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『君の名は。』の感想など。

君の名は。』の感想です。ネタバレ有り。

 拙文ですがお付き合いいただければ幸いです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君の名は。』観ました!

 SFを下地に、時間や空間、さまざまな距離のもとに思いが交錯する男女の物語、というのが新海誠監督作品の持ち味。ビターな要素が多いというのも、その一つですね。

 新海誠作品はその持ち味に惹かれた熱心なファンを獲得していますが、その持ち味アニメファン向けだったりややマニアックだったり、どこかマイナーだったように思われます。所謂メジャーなエンタメとはやや言い難いものだったというか。しかしこの『君の名は。』は、新海監督の持ち味を存分に発揮させた集大成とも言える作品ながらも、メジャーエンタメ作品として通用する普遍性・大衆性を持ちあわせているのではないでしょうか。まさしく傑作!

 

 入れ替わりものとしての物語が続く中盤までは、物語としてそこまで新海色は出ていないように思われ、肩透かしをくらったよう思えますが…… 瀧と三葉の入れ替わりに三年のタイムラグがあり、彗星の落下で既に三葉は死んでいた……という急展開、一気に物語の景色が変わるサプライズからは新海マジックが爆発! 宮水神社のご神体のある山頂で、誰そ彼の光の中、時間と空間を越え、思いが繋がる!

 

 ……の後も話は続くんだよ今回は! てっきりここで思いは繋がるもやはり二人は元に戻り、結局糸守町の住人は全滅だと思ったもの。そこからちゃんと物語を続け、三葉の奮闘、二人の分かたれた切ない思いをさんざん見せつけ、「どーなるどーなる?」と僕らを散々悶々とさせながら溜めを作った上でさらに歩道橋の上で一回すれ違わせておいての電車すれ違いによる再開だもの! こーれはキモチイイよフゥーゥ! で、タイトルに繋がる二人のあの台詞だもの。カタルシス爆発!

 これ!この皆をちゃんと楽しませるサービス業としてのエンタメですよ。しかも前述の通り、誰が観ても新海誠作品だわ!って納得させた上でですよ! やー、自分の趣味に走ったサンプリング芸のカルト的作家だったタランティーノが、その趣味を出しつつ、近年どんどんメジャー感のある映画を作っていったのと同じですよね(あ、これ最近『シン・ゴジラ』でも思ったかもしれない。)

 「君もいつかちゃんと、幸せになりなさい。」という奥寺先輩の台詞がありましたが、それはお話の帰結としてだけでなく、作品としてもお客さんに愛される幸せな作品になったんじゃないでしょうか(奥手な人ばかりの田舎の劇場で、まさかの拍手が起きた!)。この言葉は監督から観客へのメッセージであり、願いでもあるのでしょう。

 

 

 

 

 

 以下、思った事を箇条書きで。

 

・マイナーからメジャーへというのは、田中将賀さんがデザインしたキャラクターについてもそうで、田中将賀キャラと聞いて僕らが思い浮かべるイメージとはちょっと違うデザインですよね。田中氏の作品中で比較的メジャーよりな作品といえる『心が叫びたがってるんだ』と比べても、目の描き方や髪型のシルエットなどがシンプルで、今の深夜アニメのラインからはちょっと外れているように感じます。でもパーツや肉体のラインが確かに田中氏のそれだって判るのだよなぁ。面白い。

 

・この作品、「2人が体をとりかえて日常生活を送る中で、三年のタイムラグに何故気づかない?」という、お話の大前提をひっくり返す不自然な点があるっちゃあるのよねw まぁ思わず身を乗り出しちゃう位に惹きつけてくれるので、観てる間はそこまで気にはならないのだけれど。

 

・「もうあたし、この町いややー。狭すぎるし濃すぎるし、さっさと卒業して、早く東京行きたいわー。」という三葉の台詞。癒着を思わせる町長と土建屋。「また町長は再選やろ」という変わらないという諦めと、本当にクソ田舎な町でしかない糸守。新海さんもかつては田舎で鬱屈していたのかな、と思わせる描写ですが、そうだとしたら、糸守を嘆く三葉をたしなめながらも、このままこの街に留まるならば将来どうするのかと問われると、どうも言葉を濁らせてしまうテッシーというのうは、東京に出る前の新海さんご自身が投影されたキャラクターなのかも知れませんね。僕もド田舎に住んでるんで、あの辺の思い、よく判ります。

 

・主演の神木隆之介さんは、声質も芝居も役にピッタリでしたね。声の演技のテクニックも『サマーウォーズ』の頃より上がったなぁと感じました。入れ替わりの女の子演技、可愛いw 上白石萌音さんもこれまた役にピッタリ。『ちはやふる』でも役をちゃんと把握してらして、細やかな所作にまで役柄を反映させてらしたのに感激したのですが、その細やかさは本作でも発揮されてました。

 

・主人公が思い切り走る作品は名作、の法則にこれまた当てはまる作品ですね。熱走!

 

・彗星の落下という大災害について、ここ数十年の震災被害や広島・長崎の原爆被害を織り込みながらも、説教臭くなく・変な配慮を感じさせずエンタメに落としこんでいたのには関心しました。東日本大震災が起こった当時は津波の映像表現などが自粛されたものですが、こんな作品もいよいよ出てきたのですね。瀧くんの「東京だって、いつ消えてしまうかわからないと思うんです。」という台詞もサラッと流しちゃったし。

 彗星が破滅を呼ぶ存在だと判った後でも、「──それは、まるで夢の景色のように、ただひたすらに、美しい眺めだった。」だものなぁ。

 

・やたらに扉が開いたり閉じたりする描写がありましたが、その扉を乗り越えて、行動するか否か、という物語でもあったような気がします(再見した時にどんなポイントで扉の表現が出てきたのか確認したい所。)前述の「君もいつかちゃんと、幸せになりなさい。」という台詞。幸せってのはやっぱり行動、アクションを起こさないと掴めないものなんじゃないかなと。……なんか、当たり前の事なのかもしれないですけれど。何か決断する時に勇気を借りる作品になりそうです。