『PSYCHO-PASS』アクション解説 その2 1期16話 狡噛vsサバット男

 『PSYCHO-PASS』アクション解説、2回目は、TVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、狡噛とサバット男のアクションシーンを解説したいと思います。あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学とお笑いください。
 また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、お教えいただければ幸いです。宜しくお願いします。

 ちなみにこのシーンの敵役を「サバット男」と称しましたが、これは彼が放つ蹴りが、フランス式のキックボクシング・サバットの蹴りに近いものに見えた為、そう呼称しました。後ろ回し蹴りや掛け蹴りが、それらしく見えます。
 サバットは路上での喧嘩を前提にした護身術が発祥なので、靴の硬いつま先や踵を蹴り込むような鋭い蹴りが持ち味の格闘技です。一般的な打撃格闘技で禁止されている関節蹴りが有効なのも大きな特徴です。

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 まぁこの男がサバットを習得してるなんて設定があるかどうかは、不明ですけれども!(多分無いだろうなぁ)

 

 

 さて、このシーンで行われた殺陣の流れを大まかに示しますと、
①狡噛が階段下より接近、左右のボディ撃ち
サバット男が右回し蹴りで反撃
サバット男が左後ろ回し蹴り
④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き
サバット男の右掛け蹴り
⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ
⑦そのままバックを取ってスープレックス
となります。

 

 

 

 それでは①、狡噛による左右のボディ撃ちシーン。

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  サバット男に向かい、ドミネーターの狙いを付ける狡噛。ヘルメットの機能により、サバット男の正確な犯罪係数を測定できません。

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 役に立たないドミネーターを、咄嗟に投げつける狡噛。それを食らい、ネイルガンを取り落とすサバット男。

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 階段を駆け上がった狡噛が、その勢いのままに左のボディストレートから……

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 右のボディフック! 相手はヘルメットを被っていますので、頭を素手で殴る訳にはいきません。また階段を駆け上がり、自分より高い位置にいる相手を殴りにいく際に、最も攻撃しやすい高さにある腹を殴りに行くのは道理です。初撃を食らいながらも二撃目をブロックしたサバット男もなかなか反応が良い。

 

 

 

サバット男が右回し蹴りで反撃

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 ボディブローをガードしたサバット男は、即座に右回し蹴りを狡噛に叩き込みます。

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 二人の間に、それ程の体格差があるようには見えませんが、体重66kgの狡噛を一気に壁際まで……

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 吹き飛ばす!

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 至近距離で放たれる蹴りは、遠心力を利用し難いので、威力も乗り難いものです。しかし吹き飛ばされた狡噛の驚きの表情を見るに、この蹴りには相当な威力が込められていたのではないでしょうか。サバット男は体重を乗せた、重い蹴りを放つのが上手いですね。

 

 

 

サバット男が左後ろ回し蹴り

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 狡噛を壁際に追い詰めたサバット男。右足を左斜め前に一歩踏み込みます。

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 踏み込んだ右足を軸にして、コンパクトに体を高速回転。その勢いを殺さぬまま、回転力と遠心力を左足に乗せて一気に後ろ回し蹴り!

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 ②でダメージを受けたものの、ここはしっかり相手の蹴りを躱す狡噛。本命の槙島に辿り着くまでに消耗する訳にはいきませんので、相手の蹴りをブロックでするのではなく、躱すという選択を選んだのでしょう。相手の攻撃を捉えている狡噛の目にも注目。

 

 

 

④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き

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 膝を落とし、身をかがめるダッキングで相手の蹴りを回避した狡噛は、その膝を落とす事で出来た「溜め」を用いて……

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 一気に相手まで踏み込み、

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 その勢いのまま、相手のボディめがけ右ストレート。防御の動作を攻撃に繋げた、伸びのある素晴らしい踏み込み突きですが、サバット男にブロックされてしまいした。

 

 

サバット男の右掛け蹴り

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 狡噛は右ストレートに続けて、左でボディーを打ちますがこれも防がれます(絵だと左拳が相手に届いたのかどうか微妙な所なのですが、動きに合わせて殴るSEが付いているので、当たったとします)。と同時に、サバット男が膝を上げたので……

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 反応した狡噛は蹴りを警戒し、追撃せずに防御に回ります。サバット男はそのまま右回し蹴りを出し、その軌道は一旦は狡噛の体の前を通過。蹴りは回避されたように見えますが……

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 一旦は通過した蹴りが狡噛の方に戻り、踵が叩き込まれます。このような蹴りを「掛け蹴り」と言います(※但しそもそもの掛け蹴りは、この場合のように相手の動きに合わせて放たれるものでは無いです。勿論このような事も不可能では無いですが、相手の動きに合わせて蹴りの軌道を変えるのは、素早い反射神経・反応が必要ですし、無理に力が乗るベクトルを変える事になるので蹴りになかなか威力が乗りません。この場合、サバット男がそれらを克服できる腕がある、かなりの強者だと言う事でしょう。)

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(1:37辺りより掛け蹴りの解説)

 サバット男が蹴りのインパクトの際に、背中を反らし、重心を落としている事も描かれています。これは背筋の力を使う事で、蹴りに重心を乗せ、攻撃力を高めているのですね。しかし狡噛はこれもきっちりブロック。お互い相手の攻撃が良く見えているのが判ります。

 

 

 

⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ

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(下半身が見えないので推測ですが)⑤ラストの画像のブロック時の態勢(右足が前、左足が後ろのサウスポー構えの状態)から、右足を外に捻りつつ大きく踏み込みはじめます。その右足の踏み込みと同時に自らの態勢を低くし、サバット男の脇を抜けるような勢いで体を前進移動させはじめます(縢も見せたレスリングタックルの動きですね)。

 

 

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  狡噛が態勢を低くしたタックルの動きで回りこんで来たので、ヘルメットを被り視界が狭いサバット男は狡噛を見失います。

 

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 狡噛は右足が着地したら、右足の親指を支点にし、更に外側に捻ります。捻らせると同時に、後ろに残した左足を大きく前に踏み込めば、右足の捻りと回転が聴いて、自然に態勢が反転するので、その勢いのまま相手の後方に左足を着地。これで相手の右サイドを回りこむ形で、相手の背後に移動しました。

 視界の悪い相手が視認しにくい高速でのタックルで近づき、相手の背後につく事で、相手の得意な蹴りを封じました。

 

 

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  相手のバックを取り、体を密着させて両腕をしっかりクラッチ。自分のヘソ辺りに相手を乗っける感じで重心をコントロールしつつ、一気に持ち上げて……

 

 

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 後方に投げきる! 所謂ジャーマン・スープレックの要領ですね。

 

 

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 投げで後頭部を床に叩きつけられたサバット男が失神したように見えます。しかしこれは、彼が硬いヘルメットを被っているが故、頭部は守れたけれども、逆にダメージが首の方に行ってしまい、脊髄を損傷して行動不能になってしまったのではないかと考えます(ヘルメットを装着した、オートバイの交通事故でも同じような負傷をする事があるようです)。

 

 

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 補足すると、狡噛がサバット男を持ち上げた瞬間の上記の絵を見る限りは、このまま体を後方に反らせても余り高い角度をつけて相手を落とす事は出来ないような気もします。絵としては描かれていませんが、投げる勢いがつき始めた辺りで狡噛が手のクラッチを組み直し、より高角度に相手を落とせる投げにしたのかもしれませんね。狡噛はレスリングを修めている設定もありますので、このような投げのテクニックも持っている事でしょう。

 

 

 

 

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