立させる為に色々オミットした結果、どうにも中途半端に。

 あと、これはもう時代的にしょうがないんだけど、今攻殻みたいな世界を実写で描いても、全然目新しく見えないんですよね、残念ながら。

 

 

 

46:ひるね姫 知らないワタシの物語

 夢と現実、魔法とテクノロジーがクロスし、親子三代を結びつける物語……にしたかったんだろうけれど、どうもそれぞれが今ひとつ噛み合わずちぐはぐだった印象。最後まで熱が伝わってこなかった。

 『時かけ』『君の名は。』にもあるような、作品を象徴するギミックが本作にもあり、それが「眠り」なのですが、それにより夢と現が曖昧になるはずが、果たしてそれを活かした面白さ、不思議さを出せていたかというと……(あれよく考えたらこのギミック、昼寝に限らないじゃないか。タイトル……?)。

 夢と現実の境が悪夢的に解けていくシーンには、今敏監督の『パプリカ』のような凄みを期待したのに、残念。パシリムもどきシーンもセンスが合いませんでした。絵の動く快感というアニメ的な面白さはそこかしこにあったのは◯。

 

 

 

47:虐殺器官

 映画を見る限りでは、ジョン・ポール邸でのクラヴィスとジョン、クラヴィスとアレックスの会話がこの作品のキモだとは思うのだけれど、僕がアホな所為もあって、理屈を理解するのであっぷあっぷになっちゃう。この作品、文章でじっくり噛みしめるのが一番なんじゃないの、というのが第一の感想。クラヴィス&ジョン&ルツィアの会話シーンは見せ方も退屈だよね(『ハーモニー』の悪夢再び!)。

 そもそも僕は語られたあのテーマについて、20世紀以降、物理的にもネットワーク上でもあまりに高速に世界とリンクできてしまうようになったが故に生まれてしまった、人間の解決できるレベルをひょいと飛び越えたどうにもできない問題だと思い、諦め、思考停止してしまっているので、早口で理屈を唱えられても乗り切れなかった、というのもあります。文章なら自分の考えなどを省みつつ咀嚼できたかもしれない。この映像表現でどれだけの人間に伝わるのだろうー!(僕の読解力が低いという可能性も勿論ある)

 あと細部の表現にも疑問符つく点多いなぁと。序盤、アレックスが将軍を射殺するシーンは、どう観ても味方のクラヴィス諸共撃ち殺そうとしてるとしか思えない。クラヴィスの潜入シーンも、折角光学迷彩めいた装備をしてるのに、動く度に無造作に音立てまくってて、迷彩の意味がない間抜けに見えてしまう……。面白いミリタリーギミックが多いのは良いんだけど、痛覚遮断した兵士同士の戦いも、そうじゃない兵士のものよりよっぽど泥沼の地獄を演出できそうなものなのに妙にあっさりしてるのよね……。

 クラヴィスがルツィアになぜあそこまで惹かれてしまったのかもよくわかんなかったなぁ。時間の都合でだいぶあっさりさせたんでしょうか。美術は好きだけどそれだけでは保たぬ。『屍者の帝国』『ハーモニー』よりは良かったけど、終わってからやっぱり狐につままれたような気分になりましたとさ。

 

 

 

 

 以上、47作品。どうも親子ものに弱かった1年だったように思えますね。

 2018年も良い映画に出会えますよう。