『PSYCHO-PASS』アクション解説 その2 1期16話 狡噛vsサバット男

 『PSYCHO-PASS』アクション解説、2回目は、TVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、狡噛とサバット男のアクションシーンを解説したいと思います。あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学とお笑いください。
 また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、お教えいただければ幸いです。宜しくお願いします。

 ちなみにこのシーンの敵役を「サバット男」と称しましたが、これは彼が放つ蹴りが、フランス式のキックボクシング・サバットの蹴りに近いものに見えた為、そう呼称しました。後ろ回し蹴りや掛け蹴りが、それらしく見えます。
 サバットは路上での喧嘩を前提にした護身術が発祥なので、靴の硬いつま先や踵を蹴り込むような鋭い蹴りが持ち味の格闘技です。一般的な打撃格闘技で禁止されている関節蹴りが有効なのも大きな特徴です。

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 まぁこの男がサバットを習得してるなんて設定があるかどうかは、不明ですけれども!(多分無いだろうなぁ)

 

 

 さて、このシーンで行われた殺陣の流れを大まかに示しますと、
①狡噛が階段下より接近、左右のボディ撃ち
サバット男が右回し蹴りで反撃
サバット男が左後ろ回し蹴り
④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き
サバット男の右掛け蹴り
⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ
⑦そのままバックを取ってスープレックス
となります。

 

 

 

 それでは①、狡噛による左右のボディ撃ちシーン。

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  サバット男に向かい、ドミネーターの狙いを付ける狡噛。ヘルメットの機能により、サバット男の正確な犯罪係数を測定できません。

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 役に立たないドミネーターを、咄嗟に投げつける狡噛。それを食らい、ネイルガンを取り落とすサバット男。

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 階段を駆け上がった狡噛が、その勢いのままに左のボディストレートから……

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 右のボディフック! 相手はヘルメットを被っていますので、頭を素手で殴る訳にはいきません。また階段を駆け上がり、自分より高い位置にいる相手を殴りにいく際に、最も攻撃しやすい高さにある腹を殴りに行くのは道理です。初撃を食らいながらも二撃目をブロックしたサバット男もなかなか反応が良い。

 

 

 

サバット男が右回し蹴りで反撃

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 ボディブローをガードしたサバット男は、即座に右回し蹴りを狡噛に叩き込みます。

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 二人の間に、それ程の体格差があるようには見えませんが、体重66kgの狡噛を一気に壁際まで……

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 吹き飛ばす!

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 至近距離で放たれる蹴りは、遠心力を利用し難いので、威力も乗り難いものです。しかし吹き飛ばされた狡噛の驚きの表情を見るに、この蹴りには相当な威力が込められていたのではないでしょうか。サバット男は体重を乗せた、重い蹴りを放つのが上手いですね。

 

 

 

サバット男が左後ろ回し蹴り

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 狡噛を壁際に追い詰めたサバット男。右足を左斜め前に一歩踏み込みます。

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 踏み込んだ右足を軸にして、コンパクトに体を高速回転。その勢いを殺さぬまま、回転力と遠心力を左足に乗せて一気に後ろ回し蹴り!

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 ②でダメージを受けたものの、ここはしっかり相手の蹴りを躱す狡噛。本命の槙島に辿り着くまでに消耗する訳にはいきませんので、相手の蹴りをブロックでするのではなく、躱すという選択を選んだのでしょう。相手の攻撃を捉えている狡噛の目にも注目。

 

 

 

④蹴りの戻りに合わせて、狡噛が左飛び込み突き

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 膝を落とし、身をかがめるダッキングで相手の蹴りを回避した狡噛は、その膝を落とす事で出来た「溜め」を用いて……

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 一気に相手まで踏み込み、

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 その勢いのまま、相手のボディめがけ右ストレート。防御の動作を攻撃に繋げた、伸びのある素晴らしい踏み込み突きですが、サバット男にブロックされてしまいした。

 

 

サバット男の右掛け蹴り

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 狡噛は右ストレートに続けて、左でボディーを打ちますがこれも防がれます(絵だと左拳が相手に届いたのかどうか微妙な所なのですが、動きに合わせて殴るSEが付いているので、当たったとします)。と同時に、サバット男が膝を上げたので……

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 反応した狡噛は蹴りを警戒し、追撃せずに防御に回ります。サバット男はそのまま右回し蹴りを出し、その軌道は一旦は狡噛の体の前を通過。蹴りは回避されたように見えますが……

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 一旦は通過した蹴りが狡噛の方に戻り、踵が叩き込まれます。このような蹴りを「掛け蹴り」と言います(※但しそもそもの掛け蹴りは、この場合のように相手の動きに合わせて放たれるものでは無いです。勿論このような事も不可能では無いですが、相手の動きに合わせて蹴りの軌道を変えるのは、素早い反射神経・反応が必要ですし、無理に力が乗るベクトルを変える事になるので蹴りになかなか威力が乗りません。この場合、サバット男がそれらを克服できる腕がある、かなりの強者だと言う事でしょう。)

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(1:37辺りより掛け蹴りの解説)

 サバット男が蹴りのインパクトの際に、背中を反らし、重心を落としている事も描かれています。これは背筋の力を使う事で、蹴りに重心を乗せ、攻撃力を高めているのですね。しかし狡噛はこれもきっちりブロック。お互い相手の攻撃が良く見えているのが判ります。

 

 

 

⑥掛け蹴りをブロックした狡噛が相手の右へ回りこむ

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(下半身が見えないので推測ですが)⑤ラストの画像のブロック時の態勢(右足が前、左足が後ろのサウスポー構えの状態)から、右足を外に捻りつつ大きく踏み込みはじめます。その右足の踏み込みと同時に自らの態勢を低くし、サバット男の脇を抜けるような勢いで体を前進移動させはじめます(縢も見せたレスリングタックルの動きですね)。

 

 

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  狡噛が態勢を低くしたタックルの動きで回りこんで来たので、ヘルメットを被り視界が狭いサバット男は狡噛を見失います。

 

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 狡噛は右足が着地したら、右足の親指を支点にし、更に外側に捻ります。捻らせると同時に、後ろに残した左足を大きく前に踏み込めば、右足の捻りと回転が聴いて、自然に態勢が反転するので、その勢いのまま相手の後方に左足を着地。これで相手の右サイドを回りこむ形で、相手の背後に移動しました。

 視界の悪い相手が視認しにくい高速でのタックルで近づき、相手の背後につく事で、相手の得意な蹴りを封じました。

 

 

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  相手のバックを取り、体を密着させて両腕をしっかりクラッチ。自分のヘソ辺りに相手を乗っける感じで重心をコントロールしつつ、一気に持ち上げて……

 

 

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 後方に投げきる! 所謂ジャーマン・スープレックの要領ですね。

 

 

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 投げで後頭部を床に叩きつけられたサバット男が失神したように見えます。しかしこれは、彼が硬いヘルメットを被っているが故、頭部は守れたけれども、逆にダメージが首の方に行ってしまい、脊髄を損傷して行動不能になってしまったのではないかと考えます(ヘルメットを装着した、オートバイの交通事故でも同じような負傷をする事があるようです)。

 

 

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 補足すると、狡噛がサバット男を持ち上げた瞬間の上記の絵を見る限りは、このまま体を後方に反らせても余り高い角度をつけて相手を落とす事は出来ないような気もします。絵としては描かれていませんが、投げる勢いがつき始めた辺りで狡噛が手のクラッチを組み直し、より高角度に相手を落とせる投げにしたのかもしれませんね。狡噛はレスリングを修めている設定もありますので、このような投げのテクニックも持っている事でしょう。

 

 

 

 

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『PSYCHO-PASS』アクション解説 その1 1期16話 縢vsネイルガン男

 劇場版の上映も粗方の地方で終了し、ひとまずの区切りがついたアニメ『PSYCHO-PASS』。劇場版では凄まじいまでのアクション描写が大変印象的でしたが、TVシリーズでも凝った殺陣が組まれていました。

 TVアニメのアクションシーンは、「とりあえず殴って・蹴って」に終始するだけになる事が多く、格闘技ファン、アクション映画ファンの目には味気なく映る事もあります。

 しかし、
・制作時間やコストの都合(2人以上の人間を破綻なく絡ませ、動かすのは凄く大変)
・尺の都合
・より描くべきモノ・コトがあり、そちらに注力したい

 

等々の理由もありましょう。なかなかこだわって格闘シーンを作る事も難しいのではないかと思われます。しかし『PSYCHO-PASS』では、アクションシーンの動作それぞれに格闘としての意味を持たせつつ、平行してアクションの格好良さ・面白さも描かれていました。
 
 作品にひとまずの区切りがついた今、改めてその練りこまれたアクションシーンに注目し、それぞれの動作にどういう意味があるのか自分なりの解釈をまとめたいと思い、こうやってブログに書き留めようと思った次第です。

 これから各シーン毎に解説していきたいと思いますが、あくまで自分の知識による解釈ですので、誤りがありましたら申し訳ございません。半可通の浅学をお笑いください。
 また、もし「ここは寧ろこういう事では?」「ここを見落としてますよ。」等々ご指摘ございましたら、ご教示いただければ幸いです。宜しくお願いします。

 

 

 

 さて、今回はTVシリーズ1期 第16話「裁きの門」より、縢くんのアクションシーンを解説したいと思います。
 このシーンで行われた、大まかなアクションの流れは、
①下からの突き上げ掌底で敵の手を打ち上げる
②敵に左内回し蹴り
③敵の喉元へ肘を入れる
となります。書き出してみると非常にシンプルですが、この殺陣を読み解いていくと、短いシーンながらも実によく考えられているという事が見えてきます。

 

 

  それでは、上記の①の動きを解説しましょう。

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f:id:matsu_009:20150222212535j:plain  縢の背後から、改造ネイルガン(釘打ち銃)を発射する男。

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 不意打ちを食らった縢は右手に釘を受けるも即座に反応し、間合いを詰めます。狭い通路で隠れる場所も無く、ドミネーターも落としてしまいましたので、相手の懐に飛び込むという縢の判断は正しいと思いますが、瞬時にその判断に従い、動けるというのには彼が潜ってきた修羅場の多さを感じてしまいます。

 

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 間合いを詰める際に態勢を低くし、二発目をかわしつつ接近する縢。

 ネイルガン男にこれがどう映るかというと、
・身長の低い縢が、さらに態勢を低くして一瞬で接近してくる
・自分の手とネイルガンが下方の視認を阻害している
・ヘルメットを被っているのでそもそも視界が狭い

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 以上のような条件が重なって、ネイルガン男の視界からは縢が一瞬消えた事でしょう。

 

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 ネイルガン男の死角に入った縢は、左足の踏み込みから体を跳ね上げ、下から一気に突き上げる掌底を男の手に。これでネイルガンの照準を逸し、尚且つ相手の腹部をがら空きにします。

 

 

 

  続いて②、縢による左内回し蹴り。

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 間合いを詰めた縢は、さらに右足を踏み込ませ、左足を内側に振り上げます。右足を踏み込む事により、次の左足の振り上げに勢いがつける事ができます。振り上げた左足をその勢いのまま回し蹴り込む事により、充分に遠心力と体重の乗った威力のある蹴りが繰り出せる訳です。

 

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 相手のがら空きの腹部をめがけ一気に蹴り込みます。体格の劣る縢は、その差を補う為に威力のある攻撃で短期決戦で勝負を決めたい。故に手技より威力のある足技、その中でも威力のある回し蹴りを使いたい所ですが、狭い通路での戦いなので、外回し蹴りを放つと蹴り足が手すりにぶつかってしまい放てない。よって、コンパクトな軌道で相手を攻撃できる内回し蹴りを放った訳ですね。

 

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ちなみに回し蹴りの内と外の違いは主に上記の通りです。

 

 

 

 最後に③、とどめの喉元への肘打ち。

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 蹴りによって手すりに叩きつけられたネイルガン男が体勢を整える前に、すかさず取り付く縢。男がネイルガンを持つ手を降ろさないように、縢がその手を押さえつけるのですが、その際に相手との間合いを更に詰め、下からガンの持ち手を押し上げる状態になります。これによりネイルガン男の腋が開ききってしまうのですが、この状態になってしまうと、人体の構造上大変力を入れにくくなるので、ネイルガン男は腕を降ろせません。

 

 

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 ネイルガン男の背面には、男の腰の部分の高さに手すりがあります。この状態で縢が男を後ろに押し込むと、手すりの部分が支点になり、男の体が反ります。

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 体が反ると、男の首も後ろに反ってしまいます。ヘルメットで守られていた首ががら空きになったその刹那、肘を下からかち上げるように一撃! 筋肉が薄く、重要な器官が多数ある首は人体の大きな急所ですし、そこに勢いをつけた硬い肘を打つというのは、体の小さい縢でも一撃で相手を無力化させる事ができる危険な攻撃です。急所を容赦なく攻撃し、少ない手数で相手を制するその動きからは、彼の非情さが見て取れます。縢秀星、恐るべし。

 

 

 

 と、まず1シーンのアクションについてまとめてみましたが如何でしょうか? 読み手に判りやすいよう説明の文章を書くって難しいですね……。乱文ご容赦ください。

熱文字第102回 男性声優ドラフト 恋愛シュミレーションゲーム編に勝手に参加してみた件


102 熱量と文字数 【男性声優ドラフト 恋愛シュミレーションゲーム編】: 『熱量と文字数』 オタク芸人 サンキュータツオ Presents

 

 

 ネットラジオ『熱量と文字数』第102回において、恋愛シミュレーションゲーム(乙女ゲー)を作るにおいて、そのゲームのコンセプトに基づいて5人の男性声優を指名し獲得し合うという声優ドラフトの様子が放送されました。

 それに後追いではありますが勝手に参加してみようと思いたち、実際にドラフトしてみた結果をこの場に記しておきます。

 

 

◆レギュレーション

ラジオを聞きながらの参加という後追いなので、

  • できるだけライブに近付けるように、ラジオを聞きながら同時進行で指名する。
  • 出演者と同順位において、指名声優が被った場合、出演者に権利がある(獲得できない)。
  • 後に出演者が指名する声優を、その指名順位より早く指名した場合、こちらに権利がある(獲得できる)。

というレギュレーションでやっております。

 

 

◆各出演者が指名した声優と、制作したい乙女ゲーのコンセプト

※指名順に声優名を並べてあります。出演者含め、敬称略。

タツオ:櫻井孝宏杉田智和宮野真守石田彰石塚運昇

 役満みたいなメンツで贅沢に。研究室、あるいは会社のイメージ。みんな理系であって欲しい。歌は宮野さんに歌ってもらう。なんだったら『銀色のコルダ』みたいな音楽ものでも。

国 井:梶裕貴森川智之福山潤小野大輔平田広明

 ヒロイン含む女の子2人が卒業旅行先の中南米で誘拐され、それをスペシャリストの男性陣が奪還に向かうというシリアスドラマ。イメージキーワード「勘違いするなよ、慣れ合う気はない」。丁寧な物言いの裏に何かある事を匂わせて欲しい。

松 崎:諏訪部順一神谷浩史井上和彦森田成一藤原啓治

 社会人もので全員スーツを着ている。発売記念イベントには声優さんにスーツ着用で出演してもらう。

関 口:中村悠一鳥海浩輔逢坂良太緑川光平川大輔

 ベタな学園物。ヒロインは高校二年。中村さん、鳥海さんが同級生、逢坂さんはバカな後輩。平川さんはヘタレキャラ。制服はブレザー系。

れんげ:下野紘遊佐浩二吉野裕行岸尾だいすけ若本規夫

 自己中B型男子に振り回されたい。演じる声優も全てB型で統一したい。

 

 

◆筆者が制作したいゲームのコンセプト

 王子ゲー。

 ひょんな事から某国の姫として迎えられたヒロインは、色々な国の王子から言い寄られたりして……。という、エロゲーのやりすぎみたいなコンセプトなので、声にどこか高貴な雰囲気は欲しいよね、とかなんとか適当に。

 

 

◆筆者が指名した声優

第一指名:宮野真守

 タツオさんの三位指名とかぶりますが、一位で取らせて頂きました。王子、というと僕はこの方の声を一番に想像するんです。ストレートに格好良い王子も良し、チャラい王子もよし、なんでもお願いできるぞ。

第二指名:三木眞一郎

 低音めの魅力的な声が欲しかったんですよね。剛までいかない硬めのセクシーな声が素敵。

第三指名:平川大輔

 これまた関口さんの五位指名と被り。レゴラスやロキとデカい王子役の実績があるしねw ロキっぽい感じの、ちょいナルシスティックだけどどこかヘタレで抜けてるとかそういう王子の役どころかしら。

第四指名:山口和臣

 梶さんや下野さんを獲得して、マスコット的な可愛らしい王子キャラをやって欲しかったのですが、先に指名されてしまったので彼を指名しました。『げんしけん 二代目』の波戸賢二郎の男の時の声や、2015年1月開始アニメだと『美男高校地球防衛部LOVE!』で、可愛らしい天然キャラの箱根有基を演じられるんですよね。これだ、これだよ!

第五指名:緒方恵美

 男性声優ドラフトっつってんだろ! オチを狙っただろとツッコまれたら否定はできない! だけどちゃうねん、理由があるねん! 王子様と見せかけて実は…という百合エンドが見たいねん! 緒方恵美さんといえば「男八段」の異名を持つ方であるというのも忘れてはならない。他に男も女も演じられる女性声優はあまたいるけれど、段持ちなのはこの方だけですよ! 段持ちじゃぁ男性声優ドラフト参戦も仕方ない(多分)。

 

 

 というような指名結果になりました。中村悠一さんは僕も欲しかったんだけど、』取られてしまった! 中村さんは凛々しエロいんですよ声が。

いかん、自分で選んでてこのゲームやりたくなってきたぞ! この手の企画はちゃんと皆でワイワイ騒いでやってみたいやつですなぁ。

 

 

 

 

かくて結城友奈たちは勇者となった

 『結城友奈は勇者である』、全話観了! 薄々、「こういう事なのかな?」とは思っていましたが、やはり「ウテナもの」でした! 大好き!

 「ウテナもの」とは名作『少女革命ウテナ』に感銘を受けた僕が、勝手にそう呼称している物語の分類の一つです。これから大人の庇護の下から巣立っていかんとする若者に、エールを送る物語。世の中というものはウテナで描かれた近親相姦などのおぞましきものや、ゆゆゆで描かれた抗えぬ理不尽よりも、もっとおぞましく、理不尽で、残酷で……。不景気で明るいニュースが聞こえてこない、先の見えない日本。今やこれが無いと始まらない、もう一つの「世界」、ネットの中にまで悪意は満ち満ちている。 それでも! ……それでも、歩いていこうよ、外に出ようよ。辛い時は友と肩を並べて歩こう。迷わず行けよ行けば判るさ!  

 これです、こういうやつが僕の言う「ウテナもの」です! ラスト手前の学芸会の劇の台詞で、その事が示されておりますね。

 

魔王
「結局、世界は嫌な事だらけだろう!

 つらい事だらけだろう!

 お前も、見て見ぬ振りをして堕落してしまうがいい!

 あがくな! 現実の冷たさに凍えろ!!」

勇者
「そんなの気持ちの持ちようだ!

 大切だと思えば友達になれる!
 互いを思えば、何倍でも強くなれる! 無限に根性が湧いてくる!
 世界には嫌なことも、悲しいことも、

 自分だけではどうにもならないこともたくさんある。
 だけど、大好きな人がいれば、くじけるわけがない。あきらめるわけがない。
 大好きな人がいるのだから、何度でも立ち上がる!
 だから、勇者は絶対、負けないんだ!」

 

 (この台詞は、友奈が目覚める前の東郷さんの朗読とも合わせて噛み締めたいのですが、長くなるので割愛。各自調査!)

 

 これまでの回や最終話のAパートまででも、このメッセージは物語の中で示されてはいますが、この劇のシーンでより明確に、印象的に視聴者に訴えられます。これは製作者たちの願いであり、あるいは信じたい事であり、あるいは実体験であり、そして何より僕ら視聴者へのエールでありましょう。ラストの「明日の勇者へ」という言葉は、モニターの前で見ている僕らへ投げかけられているんだ! 明日のエースはキミだ! 勇者部五つの誓い、もとい五箇条を胸に前へ進め!

 

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  勇者部の皆が、真っ直ぐな好人物だったのが良かった。真っ直ぐな諦め無さに、僕らは好感を持ち、励ましたく、応援したくなり、そのド正面ストレートの訴えを素直に受け止めたくなる。

 その訴えを受け止めた視聴者僕らが、勿論いきなりあんな大事を成し遂げる大勇者になれる訳では無いと思います。でも明日、飛び込みの営業を1件増やせるかもしれない。腕立て伏せを3回増やせるかもしれない。今まで恥ずかしくて出来なかった電車で席を譲る事ができるかもしれない。そんな小さな勇気への後押しになってくれたら……。それは小さいかもしれませんが、なんとも尊い連鎖ではありませんか。

 ある孤独な闇の騎士がこう言いましたよね。「誰でもヒーローになれる。少年の肩にコートをかけるという思いやりを示すことで、世界が終わったわけじゃないと教えてくれた人もまたヒーローだ。」 さぁ、今度は僕達の番だ。勇者は連鎖する! 明日の、勇者へ!

 

2014年見た映画ランキング

 明けてだいぶ経ってしまいましたが……新年あけましておめでとうございます。

 

 さて、昨年は「劇場で50本(1週間に1本の割合)映画を見よう。」と目標を立て、結果60本の作品を鑑賞しました。

 それらについて自分の記録も兼ね、2014年に見た映画のランキングと寸評をつけてみようと思います。

 

以下注意書き

・映画館で見たから、本数を見たから偉いという訳ではないですし、このランキングが絶対という訳ではありません。感想含め、あくまで僕の主観です。

・このランキングは「大体こんな感じ」という程度の気軽さでつけているので、いざ作品を見返すと順位が上下したりするやもしれません。その程度の、にわか者がつけた大雑把なランキングであるという事をご承知ください。

・鑑賞した59本の内、『もらとりあむタマ子』『ゼロ・グラビティ』『ゴジラ 60周年記念デジタルリマスター版』の3本は、公開開始日時が昨年より前のものなので、ランキングからは除外しています。

寸評中にはネタバレも含まれますので、ご了承ください。

 

 

 

 


 
1位:ゴジラ
 2014年の1位はこれ! だってゴジラという存在を物理的にあんなにデカく、怖く感じさせてくれたものですもの。所謂5億点!
 巨大な津波を起こし、それに人間を巻き込ませつつ、ハワイに上陸、照明弾に映し出されるゴジラの巨躯! 身長が高すぎて、打ち上げた照明弾の光が届かず顔が見えない! ここはまだ主役の顔は見せないという、なんという「溜め」のシーンか!
 そして遠景にムートーを望みながら、空港ビル近くにインしてくるゴジラの足! デカい、デカすぎる! そしてついにその全貌を表す圧倒的なビジュアルに、僕は文字通り、誇張なくホントに口アングリ。もう笑うしかないな、と劇場で乾いた息笑いを漏らすばかりでした。
 ゴジラが余り活躍しない、とも言われる本作ですが、M気質の僕には良い焦らしプレイでした。そしていざ現れたら今までのゴジラよりもスゴイですもの。こんなの初めてぇ~! イくイくイくイくイく~っ! と、僕の心はギャレゴジ(と書いて女王様と読む)に屈服してしまったのです。最高! パンフレットより、SFイラストイレーターのボブ・エグルトン氏の言葉を引用しましょうか。「『なかなかゴジラが出てこない』と言ってる人はどこを見てたんだ? ヤツは映画全体を支配してたじゃないか。」!
 

2位:LEGOムービー
 レゴファン誰もが夢想したような、登場人物や背景から小道具に至るまで、レゴで全てが表現されている(劇中に出てくるものは全てレゴブロックで再現できる!)という点でもまさに「レゴ」の映画なのですが、入れ子構造で視点を変えて、今まで出てきたレゴたちを組んだ人間達の物語をも描き、最終的にそれをリンクさせているという意味でも「レゴ」の映画という凄まじい作品。よぉ考えつきますわなぁ!
 「レゴの映画だから子供向けなんでしょ?」 ……とんでもない! レゴに、そして所謂「子供のもの」とされるあらゆるモノ・コトにハマり、そして今もハマり続けているオタクなら必見の作品なのでありました。そして本作で語られてる事は、レゴという会社が掲げる理念と完全に通じてるんだよね 。
 どうよこの隙の無さ! 流石フィル・ロード&クリストファー・ミラーだぜ! それ以外でも、レゴブロックとして製品化されてるものが出まくるので、DCヒーローや映画、世界の偉人等々、レゴならではの夢の顔合わせが成されているのも評価したい!
 あと個人的な事になるのだけれど、僕が小学生に上がる前の子供の頃、スペースシャトルの有人飛行が成功して、それでレゴでもスペースシャトルのブロックが出たんだよね。買って貰えなくて、只々おもちゃ屋で眺めるだけの幼き日々だったのだけれど、本作でその製品に付属してた宇宙飛行士の彼と再開した時は、全然泣けるポイントでもないのに、そういう個人的事情でダバァと泣かされてた。こんな経験ができるのもレゴの歴史の賜物ですなぁ。さらに個人的な思いを言うと、吹替だと俺達の沢城みゆきさんの様々な声が堪能できるので、ファンはずーーーっとエレクトしてられますぞ。
 

3位:キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
 現時点でのMCU映画の最高峰だと思います。かつて自由と正義を体現した男が、現代の混沌とした灰色の正義に迫るアクションサスペンス! どこが凄いってもう全部凄いよとしか言いようが無いのですが、そんな目一杯詰め込んだ中でも、単なるアベンジャーズ2までのブリッジに留まらず、ちゃんと一人のヒーローとしての掘り下げを行ってくれたのは、(特にMCUの)キャプテン・アメリカファンとしては嬉しかったですね。キャップを吹き替えで演じる中村悠一さんの誠実な演技もとても素敵です。
 
 良いSFを見た! というのが一番の感想。
 小難しいワードもちょいちょい出てきますが、『ドラえもん』のような仕掛け、『トップをねらえ!』1と2のような「想いは時間を超える」という展開は僕らアニメオタクの文脈でもあります故。
 冒頭から積み上げられた謎やちょっとした台詞や行動からの伏線が、終盤で見事に・美しく収束していく様は見事! 俺も超重力の影響を受けて地球上の時間の流れと違う時間にいたかのような、アッという間の3時間でした! あとやっぱりTARSくんかわゆい。早くリボルテックとかで可変するフィギュアを出し給えよ!
 

5位:イントゥ・ザ・ストーム
 夏映画の思わぬ伏兵でした! 襲い来る竜巻・嵐! 立ち向かう人間の勇気と絆の讃歌!
 関係の上手く行かない親子! YOUTUBEに面白映像をUPして有名になろうとするボンクラ! そしてハイテクの気象観測装置や24台の監視カメラに5トンの重さに耐えるウィンチ、防弾ガラスや鋼の装甲を持ち、4本のアームから杭を打ち込み、風速75mにも耐える秘密兵器「アウトリガー」を備えた究極の対竜巻マシン『タイタス』を狩り、脅威の映像を撮影して一攫千金を狙うストームチェイサー! それぞれが構えたカメラのPOV視点に、客観視点を交えながら大自然の猛威を捉えてくれます。 
 89分という短さの中でも、張られた伏線はきっちり回収、ダレ場もないので、我々観客はどんどん前代未聞の気象パニックの最中に巻き込まれていきます。ディザスター映画のお手本ですヨこれ!
 

6位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
 個性豊かな面々がその個性を存分に活かしたアクションと、漫才みたいな掛け合いをガンガンかましてくれるので、なんとも楽しいです。絶体絶命の時にあんな事するヒーローいるか?!
 笑い、泣き、そして細かくマーベル世界の設定も拾い散々楽しませてくれた後に、最後にこの作品・このキャラならではって形でお話を纏めちゃうだよなぁ。ほんと隙が無い。
 ただ音楽については色んな所で褒められてるけれど、あれらの音楽は僕よりも上の世代の人の音楽なので、ガッツリ乗り切れてるかというとそこまででもないのよね。世代問題なので作品の所為では無いのですが、ちょっと俺さんよ勿体なかったぞと。
 
 はて「マーケット」ではなく「ラブストーリー」とはと、TV版を見ていた人なら誰もが思うであろうタイトルですが、一組の男女が思いを伝え合うというミニマムなドラマ一点に殆どのフォーカスを絞ったラブストーリーとしか言いようのない物語で、終わってみれば成る程これはと。
 『けいおん!』劇場版よりも、より「若者がいよいよ意識する、過ぎ去り流れていく時間」を描いています。TV版の片翼とも言える程の存在であるデラちゃんを、あえて物語から退けたのは正解でしょう。ファンタジーはあの空気の夾雑物になってしまう気がしますね。親子や男女の心の繋がりという、『けいおん!』では描かれなかった事も、TV版よりより深く描かれ、『けいおん!』に囚われず・留まらず、どんどん先に進もう・描こうという、製作陣の気概なんてのも見て取れて嬉しかったです。
 各キャラクターの揺れ動く心情を、時に繊細に、時にダイナミックに、実に丁寧に描いています。まさしく実写の恋愛ドラマのようではあるのですが、各キャラの嫌味無きピュアさ、これは実写だと嘘になってしまうかもしれない。アニメだからこそのキャラ造形かもですね。
 アニメだからこそといえば、告白を受けた後、混乱したままに商店街を走り抜けるたまこに見える世界を、三人称視点で観るシーン。あれは彼女の混乱した心中を、なんとも抽象的に、なんとも美しく描いているだけでなく、なんだかこのように世界が見えてしまう事に共感や納得、既視感さえ覚えさせてしまう、まさにザ・アニメ!な名シーンでしたね。
 伝えたい・伝わらない・答えのこない思いと、そしていよいよ伝わる思いを、バトンと糸電話というアイテムを上手く象徴として機能させて、クライマックスに繋げていくのも上手いなぁと唸るばかり。TV版とは明らかに空気が違いながらも、されど間違いなくファンが納得するお話という、TV版後を描く劇場版の最上級の答えの一つだったと思いました。
 

8位:THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ
 これもTVシリーズのその後を描く劇場版。僕ごときにわかが何をか言わんやですが…… 海の物とも山の物ともつかぬ新機軸のアーケードゲームに、ほぼ無名の役者陣が声を当てて始まったアイマス。人気を得て大きな存在となり、アイマス以外での活動の場も増えていきます。これは本作中の成長した765プロアイドル達の姿にも重なるのですね。これはアイマスへ、そして役者陣への思い入れが深い人にこその映画だなぁと。春香がアリーナの舞台で語るシーンは、そんな歴史の重さを感じてぐっと来ました。メタ的な読み解きもできるアイドル映画ですよ。
 春香が可奈を切らない所に甘さを感じる人はいるのだろうなと思います。ただ伊織が「春香はプロとしては甘い。でもスジは通す。」と語っていたように、やはりその甘さこそが天海春香という人間でありましょうし、甘さ転じて懐の深さを持っているからこそ、キャラクター皆がヒロインたるアイマスの中で、彼女がセンター的役割を担うのだろうし、765プロの皆も、アニメ制作スタッフも、そして僕や全国のプロデューサーも「託せる」のではないのかな、とも思います。理想論かしら……。
 そういう重要な役どころを担った春香役の中村繪里子さんは、ほんと繊細な演技をなさってて、こんなに豊かなお芝居ができる方なんだ! と今更ながら思い知りました。中の人にも「座長」感あった! 美希役の長谷川明子さんも、何考えてるのかわからない猫的な美希の思わせぶりな台詞を、思わせぶりなんだけど、それでもちゃんとその芯の部分のニュアンスがちゃんと読み取れる演技をなさってて(女子トイレでの春香との会話ね、最高!)これまた痺れた!
 クライマックスのライブシーン、のアリーナのCGがショボかったのは残念。BDで修正されたとも聞きましたが、大画面でアレはちょっと厳しかったなぁ。
 
 絵も設定も芝居も隙なし。僕らが見たいものを、僕らが思い描いたハードルを超えて三時間たっぷり見せてくれて大満足。
 過去幾多も語られたドラゴンスレイヤーの英雄譚なんてウソだぁと絶望するくらいに、邪龍スマウグの圧倒的すぎる格を見せつけてくれたのも嬉しい。燃え落ちる故郷のさまを切々と歌うエンディングテーマ『I See Fire』が泣ける泣ける。
 

10位:ホドロフスキーのDUNE
 ホドロフスキーの作品は不勉強ながら1作も観ていないのですが、劇中で流れる数シーンを観るだけでも、異様で異常な個性がギラギラと輝くなんだか妖しげなものなのが判ります。今や80歳を超える監督は、実に活気溢れる語り口で当時を物語ってくれるのですが、山っ気と無邪気さが同居しているような、これもなんとも不思議に魅力的なものなのですね。
 その情熱と人間性が、彼にツキをもたらすのか、人間力として作用されるのか、今や映画やアートの世界で偉人となっている、DUNEの制作当時から才能ある人間(作中では魂の戦士と呼ばれる)たちを次々と口説き落とし、ツモっていく様はなんとも痛快です。しかし同時に「上映時間を90分にしろだなんて、とても切れないよ。12時間は欲しい。いや20時間でも!」と熱っぽく語る彼を観るに、ああ、「傑作を生むには狂気の欠片が必要だ。」という言葉は真実だけれど、その狂気ゆえに、天才たちの才能を信じきれない・ついていけない人たちは多いのだろうし、だからこそこの『DUNE』は完成しなかったのだなぁ、とも思いました。
 情けないごく個人的な話ですが、僕はもう特に夢や野望の無い人間でしてね。淡々と日常を過ごすばかりなのですが、本作を見てそれが凄く悔しくなったのだけは、恥ずかしながら白状しておきます。
 

11位:ベイマックス
 マーベルの『BIG HERO 6』を換骨奪胎した本作。「優しさ」「泣ける」を押し出した日本での宣伝の切り口に疑問を呈する声もありましたが、いざ観てみれば、それも正しい、マーベルスーパーヒーローものとしても正しいという。
 ディズニーやピクサーには、週一で監督たちが集って、各作品の脚本を徹底的に叩いて練るというシステムがあるらしいですが、その成果物の隙の無さ、まとめ力、全方位目配せ力。ここまで組み上げる職人芸恐るべしですよ。
 

12位:思い出のマーニー
 どこかミステリー仕立てで語られる物語は、いよいよ最後に杏奈の苦悩とマーニーの謎に一本の道筋が出来、集束する。あっ、あの台詞や所作に感じたちょっとした違和感はこれか! いやー、お見事! なんて優しく美しいお話! 鈴木敏夫プロデューサーは「少年と少女の話だと宮さんが口出ししてくるから、少女と少女のお話にした。」と嘯いておりましたが、成る程、宮崎・高畑さんの空気と違った世界だよなぁこれ。まんまとやられました!
 
 ヒーローとは、という根源への問いかけがなされ(コミックじゃないんだ、という台詞の重さ!)、やがてヒーローとなる男女のお話。前作のようなライト感も残ってはいるけれど、ダークナイトのようにハードでもあった! ラスト、バイクを駆り走り行くヒットガールの姿はまさにまさに…!
 ただ、お話の構造として、キック・アス編、ヒットガール編、マザーファッカー編と3人それぞれのパートが結末に集束していくような流れなので、散漫だったり、詰め込んでる感があるのは否めない。自分探しが暗くなりすぎず嫌味じゃないのは◎。
 クロエちゃんって猿顔ぎみで、ストレートな美人顔というよりは愛嬌美人顔だと思うんですけれど(写真や作品ごとでその割合が変わりますが……)、それがあのヒットガールという強烈すぎるキャラのいい「抜き」になってると思うんですよね。1でもやってた、あの左口の端をちょっと上げて、はにかむような笑いの愛らしさったら!単なるクール系美少女ではこうはいくまい。
 
 前回以上に、ヒーローに付いて回る「選ばれし者の祝福と呪い」が描かれていて満足です。勿論これは他のアメコミヒーロー映画でも描かれているのですが、大企業の社長でも、神でも、特殊なエージェントでもない、普段は地に足のついた生活を送っている一人の青年、ピーター・パーカーだからこそ、より共感できたり、より感慨深く思えるというか。
 そういう「掘り下げ」のドラマパートが多いので、尺の割にはアクションやや少なめ? この辺は賛否あると思いますが、『アイアンマン3』同様、一人の人間/ヒーローを描く為に必要なものだと思います。どっちも半端になるよりは、この方がいいのではと思いました。
 ハリー役のデイン・デハーンはやっぱり良いっすね! 相変わらず憂いを帯びたり、負の感情に囚われた時の表情が抜群!
 

15位:X-MEN フューチャー&パスト
 今までのシリーズを総括するような作品。余計な説明無しでドンドン進んでくので、ファイナルディシジョンでのあれやこれはさっさと無視されてましたねw 思い返せば、正直もう少し説明あった方が……とか、あれっ?と思う所も無くはないですけれど、ダラダラされるよりは潔くて良いかな。
 過去と未来が交錯して描かれるのですが、ファーストジェネレーション組の描写は濃いし、X-MEN組のその後も確認できる。狂言回し役のウルヴァリンも、全シリーズ皆勤賞ならではの活かされ方。今まで見てきた者にとっては実に感慨深く、嬉しい事ですよ。
 クレジット後のおまけ映像には、古代エジプトで強大な力を放ちピラミッドを組む異能力者と4人の騎士が姿が! アベンジャーズがvsサノスなら、こちらはvsアポカリプスとは、やぁ、夢が広がりすぎる強大な敵だ!
 
 オリジナル版はドギツイ描写も多かったですし、本作監督のジョゼ・パジーリャもハードな作風に定評のある方ですが、今回はレーティングの都合もありましょう、その辺は控えめ、オリジナルよりも人間ドラマ、警察ドラマにより針を振っていました。ですが、それはそれで良い風に転がったというか。
 今回のロボコップは素顔が見えるのが基本で、戦闘時のみバイザーを降ろして戦うのですが、このアイディアが素晴らしい。バイザー有り無しで絵にメリハリが付きますし、何よりロボコップに表情の演技がつけられるので、人間ドラマに深みがでました。
 また今回は右手が生身なのですが、その理由付けが、「銃の最終的な照準微調整は本人が行う為、細かい動きが必要」、「マニピュレーターは感情によって時に精密に動きにくい」など、技術的なアプローチでもって為されています。しかしそれだけではなく、生身と機械のどちらの手を使うか、マーフィーは相手とシチュエーション毎に判断して使い分けてるのですよね。ちゃんとデザインをドラマに絡ませてくる。上手い描写だと思いました。前作のマーフィーが、自分をロボコップと呼ばせるか、マーフィーと呼ばせるか使い分けていたようでもありますし。
 メタルギアソリッド4攻殻機動隊(SAC)っぽい描写がちょいちょいあって、その辺もアニメ&ゲームオタク的に興味深かったっす。
 

17位:ポンペイ
 歴史ラブロマンスであり、剣闘アクションであり、ディザスターでもある幕の内弁当映画。アリーナで行われる剣闘は、『グラディエーター』『スパルタカス』などでもたっぷり描かれましたが、「あっ、まだまだあんなやこんな剣闘の見せ方が出来るんや!」と何度も気づかせてくれるくらい、色んな手練手管を使って楽しませてくれました。
 またそれは、クライマックスの火山の大噴火シーンも同じで、ポンペイの街を過剰なまでにあの手この手で破壊し尽くしてくれるので、当時の人々だけでなく、観てるこっちにも「この世の終わり」をちゃんと感じさせてくれるのがよろしい。それだけでなく、恋人同士が抱き合ったまま炎に飲まれ灰になるという、ポンペイが舞台になった作品ならではの、悠久の時に思いを馳せてしまう〆も気が効いてます(あんな様子で抱き合った親子や男女の灰になった姿が、実際ポンペイでかなり原型をとどめて発掘されてるそうです)。
 主人公・マイロの剣闘アクションですが、二刀流と武器奪取を効果的に用いており、ちゃんと何がしかの刀法を修めている感ビンビンなのですよね。実に様になった格好いいものでした。また騎馬民族最後の末裔という出自が最初から最後までドラマに活かされてるのも心憎いです。“ダメな方のアンダーソン”なんて揶揄される事もあるポール・W・S・アンダーソン監督ですが、どうしてどうして!
 

18位:スノーピアサー
 ディストピアテイストと ハッタリきいた絵面というハリウッド映画で何度も見た光景に、ジメッとしたバイオレンス描写、光と影を効果的に使った絵作り、そして何よりあのパワフルで カオティックな感覚という韓国映画イズムをプラスするという離れ業をポン・ジュノが見せてくれました。
 正直、後半の失速は否めないし、回収してない伏線もあるけれど、褒めたい所がいっぱいあって満足満足。
 

19位:
 元々原作がゲームから着想を得ているというこの作品、世界設定からは『ガンパレードマーチ』を想起しますが、作中でトムが何度も死んでパターンを覚え、攻略法 を図にして検討し、助っ人にも助けられ奮闘する様は、『ゲームセンターCX』の有野課長がアクションゲームに挑む時のようでもあり。挑戦と挫折、そしてそれを超えた所にある達成感という描かれ方はまさにまさに。
 ループものらしく何度も繰り返される描写も小気味よく見せて、ダレずに最後まで駆け抜けてくれますし、中々の秀作ではないでしょうか。期待以上でした!
  ラスボス倒したのになんでトムがループするんだよぉ、という意見を散見しましたが、ループについてはラスボスがする/しないを決めてるのではなくて、あの体液さえあれば勝手にループするんだと。でラスボスとトムが相打ちになったけれど、ラスボスが完全に死ぬ前にループが作動して戻ったと、そういう単純な話として飲み込めばいいんじゃないかなぁと思いました(僕は観ててそういうもんだと読み取ったので、特に疑問には思いませんでした。)
 

20位:ゴーン・ガール
 二転三転するサスペンスについて色んな捉え方する人がいて面白い作品ですよね。僕は「とても滑稽だけれど、笑えないよ!」派ですw デヴィット・フィンチャーは、観客に何がしか刺してくるから恐ろしい。「That's marriage.」はコクの深すぎる名セリフ。僕はまだ独身なのですが、結婚予定のある者、既婚者、あるいは離婚経験者は何を思ったか……。
 フィンチャー作品常連の音楽担当、トレント・レズナーによる、何気ない、されど確実に終始不穏な音楽は、これぞ劇伴といった所でしょうか。
 

21位:テロ,ライブ
 ほぼ全編、ラジオのスタジオブースでお話が展開されるシチュエーションサスペンス。余計な説明も無く、スパッと本筋が開始される気持ち良い潔さ。良い掴み!
  功名心から聴収率(視聴率)を稼ごうとした主人公が、犯人との駆け引きや、より大きな「汚さ」の前にどんどんドツボにハマっていき…というストーリーは、 中だるみも無く、最後まで引っ張ってくれます。やや無理もあるかなとは思いますが、ここまではっちゃけてくれりゃドンマイでしょう。まさかあんな大事になろうとは!
 CGもハリウッド級では無いにせよ、効果的なポイントのみ派手に見せて、かなり頑張ってたと思います。日本と同じアジア圏の作品なので、つい比べてしまうのですが、邦画じゃここまで突っ込んだ表現、そしてこんな大胆な二転三転はできないだろうなぁ……! 面白かった!
 

22位:her/世界でひとつの彼女
 恋愛とは、あるいはそもそも他人と関わるという事、他人と関わりたいという欲求とは。そしてそれらは僕らが生活していく上で切っても切れない、モノ・コトですが、ではさて、生きるとは? 僕ももう三十路も半ばですが、これ位生きてると思い当たる事しきり。痛い!
  真面目な話、アニメキャラに想いを馳せたり、『どこでもいっしょ』『ラブプラス』をプレイしたりするようなオタク、90年代のオタク受難時代に隠れて活動し、「一般人」と関わるのが怖い、「一般人」にコンプレックスを持つようなオタクが観るべき作品だと思います。「えぐる」作品ですが、それでも見終わった 後に、他者と繋がる事とその経験の素晴らしさを再確認しました。癖のある秀作!
 

23位:ホビット 決戦のゆくえ
 元々原作の五軍の戦いもひたすら戦うだけお話なのですが、本作でも延々バトルが続く感じ。バトル自体のクオリティは高いのですが、正直もうちょっとグッとさせる男泣きポイントが欲しかった……。前作で圧倒的な力を見せたスマウグも、あっさり片付いてしまったのも拍子抜け。大胆に脚色して、五軍の戦いに乱入してくるくらい しても良かったか、と無責任な立場では思ったりもする訳ですよ。
 とはいえ、描かれる世界の緻密さ、LOTRへの補完等々、ファンなら見応えがあるシーンも多いし、LOTRの冒頭に繋がるラストを見せられると、今まで見届けてきた歴史物語にピリオドが打たれたという感慨、ようやく物語が繋がった達成感もひとしお。
 アーケン石のその後とか、描かれてしかるべき事がポツポツ抜けてたりするので、エクステンデッド版に期待かなぁ。
 
 
24位:獣電戦隊キョウリュウジャーvs特命戦隊ゴーバスターズ 恐竜大決戦 さらば永遠の友よ
  我らが坂本浩一が、初めて監督するスーパー戦隊映画。足し算で見せていくマシマシ物語に、その上助っ人戦隊や次回作の戦隊の活躍まで盛り込んでも破綻が少ないのは流石。特に次回作戦隊を、おまけ的に物語の最後に登場させたのが上手い。今までの映画ではそれにさしかかると、物語の流れが完全に 止まってしまい、なんなら夾雑物の感すらあったのだけれど、このやり方ならまったく邪魔にならない。
 

25位:イン・ザ・ヒーロー
 東映アクションクラブ出身である唐沢寿明の役者人生のifであり、劇団東京都鈴木区の舞台 『ヒーロー・ア・ゴーゴー』であり、ミッキー・ロークの『レスラー』であり、日本でアクション俳優を志す者の哀歌であり、応援歌であり。首の故障を抱え、アクション俳優業界を取り巻く厳しい現状の中 「オレがやらなきゃ誰も信じなくなるぜ!」と気を吐きもがき格闘する様には、唐沢寿明氏が単なる演技を超えた自らの思いを演技に乗せていたのでは、と感じました。それ位、主人公の本城と唐沢氏がかなりイコールに見えます。
 ただし……これを求めるのも難しい事なのだろうな、とは判っていますが、あえて厳しい事を言うと。クライマックスのアクションシーンは、「アメリカ進出を心底望む一ノ瀬リョウがなんとしても掴みたいチャンス」であり、「本城が何目も置く、アクション作品で名を売ってるメジャー監督が撮るハリウッド大作、そのアクションシーン」な訳ですよ。なのに全くそう見えない! セットにせよ、見せ方にせよ、せいぜい『イン・ザ・ヒーロー』程度(あえてこう書く) の邦画のアクションシーンにしか見えない(この手の指摘、この後にランキングさせてる邦画でも何度かしてます。今の日本ではしょうがない事なのでしょうが)。

 また本作の公開と同時期に『るろうに剣心』が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。アクション俳優の話なのに、アクションの見せ場が色んな所に負けちゃってるんです。キャストの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。

 このアクションシーンが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 勿体無いなぁ。

 

26位:RUSH ラッシュ/プライドと友情
 自由奔放・快楽主義者の野生児と、真面目一筋、コンピューター人間という対照的な二人のドラマと奇妙な友情を描いたレース映画。職業ものとしても興味深かったですなぁー。あ、僕は断然リスクを避けるニキ・ラウダ派です。もうおっさんですのでw
 

27位:ローン・サバイバー
 ピーター・バーグ監督が『バトルシップ』の次に作ったとは思えない程に、リアルに寄って描かれた極限の戦闘シーンは驚き。一部では干されたとの噂もある、『バトルシップ』主演のテイラー・キッチュをちゃんと起用してくれるあたり、監督の懐の広さも図れようというものです。
 主人公たちと同様、ひたすらに劣勢の坂を転げ落ちる消耗戦が続く戦闘シーンは喉が乾きます。しんどー! 痛々しい岩場での坂落ち(2回もある!)シーンは階段落ちを超えたね! あの後でもちゃんと動くM4は丈夫な銃だなぁ。
 
 
28位:大脱出
 頭脳派スライと、超人キャラの時には見られない演技をするシュワが見せる、今の時代にアップデートされた「あの頃」アクション。クライマックスでシュワがミニミをぶっ放すシーンの「溜め」なんて、まさにまさに。映画館で拍手しそうになっちゃったよw
 脱獄ものなのでケイパー映画のような「企て」も楽し。アラも結構あるけれど、「あの頃」映画風だなぁと思って観てしまうのでそうそう気にならずだ。
 2 大レジェンドに対する刑務所長役、ジョージ・クルーニークリスチャン・ベールを足したような顔のジェームズ・カヴィーゼルがまた良かった! 設定だけなら陳腐な役とも断じてしまえるキャラを、抑制されたオーバーアクトでもって、クセのあるイヤミで冷酷でシツコイ曲者として、魅力的に演じていて宜しゅうございました。
 

29位:ドラッグ・ウォー 毒戦
 終わり方に好き嫌いあると思いますが、潜入捜査の緊迫感、クライマックスの近距離銃撃戦の迫力(ジャン警部のハコ乗りアタックにはリアルに吹き出しました。格好いい!)、登場人物のキャラ立ち、そしてニヒリズムたっぷりなドライさ。見応えある上質のノワールでした。
 

30位:映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
 小気味いい下品ギャグと動きの面白さ。ストーリー以外の理屈抜きに楽しめる部分も充分素晴らしかったです。特に五木ひろしロボのくだらなさと繰り出される妙なドラッグ感覚溢れる技ね! あ~っクラクラするぅ!
  『オブリビオン』的な面もあり、『アイアンマン』的な面もあり(あっ、そういえばひろしの声の藤原啓治さんはトニー・スターク! 脚本の中島かずきさんは アメコミマニア!)。そうそう、冒頭の完全にインフレしてるカンタムロボの戦闘は、中島かずきさんが脚本を担当した『天元突破グレンラガン』的でもありま した。
 

31位:ファイ 悪魔に育てられた少年
 序盤はちょっと退屈だったけど、ファイが自分に疑問を抱きだしてからは面白さがグッと上がりました。ファイが5人の父に仕込まれた犯罪テクニックを駆使する格闘&カーアクションは見もの。
 ファイの本当の親と、そして育ての親ソクテとの二重の親子の物語を見せる構図なんですが、ソクテの歪んだ愛の壮絶さたるや! キム・ユンソクいい芝居、いい表情してます。
 主演のヨ・ジングも15歳って年齢が信じられないくらいいい表情するんですよなぁ。逸材はいる!
 
 
32位:フューリー
 口の悪い体育会系集団大好き デヴィッド・エアー監督のハードな描写に、戦場の悪徳が+されると、わぁ嫌らしいわぁ。死体をやたらに酷い撮り方するんですよねぇ。「うぉぁ、突っ込むなぁ、すげぇ!」と喝采を送ると同時に「わー現実だったら敵わんなぁ」とアンビバレンツなアガり&引き。前線でない軍営描写も血と腐敗臭が嗅げそうな位。野戦病院で、その辺にテキトーに血を捨ててる様を見た時はそれはそれは渋い顔したよ俺さん。4DXでこの臭い再現したらみんなゲロって退場するぞ! 
  目玉の、実物を稼働させたというタイガー戦車はボスキャラの風格、「よっ虎屋!」って声掛けしたくなるような、じっくり溜めを作っての堂々の登場ぶり。一撃のタイガーvs数&機動性のシャーマンのバトルは見応え充分。曳光弾がやたらに派手に、敵味方色違いで乱れ飛ぶのは、なんだか『スター・ウォーズ』のブラスターの撃ち合いのようにも見えますが、実際あそこまで派手なものなんですか?
 

33位:300 帝国の進撃
 本作のギリシャ兵は、前作で言う「戦士」以外の、農民や詩人や商人たちの寄せ集め軍。皆マッチョで戦闘も充分こなすのですが、戦闘キチガイ突き抜け感は無し。敵も前作の不死の軍団風の被り物をした兵は出てくるものの、アルテミシアの近衛兵以外はそんなに個性的でもなく。敵味方のパンチが弱いかなと。主人公のテミストクレスも戦闘キチガイ寄りではあるのですが、それでも割と正統派の戦士・将軍なので、レオニダスほどトンガってないんですな。そして俺様最高なクセルクセスの出番も少なめとあれば、この作品はやはり、エヴァ・グリーン演じる所のペルシア女裏番長・アルテミシアの無双ぶりを語る他ないでしょう。
 クセルクセスを神に変えた毒婦であり、舞うように二刀を操る戦いの女神であり。この作品で唯一の笑い所と言ってもいいような、テミストクレスとのグラップリングスパーのようなバトルセックスには、普通思いついてもやらないだろ!とバカ負けしましたw アルテミシアが登場するシーンはいちいち強烈で、その場を持って行っちゃうんですよなぁ…… 捕らえた敵の首を容赦なく切り落とし、その生首をむんずと掴んで接吻するシーンは正直勃起モンでしたな。
 

34位:ドラキュラZERO
 串刺し公・ヴラドが如何にして吸血鬼となったか、というドラキュラ秘譚。90分という尺で、大体僕らが期待するもの・見たいもの全部見せてくれる良コスパ映画。闇の力をえたヴラドが、1人で(!)オスマン帝国軍に立ち向かう様は、これ光栄こんなゲーム出すんちゃうかなというような、まさにドラキュラ無双。殴り、斬り、蝙蝠アタックで敵を蹴散らし、ゲージが溜まったら必殺の串刺しムーブだ! 恐怖せよ!
 とはいえ単なる出鱈目アクションでもなく、結構ちゃんと歴史的事実やドラキュラに纏る逸話、他のドラキュラ映画からの引用もあり、ほほうともさせられ。主演のルーク・エヴァンスや敵のドミニク・クーパーも決まってた。二人の甲冑格好いいよねー。
 噂ではユニバーサル映画が、過去のホラー映画の数々を再生させ、最終的に各ダークヒーロー達を一同にアッセンブルさせるプロジェクトがあり、これがその嚆矢とか。わくわくじゃよ!
 
 
35位:フライト・ゲーム
 飛行機内という限られた密室で撮られた本作は低予算の匂いプンプンですが、『ノンストップ』という原題の通り、緊迫感あるサスペンスがどんどん進むので見てて飽きる暇が無いですね。
 真犯人の計画が結構雑なのと、謎が明かされてからの盛り上がりにやや欠けますが、それまでは良く観客を引き込んでくれるので良しとしましょう。元々尺が100分少々な事もあり、コンパクトに纏まっていながらも楽しめます。『96時間』リーアム・ニーソン好きなら見て損無し。
 

36位:猿の惑星:新世紀
 なぜ猿が進化したのか、を描いた前作に比べ、話の展開が読み易すぎるという嫌いはあります。とはいえ、シリーズのキモ「差別する側・される側」についてもきっちり描き、前作よりもより『猿の惑星』感を堪能できます。猿の数も、前作とは比べ物にならない位多数出てきますが、顔にキズをつけたりなどで、主要な猿についてはさり気なく個体の認識を容易にしてる手腕はお見事。
 前作でもシーザーの「目」による表現が巧みでしたが、今回はさらにそのパフォーマンスに向上が見られるというか。猿に表情がつきすぎるとリアリティを失ってしまうので、まさに目は口ほどに物を言う、を地で行くボスになってます。格好いい!
 ただ幾ら人間並、あるいはそれ以上のの知能を猿が持ったとはいえ、いきなりそうそう銃を正確に扱えないだろうとか、弾切れの際、弾倉をどこで手に入れるのかという物理的な面と、機能を知らないからリロードできないだろとは思ったよね……。 あと倉庫から奪った銃にかかったままの安全装置はちゃんと解除できたの?とか、何故かやたらに銃関係の事が気になったとさ。
 

37位:エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
 勿論楽しい作品なのですが、どんどん参加スターが増えていってる上に、今回若手チームまで出てきてるので、各々の見せ場の尺が当然分散、薄まるというプリキュアオールスターズ問題をこの作品でも確認する事になろうとは……。 そのスターたちのギャラが高すぎて集客に気を使ったのか、こっそりレーティングの年齢制限なくなったのでゴア描写なども薄味なのもちと寂しい。
 やっとお鉢が回ってきたバンデラスとスナイプスは儲けものな役柄でしたね。色んな所でゴリ子扱いされてるロンダ・ラウジーの活躍ぶりもファンとしてはヒャッホーものでした。僕もクラブでノされたい!
 

38位:ハリケーンアワー
 画面も全体的に地味で、低予算感丸出し。とはいえそんな中でも、娘の命という「制限時間」を軸に、サスペンスエンターテイメントとして色々やりくりしてて好感が持てました。
 当初は生まれた娘に実感の持てなかった主人公ですが、その小さな命を守り続けていく内にやがて父となるポール・ウォーカーの演技は、ワイルド・スピードシリーズとはまた違う魅力に溢れていました。もっともっとスクリーンで彼を見たかったなぁ……。
 
 
39位:アナと雪の女王
 ゲームのニューハードが出たら火や水の自然物を見よとはよく言ったものですが、冒頭の氷を切り出すシーンの水・氷の映像表現にはいきなり度肝抜かれました。神田沙也加さんが吹き 替えるアナの愛おしさも堪らないです(できうるならば、彼女にはもっとTVアニメの声も当てて欲しい!)。
 有名すぎ る『Let It Go』のくだりは、あらゆる軛からヒロインが開放される、正のベクトルのカタルシスある曲なのに、その実、歌い手のエルサはあらゆるモノに背を向けて全くの孤独を選んでいるという事実に驚きました。曲は最高のクライマックスを迎え、エルサは「私は解き放たれた!」と歌いきる。と、それと同時に自らが築いた氷の城の門を閉ざし、全てを拒み閉じこもる。90年代のオタク冬の時代に青春を送った僕は、思わずシンパシーを感じてしまいゾッとしました。これ子供向けでやっちゃうか!
 ただ、割と中盤以降の話の進め方は雑ですよね。ああっ、そんな簡単に事が収まるとはっ。その辺もうちょっと煮詰めて欲しかったとは正直思いましたね。
 
 予告編ではいかにもなヘラクレスの伝説のシーンを釣瓶撃ちで見せておきながら、本編では「あれは実は…」と伝説の真実、裏側を見せるような不思議な作りになってます。
 ただ僕はその伝説の冒険譚目当てで劇場に足を運んだので、あれっ?と首を捻ったのも事実。終盤まで首を捻り続けましたが、クライマックスでいよいよヘラクレスが覚醒した時には、その溜めが効いていただけに逆にアガりましたね。終盤はホントもう色々ノリノリだな感があってかなり楽しいです。
 結局ヘラクレスはただの人間だったのか!と言う人もいますが、僕はヘラクレスが試練を経て、本来の力が覚醒したのだ、彼はやはり神の子であったのだ、と解釈してます。(ちなみに劇中では明言されず)


41位:劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-
  キャラクターの本質に迫ろうというお話はとても好みだし、盛りあがりどころもしっかり作ってあって楽しめます。だがだからこそ、根性で解決したり、新キャラのライアン扱いが割りと雑なのが気になりました。虎徹とライアンを対比させるような物語にするとかした方が深みがでたかも? あとこれが無いと虎徹がヒーローとして活躍しにくいという事なのでしょうが、彼が扱うワイヤーが、スパイダーマンのウェブ並に万能なのも気になります。安易に虎徹の能力が元に戻ったりしなかったのには好感が持てましたね。
 

42位:るろうに剣心 京都大火編
 流石谷垣さん、今までの剣劇では見られないような、ヘンテコでやんちゃで格好いい殺陣を組んでくれてます。僕は映画に非日常性を求めてしまうので、その視点で見ると大概の邦画は漏れてしまうのですが、これくらいやってくれると、見に来た甲斐もあったなぁと。
 ただ、芝居、脚本、演出など、予算規模とは別の所で“安っぽさ”が見て取れる。この手の「隙」が、非日常感の邪魔しちゃうんですよ。
 

43位:るろうに剣心 伝説の最後編
 アクション はさらに進化。vs宗次郎戦などは惚れ惚れします。しかしやはり例の“安っぽさ”は相変わらず。薫殿の扱いの適当さや、斬首刑寸前の剣心を見ても囲いを蹴 破って猪突しないらしくもない左之助といったようなキャラぶれ、一応の格好をつける為のような、とってつけたラストの敬礼などなどの「粗さ」には、アクションが凄いだけに、もっと頑張ってくれよ! と言いたくなります。
 
 ジョリ姐さん演じる所のマレフィセント、はっきり言って「悪く」ないです。オーロラに呪いをかけるのも「そりゃそうしたくもなるな」と思わせる程にクズい王様…! マレフィセントにいちいち同情・共感してしまう。オチも読めてしまうと思わせておいて、実は…というのにも期待したけれどそれもなく。果たして予想通りに物語は終わります。悉くの描写がどれも浅めなので、こちらに響く前にあれよあれよと終わってしまった印象は否めない。
 とはいえ、マレフィセントが魅力的に撮られているのは確か。ジョリ姐さん好き、強い女好きなら、延々それを見てられるので大層幸せになれます! 素敵! 俺、鉄製品うっちゃってマレフィセントさまのしもべになりに行くんだブヒー!
 百合要素もそこそこにあり(親子愛よりだけど)、その辺が好きな人ならそのポイント突破で楽しめるんじゃないかなーとは思いました。
 

45位:ノア 約束の舟
 方舟伝説において、ノアは善人であるが故に神に選ばれたのだったと思うのですが、本作では単に善人だったからというのではなく、何が何でも神の使命に従う人間絶滅マシーンだったから選ばれたのだ、という展開にはびっくらこきました。最終的には神の「試し」に応えうる人間だったから、というオチではありますが。
 ノア役のラッセル・クロウが戦闘で高い白兵戦能力を遺憾無く発揮しててガッツポーズ。グラディエーターよ再び! あとトバル・カインの国の飢えた民衆の描写が殆どゾンビ(放り投げられた生きた豚に群がり、手で肉を割いて奪い合う!)だったのには心の中で爆笑!
 ただやっぱりキリスト教徒じゃないと判んないというか、深く理解できないんじゃないかな、とも思わされました。こういう映画を観る度に、俺はキリスト教に入信するべきではないのかという不純すぎる思いに囚われます。
 
 ドンパチものかなーと思って見に行きましたが、サスペンスアクションでしたね。DEAの麻薬捜査特殊部隊のシュワちゃんが「それっぽい」動きをしてくれます。大口径のハンドガンではなくグロックを使ってたり、貫通力の高いアサルトライフルなど、室内戦を意識したリアル指向の武器チョイスも良いですね。
 但しサスペンスとしてはとっちらかってるなぁという印象。真犯人の動機が弱い、真犯人が判明した時の「こいつかぁ!」のカタルシスに欠ける、物語にある2つの軸がなかなかクロスしない、クロスしないが故に最後のパートが蛇足にも思える……などなど、問題は結構山積み。また「過去にここでこんな事があった」というフラッシュバックを、明確な場面・画面の転換無しに行うので、観ていてそれが今起こっている事なのか過去の事なのか、もの凄く判り難い。『エンド・オブ・ウォッチ』はあんなにキレキレだったのに、どうしたデヴィッド・エアー
 脚本が今ひとつというのもあるけど、それにしてももっと編集でどうにかなったろうし、むしろその編集で失敗してるシーンが多いという感。とはいえ、今までとちょっと違う役柄のシュワが見られるのと、女刑事、女隊員の演技は良かった。雰囲気は好き。
 

47位:アメリカン・ハッスル
 詐欺師が主役という事で、騙し騙されのスリルを期待したのですが、人間関係のドラマをじっくり楽しむ作品でした。(これは相性問題ですが)字幕版で見たのですが、と会話劇を楽しもうとすると、役者の演技や70年代を再現した魅力的な画面が目に入りにくいのは失敗でした。
 ジェニファー・ローレンスは、作品によっては野暮ったくてあんまり魅力的には見えないのだけれど、今回の髪型とメイクはイケててエロかった。コンパで会うと楽しいけれど、そこからいざ親密になると訳わ からん面倒臭さプンプンで嫌になるような、躁鬱の激しくて浅はかな女という役どころの演技がブッ飛んでたなー。『死ぬのは奴らだ』を髪を振り乱して歌うシーンの妙なカタルシスといったら!
 

48位:荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
 妙に豪華なキャスト陣にこんなクダラナイ事をやらせるセス・マクファーレンの人間力は一体…! ダンスシーンを始めとして、楽しいには楽しいですが、『テッド』よりはギャグが滑り気味でもあったかなぁと。リーアム・ニーソンの美尻に乾杯!
 

49位:サファリ
 危険なサバンナで遭難した旅行者達のサバイバルを描くPOV映画なのですが、予想通りの所で大体予想通りの事が起きるので、安定してそこそこ楽しめるけど大きな驚きはなかったかしら。
 マヤ役のクロエ・カービーのタンクトップ&ホットパンツ姿が妙にエロかったっすね。
 

50位:LIFE!
 40代曲がり角の男のロードムービー。巡っていく世界の映像の美しさは○。ただ映像は美しいのですが、お話としては割と淡々と進んでいくので、もっと捻りや仕掛けが欲しいと感じました(というか予告を観て、主人公のダイナミックな妄想映像がもっとふんだんに挿入されると思っていたんだよう)。
 昨年3月公開の映画なのですが、個人的に昨年後半で仕事について思う所多々あったので、今見返すと順位はもっと上がるかもしんないです。
 

51位:マイティ・ソー ダーク・ワールド
 アスガルドMCUマーベル世界の描写には惹かれるけれど、他のMCU作品と比べると今ふたつ程盛り上がりに欠ける感。ソーとロキの兄弟のイチャイチャは観られるけれど、もっとタッグバトルしようよ……! 割と小ネタギャグをふんだんに挟んできて、それはまぁ楽しいのですけれど、クライマックスでもその調子なので、そこで一旦流れが止まるのが気になりました。
 

52位:エージェント:ライアン
 手堅いというよりは、新しみの無い作りと、かなり綱渡りな作戦に疑問符。知性派としてキャラ立てしてるライアンの「頭の良さ」の表現も今ひとつ。敵の陰謀を割り出すシーンは、視覚的な漠然とした表現に逃げちゃったような気も。「ああ、こいつ頭いい!」ってもっと素直に唸りたかったなぁ。
 巻き込まれ中の怯えた子犬みたいなキョドり感溢れる顔から、徐々にエージェントとして成長した顔を見せる、ライアン役のクリス・パインの演技は良し。
 
 3年ぶりに田舎に帰ったら、「そぉら地元の名物料理だ、たらふくお食べ!」と、今まで以上に歓待されて、もう食べられない、も~う食べられないと胸焼けしつつ飯を食べてるような映画。長い。ひたすらに長い。
 過剰なまでに中国企業に寄り添い、作中で並び立てられるプロダクトプレイスメントについて、ライムスター宇多丸さんが、「これはマイケル・ベイがわざとやってる悪意である。あるいは『あんたらが好きな古き好き映画は滅びていて、俺らが作って今あんたらが見てる映画は別のものなんだよ、残念ながら。』『巨大資本を利用して資金集めをしようと思うとどうなるか。モラル無き利益追求の行き着く果てがこれだよ。』という主張である。」と読み解いていましたが、だとしたらこれはお金を払って「トランスフォーマーの映画」を見に来た観客に対して不誠実な事だなぁと思います。一応は原作もあるような映画でそんな主張はしないで、そういう趣旨の映画を作るなり、別の手段で訴えかけをすればよろしい(勿論この見立てが正しいとは限りませんし、自分の本意ではないようなものをたっぷり作品に盛り込まなければならない製作陣の苦い思いも判るつもりではありますが)。
 
 ルパンのパブリックイメージって、やっぱりアニメ版だと思うんです。それを変えるべき所は変え、残すべき所は残し、どう実写にコンバートするのか。その取捨選択が上手くいった所、そうでない所が混在しているように感じました。
 劇場栄えする奇想天外なストーリーや絵作りなどを追求すると、その「ルパンらしさ」や、アニメやマンガを実写化する際に、原作よりも高められる「作中のリアリティ」と齟齬も出てくると思うんです(というか実際出てる)。それを気にして変にまとめるよりは、型破りに突き進んだ方が良いと思いますし、本作もそのベクトルで作られているとは思うのですが、そこは予算の都合、邦画レベルでは充分頑張った画面なのですが、ハリウッドアクション作品に比べてやっぱり安く見えてしまう。もうこれはどうしようもない事、今の邦画の限界だとは思うのですけれどね。そしてその「予算都合の邦画の限界」とは別に、これもるろ剣と同様やっぱり脚本などの粗が気になってしょうがない。スタッフの力量の限界でしょうか。
 小栗旬さんは良かったですよ。アニメルパンの軽妙さを、あのお調子感から所作まで取り入れて、上手い着地点を見つけたなぁという印象。逆に浅野忠信さんの銭形は、アニメ版を変にカリカチュアライズしたような芝居で、声色も変に納谷悟朗さんを真似たようにガラガラ声を作っているのがダメ。個人的に今までの演技でワースト1です。香港警察署での説明台詞聞き取りにくいよ! あと『アジョシ』最強の敵を演じたタナヨン・ウォンタラクンさんが全く格闘をしないのにはドガッカリ。あれじゃ連れてきた意味無いじゃないですか。
 

55位:ドラゴン・コップス 微笑捜査線
 ジェット・リーが主演みたいな宣伝のされ方ですが、サブキャラです。主人公の刑事のバディですらない。コメディーなのに笑いにはキレが無く古臭い。途中まで張ってた伏線がまるっきり投げっぱなしでジェット・リーもアクションシーン以外はやる気なさげという三重苦。う~ん。
 

56位:平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊
 平成と昭和が対決に至る理由が雑! 相談しようよ! ゲストの戦隊たちの唐突さ! 『ウルトラマンメビウス』の80回のような555後日談は良かったですが……。
 「本来のお客さんの子供達が喜べばいい」『お祭り感』という言葉を何度聴かされればいいのか……。それらはごもっともな言葉ですし、予算や尺の都合があるのは重々承知ですが、今まで何度もライダー集合映画作ったのに、一向に改善が兆しすら見えないのは残念(プリキュアオールスターズは問題も抱えながらも、試行錯誤して改善が見られるのになぁ)。本作を期にライダー映画から足が遠のいています。
 

57位:キカイダー REBOOT
 高橋メアリージュンさんが、たべ・こーじ先生の描かれるギャルみたいでエロかった以外、褒める所が一箇所も無いの……。
 「そんな事あらへんがな!」と言いたくなるシーンばっかりなのには閉口。例えば冒頭のマリのマンションへの襲撃シーンひとつとっても、只のマンションに何故ヘリポートがあるのか、ヘリポートに下に降りる階段や入り口が見受けられないのは何故か、敵の大型メカが登場した際に、特殊部隊はどうやってヘリポートからはけたのか、その後ルポライターの服部はどうやってヘリポートに上がったのか……と、すらすら疑問が出てきます。リアリティラインを旧作よりだいぶ上げてるだけに気になっちゃうんですよね。
 アクションも頑張ってはいますが、これぞというシーンは無し。クライマックスのキカイダーvsハカイダーも、機械のヒーローならではの戦闘描写でもあれば良いのですが、ただただ単調に長々格闘してるだけで正直飽きてしまいます。一番格好いいシーンが、プロフェッサー・ギル役の鶴見辰吾が、ハカイダーに独白しながら影の中狂気の眼差しを浮かばせる所、というのもヒーローものとして問題だと思います。
 
 
 
 
 以上57作品のランキングでした。なんだかんだで面白い作品が多かったなぁ。

イン・ザ・ヒーロー【ネタバレ】感想部分

2014年9/6 twitterの『イン・ザ・ヒーロー』感想の続き、ネタバレに触れる部分

 

 決死のアクションを演じる為に主人公・本城が忍者装束を着こみ、セットに向かうシーン。いやぁ、この唐沢寿明の格好良さたるや! 事ある毎に本城は「武士道」を持ち出しますが、まさに「死ぬことと見つけたり」の佇まい。

 クライマックスのアクションシーンは……今の邦画では、かなりのレベルの殺陣を見せて貰った気がします。50歳の唐沢寿明と72歳の松方弘樹の殺陣がねぇ!格好いい!

 ただし……これを求めるのも難しい事なのだろうな、とは判っていますが、あえて厳しい事を言うと。 劇中でこのアクションシーンは、アメリカ進出を心底望む一ノ瀬リョウがなんとしても掴みたいチャンスであり、本城も「あの!」と何目も置く、アクション作品で名を売ってるメジャー監督が撮るハリウッド大作、そのアクションシーンな訳ですよ。なのに全くそう見えない! セットにせよ、見せ方にせよ、せいぜい『イン・ザ・ヒーロー』程度(あえてこう書く)の邦画のアクションシーンにしか見えない。

 また今同時期に、『るろうに剣心』という、日本アクションエンタメ界の奇才・谷垣健治氏が上映されていますが、あっちの方がよっぽど、こちらの想像を上回るようなアクションを見せてくれるんですよね。最大の見せ場がもう、色んな所に負けちゃってるんです。前述した唐沢寿明福士蒼汰らの動きは良いんですよ。良いんですけれども、今のハリウッドが見せる最新・最高のものには申し訳ないけれども全く見えない。ここが例えば、『キル・ビル』の青葉屋カチコミシーンであるとか、映画好きなら誰もが「ほぉ!」「おお!」と膝を打ち手に汗握るような、後々語り草になるようなシーンであったなら…! 残念だなぁ。

ゴジラ(ギャレス・エドワーズ版) ごく個人的体験とネタバレを含む感想

 映画鑑賞。
 DVD鑑賞じゃなくて映画鑑賞。
 どのような違いや差があるかというと、劇場には大スクリーンや迫力の音響などなどの、「ならでは」な設備がありますが、それ以上の大きな違いに、観る前・後を含めた体験感にあると思うんですね。
 あの映画はこうなんだろうか、ああなんだろうか。予告映像や雑誌情報、試写を見てきた人から伝え聞く報に一喜一憂するよし、ストイックに一切の情報をシャットアウトするもよし。それぞれがそれぞれの方法で鑑賞日までテンションをコツコツ高めていく。鑑賞後も余韻を噛み締めつつ、喫茶店でしみじみパンフを読み込んだり、仲間と喧々諤々語らったり。一つのイベントごととしての盛り上がり、思い出体験が堪らんのですね。

 で。
 僕が親のお供ではなく、自ら望んで能動的に親に頼んで映画を見に連れて行ってもらったのって、1984年の『ゴジラ』なんですよね。事前にテレマガだかてれびくんだかの特集で、「謎の超兵器・スーパーX大予想!」というような記事があったのですが、巨大ロボか?! 超高性能戦闘機では?!などとズラリならぶ予想図を見た保育園児は、「これは巨大ロボでゴジラをやっつけるに違いない!」と妄想を膨らみに膨らませて、劇場でややズッコケましたですよw や、あれはあれでアリかぁとは思いましたけど!(巨大ロボVS怪獣映画の夢は、いよいよ昨年、『パシフィック・リム』で叶った訳ですが・閑話休題)
 今回のギャレゴジは、情報をできるだけ遮断して臨んだので、観る前までは淡々としたものだったのですが、いよいよ劇場に入り、中で流れる初代ゴジラのBGM、おっさん中心の客層ながらも、そこそこちびっ子も集った客席などなどを耳に目にしている内に、なんだかどんどん高まってまいりまして! そうだよ、FWからどれだけ待ったんだ我々は!
 そして怪獣王の帰還を見届けた僕。ただただ怪獣王の超ド級の存在に圧倒され、その緊張から開放された帰り道に、「あっ、この事前の高まり!(それは瞬発的なものとはいえ、根本には10年の溜めがあった訳ですからね。デラーズ・フリートなんて目じゃないぜ。) そしてこの開放感と興奮! 保育園児だったあの時と同じだ!」と、1984年のあの日から30年後の今日が線になって繋がった瞬間の興奮、歴史あるものに関わる事でしか感じる事ができない感動を噛み締めてたら、なんだか泣けてきちゃってねぇ。こんな体験滅多にできるもんじゃないなぁと。極々個人的な理由ですが、それでいいの。今回の『ゴジラ』は大変思い出深い、幸福な「映画体験」となりました。映画最高!ゴジラ最高!

 

 

 


~以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 84&平成ゴジラを、ハリウッド資本でアップデートさせて「今」に当てはめたような作品。素晴らしかった!
 画面に映るゴジラの絵力という物理的な存在感、そして映っていないシーンでも登場人物と我々に圧をかけてくる精神的な存在感の両方がハンパない。正直、怪獣プロレス的な要素は思ったより少なめ。そこを非とする人もいるのだろうけど、それにはパンフレットより、SFイラストレーターのボブ・エグルトン氏の言葉を引用させて貰いたい。「『なかなかゴジラが出てこない』と言ってる人はどこを見てたんだ? ヤツは映画全体を支配してたじゃないか。」!

 

 監督のギャレス・エドワーズゴジラマニアとしても有名ですから、怪獣プロレスを膨らませようと思ったら幾らでもできると思うんですよね。僕も「もう一声!」と思わなくもない所はあるのですが、それこそ抑制・溜め・引き算の美学でしょう。お陰でゴジラとムートーの睨み合いから組んず解れつの大バトルが引き立つ引き立つ!有り難や! 力道山の空手チョップばりに、溜めて焦らしていよいよ炸裂する──。やったぁ、放射熱線だぁぁぁぁ!(ご丁寧にこれも波動砲ばりに、背びれの発光カウントダウンという溜めを作ってからの大放射で、観客のカタルシスが爆発するんですよね。ゴジラ波動砲も日本のものなのに、ついにこの絵を産み出す事はできなかったのよね、新しい!)

 怪獣プロレスに針を振りすぎなかったのは、それこそゴジラマニアの監督ならではでしょう。1954年の元祖ゴジラからはじまり、脈々とシリーズに息づく「核」「放射能」との関係性と、荒ぶる自然・神の象徴たるゴジラ。これもちゃんと、現代に則した形で描いているんですもの!
 二大怪獣の性質上、常に「放射能」というワードがついてまわる本作。制御できぬままに拡散される放射能に対して、それを吸収する怪獣の蛹の性質を利用し汚染区域の浄化を図るも、やがて蛹は孵化、別の制御できぬもの・ムートーを生み出してしまった人間。キロトン級の原爆でも退治しきれないゴジラ諸共、二体のムートーを爆殺しようと、メガトン級の原爆を用意する米軍だが、その目論見は失敗し、自ら用意した兵器に翻弄される。
 果たして原爆はサンフランシスコ沖で爆発。ムートーもゴジラの手によって倒された。「怪獣王は救世主か?」などとゴジラを報じるマスコミ。芹沢博士が語るように、ゴジラとは調和をもたらす存在だとしたら──。散々制御できぬものに振り回されながら、ゴジラを「救世主」と言ってしまう人間の傲慢さ、愚かさよ。芹沢博士は、劇中でこうも語る。「人間が傲慢なのは、自然は人間の支配下にあり、その逆ではないと考えている点だ。」

 その他地震(のような振動)から原子炉倒壊という惨状描写は、東日本大震災からの福島第一原子力発電所事故を受けてのものであるのは間違いないでしょうし、ハワイを襲う巨大な津波、飲み込まれる旅行者の姿も、それを想起させるものです(こちらは映画『インポッシブル』でも描かれた、スマトラ島沖地震がモチーフにされている所もあるかもしれません。) そしてゴジラやムートーに破壊されるビル群はアメリカの同時多発テロ事件をと、まだゴジラシリーズでは描かれていない「今」をきちんとゴジラならではの見せ方で盛り込んでいるのは意義のある事でしょう。

 このようにゴジラシリーズだからこそ描かれる事、ゴジラシリーズに今描かれるべき事をきちんと取り上げ、しっかりドラマやテーマを(怪獣たちを意識させ続けつつ)描く事が、軍隊や怪獣とのバトルへへの効果的な「溜め」にもなっていると感じました。これはやはり計算されたバランスなのかな、と思います。

 


 ビジュアルとしても、前述の波動砲ライクな放射熱線描写をはじめ、「これは!」というシーンが色々ありますよ。
・巨大な津波を起こし、それに人間を巻き込ませながらも全く意に介さず(当たり前だ)、ハワイに上陸、照明弾に映し出されるゴジラの体軀の巨大さよ!(ゴジラの身長が高すぎて照明弾の明かりでは顔が見えない!ここはまだ主役の顔は見せないという良い「溜め」のシーンでもありますね。)

・同じくハワイの空港で、遠景にムートーを望みながら、空港ビル近くに突如出てくるゴジラの足! デカい、デカすぎる! そしてついにその全貌を表すゴジラの圧倒的なビジュアルに、僕は文字通り、誇張なくホントに口アングリ。もう笑うしかないな、と乾いた息笑いを漏らすばかりでした。5億点!

・怪獣をおびき寄せる餌としての原爆を山岳列車にて移送中の米軍が、谷にかかる、レールと枕木以外特に何もないような橋でムートーに遭遇。レールに鼻面を接近させながら、橋の下を進むムートーと、ただただ身を潜めて隠れるしか無い人間。この大きさの対比が素晴らしい。誰です、外国人が怪獣映画撮れないなんて言ったのは!

・Halo降下シーンの出撃前の緊張感、飛び立つ前の男たちの背中! 絵になる! そして降下シーンになると、カメラがFPSのごとく一人称視点になるのですが、いよいよ地上に到達寸前、猛然とバトルを繰り広げる三怪獣のすぐそばを落ちていくという、史上最大の砂かぶり席な視点を体験できます。これも新しい!『ゴジラ』がFPSのような視点でゲーム化されたら、絶対入れてほしい絵!

・Haloで降下した米軍チームが、チャイナタウンでゴジラとムートーに挟まれる形になるシーン(あ、両怪獣は人間ごとき全く目に入っておりませぬw) 咆哮するムートーに対して、吠え返すゴジラ!ああ、オリジナルゴジラよりも咆哮が長い! そして通りに橋渡し状に吊るされた提灯が、咆哮の風圧で大きく吹き飛ばされそうになり、そしていよいよかかるテンションに耐えられなくなった吊るし縄がブチ切れるという、ゴジラの強大さが良く表現される、これも「溜め」が効果的なシーン!


 その他まだまだあるのですが、とりあえずこの辺で。

 


 いやいやいや、怪獣映画として、そしてゴジラ映画としてのビジュアルや物語がここまで仕上がっているものとは。僕の個人的な「体験」とも相まって、特別な一本になりそうな気がします。『パシフィック・リム』を見た時と同じく、胸一杯の「ありがとう」を、焦らしの名人・ギャレス監督と制作に関わった全ての皆様へ!