『PSYCHO-PASS』アクション解説 その2 1期16話 狡噛vsサバット男
『PSYCHO-PASS』アクション解説、2回目は、TVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、狡噛とサバット男のアクションシーンを解説したいと思います。あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学とお笑いください。
また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、お教えいただければ幸いです。宜しくお願いします。
ちなみにこのシーンの敵役を「サバット男」と称しましたが、これは彼が放つ蹴りが、フランス式のキックボクシング・サバットの蹴りに近いものに見えた為、そう呼称しました。後ろ回し蹴りや掛け蹴りが、それらしく見えます。
サバットは路上での喧嘩を前提にした護身術が発祥なので、靴の硬いつま先や踵を蹴り込むような鋭い蹴りが持ち味の格闘技です。一般的な打撃格闘技で禁止されている関節蹴りが有効なのも大きな特徴です。
まぁこの男がサバットを習得してるなんて設定があるかどうかは、不明ですけれども!(多分無いだろうなぁ)
さて、このシーンで行われた殺陣の流れを大まかに示しますと、
①狡噛が階段下より接近、左右のボディ撃ち
②サバット男が右回し蹴りで反撃
③サバット男が左後ろ回し蹴り
④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き
⑤サバット男の右掛け蹴り
⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ
⑦そのままバックを取ってスープレックス
となります。
それでは①、狡噛による左右のボディ撃ちシーン。
サバット男に向かい、ドミネーターの狙いを付ける狡噛。ヘルメットの機能により、サバット男の正確な犯罪係数を測定できません。
役に立たないドミネーターを、咄嗟に投げつける狡噛。それを食らい、ネイルガンを取り落とすサバット男。
階段を駆け上がった狡噛が、その勢いのままに左のボディストレートから……
右のボディフック! 相手はヘルメットを被っていますので、頭を素手で殴る訳にはいきません。また階段を駆け上がり、自分より高い位置にいる相手を殴りにいく際に、最も攻撃しやすい高さにある腹を殴りに行くのは道理です。初撃を食らいながらも二撃目をブロックしたサバット男もなかなか反応が良い。
②サバット男が右回し蹴りで反撃
ボディブローをガードしたサバット男は、即座に右回し蹴りを狡噛に叩き込みます。
二人の間に、それ程の体格差があるようには見えませんが、体重66kgの狡噛を一気に壁際まで……
吹き飛ばす!
至近距離で放たれる蹴りは、遠心力を利用し難いので、威力も乗り難いものです。しかし吹き飛ばされた狡噛の驚きの表情を見るに、この蹴りには相当な威力が込められていたのではないでしょうか。サバット男は体重を乗せた、重い蹴りを放つのが上手いですね。
③サバット男が左後ろ回し蹴り
狡噛を壁際に追い詰めたサバット男。右足を左斜め前に一歩踏み込みます。
踏み込んだ右足を軸にして、コンパクトに体を高速回転。その勢いを殺さぬまま、回転力と遠心力を左足に乗せて一気に後ろ回し蹴り!
②でダメージを受けたものの、ここはしっかり相手の蹴りを躱す狡噛。本命の槙島に辿り着くまでに消耗する訳にはいきませんので、相手の蹴りをブロックでするのではなく、躱すという選択を選んだのでしょう。相手の攻撃を捉えている狡噛の目にも注目。
④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き
膝を落とし、身をかがめるダッキングで相手の蹴りを回避した狡噛は、その膝を落とす事で出来た「溜め」を用いて……
一気に相手まで踏み込み、
その勢いのまま、相手のボディめがけ右ストレート。防御の動作を攻撃に繋げた、伸びのある素晴らしい踏み込み突きですが、サバット男にブロックされてしまいした。
⑤サバット男の右掛け蹴り
狡噛は右ストレートに続けて、左でボディーを打ちますがこれも防がれます(絵だと左拳が相手に届いたのかどうか微妙な所なのですが、動きに合わせて殴るSEが付いているので、当たったとします)。と同時に、サバット男が膝を上げたので……
反応した狡噛は蹴りを警戒し、追撃せずに防御に回ります。サバット男はそのまま右回し蹴りを出し、その軌道は一旦は狡噛の体の前を通過。蹴りは回避されたように見えますが……
一旦は通過した蹴りが狡噛の方に戻り、踵が叩き込まれます。このような蹴りを「掛け蹴り」と言います(※但しそもそもの掛け蹴りは、この場合のように相手の動きに合わせて放たれるものでは無いです。勿論このような事も不可能では無いですが、相手の動きに合わせて蹴りの軌道を変えるのは、素早い反射神経・反応が必要ですし、無理に力が乗るベクトルを変える事になるので蹴りになかなか威力が乗りません。この場合、サバット男がそれらを克服できる腕がある、かなりの強者だと言う事でしょう。)
(1:37辺りより掛け蹴りの解説)
サバット男が蹴りのインパクトの際に、背中を反らし、重心を落としている事も描かれています。これは背筋の力を使う事で、蹴りに重心を乗せ、攻撃力を高めているのですね。しかし狡噛はこれもきっちりブロック。お互い相手の攻撃が良く見えているのが判ります。
⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ
(下半身が見えないので推測ですが)⑤ラストの画像のブロック時の態勢(右足が前、左足が後ろのサウスポー構えの状態)から、右足を外に捻りつつ大きく踏み込みはじめます。その右足の踏み込みと同時に自らの態勢を低くし、サバット男の脇を抜けるような勢いで体を前進移動させはじめます(縢も見せたレスリングタックルの動きですね)。
狡噛が態勢を低くしたタックルの動きで回りこんで来たので、ヘルメットを被り視界が狭いサバット男は狡噛を見失います。
狡噛は右足が着地したら、右足の親指を支点にし、更に外側に捻ります。捻らせると同時に、後ろに残した左足を大きく前に踏み込めば、右足の捻りと回転が聴いて、自然に態勢が反転するので、その勢いのまま相手の後方に左足を着地。これで相手の右サイドを回りこむ形で、相手の背後に移動しました。
視界の悪い相手が視認しにくい高速でのタックルで近づき、相手の背後につく事で、相手の得意な蹴りを封じました。
相手のバックを取り、体を密着させて両腕をしっかりクラッチ。自分のヘソ辺りに相手を乗っける感じで重心をコントロールしつつ、一気に持ち上げて……
後方に投げきる! 所謂ジャーマン・スープレックの要領ですね。
投げで後頭部を床に叩きつけられたサバット男が失神したように見えます。しかしこれは、彼が硬いヘルメットを被っているが故、頭部は守れたけれども、逆にダメージが首の方に行ってしまい、脊髄を損傷して行動不能になってしまったのではないかと考えます(ヘルメットを装着した、オートバイの交通事故でも同じような負傷をする事があるようです)。
補足すると、狡噛がサバット男を持ち上げた瞬間の上記の絵を見る限りは、このまま体を後方に反らせても余り高い角度をつけて相手を落とす事は出来ないような気もします。絵としては描かれていませんが、投げる勢いがつき始めた辺りで狡噛が手のクラッチを組み直し、より高角度に相手を落とせる投げにしたのかもしれませんね。狡噛はレスリングを修めている設定もありますので、このような投げのテクニックも持っている事でしょう。
『PSYCHO-PASS』アクション解説 その1 1期16話 縢vsネイルガン男
劇場版の上映も粗方の地方で終了し、ひとまずの区切りがついたアニメ『PSYCHO-PASS』。劇場版では凄まじいまでのアクション描写が大変印象的でしたが、TVシリーズでも凝った殺陣が組まれていました。
TVアニメのアクションシーンは、「とりあえず殴って・蹴って」に終始するだけになる事が多く、格闘技ファン、アクション映画ファンの目には味気なく映る事もあります。
しかし、
・制作時間やコストの都合(2人以上の人間を破綻なく絡ませ、動かすのは凄く大変)
・尺の都合
・より描くべきモノ・コトがあり、そちらに注力したい
等々の理由もありましょう。なかなかこだわって格闘シーンを作る事も難しいのではないかと思われます。しかし『PSYCHO-PASS』では、アクションシーンの動作それぞれに格闘としての意味を持たせつつ、平行してアクションの格好良さ・面白さも描かれていました。
作品にひとまずの区切りがついた今、改めてその練りこまれたアクションシーンに注目し、それぞれの動作にどういう意味があるのか自分なりの解釈をまとめたいと思い、こうやってブログに書き留めようと思った次第です。
これから各シーン毎に解説していきたいと思いますが、あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学をお笑いください。
また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、ご教示いただければ幸いです。宜しくお願いします。
さて、今回はTVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、縢くんのアクションシーンを解説したいと思います。
このシーンで行われた、大まかなアクションの流れは、
①下からの突き上げ掌底で敵の手を打ち上げる
②敵に左内回し蹴り
③敵の喉元へ肘を入れる
となります。書き出してみると非常にシンプルですが、この殺陣を読み解いていくと、短いシーンながらも実によく考えられているという事が見えてきます。
それでは、上記の①の動きを解説しましょう。
縢の背後から、改造ネイルガン(釘打ち銃)を発射する男。
不意打ちを食らった縢は右手に釘を受けるも即座に反応し、間合いを詰めます。狭い通路で隠れる場所も無く、ドミネーターも落としてしまいましたので、相手の懐に飛び込むという縢の判断は正しいと思いますが、瞬時にその判断に従い、動けるというのには彼が潜ってきた修羅場の多さを感じてしまいます。
間合いを詰める際に態勢を低くし、二発目をかわしつつ接近する縢。
ネイルガン男にこれがどう映るかというと、
・身長の低い縢が、さらに態勢を低くして一瞬で接近してくる
・自分の手とネイルガンが下方の視認を阻害している
・ヘルメットを被っているのでそもそも視界が狭い
以上のような条件が重なって、ネイルガン男の視界からは縢が一瞬消えた事でしょう。
ネイルガン男の死角に入った縢は、左足の踏み込みから体を跳ね上げ、下から一気に突き上げる掌底を男の手に。これでネイルガンの照準を逸し、尚且つ相手の腹部をがら空きにします。
続いて②、縢による左内回し蹴り。
間合いを詰めた縢は、さらに右足を踏み込ませ、左足を内側に振り上げます。右足を踏み込む事により、次の左足の振り上げに勢いがつける事ができます。振り上げた左足をその勢いのまま回し蹴り込む事により、充分に遠心力と体重の乗った威力のある蹴りが繰り出せる訳です。
相手のがら空きの腹部をめがけ一気に蹴り込みます。体格の劣る縢は、その差を補う為に威力のある攻撃で短期決戦で勝負を決めたい。故に手技より威力のある足技、その中でも威力のある回し蹴りを使いたい所ですが、狭い通路での戦いなので、外回し蹴りを放つと蹴り足が手すりにぶつかってしまい放てない。よって、コンパクトな軌道で相手を攻撃できる内回し蹴りを放った訳ですね。
ちなみに回し蹴りの内と外の違いは主に上記の通りです。
最後に③、とどめの喉元への肘打ち。
蹴りによって手すりに叩きつけられたネイルガン男が体勢を整える前に、すかさず取り付く縢。男がネイルガンを持つ手を降ろさないように、縢がその手を押さえつけるのですが、その際に相手との間合いを更に詰め、下からガンの持ち手を押し上げる状態になります。これによりネイルガン男の腋が開ききってしまうのですが、この状態になってしまうと、人体の構造上大変力を入れにくくなるので、ネイルガン男は腕を降ろせません。
ネイルガン男の背面には、男の腰の部分の高さに手すりがあります。この状態で縢が男を後ろに押し込むと、手すりの部分が支点になり、男の体が反ります。
体が反ると、男の首も後ろに反ってしまいます。ヘルメットで守られていた首ががら空きになったその刹那、肘を下からかち上げるように一撃! 筋肉が薄く、重要な器官が多数ある首は人体の大きな急所ですし、そこに勢いをつけた硬い肘を打つというのは、体の小さい縢でも一撃で相手を無力化させる事ができる危険な攻撃です。急所を容赦なく攻撃し、少ない手数で相手を制するその動きからは、彼の非情さが見て取れます。縢秀星、恐るべし。
と、まず1シーンのアクションについてまとめてみましたが如何でしょうか? 読み手に判りやすいよう説明の文章を書くって難しいですね……。乱文ご容赦ください。
熱文字第102回 男性声優ドラフト 恋愛シュミレーションゲーム編に勝手に参加してみた件
102 熱量と文字数 【男性声優ドラフト 恋愛シュミレーションゲーム編】: 『熱量と文字数』 オタク芸人 サンキュータツオ Presents
ネットラジオ『熱量と文字数』第102回において、恋愛シミュレーションゲーム(乙女ゲー)を作るにおいて、そのゲームのコンセプトに基づいて5人の男性声優を指名し獲得し合うという声優ドラフトの様子が放送されました。
それに後追いではありますが勝手に参加してみようと思いたち、実際にドラフトしてみた結果をこの場に記しておきます。
◆レギュレーション
ラジオを聞きながらの参加という後追いなので、
- できるだけライブに近付けるように、ラジオを聞きながら同時進行で指名する。
- 出演者と同順位において、指名声優が被った場合、出演者に権利がある(獲得できない)。
- 後に出演者が指名する声優を、その指名順位より早く指名した場合、こちらに権利がある(獲得できる)。
というレギュレーションでやっております。
◆各出演者が指名した声優と、制作したい乙女ゲーのコンセプト
※指名順に声優名を並べてあります。出演者含め、敬称略。
役満みたいなメンツで贅沢に。研究室、あるいは会社のイメージ。みんな理系であって欲しい。歌は宮野さんに歌ってもらう。なんだったら『銀色のコルダ』みたいな音楽ものでも。
ヒロイン含む女の子2人が卒業旅行先の中南米で誘拐され、それをスペシャリストの男性陣が奪還に向かうというシリアスドラマ。イメージキーワード「勘違いするなよ、慣れ合う気はない」。丁寧な物言いの裏に何かある事を匂わせて欲しい。
社会人もので全員スーツを着ている。発売記念イベントには声優さんにスーツ着用で出演してもらう。
ベタな学園物。ヒロインは高校二年。中村さん、鳥海さんが同級生、逢坂さんはバカな後輩。平川さんはヘタレキャラ。制服はブレザー系。
自己中B型男子に振り回されたい。演じる声優も全てB型で統一したい。
◆筆者が制作したいゲームのコンセプト
王子ゲー。
ひょんな事から某国の姫として迎えられたヒロインは、色々な国の王子から言い寄られたりして……。という、エロゲーのやりすぎみたいなコンセプトなので、声にどこか高貴な雰囲気は欲しいよね、とかなんとか適当に。
◆筆者が指名した声優
第一指名:宮野真守
タツオさんの三位指名とかぶりますが、一位で取らせて頂きました。王子、というと僕はこの方の声を一番に想像するんです。ストレートに格好良い王子も良し、チャラい王子もよし、なんでもお願いできるぞ。
第二指名:三木眞一郎
低音めの魅力的な声が欲しかったんですよね。剛までいかない硬めのセクシーな声が素敵。
第三指名:平川大輔
これまた関口さんの五位指名と被り。レゴラスやロキとデカい王子役の実績があるしねw ロキっぽい感じの、ちょいナルシスティックだけどどこかヘタレで抜けてるとかそういう王子の役どころかしら。
第四指名:山口和臣
梶さんや下野さんを獲得して、マスコット的な可愛らしい王子キャラをやって欲しかったのですが、先に指名されてしまったので彼を指名しました。『げんしけん 二代目』の波戸賢二郎の男の時の声や、2015年1月開始アニメだと『美男高校地球防衛部LOVE!』で、可愛らしい天然キャラの箱根有基を演じられるんですよね。これだ、これだよ!
第五指名:緒方恵美
男性声優ドラフトっつってんだろ! オチを狙っただろとツッコまれたら否定はできない! だけどちゃうねん、理由があるねん! 王子様と見せかけて実は…という百合エンドが見たいねん! 緒方恵美さんといえば「男八段」の異名を持つ方であるというのも忘れてはならない。他に男も女も演じられる女性声優はあまたいるけれど、段持ちなのはこの方だけですよ! 段持ちじゃぁ男性声優ドラフト参戦も仕方ない(多分)。
というような指名結果になりました。中村悠一さんは僕も欲しかったんだけど、』取られてしまった! 中村さんは凛々しエロいんですよ声が。
いかん、自分で選んでてこのゲームやりたくなってきたぞ! この手の企画はちゃんと皆でワイワイ騒いでやってみたいやつですなぁ。
かくて結城友奈たちは勇者となった
『結城友奈は勇者である』、全話観了! 薄々、「こういう事なのかな?」とは思っていましたが、やはり「ウテナもの」でした! 大好き!
「ウテナもの」とは名作『少女革命ウテナ』に感銘を受けた僕が、勝手にそう呼称している物語の分類の一つです。これから大人の庇護の下から巣立っていかんとする若者に、エールを送る物語。世の中というものはウテナで描かれた近親相姦などのおぞましきものや、ゆゆゆで描かれた抗えぬ理不尽よりも、もっとおぞましく、理不尽で、残酷で……。不景気で明るいニュースが聞こえてこない、先の見えない日本。今やこれが無いと始まらない、もう一つの「世界」、ネットの中にまで悪意は満ち満ちている。 それでも! ……それでも、歩いていこうよ、外に出ようよ。辛い時は友と肩を並べて歩こう。迷わず行けよ行けば判るさ!
これです、こういうやつが僕の言う「ウテナもの」です! ラスト手前の学芸会の劇の台詞で、その事が示されておりますね。
魔王
「結局、世界は嫌な事だらけだろう!
つらい事だらけだろう!
お前も、見て見ぬ振りをして堕落してしまうがいい!
あがくな! 現実の冷たさに凍えろ!!」
勇者
「そんなの気持ちの持ちようだ!
大切だと思えば友達になれる!
互いを思えば、何倍でも強くなれる! 無限に根性が湧いてくる!
世界には嫌なことも、悲しいことも、
自分だけではどうにもならないこともたくさんある。
だけど、大好きな人がいれば、くじけるわけがない。あきらめるわけがない。
大好きな人がいるのだから、何度でも立ち上がる!
だから、勇者は絶対、負けないんだ!」
(この台詞は、友奈が目覚める前の東郷さんの朗読とも合わせて噛み締めたいのですが、長くなるので割愛。各自調査!)
これまでの回や最終話のAパートまででも、このメッセージは物語の中で示されてはいますが、この劇のシーンでより明確に、印象的に視聴者に訴えられます。これは製作者たちの願いであり、あるいは信じたい事であり、あるいは実体験であり、そして何より僕ら視聴者へのエールでありましょう。ラストの「明日の勇者へ」という言葉は、モニターの前で見ている僕らへ投げかけられているんだ! 明日のエースはキミだ! 勇者部五つの誓い、もとい五箇条を胸に前へ進め!
勇者部の皆が、真っ直ぐな好人物だったのが良かった。真っ直ぐな諦め無さに、僕らは好感を持ち、励ましたく、応援したくなり、そのド正面ストレートの訴えを素直に受け止めたくなる。
その訴えを受け止めた視聴者僕らが、勿論いきなりあんな大事を成し遂げる大勇者になれる訳では無いと思います。でも明日、飛び込みの営業を1件増やせるかもしれない。腕立て伏せを3回増やせるかもしれない。今まで恥ずかしくて出来なかった電車で席を譲る事ができるかもしれない。そんな小さな勇気への後押しになってくれたら……。それは小さいかもしれませんが、なんとも尊い連鎖ではありませんか。
ある孤独な闇の騎士がこう言いましたよね。「誰でもヒーローになれる。少年の肩にコートをかけるという思いやりを示すことで、世界が終わったわけじゃないと教えてくれた人もまたヒーローだ。」 さぁ、今度は僕達の番だ。勇者は連鎖する! 明日の、勇者へ!
2014年見た映画ランキング
明けてだいぶ経ってしまいましたが……新年あけましておめでとうございます。
さて、昨年は「劇場で50本(1週間に1本の割合)映画を見よう。」と目標を立て、結果60本の作品を鑑賞しました。
それらについて自分の記録も兼ね、2014年に見た映画のランキングと寸評をつけてみようと思います。
以下注意書き
・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。
・このランキングは「大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけているので、いざ作品を見返すと順位が上下したりするやもしれません。その程度の、にわか者がつけた大雑把なランキングであるという事をご承知ください。
・鑑賞した59本の内、『もらとりあむタマ子』『ゼロ・グラビティ』『ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版』の3本は、公開開始日時が昨年より前のものなので、ランキングからは除外しています。
・寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。
2位:LEGOムービー
3位:キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
4位:インターステラー
5位:イントゥ・ザ・ストーム
6位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
7位:たまこラブストーリー
8位:THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ
10位:ホドロフスキーのDUNE
11位:ベイマックス
12位:思い出のマーニー
15位:X-MEN フューチャー&パスト
16位:ロボコップ
17位:ポンペイ
18位:スノーピアサー
19位:
20位:ゴーン・ガール
21位:テロ,ライブ
22位:her/世界でひとつの彼女
23位:ホビット 決戦のゆくえ
24位:獣電戦隊キョウリュウジャーvs特命戦隊ゴーバスターズ 恐竜大決戦 さらば永遠の友よ
25位:イン・ザ・ヒーロー
また本作の公開と同時期に『るろうに剣心』が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。アクション俳優の話なのに、アクションの見せ場が色んな所に負けちゃってるんです。キャストの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。
このアクションシーンが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 勿体無いなぁ。
26位:RUSH ラッシュ/プライドと友情
27位:ローン・サバイバー
28位:大脱出
31位:ファイ 悪魔に育てられた少年
33位:300 帝国の進撃
34位:ドラキュラZERO
36位:猿の惑星:新世紀
37位:エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
38位:ハリケーンアワー
40位:ヘラクレス
41位:劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-
42位:るろうに剣心 京都大火編
43位:るろうに剣心 伝説の最後編
44位:マレフィセント
45位:ノア 約束の舟
46位:サボタージュ
47位:アメリカン・ハッスル
48位:荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
49位:サファリ
50位:LIFE!
51位:マイティ・ソー ダーク・ワールド
52位:エージェント:ライアン
54位:ルパン三世
55位:ドラゴン・コップス 微笑捜査線
イン・ザ・ヒーロー【ネタバレ】感想部分
2014年9/6 twitterの『イン・ザ・ヒーロー』感想の続き、ネタバレに触れる部分
決死のアクションを演じる為に主人公・本城が忍者装束を着こみ、セットに向かうシーン。いやぁ、この唐沢寿明の格好良さたるや! 事ある毎に本城は「武士道」を持ち出しますが、まさに「死ぬことと見つけたり」の佇まい。
クライマックスのアクションシーンは……今の邦画では、かなりのレベルの殺陣を見せて貰った気がします。50歳の唐沢寿明と72歳の松方弘樹の殺陣がねぇ!格好いい!
ただし……これを求めるのも難しい事なのだろうな、とは判っていますが、あえて厳しい事を言うと。 劇中でこのアクションシーンは、アメリカ進出を心底望む一ノ瀬リョウがなんとしても掴みたいチャンスであり、本城も「あの!」と何目も置く、アクション作品で名を売ってるメジャー監督が撮るハリウッド大作、そのアクションシーンな訳ですよ。なのに全くそう見えない! セットにせよ、見せ方にせよ、せいぜい『イン・ザ・ヒーロー』程度(あえてこう書く)の邦画のアクションシーンにしか見えない。
また今同時期に、『るろうに剣心』という、日本アクションエンタメ界の奇才・谷垣健治氏が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。最大の見せ場がもう、色んな所に負けちゃってるんです。前述した唐沢寿明や福士蒼汰らの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。ここが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 残念だなぁ。
ゴジラ(ギャレス・エドワーズ版) ごく個人的体験とネタバレを含む感想
映画鑑賞。
DVD鑑賞じゃなくて映画鑑賞。
どのような違いや差があるかというと、劇場には大スクリーンや迫力の音響などなどの、「ならでは」な設備がありますが、それ以上の大きな違いに、観る前・後を含めた体験感にあると思うんですね。
あの映画はこうなんだろうか、ああなんだろうか。予告映像や雑誌情報、試写を見てきた人から伝え聞く報に一喜一憂するよし、ストイックに一切の情報をシャットアウトするもよし。それぞれがそれぞれの方法で鑑賞日までテンションをコツコツ高めていく。鑑賞後も余韻を噛み締めつつ、喫茶店でしみじみパンフを読み込んだり、仲間と喧々諤々語らったり。一つのイベントごととしての盛り上がり、思い出体験が堪らんのですね。
で。
僕が親のお供ではなく、自ら望んで能動的に親に頼んで映画を見に連れて行ってもらったのって、1984年の『ゴジラ』なんですよね。事前にテレマガだかてれびくんだかの特集で、「謎の超兵器・スーパーX大予想!」というような記事があったのですが、巨大ロボか?! 超高性能戦闘機では?!などとズラリならぶ予想図を見た保育園児は、「これは巨大ロボでゴジラをやっつけるに違いない!」と妄想を膨らみに膨らませて、劇場でややズッコケましたですよw や、あれはあれでアリかぁとは思いましたけど!(巨大ロボVS怪獣映画の夢は、いよいよ昨年、『パシフィック・リム』で叶った訳ですが・閑話休題)
今回のギャレゴジは、情報をできるだけ遮断して臨んだので、観る前までは淡々としたものだったのですが、いよいよ劇場に入り、中で流れる初代ゴジラのBGM、おっさん中心の客層ながらも、そこそこちびっ子も集った客席などなどを耳に目にしている内に、なんだかどんどん高まってまいりまして! そうだよ、FWからどれだけ待ったんだ我々は!
そして怪獣王の帰還を見届けた僕。ただただ怪獣王の超ド級の存在に圧倒され、その緊張から開放された帰り道に、「あっ、この事前の高まり!(それは瞬発的なものとはいえ、根本には10年の溜めがあった訳ですからね。デラーズ・フリートなんて目じゃないぜ。) そしてこの開放感と興奮! 保育園児だったあの時と同じだ!」と、1984年のあの日から30年後の今日が線になって繋がった瞬間の興奮、歴史あるものに関わる事でしか感じる事ができない感動を噛み締めてたら、なんだか泣けてきちゃってねぇ。こんな体験滅多にできるもんじゃないなぁと。極々個人的な理由ですが、それでいいの。今回の『ゴジラ』は大変思い出深い、幸福な「映画体験」となりました。映画最高!ゴジラ最高!
~以下ネタバレ~
84&平成ゴジラを、ハリウッド資本でアップデートさせて「今」に当てはめたような作品。素晴らしかった!
画面に映るゴジラの絵力という物理的な存在感、そして映っていないシーンでも登場人物と我々に圧をかけてくる精神的な存在感の両方がハンパない。正直、怪獣プロレス的な要素は思ったより少なめ。そこを非とする人もいるのだろうけど、それにはパンフレットより、SFイラストレーターのボブ・エグルトン氏の言葉を引用させて貰いたい。「『なかなかゴジラが出てこない』と言ってる人はどこを見てたんだ? ヤツは映画全体を支配してたじゃないか。」!
監督のギャレス・エドワーズはゴジラマニアとしても有名ですから、怪獣プロレスを膨らませようと思ったら幾らでもできると思うんですよね。僕も「もう一声!」と思わなくもない所はあるのですが、それこそ抑制・溜め・引き算の美学でしょう。お陰でゴジラとムートーの睨み合いから組んず解れつの大バトルが引き立つ引き立つ!有り難や! 力道山の空手チョップばりに、溜めて焦らしていよいよ炸裂する──。やったぁ、放射熱線だぁぁぁぁ!(ご丁寧にこれも波動砲ばりに、背びれの発光カウントダウンという溜めを作ってからの大放射で、観客のカタルシスが爆発するんですよね。ゴジラも波動砲も日本のものなのに、ついにこの絵を産み出す事はできなかったのよね、新しい!)
怪獣プロレスに針を振りすぎなかったのは、それこそゴジラマニアの監督ならではでしょう。1954年の元祖ゴジラからはじまり、脈々とシリーズに息づく「核」「放射能」との関係性と、荒ぶる自然・神の象徴たるゴジラ。これもちゃんと、現代に則した形で描いているんですもの!
二大怪獣の性質上、常に「放射能」というワードがついてまわる本作。制御できぬままに拡散される放射能に対して、それを吸収する怪獣の蛹の性質を利用し汚染区域の浄化を図るも、やがて蛹は孵化、別の制御できぬもの・ムートーを生み出してしまった人間。キロトン級の原爆でも退治しきれないゴジラ諸共、二体のムートーを爆殺しようと、メガトン級の原爆を用意する米軍だが、その目論見は失敗し、自ら用意した兵器に翻弄される。
果たして原爆はサンフランシスコ沖で爆発。ムートーもゴジラの手によって倒された。「怪獣王は救世主か?」などとゴジラを報じるマスコミ。芹沢博士が語るように、ゴジラとは調和をもたらす存在だとしたら──。散々制御できぬものに振り回されながら、ゴジラを「救世主」と言ってしまう人間の傲慢さ、愚かさよ。芹沢博士は、劇中でこうも語る。「人間が傲慢なのは、自然は人間の支配下にあり、その逆ではないと考えている点だ。」
その他地震(のような振動)から原子炉倒壊という惨状描写は、東日本大震災からの福島第一原子力発電所事故を受けてのものであるのは間違いないでしょうし、ハワイを襲う巨大な津波、飲み込まれる旅行者の姿も、それを想起させるものです(こちらは映画『インポッシブル』でも描かれた、スマトラ島沖地震がモチーフにされている所もあるかもしれません。) そしてゴジラやムートーに破壊されるビル群はアメリカの同時多発テロ事件をと、まだゴジラシリーズでは描かれていない「今」をきちんとゴジラならではの見せ方で盛り込んでいるのは意義のある事でしょう。
このようにゴジラシリーズだからこそ描かれる事、ゴジラシリーズに今描かれるべき事をきちんと取り上げ、しっかりドラマやテーマを(怪獣たちを意識させ続けつつ)描く事が、軍隊や怪獣とのバトルへへの効果的な「溜め」にもなっていると感じました。これはやはり計算されたバランスなのかな、と思います。
ビジュアルとしても、前述の波動砲ライクな放射熱線描写をはじめ、「これは!」というシーンが色々ありますよ。
・巨大な津波を起こし、それに人間を巻き込ませながらも全く意に介さず(当たり前だ)、ハワイに上陸、照明弾に映し出されるゴジラの体軀の巨大さよ!(ゴジラの身長が高すぎて照明弾の明かりでは顔が見えない!ここはまだ主役の顔は見せないという良い「溜め」のシーンでもありますね。)
・同じくハワイの空港で、遠景にムートーを望みながら、空港ビル近くに突如出てくるゴジラの足! デカい、デカすぎる! そしてついにその全貌を表すゴジラの圧倒的なビジュアルに、僕は文字通り、誇張なくホントに口アングリ。もう笑うしかないな、と乾いた息笑いを漏らすばかりでした。5億点!
・怪獣をおびき寄せる餌としての原爆を山岳列車にて移送中の米軍が、谷にかかる、レールと枕木以外特に何もないような橋でムートーに遭遇。レールに鼻面を接近させながら、橋の下を進むムートーと、ただただ身を潜めて隠れるしか無い人間。この大きさの対比が素晴らしい。誰です、外国人が怪獣映画撮れないなんて言ったのは!
・Halo降下シーンの出撃前の緊張感、飛び立つ前の男たちの背中! 絵になる! そして降下シーンになると、カメラがFPSのごとく一人称視点になるのですが、いよいよ地上に到達寸前、猛然とバトルを繰り広げる三怪獣のすぐそばを落ちていくという、史上最大の砂かぶり席な視点を体験できます。これも新しい!『ゴジラ』がFPSのような視点でゲーム化されたら、絶対入れてほしい絵!
・Haloで降下した米軍チームが、チャイナタウンでゴジラとムートーに挟まれる形になるシーン(あ、両怪獣は人間ごとき全く目に入っておりませぬw) 咆哮するムートーに対して、吠え返すゴジラ!ああ、オリジナルゴジラよりも咆哮が長い! そして通りに橋渡し状に吊るされた提灯が、咆哮の風圧で大きく吹き飛ばされそうになり、そしていよいよかかるテンションに耐えられなくなった吊るし縄がブチ切れるという、ゴジラの強大さが良く表現される、これも「溜め」が効果的なシーン!
その他まだまだあるのですが、とりあえずこの辺で。
いやいやいや、怪獣映画として、そしてゴジラ映画としてのビジュアルや物語がここまで仕上がっているものとは。僕の個人的な「体験」とも相まって、特別な一本になりそうな気がします。『パシフィック・リム』を見た時と同じく、胸一杯の「ありがとう」を、焦らしの名人・ギャレス監督と制作に関わった全ての皆様へ!